どぶぱっ  
 
異様な音が夏月の顔の真ん中から聞こえた。しかし三助してみれば、もはや耳になじんだ音になっていた。  
三助はもはや慣れた手つきで箱ティッシュを手に取ると、夏月の顔から垂れる赤い流れ…鼻血をふき取ってやる。  
そしてまた、慣れた様子で夏月に訊く。  
「大丈夫?」  
「うーうー」  
鼻血がこれ以上こぼれないようにと上を向きながら、夏月が答える。大丈夫という意味らしい。  
なかなかとまらないらしく、上を向いたままの夏月を眺めながら、三助は内心でため息をつく。  
大丈夫なのか、と。  
三助の目は、無意識のうちに横にいく。  
その先には、一組の布団が微妙な距離感で敷かれていた。  
 
冬休みに入って、三助は夏月と、蛍谷窟で交わした約束を果たすことにした。  
戸有村に行くということだ。  
九里浜に大(BIG)助平呼ばわりされ、長坂にコルシカ房中術なるものをまとめた資料を渡され、葉月とステファニーに冷やかされ、結衣には不埒な行いに至ったら刺すと言われ、三千人からはポキンされそうになった。  
とにかく、どうでもいいことからあの決戦以来の生命の危機まで、ありとあらゆる障害を乗り越えて戸有村へと二人は旅立った。  
まあ、旅といっても実は日帰りだったりする。というのも、所詮は平磐も戸有も東北地方。快速と新幹線をうまく利用すれば、朝一の電車で行って終電で戻る事が出来る。  
そもそも戸有村に行く理由はせいぜい海の墓参り程度なので、それでも問題ないだろうと出発したのだが…。  
 
 
 
結論から言って、大自然の猛威を舐めていた。  
 
 
 
『豪雪と強風により奥羽線、羽越本線、常磐線、磐越西線…』  
「ぜんぜん動きそうにないですね」  
「そうだね。けど、いまさら動かれても、もう宿は取ってしまったし」  
テレビに流れる交通情報を見ながら、三助と鼻血が止まった夏月は頬杖をつく。二人の姿は、ともに旅館備え付けの浴衣。  
 
二人が予定外の外泊をすることになったのは、つまりはそういうわけだ。  
復旧の電車を早急に見限ったのがよかった。二人はまだ満室になる前に、そこそこ安い民宿に入ることが出来た。  
その後で、三助は花谷家と八阪井家にそれぞれ電話した。  
叔父叔母夫婦からは下手に格好をつけずに正常位でいけという助言を、辻浦からは三千人がビーズト・イン・ビューを発動させながら軽トラックでこちらに向かっているという情報を受けた。  
両者とも、なかなかに過保護な反応だ。  
ともあれ、予想外の外泊となって三助の胸はときめいた。  
実のところ、三助はこの旅行の顛末に失望していた。もちろん、恩人である海の墓参りということもあり、浮ついた気持ちではなかったが、しかしせめてキスの一つくらいはと期待したところで、健全な男子としては非難されうるものではない。  
期待のあまり力がこもり、二志名家の墓を雪から掘り起こす際、勢い余ってシャベルで墓石を彫刻してしまったほどだ(慌てた三助だったが、目撃者が夏月だけだことや、自然石をそのままつかったはかだったことから秘密にしておくという方針で行くことにした)  
せっかくの二人きりの旅行も蓋を開けてみれば、手すらつなげないという体たらく。  
しかし、項垂れつつ帰る途中、電車が止まった。  
九回ツーアウト満塁。  
三助はエロイ想像と期待でにやつきそうになる表情筋を必死に押さえ込み、なるべく仕方ないといった風な感じを装い、どこかで宿を取ろうと提案した。  
その提案を受け、夏樹は少し考えてから頷き、その数秒後に自分が異性と二人で泊まるということを認識し、大量の鼻血を撒き散らした。  
 
