エルリグら海賊によって輪姦されたシスティーナ。
デニムたちによって救出されたものの、正義感と、恋人を陵辱された怒りの余り、
徹底的に海賊達を罰しようとするフォルカスによってセカンドレイプを受ける。
これが原因となり、システィーナは極度の男性恐怖症に陥ってしまう。
時間が経つにつれ症状は回復していったものの、性交渉に対する恐れは最後まで消えなかった。
しかし、名家の嫡子であるフォルカスには跡取となる実子が必要だった。
とりわけ、ハイムの戦役が終えた後は、新体制樹立が予想される。
政治の裏の勢力抗争に生き残るためには、名家同士が手を取る事が必要であり、
その絆となる子供は、絶対に欠かすことの出来ない重要な存在だったのだ。
それを拒むシスティーナとは別れを決断するしかなかった。
暴行された恋人に対する生理的な嫌悪感や、
恋人を傷つけた自分に対する言い訳としては、それで十分だった。
そうしたフォルカスを慰めてくれたのは、恋人であるレオナールを失ったアロセールだった。
かつてレオナールの恋人だったアロセールの家格は、フォルカスと比べても釣り合いが取れていたし、
女王統治下で施策されるであろう民族融和政策下では、異民族同士の連携が要になる事が予想された。
しかし結局、フォルカスはアロセールの勧めによって共に田舎へ隠遁することになり、
システィーナを傷つけた自分の若さを振り返り、悔いるのだった。
そんな折、システィーナの父、フィラーハ教団の指導者であるモルーバは、後継者選択に悩んでいた。
長女セリエはテロリストの首領としての前科があり、教団トップに据えるわけにはいかなかった。
教団から離反したばかりか、自らを拉致しようとしたシェリーも同様だった。
そして唯一の希望であったオリビアは、あろうことか、男と二人旅に出てしまう…。
レイプの後遺症とはいえ、禁欲的に生きるシスティーナは、僧侶の頂点に立つのに相応しかった。
そしてモルーバは、自らの後継者としてシスティーナを選択する。
やがて父の後を継ぎ、教団の指導者となったシスティーナは、
公私にわたり女王の最も近しい友人として生きた。
そんな彼女への畏敬の念を込めて、人は彼女をハイプリーステスと呼んだという。