「おいマキシミン、早くしろよ」
ナルビクの郊外を颯爽と歩くのはイスピン。いかにも面倒くさそうに遅れて歩くのは
マキシミン。共にシャドウ&アッシュの傭兵である。
いつものとおり、実入りのよくない依頼を終えての帰り道だった。
ナルビクの門のところでにロバに荷車をひかせた親子連れとすれ違うために道を譲る。
と、前方から地響きを立てながらすごい勢いで馬車が門に迫っているのが見えた。
「危ない!」
ロバを連れた一行に危険を知らせるが間に合いそうもない。
とりあえずイスピンは子供を抱えて道を外れた草むらに転がり込む。驚愕しきったロバの鳴き声、
グシャッ、バキッと荷車が転がる音、夫婦の悲鳴------
それらに被さっていた馬車の音が過ぎてから、イスピンは子供を腕の中から開放した。
「マキシミン、引き綱を切ってやったのか」
荷車は壊れていたもののロバは無事だった。あの混乱の中でとっさに判断を下したマキシミンを
褒めようとしたイスピンだが、下腹部に妙な感触を覚えてぎょっとして声を失う。
「な、なにをするっ…!」
助けてやった子供がズボンの上から股間を触っているではないか!
「なーんだ、おねえちゃんかと思ったらおにいちゃんだった、玉ついてるや」
「こっ、こら!」
「お前助けてくれた方に向かって何を!」
両親が必死に頭を下げるが子供は悪びれもせず、今度はマキシミンの股間にタッチして、
「こっちのメガネのおにいちゃんよりおっきいよ!」
「なっ…!?」
色を失うマキシミン、今度は謝ろうともせずなぜか哀れみのまなざしを送る夫婦、そんな中、
(シュペリアキューブしまっておいてよかった…)
と心の底からない胸をなでおろすイスピンなのであった。
その後自分の目で見比べたいマキシミンに温泉に誘われ、断るのに四苦八苦する未来が
待っていたりするのだが、それはまた別の話。
<終>