(群竹日記) 
○年△月xx日  
きょうはひいらぎせんせいに「このこをたのむぞ」といわれた。  
たのむ、ってどういうことかな?  
わからないけど、ちいさくてしろくてふわふわしてあかんぼうはかわいい。  
てのひらをにぎるとわらったきがした。うれしい。  
 
○年△月xx日  
あかんぼうは「あさぎ」というなまえらしい。  
うめわかがほっぺたをつねっているので、けとばしてやった。  
ずっとあさぎがなくのでそばにいてあげる。あさぎはすぐねむった。  
ほかのあかんぼうよりかわいいな。なきむしだけど。  
 
○年△月xx日  
ひいらぎ先生のくんれんはきびしい。  
今日もいっぱいおこられた。  
あさぎは今日もねつを出した。  
気になってみにいったら、白の王があさぎをだっこして、泣いてた。  
どこか、いたいのかな、白の王さま。  
 
○年△月XX日  
白の王が女の子を拾ってきた。  
珍しい。  
女の子の仲間は初めてだ。  
よく笑って、よく泣く。もうはいはいを始めてる。  
「菊音」って名前だって。  
蘭丸が菊音のおむつをはがして、「ついてない!」って叫んでいる。  
うるさいから突き飛ばしてやった。  
おむつを直してあげようとしたんだけど・・・何だろう、あれは?  
ひいらぎ先生に聞いてみよう。  
 
○年△月XX日  
ショックだ。  
ひいらぎ先生から、今日は色々と教わった。  
女の子と男の子は色々違う。  
梅若と蘭丸はとたんに菊音に冷たくなった。  
僕くらいは優しくしてあげよう。  
 
○年△月XX日  
浅葱様は今日も熱を出されている。  
女官も付かないでお一人で休まれている様子なので、お水を持っていこうと  
思ったら白の王に止められた。  
白の王はとてもお美しい方だけれど、時々とても怖い顔をされる。  
浅葱様が気になる。  
 
○年△月XX日  
菊音が木から落ちた。駆け寄ったら、失敗した、って言いながら笑ってる。  
とっさに受身をとったんだろう。普通だったら骨が折れてる。  
柊先生の訓練が菊音に対しても僕たちと同じ内容になった。  
梅若と蘭丸が面白くない顔をしている。  
僕も精進しなくては。  
 
○年△月XX日  
ある女官が最近私に馴れ馴れしい。やたらと体に触れてくる。不愉快だ。  
浅葱様がいるところでも馴れ馴れしいものだから、後で浅葱様に嫌味を言われてしまった。  
憂鬱だ。女は苦手だ。  
 
○年△月XX日  
今日は部屋に文が投げ入れられていた。甘ったるい香りのする文だ。  
浅葱様に見つかったらまた何を言われるか判らない。破り捨てる。  
が、塵箱に入れているところを女官にちょうど見られた。  
女官が泣き出すので仕方なく肩を抱いて慰めてやったけれど、ますます泣き叫んで  
自分の体を僕に預けてくる。  
なし崩しに今晩逢う約束を取り付けさせられた。  
憂鬱だ。  
 
○年△月XX日  
今日は何も書きたくない。  
あんな・・・汚らわしい。  
 
○年△月XX日  
やはり書いておかねば。こんな事でいつまでも気を病んでいても仕方がない。  
女官の部屋を訪れると、彼女は薄物一枚で長椅子に寝そべり、酒を飲んでいた。  
酒と何か甘ったるい香のかおりが気持ち悪くて、退室しようとしたが、また泣き叫びそう  
なので仕方なく室に入った。  
酒を勧められたので、一口飲んだら体がかあっと熱くなった。  
その後は・・・  
駄目だ、やはり明日、書く。  
 
○年△月XX日  
まだ気分が悪いのだが。やはり書いておかねば。  
酒を飲んだ。そうすると体が妙に熱くなって、足がふらふらするので女の隣に腰掛けた。  
女が酒を注ぐので、また口に含むと何だか頭がぼう、っとしてきた。  
そうすると女がしなだれかかってきて、自分に覆い被さってきた。  
紅をつけたふっくらとした唇が自分の唇を覆った。突きかえそうとしたけれど、腕に力が  
入らない。女は自分の薄物を脱いで、一糸纏わぬ姿で私にすがりつく。  
そうすると、私の「それ」に手をあてて何やらゆっくりと動かし始めた。  
自分の体の熱さがそこへと集中していくようで、どんどん大きくなっていくのを感じた。  
その頃には私も着物を取り払われて、裸にされていた。  
女は私の「それ」に口づけると、口に含んだ。  
吸われて、どんどん熱く大きくなっていく。  
女を自分から離そうとしたけれど、体がしびれたように動かない。  
背中にぞくぞくと何かが走る。その流れがきゅうっと脊髄のあたりを熱く走って、  
頭が真っ白になった。  
「それ」からどくどくと何かが出る感覚があった。  
ぼんやりと女の顔を見ると、口元から白い雫を垂らしてにんまりと笑っている。  
あわてて着物を身に着けて、もつれる足で外に出た。  
背中でけらけらと笑う女の声が聞こえた。  
恐ろしい。  
 
