いつものように公園で、三人仲良く日向ぼっこをしていた時の事だった。
「あんっ……もう。ダメよ、こんな明るいうちから」
後ろの植木の間から艶めいた女の声が聞こえて、三人は同時に後ろを向いた。
「いいじゃねぇか。おまえだって……ホラ、その気じゃねぇかよ」
「……バカ」
三人が同時にゆっくりと正面、砂場の方へと顔を戻すと、その中の一人が、
「聞いてはいたけど、最近の若い人って大胆ねぇ……」
まさか目撃するとは、とため息をついた。
「やあ、俺らの頃なんざそんな事を口にするのもはばかられたってぇのになぁ」
「あら、良ちゃんは女泣かせで通ってたじゃないの」
「昔取ったきねづかだあな。今じゃ、ぎっくり腰でそれどころじゃねぇのさ」
言っている内容のわりに、落ち着きを失わない幼馴染の老女に、年のわりには背の高い老人が鼻に指を入れながら笑って答えた。
「でも、あんなのはダメだね」
今度は、それまで黙って三味線をいじっていたもう一人の老女が口を開く。
「お春ちゃん?」
「あんな誘い方じゃあ、女はその気にならないよ」
「まあなぁ。だが、あんな女じゃ、男も普通はその気にならねぇぜぇ?
少なくとも俺たちが現役の頃、女はもっと恥じらいがあって、そのくせ色っぺえ声を出してたもんだがねぇ」
「さすが女泣かせの良ちゃんねぇ」
丸顔の老女は胸を張って熱く語る老人を見て、楽しそうにくすくすと笑った。
「まったくだね。あの程度の誘いに乗るようじゃ、男も女もたかが知れてるってもんさ」
細身の老女はべいんと三味線を鳴らして言った。
「お春さんも昔は色っぽかったよなあ」
「昔はね」
「良ちゃん。お春ちゃんはね、昔はミス男殺しだったのよ」
「……ほう、そりゃぁ……すごい」
三人の後ろの気配はいつの間にかなくなっていた。
(了)