「テレビも危険だ」  
「うー、はいぃ」  
ティッシュを赤く染めながら、夏月はテレビのスイッチを切った。ゴミ箱を見てみれば、そこには赤いちり紙の山があった。  
電車を降りてからというもの、夏月の出血率はすさまじいものだった。  
看板を見てはブパッ。会話をしていればどぷっ。  
もしも名のある芸術家が今の彼女を見たとしたら、小便小僧の対となる鼻血少女なる作品が作られることに違いない。それほどまでに、今の夏月は鼻血少女だった。  
よほど現在のシチュエーションは想像力をかきたてるものらしい。今の彼女にとって目に映るすべて、耳に入るすべてが凶器だった。  
特にテレビは危険だ。先ほど天気予報を探して、誤って恋愛相談の番組に行ってしまった時など、十枚重ねのティッシュがあっという間に赤くなり、十秒後にはぽたぽたと血が滴るほどだった。  
魂裸醒で無ければ失血死していたところだ。  
三助にしてみれば、もはや夏月の出血を止めるのに忙しく、助平な妄想を展開する余裕がない。  
というよりも、イマジネーションだけでこれだけ流血できる人間ポンプ夏月に対し、マテリアルにいやらしいことなどした日には、布団が破瓜以外の血液で赤く染まる。  
とりあえず、今日は一緒の部屋に二人で泊まれるということだけでよしとしよう。  
三助は自分の本能と、股間で猛るパープルシックルに言い聞かせながら口を開く。  
「夏月。もう、寝ようか?起きてても仕方ないし」  
「!は…はい」  
寝るという単語に、一瞬顔を赤くした夏月だった、続く三助の台詞から想像していたような他意が無いことに気づき、どうにか噴出だけは踏みとどまった。  
三助は反射的に手に取っていたティッシュ箱を置くと布団に向かう。  
静まれ静まれと、中腰の体勢で布団に向かう三助。とりあえず、夏月が寝静まったらトイレに駆け込んで一発抜かねばならないと考えつつ掛け布団に手をかけ…  
 
…その手の上に、夏月の手が重なった。  
 
 
驚いて顔を上げると、至近に夏月の顔があった。彼女も目を丸くし、しかも真っ赤になっていた。  
三助は、混乱しかける脳をかろうじて制御して状況を把握する。  
つまり自分と夏月は、二組の布団のうち、それぞれ同じ布団を使おうとしてしまったのだ。自分同様、おそらく夏月も何か考え事をしていたのだろう。  
ともあれ、確立としては二分の一。うむ、無いとはいえない。  
さて、では夏月は今何を考えているか?  
決まっている。つまりはエロエロと考えているのだ。  
となると、次はどうなるか?これも決まっている、鼻血だ。  
ここでようやく三助は状況のやばさを痛感した。  
現在、夏月の顔は真っ白なシーツの上にある。そして、鼻血を吸収するべきティッシュは手の届く範囲にない。  
つまり、この状況で夏月が鼻血を出せば、シーツに赤い花が咲く。  
大変だ。  
三助は、顔をいよいよ青くする。  
ただでさえ、若い男女の二人組みということで、宿を取るときに女中さんから好奇心駄々漏れの目を向けられたのだ。もしもそんな自分達の部屋のシーツが、翌朝血でそまっていたりしたら、一体どんな想像をされることやら。  
いや、それだけならまだいい。旅の恥は書き捨てだ。さらに問題なのは弁償を請求されたときだ。請求書は書き捨てるわけにもいかんのだから。  
どうするかと三助が判断を下す前に、時間が切れた。夏月は一度だけ瞬いてから  
「はう」  
と、残して、布団にうつぶせに倒れ落ちた。  
意外なリアクションに、三助はどうしたものかと思いつつも、このままではよくないだろうと、夏月を抱き起こす。  
その際、夏月の顔の下が真っ赤になっていることを覚悟していた三助だったが、しかし予想に反して赤くなっているのは夏月の顔だけだった。  
シーツには血の染みひとつない。  
「どうやら、限界を超えると鼻血を出す前に気絶するみたいだな」  
ほっとため息をついてから三助は独り呟く。  
三助の腕の中では、夏月は目を回したままで、意識を取り戻す予兆は見えない。  
「…まあ、このまま寝かせてしまえば問題ないか」  
布団に放り込んで、そのまま朝を迎えさせる。これがベストだろう。  
掛け布団を横に寄せると、シーツの上に夏月を横たえる。それから寄せておいた布団をかけてやろうとして―――気づいてしまった。  
倒れた拍子に浴衣の裾が乱れ、根元近くまで足が見えている。  
倒れた拍子に浴衣の襟が乱れ、胸元が見えている。しかも…  
「ブラジャーを…してない?」  
三助の耳に、自分が生唾を飲んだ音が、ひどく大きく聞こえた。  
 