○年△月XX日  
私は病気になってしまったようだ。  
しかも毎夜、悪夢にうなされる。  
決まって、あの女官の夢だ。  
赤い唇と、べろりと伸びる舌。その長い舌が私の体を責め苛む。  
私を喰らいつくそうとするかのように体中を舐め、噛み付く。  
悲鳴をあげそうになって朝、起きると。  
何という事だ。  
大きく、堅くなっているのだ、私の一部が。腫れあがっているなんてものではない。コチコチだ。  
きっと私は病気に違いない。  
柊先生に聞いてみようか。でも病気だと知れたら、ここにはもう置いてもらえないかもしれない。  
しばらく様子を見るしかない。  
 
○年△月XX日  
病気が悪化している。  
信じられない・・・この年齢になって、粗相をしてしまうとは。  
今迄で一番生々しい悪夢だった。目覚めても尚、女の匂いを感じる程。  
女は蛇となって私にからみつき、緩くきつく、繰り返し私を締め上げる。  
いやに鋭敏になって屹立する「それ」も又、ぎゅうと締め付けられ、ふっと解放されたかと思う  
と、今度は長い舌でなぶられる。何という責め苦だろう。  
ざらざらとした舌が上へ下へと私の「それ」を舐めまわし、先端をちろちろと舐めつくす。  
思わず、声を出してしまった。  
自分の声で目覚めると、自分の着物がべっとりとした白い膿のようなもので濡れている。  
朝、こっそりと井戸へ洗いに行く。  
こんなところを浅葱様に見られたら、命を絶つしかない。  
私の体はどうなってしまったのだろう。  
 
○年△月XX年  
安心した。  
意を決して柊先生に病気だと告白したところ、先生はちょっと困ったようにお笑いになられ、  
それは健康な男子であれば誰でも起こる事、と説明して下さった。  
「それでは、柊先生も朝、『それ』が屹立するのですね?」と、嬉しくなって質問すると、  
途端に目を細められ、不機嫌になってしまわれた。  
無言で立ち去られようとする柊先生に追いすがって、何か失言したかと謝罪すると、  
静かな怒りをたたえた恐ろしい眼で私を見られ、  
「梅若と蘭丸は去年、お前と同じ悩みを私に告げたのだが…群竹はいささか成長が  
遅いのかもしれぬ」と言われた。  
しかも、  
「そうだ、群竹。浅葱様もご同様にお悩みの時期かも知れぬ。浅葱様には群竹から教えて差し上げよ。  
浅葱様を頼んだぞ」  
などと仰る!  
確かに幼少のみぎり、浅葱様を頼むとは言われたものの、一体どのように切り出せと・・・柊先生!  
気が重い。  
 
○年△月XX日  
浅葱さまがまた寝込まれた。  
秋も深まり、夜は寒さが厳しい。それなのに浅葱さまは寝間着を着たがらないものだからすぐ  
風邪を召されてしまう。  
熱が大分下がったという事を聞いたので、様子を窺いに部屋へ伺った。  
具合がよろしいのだろう、すやすやと子供のような安らかな寝顔で寝てらっしゃる。  
起こすのも忍びないので、そっと戸を閉めて立ち去ろうかと思ったか、冷たい空気が外から入  
り込んだせいか、浅葱さまが目覚めてしまった。  
小腹が空いたという事なので桃を差し上げる。  
「群竹は優しいな」といつになくしんみりと仰る姿が切ない。  
その桃は白の大師からの差し入れですよ、と真実を明かしたくなる。が、それは白の大師から  
きつく口止めをされているので言い止める。  
この季節に桃を手に入れるのは難しいだろうに。  
白の大師のお心遣いが伝われば、さぞや浅葱さまもお喜びになるだろうに。  
浅葱さまが気付かれない時に、白の大師が浅葱さまを見つめる視線は柔らかい。  
私ごときがこんな事を考えるのは非礼ではあるけれど、浅葱さまが臥せっているこのような時  
にこそあのような視線で浅葱さまを見つめて差し上げればよろしいのに、と思わずにはいられない。  
このような心境で、柊先生から言われた例の事は言える訳はない。  
断じて言い訳ではない。日にちを改めるだけの事。  
気が重い。  
 
