「僕と行こうよ」  
いつだって自信たっぷりで、偉そうで、そんな姿ばかり見てきたから。  
震えながら自分の身体を抱きしめる浅葱のその言葉に、あたしは心を動かされたのかもしれない。  
だってあたし達は同じなのだ。  
常に兄の影に隠れていた幼年時代。  
双子でありながら添え物に過ぎない己の存在の軽さが辛かった。  
誕生日には、大きなケーキと村人達からのたくさんの贈り物の横で、一人膝を抱えていた。  
兄と違い、自分が生まれ落ちた事は誰からも祝福されないのだと思いながら。  
浅葱も、きっと同様の苦しみを味わったのだろう。  
…人々が朱理に惹かれる理由は分かる。あの強さ、美しさ。傲慢さと紙一重な性格ですら、彼は魅力に変えてしまう。  
あたし自身、そんな彼の姿に恋したのだ。  
けれど朱理とは、あたしの過去を共有することはできない。彼はひどく恵まれた人だから。  
この思いを共有できるのは、同じ境遇の者だけ。  
誰かと比べられ、そして必ず敗北感を味わってきた者、己の命の不必要さを知っている者。  
そう、きっとあたしは待っていたのだ。自分と同じ惨めさを、痛みを抱えて生きてきた人間を。  
 
「浅葱、あんたと行くことは出来ない。けど…今だけなら自由にしてもいいよ」  
あたしはそう言って、岩陰にもたれた。浅葱は驚いたように、目を瞬かせる。  
「…タタラ?」  
浅葱の細い腕が、おずおずと背中に回る。その指先が戸惑いで微かに揺れていた。  
その迷いを振り払うかのように腕に力が入り、あたしはぎゅっと抱きしめられた。  
その想像以上の力強さに、胸が締め付けられる。  
あたしは『タタラ』になれたけど、彼が『朱理』になれる日は永遠に来ないのだ。  
あたしと違って、彼はいまだに劣等感の檻の中から抜け出せずにいる。  
「君は…」  
その言葉をさえぎって、あたしは浅葱の頬に口付けた。母親がするように優しく。  
そのまま浅葱の身体を地面に倒し、今度は唇に触れる。  
氷のように冷たいそこが、徐々に熱を帯びていく。  
「あいつが好きなんだろ」  
「あたしは、仲間が一番大切だよ。だから、浅葱を救いたい」  
「救う、だって? この僕を」  
「うん」  
あたしは自分の服を剥ぎ取ると、浅葱の手の平を心臓に導いた。速まっていく鼓動が手に伝わる。  
「…抱くよ」  
「うん」  
あたしは、ぜんまい仕掛けの人形みたいに何度もうなずいた。  
 
浅葱の手が、あたしの胸をやわやわと揉みしだく。くすぐったくて身体をよじると、彼は楽しそうに笑って、脇腹や首を器用に撫で回した。  
「ははっ、あははっ…ひゃっ…苦っし…」  
息も荒く笑い転げるあたしを横目に、浅葱は指を胸の先端へと向かわせた。  
2本の指でそこを挟まれ、ぐりぐりと押しつぶされると、自然と声が出てしまう。  
しかも浅葱は、触れていないほうの側の胸に尖らせた舌先を近づけて、チロチロといたずらを仕掛けるものだから。  
「あっ、ゃあぁっ、…さぎぃ…はぁっ」  
そのまま強く乳首を吸われ、目の前がちかちかとする。  
「タタラ」  
呟きながら浅葱は、左手を服のすそへ侵入させる。内股に温かい指の感触を感じて、あたしはほぅとため息をついた。  
下着の奥はもう濡れていて、指がうごめくたびにねちゃねちゃといやらしい音を響かせた。  
波の音しかしない静かな島で、それはひどく恥ずかい物に感じられた。  
浅葱の指は最も敏感な部分を執拗に攻める。指の腹で転がし、突付きまわし、時折かりっと形よく手入れされた爪でそこを引っかいた。  
その凄まじいまでの刺激に、あたしの身体はびくっと痙攣する。  
「いぁあっ…だめっ…も…、ぃっちゃぁっ…!!」  
 
目を開くと、心配そうに見つめる浅葱の顔がすぐ近くにあった。  
「経験不足のタタラには刺激が強すぎたかな」  
いつものあの余裕満々の口調で言われ、あたしはついむっとする。  
「そ、そんなことない」  
「じゃあ次は、もっと激しくするよ」  
浅葱はニヤリとして再びあたしを地面に倒すと、また指をそこへ這わせた。  
けれど今度は、熱くぬめった奥へと関節を沈めてゆく。  
中をかき回されて、何度もずっぽりと出し入れされ、気付けば指の数はいつの間にか2本に増えていた。  
2本の指がそれぞれ異なった方向に動いて、あたしを攻めたてる。  
入れたままくいっと指を折り曲げられれば、性感帯に直接の振動を受けて、嫌でも感じてしまう。  
脂汗が流れ落ち、背中がぞくぞくとする。  
「あさぎぃっ…こんな…ぁっ、はぁっんぅ…」  
「…タタラ」  
「…なに…?」  
「ありがと」  
それは多分、あたしどころかこの世の人間の誰もが聞いたことないんじゃないかと思えるほど素直な彼の言葉だった。  
けれどあたしが感激する暇もなしに、浅葱は腰に自分の体重を思い切りかけた。  
 
「ひゃぁっつ」  
熱い塊が、あたしの身体を侵食する。その感覚だけであたしの意識は消え去りそうだ。  
叫びもむなしく、浅葱は何度も繰り返しあたしの身体を貫いて、強く腰を前後左右に突き動かした。  
あたしは声をからしながらも、しっかりと浅葱の顔を見つめていた。  
「ふぁっ、も…あたし…」  
「いいよ、タタラ」  
身体の奥で何かが弾けた気がした瞬間、あたしも絶頂を感じて後ろに倒れこんでしまった。  
「僕は朱理と似てる?」 それとも…いまだに出来の悪い弟のままかな」  
「朱理は赤い…燃える炎のような人だけど、あんたは蒼く穏やかな海みたい。  
炎と海を比べても仕方ないでしょ、全然違うものなんだから。あんたはあんたよ」  
「僕は…僕」  
浅葱はあたしの上に乗ったまま、肩に顔をうずめ、声を出さずに泣いた。  
それはまるで、幼い子供のようだった。  
そしてあたしは、自分の片割れであるこの人を少しでも救えた気がした。  
たとえそれがあたしの自己満足でしかないとしても、きっと重要な事なのだ。  
 

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