揉もう。いや、待て!  
三助の本能は反射的に手を伸ばさせ、しかし直前で理性が待ったをかける。  
「危なかった…」  
額に汗が滲む。あと数ミリの距離で夏月の女性の象徴に接触しているところだ。  
噂に聞くところによるとあの脂肪の塊の触感は、下手な麻薬より人間を駄目にするとかしないとか。  
とにかく、触れていたら大変だったろう。  
「ううん…」  
夏月が小さく呻き、三助は全身で驚きを表現するようにビクつく。  
硬いつばを飲む三助の視界で、夏月は軽く体をねじる。ただそれだけであって、目を覚ます事はない。  
「ふぅ…」  
夏月が起きない事に三助は安堵のため息をつき、  
「大助くん…」  
そこで、夏月は目をうっすらと開く。  
その時、三助は数瞬だけ硬直した。最初に考えたのは、手を避けなくてはならないと言う事だ。  
このままでは揉みしだこうとしたところを現行犯で見られたような感じだ。  
事実とは違うがいらぬ疑いはかけられないに越した事はない。あるで熱いヤカンに触れたような速度で手を引こうとする。  
だが夏月のほうが早かった。  
「逃げないでくださ〜い」  
夏月自身は寝ぼけているようだが、鍛えられた肉体の反射神経は三助の手を捕獲する。  
そして、その手を胸で抱きしめた。  
むにゅん  
(うあ、あ、あ、あ、あっ!)  
理性が崩れ落ちていくのがわかる。  
それは過醒の時の感覚に似ていた。自分を構成する全てが崩れ去り土台である本能がむき出しになる。  
ただ違うのが、出てくる本能の種類が破壊衝動とはある意味対極的な本能であると言う点だ。  
即ち、生殖本能。  
一方、夏月は以前スパイクボール騒ぎの少し前に風を引いてしまったときのような、いわゆる甘えん坊状態に移行していた。  
トロンとした目を細めると、前腕を胸の谷間で受け止め、手の甲に頬ずり。  
「暖か〜……い?」  
最後まで言い終わるより前に、夏月は目を覚ました。  
 
気絶してからの時間が短かったため、寝ぼけている時間も短かったらしい。  
だが、それが彼女にとってよい事だったかどうかは微妙である。  
ともかく、夏月はまともな認識能力で現状を再判定する。  
時間はかからなかった。言葉にしてしまえば実情は非常に簡単だ。  
 