○年△月XX日  
浅葱さまの体調も今日はかなり良いようだ。  
剣の練習にも戻ってこられた。  
練習が終わると、桃の礼なのだろうか、茶を一緒にどうかと誘って下さった。  
邪魔な梅若も蘭丸も居ない。今しかない、と思われた。  
他愛もない話をしてから、何でもないように浅葱さまに尋ねてみた。  
「浅葱さま、朝に体の一部分に異変があったりはしませんか?堅くなっていたり、立ち上がっ  
ていたり、ほら、寝間を汚してしまったりとか――――」  
皆まで言わぬ内に、顔を真っ赤にされた浅葱さまに頭を叩かれ、部屋から叩き出されてしまった。  
失敗だ。  
柊先生、申し訳御座いません。  
 
 
(浅葱日記) 
○年△月XX日  
群竹の奴め。  
知った風に教え諭そうとした!腹が立つ!  
でも、まあ、安心した。  
自分だけに起こっている事かと思ったけれど、どうやらそうではないらしいし。  
群竹なんかに聞くのもしゃくだけど、柊先生に聞くのはもっとしゃくだからね。  
仕方ないから群竹の部屋までこっちから出向いてやった。  
部屋に群竹がいないから、しばらく待っていたら、部屋の隅に隠すように置かれた鍵の  
掛かった小箱が見えた。  
ちゃちな鍵だから三秒で開けてしまえた。  
群竹の奴、何をこそこそと隠しているのかと思ったら、日記なんか隠してるし。  
そうか、健康な男子には起きて当たり前のことなのか。梅若と蘭丸が自分より早かったという  
事が腹立たしい気がする。後で軽い毒でも仕込んで茶でも持って行こう。  
それより女官と群竹だ。  
あいつ、僕に隠れてそんな事をしているなんて!許せないね。  
群竹、見てろよ。  
群竹の日記は面白いから、また読もう。勿論、鍵を掛けなおして同じ場所に戻しておいた。  
あいつは鈍いから気付かないだろうな。馬鹿な奴。  
 
そうか、あの桃は姉上が。姉上、有難う。  
 
 
(群竹日記) 
○年△月XX日  
部屋に誰かが入ったのだろうか?何が変わっている訳ではないけれど、しっくり来ない。  
まあ、いい。それより浅葱さまだ。  
珍しく機嫌が良ろしかったので、今日こそは、と思い「例の事」を説明申し上げようと試みた。  
が、浅葱さまの方から逆に心配されてしまった。  
「言わないでおこうと思ったんだけど・・・実はこの前の朝、井戸で群竹の姿を見たんだ。  
・・・気にするなよ。健康な男なら誰でもそうなるんだから。病気とか、そんな風に思っちゃいけ  
ないよ。何かあったら僕に聞くんだよ。恥ずかしい事じゃあないからね」  
あの姿を見られていたとは!不覚。  
赤面する私に優しく大丈夫だ、と微笑む浅葱さま。浅葱さまのお優しさに私は涙が出そうだ。  
私は浅葱さまに、一生お供しようと心に決めた。  
そういえば梅若と蘭丸がずっと腹を壊している。何か悪いものでも食べたのだろう。  
女官は相変わらずにやにやと意味ありげに私に笑いかける。悪夢を見なくなったと思えば、  
現実が悪夢のようだ。幸い、女の口が堅いのかこの前の事は誰にも気付かれてはいないよう  
だが。ああ、鬱陶しい。出来る事なら斬り捨ててしまいたい。  
今日は柊先生に頼まれて、白の大師の付き添いでこれから堺まで出向く。  
浅葱さまが私の居ぬ間、風邪でも召されなければいいのだが。  
 
 
(浅葱日記) 
○年△月XX日  
群竹のあの顔!真っ赤になっちゃって、可愛いね。  
笑いを堪えるのに大変だったよ、実際。  
腕は立つのにあんなに騙され易いんじゃあ、柊先生がひそかに考えてる四君子には選ばれ  
ないだろうね。可哀相な奴。  
ああ、そろそろ僕も女を知らなきゃいけないかな。  
姉上以外の女は全く魅力的だとは思えないけどね。  
そうか、あの女官は口が堅いのか。いい事を知った。  
まあ、不細工ではないし、田舎臭くもないし、適当かもしれない。  
一夜限りの伽くらいなら、我慢してやってもいいかな。  
幸い、姉上も群竹も居ないしね。  
 