自分が三助の腕を抱きしめ胸に挟んでる。  
 
「っ!!!!!!!!!!!!!!」  
顔が赤くなり青くなりまた赤くなる。  
自分はなんて事をしているのだ!  
誘ってるようじゃないか!?  
大助君にはしたない子だと思われてしまう。  
どう言い訳しよう!  
「あ、あのですね、大助君…!これは、不幸な事故というもので…!」  
目がぐるぐると回るような感覚で、必死に言葉を探す夏月。  
だが、それは徒労だった。  
 三助は、暴走した。  
「夏月!」  
「はいっ?…きゃっ!だ、大助く…んんっ…!」  
問い返しの声は、キスでふさがれた。  
(あっ…ファーストキス…)  
混乱しているはずの夏月の意識は、なぜか冷静にその事を思って、しかし嫌だとは思わなかった。  
状況的には無理やり押し倒されて唇を奪われたと言う形だが、だが、嫌じゃない。  
なぜなら、同じ宿に泊まることになった時点で、こうなる事は覚悟していたから。いや、覚悟じゃない。むしろ…  
(期待…してたから…)  
そう認識すると、緊張に凝り固まっていた体から自然と力が抜けた。三助が口の中に押し込んでくる舌を受け入れ、遊んでいた手は自然と三助の体を抱きとめる。  
三助や彼女自身が心配していた鼻血の噴出は起きなかった。確かにドキドキもしていたし興奮もしているが、それと同じくらいにリラックスしたような柔らかな心持になっていた。  
(上手くできているものですね…)  
半ば呆れながら夏月は自然体で三助を受け止めていた。  
やがて、三助の熱烈なキスは終わりを告げる。  
「…っはぁ…」  
「っは!」  
三助が口を離し、二人そろって新鮮な空気を求める。その口からは互いを結ぶ銀のアーチが伸び、ぷつりと切れる。  
潤んだ目で、夏月は三助を見つめる。だが、三助はキスをやめた体勢のまま、こちらに何もしてこようとはしない。  
原因は、三助の性的な知識の欠落だった。  
もちろん、三助とて思春期男子。いきり立つ愚息の硬度が何のためのものか位は知っている。だが、そこだけ解っていてもしょうがない。  
キスと挿入の間の事については、ほとんどと言っていいほど知識とイメージがなく、だからこそ動けなかったのだ。  
そして動けずに硬直しているうちに僅かに理性が復活し、理性は客観的にして最悪な予想をはじき出す。  
(レイプじゃないか!)  
文字通り押し倒してしまった。  
僕はやはりビック助平であり、股間のパープルシックルは三千人さんにポキンされてしまう。  
(オカマは嫌だっ!)  
冷や汗を流して硬直する三助。その様子を、夏月は好意的に解釈する。  
(…ひょっとして…これ以上は私が嫌がるんじゃないかって思ってるんじゃ…)  
微妙に方向性が違う認識をした夏月。彼女は一瞬逡巡するが、覚悟を決めた。  
大助君が一歩踏み出してくれたのもの。こちらも同じだけ一歩進まなくては…!  
初めて熊に会った時よりもはるかに緊張しながら、蚊の鳴くような声で言う。  
「い…いい…ですよ?」  
言ってから、夏月は急に恥ずかしくなって目線をずらす。  
そしてその動作は、萎えかけていた三助の本能に再びガソリンを注ぎ込んだ。  
「夏月ぃぃ!」  
「きゃん?」  
 
「くふっ…ふ…ふぁ…」  
夏月の喘ぎ声を聞きながら、三助は夏月の胸を吸っていた。  
(まずいな。何も考えれない…)  
乳首を舌先で転がしながら、三助はもう片方の胸を揉み残った手で背中を愛撫している。  
(感じてくれているみたいだからいいけど…)  
「ん、んぅん…!」  
眉毛をゆがめる夏月。だが痛いとか気持ち悪いとか言うのではない…と思う。  
乳首は硬いし、夏月の手は自分の頭に添えられているだけで、引き剥がそうとしていない。  
(もっと…激しく責めてもてもいいか…な?)  
三助が次の方針に悩んでいる頃、夏月は複雑な感情を得ていた。  
(気持ちいいです…けど…)  
しかし、なんだか釈然としない。ひょっとしたら大助君は慣れている、という疑惑が頭を掠める。  
もちろんそれは夏月の誤解なのだが、それとは思えないほど夏月に快楽を与えていた。  
(だとしたら…いやだなぁ)  
自分以外の女の子を抱いている三助の姿を想像してしまう。  
こういうことは一度気になってしまうと、中々意識の外に追い出せない。  
だが、そんな悶々とした思考など、次の一撃で弾き飛ばされてしまった。  
自分の中心…自分でも滅多に触る事のない最奥に、三助の指がもぐりこんできた。  
「ひああっ…」  
「ん、悪い。痛かったか?」  
「いえ…けど…なにを?」  
「何って…ほら、良くほぐしておかないと、痛いって言うだろ?」  
「そ、そうなんですか?」  
夏月は首をかしげる。初めては痛いとは聞いていたが、解すと痛くなくなると言うのは初めて聞いた。  
自分の性に関する知識が不足なのは言うに及ばない事だが…そんな事を知っているとはやはり…  
「あの…大助君は経験が…あるんですか?」  
言ってから、夏月は後悔する。そんな事を聞いて自分はどうするつもりかと。  
その一方で、三助はどう答えるべきか悩む。  
ここは経験があると見栄を張るべきか、素直に童貞である事を告げるべきか。  
僅かに悩んだ後、三助は正直に行く事にした。経験者ぶって失敗して恥をさらすより、童貞だと端から白状してしまった方がましだ。  
「残念ながら、経験がない」  
「そうですか」  
答えながら笑顔が浮ぶのを、夏月は堪える事ができなかった。  
自分が三助の初めての女になる。  
その事が無性に嬉しかった。  
「私もです。お互いの初めて、交換ですね?」  
「…そうだな」  
嬉しそうに微笑む夏月を見て、三助は少し緊張が和らいだ。だが、興奮が収まったわけではない。  
愛撫の羞恥と快楽で赤くなった夏月の表情は、三助の劣情を煽るには十分だった。  
「じゃあ、こっちも舐めるよ?」  
「こっちって…へあっ!?」  
夏月は三助の行動に驚きの声を上げた。三助は夏月の股間に顔を寄せ、夏月の綺麗な桃色の性器に舌を這わせた。  
「き、汚いですよ!?だめっ!だめぇっ!」  
「髪を引っ張らないでくれ」  
普通の女の子にあるまじき力で引っ張る夏月に、三助は禿になるのを心配しつつも唾液をたっぷりとつけて夏月自身に愛撫を続ける。  
結論から言えば唾液はいらなかったかもしれない。それが必要でないほどに、夏月は蜜を溢れさせていた。  
そして三助の舌が蜜を拭うたびに、淫泉からはそれに倍する愛液が溢れ出る。  
最初は三助の顔を退けようとしていた夏月だったが、快楽には敵わなかったのかやがて撫でる程度の抵抗と言いがたいものに変わっていた。  
もういいかと思って三助が顔を上げると、既に夏月は出来上がっていた。  
「あぅ…」  
そこにはいつもの無垢で清楚な表情も、戦いに赴く時の厳しく冷たい雰囲気も無かった。  
口の端から唾液をたらし、赤い顔で中に視線を漂わせている。  
「いった?」  
もしかして、と思って聞いた三助に、夏月は首を横に振る。  
「わ、わかりません…けど…凄かったです」  
 