○年△月XX日  
疲れたね、全く。  
何故、世の阿呆どもはこんな下らない事にうつつを抜かすんだ?  
女は簡単だった。  
夜更けに部屋まで行って、扉をノックしようとしたら背後から「浅葱さまではありませんか、  
如何されましたか?」なんてにやにやして声を掛けてきた。  
部屋に入ると甘い香の匂いに気分が悪くなりそうだった。女は官服からだらしない薄物に着  
替えて、上目遣いに僕をいやらしく見つめる。何だか寒気がしてきたから震えると、  
「まあ、浅葱さま、お寒いのですか?」なんて言って馴れ馴れしく体を寄せてくる。  
がたがた震えてたのは、風邪の前兆だったのかな。別に、あんな女ごときを恐れてたんじゃな  
い。部屋も寒かったしね。  
寝台に上がると、女が僕の着物を取り去った。震えがひどくなってきたから、「お寒いんです  
ね」って女が言うと、女も裸になってぎゅうって抱きしめられた。  
体を裏返されて、首筋から背中に舌を這わされると、ますます体がざわざわした。ひんやりし  
た手がいきなり僕の「それ」に触れるからびくん、ってなった。女の手は何本もあるみたいに、  
それをしごいたり、撫ぜたり、一時も休まない。その間、ずっと僕の体を舐めている。そうする  
と――やっぱり、風邪を引いてたのかな――体がどんどん熱くなってきて、腰の奥がずうん、  
って重くなって「それ」が熱くなっていくのを感じた。女は僕を仰向けにすると、乳首のあたりを  
舐めたり、噛んだりした。僕が目を閉じてる事を良い事に、大胆にも熱く堅くなったそれに唇を  
這わして、横笛でも吹くみたいに唇で上下になぶるんだ。頭がぼうっとしてきて、気が付くと女  
が僕の体に馬乗りになって、「それ」を自分の中に収めようとしてた。  
ああ、何だか眠いよ。明日続きを書く。  
 
○年△月XX日  
今日は一日眠ってた。体がだるくって。  
ああ、昨日の続きね。  
女は僕に跨って、そそり立った僕のを股にはさもうとしてた。そうしたら、ぴちゃって、音をたて  
てするりと女の中に入った。  
あったかくて、湿ったものに包まれて、きゅっと締め付けられるような感覚。女はゆらゆらと僕  
の上で動いて、僕の手を自分の腰の方へと導いた。僕は手を女の腰にあてて、リズムを取る  
ように揺らしてやった。そうするとどんどん女の中に自分のが深く突き刺さっていく。  
痛みをこらえるような顔をしてるから、体を引こうとしたら女が笑って「お優しい方」って言って、  
肩に接吻をした。  
ますます女の動きが激しくなって、僕のそれが女の中の壁に絡め取られて、まるで吸盤に吸  
いつけられているような感じだった。痛いくらいに締め付けられた瞬間、熱いものが僕の腰  
の方から急に頭の方へと流れて、何かが体の中で爆発したと思った。  
気が付くと、僕の隣で女が荒く息を吐いていた。  
そういう時って、接吻の一つでもしてやるんだろう、って思ったから顔を寄せると女は笑って僕  
の唇に手を添えて止めた。  
「浅葱さまはいつか恋がお出来になる御方。その時まで唇への接吻は、その御方の為に  
取っておかれた方がよろしいですよ」って。  
笑った顔が、ちょっと姉上に似てたかな。唇がふっくらしたとこくらいだけどね。  
この僕が女ごときに恋なんてする訳ないじゃないか。僕の好きな女性は姉上だけ。  
僕は、恋なんてしないし、女になんて金輪際接吻だってするもんか。  
 
 
(柊日記) 
○年△月XX日  
女官が無事に役目を果たしたようだ。  
これで梅若、蘭丸、群竹、そして浅葱さまは一応女を知った事になる。  
どんなに腕の立つ猛者でも女に狂わされる事がある。  
女は利用する事こそあれ、利用されてはいけない。  
女によると、幸い、梅若と蘭丸は女は快感を得るだけの道具だと考えているらしい。  
群竹に到っては、女が好きではないようだ、と言う事だ。まあ、それは気付いてはいたが。  
浅葱さまは―――  
「浅葱さまは母にすがる子供のように私に抱きついておいででした。あの冷たい瞳の奥には  
人一倍さみしさを抱えていらっしゃるようにお見受け致します。あの御方が女性に魅かれた  
時、それは真実の恋となるでしょう」  
浅葱さまには白の大師のためにももっと冷酷になって頂かねばならない。  
そろそろ、関東にでも出向いて頂く頃合かもしれぬ。  
私は残酷か?  
浅葱さまは幸せになって良い御方なのに。  
女に狂わされているのは私かも知れぬ。  
これは私の罪。  
浅葱さまを人身御供にしている――ただ一人の女性を生き永らえさせるだけの為に。  
 
浅葱さまが真実の恋を見つけた時、白の大師も解放されるのだろうか。  
浅葱さまもご自分の居場所を見つけられるのだろうか。  
銀子様、私はそれを見届けたいような気が致します―――  
 
 

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