「そうか…」  
三助は手短に答えた。その股間では愚息がすでにいつでも発射OKな程にいきり立っていた。  
(これじゃあ入れた瞬間に出てしまうかも…)  
初体験が三コスリ半。確実に双方にとってトラウマだろう。だがだからと言って、この状況でいきなり自家発電など論外だ。  
かと言って、フェラやパイズリを頼むと言うのも厳しいものがあるだろう。  
(ええい、どうにでも慣れだ)  
結局、三助は無策の策を選びそのまま突撃する事にした。単にこれ以上物を考えれないほどに一杯一杯だったというのもある。  
「な、夏月?その…そろそろ、いいかい?」  
「そろそろ?…!」  
三助の意図に気付き、夏月は目を見開く。瞳は三助の急所に向けられていた。  
恐怖にも似た感覚を得る夏月。だが、逃げるという選択肢は既に無く、あったとしても選ぶ理由は無かった。  
「は、はい…」  
つばを飲んでから、答える。  
一瞬、避妊という詞が頭をよぎったが、コンドームの持ち合わせは双方ないだろうし、幸い今日は生理があけたばりで排卵には遠い。  
それに…  
(どうせなら…なしでしたいな…)  
間に何か挟むというのは、なんか嫌だと思ったからだ。  
身を硬くする夏月の足を三助は抱え、その間に体を差し込む。  
「な、なかなか恥ずかしいですね」  
「そうかな?」  
夏月のぎこちない笑顔に、やはりぎこちない笑顔で三助が返す。  
三助は自分の一物に手をやって角度を調節し、夏月の膣口に添えて、体重をかけた。  
僅かな抵抗の後、  
「ぅくふぅぅぅ…」  
ずぶずぶと、三助は夏月の中に沈んでいった。  
「うあっ!」  
そして、情けない事にその感触だけで、限界まで追い詰められていた三助の我慢は、破られた。  
びゅるびゅると、凄い勢いで精液が迸る。それは夏月がわかるほどだった。  
「えぇっ、あ、あああぅ…!」  
自分の胎内に直接ぬくもりを注ぎ込まれるという、人生初の感触に翻弄されながら、夏月はシーツにしがみ付く。  
一方の三助といえば、射精が収まるにしたがって、どんどん落ち込みの淵に沈んでいった。  
(最悪だ…)  
入れた瞬間射精。早漏なんてレベルじゃない。  
とりあえず、そのままの体勢で落ち込むというのもなんなので、三助は逃げるように腰を引こうとする。だが、それを夏月は許さなかった。  
足を三助の体に回して、逃げれないようにする。  
「だめ…ですぅ…」  
「な、夏月…?」  
驚いて夏月の体を見下ろし、三助ははっとした。  
夏月は綺麗だった。  
無駄なく鍛えられた筋肉の上に、女性らしい脂肪がうっすらと乗った体と、意外に大きい胸。  
白い肌は、いまや興奮で桜色に色づいている。頬も同じように上気し、蕩けたような微笑を作っている。  
「もっと…最後まで…」  
潤んだ瞳で見つめ返しながら、柔らかな唇で夏月が言った。  
その痴態に、三助は萎えかけていた淫茎が硬度を取り戻したのを感じた。  
そうだ、ここで逃げてはならない!ここで逃げたら絶対に後悔する!そうですよね海さん。  
魂裸醒を封じてくれと言って海に叱られた時の事を思い出して(そんな意図が欠片もない故人にしてみればはた迷惑な話だろうが)三助は決意する。  
そして、半ば抜けかけた一物を、再び夏月の中に打ち込んだ。  
 
「ああん!」  
精液と愛液の混合物が潤滑剤となって、ペニスはすんなりと夏月の中に埋没する。その際、生じたはずの粘着質な音は、しかし夏月の甘さを含んだ声でかき消された。  
「痛く…ないのか?」  
「い、いえ…痛いことは痛いですけど…それほどでは。足の骨を粉砕骨折するよりは…」  
「…なるほど」  
三助は納得する。破瓜の痛みがどれほどのものかは解らないが、魂裸醒絡みの事件で負っている怪我に比較すれば、ましなのかもしれない。それにひょっとしたら、激しい動きをする夏月のことだ。処女膜は既に破れていたのかもしれない。  
ともかく、痛くないのはいいことだ。三助は感触を確かめるように動かす。  
「ふぁぁ…っ!?」  
一往復。僅か数センチ腰を前後させただけで、夏月は劇的な反応を示した。  
声をあげ、体を反らせる。それが落ち着くと、今度は浅く息をつく。  
その動きの全ては、自分が引き起こしたものだ。  
三助は、その認識に感動と言っていいほどの衝撃を受けた。  
これは…いい。  
ペニスが受ける粘膜刺激と、ある種の嗜虐を含んだ征服感。  
三助が動く。  
「ひは…」  
夏月が反応する。  
三助が動く。  
「んんっ…!」  
夏月が反応する。  
三助が動く。  
「ふうううっ!?」  
夏月が反応する。  
三助が…  
「はっ…ふぅっ…ふ、ふああああん!」  
気が付くと、三助はめちゃくちゃに動きまくり、夏月は三助の突撃に翻弄されていた。  
「だ、大助君!大助君んっ!ら、らめ…こわ、れちゃう!もっと、もっとゆっくりぃ!」  
慈悲を訴える夏月だが、既に獣欲に取り付かれた三助の耳には届かなかった。  
激しく、肉体が実現可能な限りの速度で、夏月に腰を叩きつける。  
「夏月…夏月ぃ!」  
「や…だ、大助く…んんっ!あ、あっ!ひぁぁぁっ!」  
夏月も叩き込まれるペニスの感触に言葉を忘れる。  
いつの間にか腕は三助の体に回され、離れないようにしがみ付いていた。  
「だ!いすけ…ふむぅ」  
どちらからだろうか、三助と夏月は互いに唇をむさぼった。  
激しい唾液の交換に、二人は最後の階段を上り詰めていく。  
そして…  
「くる…!来ちゃう!来る…!来るぅぅっ!」  
「うっ…!」  
追い詰められる夏月は、半狂乱で叫びながら、どこかに飛んでいってしまう自分の体を抑えようと、三助にしがみ付く。  
その柔肌の感触に、三助は二度目の絶頂を迎えた。  
三助の先端から、二度目にも関わらず一度目に劣らない量の精を放出する。  
ドクドクと胎を満たされる感触。それが、夏月にとっての最後の一押しとなった。  
夏月は三助の体にしがみ付き、つま先を丸めて、  
「はあああああんっ!?」  
普段と比べ一オクターブ高い悲鳴上げながら、果てた。  
三助と夏月は、お互いの体が快楽に震えるのを感じた。  
 
「うくっ…!」  
「かふぅ…」  
射精の余韻が収まってから、三助は夏月の体から抜け出した。  
ペニスという栓が無くなった膣から、白く泡立った混合液がゴボゴボと零れ落ちた。  
その白の色の中に、一筋の赤い筋が見えた。純潔の証だ。それを見届けてから、三助は夏月の隣にうつぶせに倒れ落ちる。  
冷たいシーツの感触に火照ったからだが冷めていくにしたがって、満足感の変わりに若干の不安が頭の中に渦巻き始める。  
(生で…出してしまった)  
できてしまっただろうか?いや、もちろん嫌ではないが、しかし学生結婚なんて早すぎる。  
それに親が赦さない。特に三千人さんや、未だ戻っていないが三十四も簡単に赦してくれるとは思えない。  
全身の骨をポキンされ、ブラックオーラで内部から破壊されてしまうかもしれない。  
「…ふふふっ」  
惨殺したいになった自分を想像しながら荒い息をつく三助の隣で、夏月も同じように呼吸を整えながら、小さく笑った。  
「どうしたんだ?」  
「はい。うれしくて…大助君の初めてをあげれた上に、初めてをもらえましたから」  
「そうか…」  
はにかみながら言う夏月に、三助は気の利いた答えが思いつかず、ぶっきらぼうに言う。  
だが夏月はそれで十分だったらしく、一層嬉しそうな表情を浮かべた。  
それを見ながら、三助は自分を苛んでいた後悔が薄れていくのを感じた。  
何でも来い、という気持ちになってくる。  
「夏月…」  
三助は言うと、隣に寝ている夏月の体を抱き寄せる。  
「え…あっ」  
夏月は少し体を硬くしたが、すぐに体から力を抜いて、自ら三助に擦り寄った。  
(とりあえず…、まずは三千人さんに夏月と正式に付き合う許可を貰わないとな…)  
夏月を抱きながら、三助は絶望的な戦いをする覚悟を固めたのだった。  
 
 
 
 
完  
 
 
 
 
 なお、三助は3ポキンで済んだらしい。  
 
 
 
 
今度こそ本当に、完  
 
 
 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル