朱理の腕が――落ちた。  
 
鮮血がマントをその色に染め替える――  
何、これは夢?悪い夢を見ているの?  
ああ、でも浅葱が泣いている。  
どうして泣くの?あんたが大っ嫌いだった朱理が血を流して苦しんでいるんだよ。  
浅葱、泣かないでよ。  
 
体中の血が沸騰する。ただ身体が熱くてよく覚えていない。  
斬られそうな朱理を守った。  
それを見つめる、惑うたように不審気に見つめる人たちの視線。  
「赤の王」を守る自分は穢れか――  
 
泣いてる浅葱。  
血を流している朱理。  
人を斬り続ける私。  
 
萩原軍が陥ちる――長い一日。  
 
油臭く、まだ火がくすぶる戦場を更紗は馬に乗り――探していた。  
「浅葱!」  
呆けたように立ち尽くす浅葱に更紗は近づく。  
「お疲れ様、大丈夫?」  
「タタラさ、もし僕と朱理と、どっちかを選ばなきゃならないとしたら、どっちにする?」  
――浅葱は、いつも突然。いつも、何気なく無邪気に自分を痛めつけるような、  
傷つけるような質問をする。  
(悲しい人――)  
「――絶対選ばなきゃいけないの?」  
「そう」  
浅葱は、稚いこどものような表情をする。  
更紗は思わず、湧き上がる微笑みをかみ殺した。  
「じゃあ、浅葱にする」  
「そう…ありがと」  
更紗は痛みをこらえるような笑顔に耐え切れず、後ろを振り向き立ち去ろうと  
している浅葱の着物をぐい、と引っ張った。  
「なんだかわからないけど、私が信用できない?何かあるなら言いなさい、ちゃんと!  
ちゃんと聞いて、一緒に考える!」  
ひんやりとした唇が、更紗の唇をおおった。  
 
叫ぼうと唇を開いた瞬間、するりと長い浅葱の舌が入り込んだ。歯茎を撫で回し、歯を  
こじあけて更紗の舌に触れる。  
「ん、んぐっ――」  
(浅葱――!)  
更紗は浅葱の背中に手をまわしかける。刹那――  
どん!と更紗は突き飛ばされた。  
「浅…葱?」  
浅葱は、振り向かずに駆けて去って行く。  
更紗は、ぽかん、とその場に座り込んだ。  
浅葱の舌の感触が残っているのか、自分の口に違和感を抱いて指を入れる――と、  
冷たい、蒼く輝くピアスが舌下に残っている事に更紗は気づいた。  
 
ハヤトが、仲間が呼んでいる――まだ戦は終わってないぞ!――と。  
 
タタラは鬨(とき)の声を聞く――タタラ、行け、戻れ、戦の場に!!――だが、  
更紗の脚はそのピアスの主に、その己に託した蒼いピアスの意味を尋ねに行かずにはいら  
れなく、よろよろと歩を進めた。  
 
「浅葱…?」  
主戦場からずいぶんと離れた岩場に、浅葱は座り込んでいた。  
「ちょっと浅葱、大丈夫なの?」  
「…雪みたいだ、ひらひら、ひらひら」  
浅葱はほっそりとした手のひらを空に向けた。  
「燃えた、敵の身体なのか、燃えた誰かの髪の毛なのか、灰が冷たい雪みたいだ」  
ぶるっ、と浅葱は震えた。  
「雪は嫌いだよ――」  
パシン!と更紗は浅葱に平手を打った。  
「しっかりして、浅葱!まだ戦は終わってないんだよ!」  
「寒い……」  
呆けたような浅葱の肩を、がくがくと更紗は揺すった。  
「浅葱、ちょっと、大丈夫?戻ろう、みんな心配し――」  
浅葱の身体がガクン、と更紗の上に落ちた。  
更紗が思わず地面に尻餅を付き、浅葱の身体がぐったりと更紗の上にのしかかる。  
「僕を選ぶんでしょ?なら、今、ちょうだいよ、タタラ、君を」  
「まだ戦の間なのに――何を」  
浅葱は更紗の胸元に手を伸ばすと、ぐい、と着物をはだけさせた。  
「浅葱、止め――」  
両手首をぐい、と強い力で掴まれ、身体に浅葱の身体の重さを受け、身動きが取れずに  
更紗は嫌々をするように首を振った。  
「止めて!」  
 
浅葱ははだけた胸元に接吻をする。つつ、舌先で乳房を舐める。髪先が、敏感な頂きに  
触れる。  
「あっ、浅葱!ねえ、今なら冗談で済ましてあげる。止めて!」  
ぐいっ、と手首をねじり上げられ、痛みに更紗は身体をひねった。  
その隙に、浅葱はするりと更紗の上着をすっかりはだけさせてしまう。  
「やっ…」  
羞恥に思わず身体を隠そうとする更紗の身体をぎゅう、と浅葱は抱きしめ、耳元で呟いた。  
「赤の王は――良かった?」  
ぴくん、と更紗は身体を硬くする。  
「赤の王と寝たよね?何回したの?どんな風に愛してもらった?朱理は優しかった?」  
きっ、と睨みつける更紗の額に口付けると、浅葱は言った。  
「僕は、優しくないよ。でも、あんたが僕を選んだんだ――」  
 
嫌がる更紗の着物を全て、乱暴に取り去り、浅葱は圧し掛かった。  
岩場に寝そべる更紗の身体は、地面の小石で擦られて血が滲み、浅葱が上で動く度に  
痛みに身を震わせた。  
「ああ、やだ。血かぁ――頑丈な肌をしてると思ったけど」  
浅葱は己の着物を取り去って、面白くなさそうに更紗の下に敷いた。  
「痛ければ、叫べば良いのに――ってか、もっと痛くなるんだけど」  
浅葱は乱暴に胸をまさぐった。乳房の蕾を捏ね、そして乱暴に引っ張る。  
「痛ぅっ――」  
「感じやすいところって、乱暴に扱うと一番痛いところなんだよね」  
 
ぐい、と髪の毛を引っ張り、更紗の細い首を天に向けさせると、首筋一面を血が  
滲むほどに浅葱は吸った。  
「首筋の傷――戦で傷ついた、なんて言えないよねえ」  
くっくっと、笑いながら浅葱はさらりと髪を揺らした。  
細い身体にどれだけの力が眠っているのだろうと言うくらいに、浅葱は強く更紗を抱いた。  
更紗は息を詰まらせて、思わず咳き込む。  
浅葱は構わず、咳き込む更紗の口を塞いだ。  
「ぐ…ぐふっ。げほっ」  
浅葱の舌が、更紗の舌を絡め取る。手は止まらず、更紗の乳房をもてあそぶ。  
「あんたの首を絞めた事もあるんだ」  
更紗は気が遠くなりそうになりながらも、浅葱を見つめる。  
「一緒に行こう――なんて、馬鹿な事を言った」  
浅葱はいっそう激しく接吻すると、するりと身体を更紗の下肢に移した。  
脚を持ち上げ、太ももに舌を這わす。少年のように引き締まった更紗の身体の中で、  
腿だけが白く女らしい。その柔らかな太ももに頬を這わせ、ちろちろと浅葱は舐めた。  
「んん…やめ…」  
「止めないよ」  
更紗は脚を持ち上げられ、己の秘所が露わになっている事をぼんやりと感じた。  
(反抗しなさいよ、ばか更紗!)  
 
更紗はぐらぐらと頭を揺らして、ゆっくりと瞳を開いた。  
ひらひらと目の前を灰が舞う――  
ふわり、と灰片が自分の肩に落ちた。風が、ふわりとそれを運ぶ。  
(浅葱――そうだね。寒い、とっても寒いよ)  
 
浅葱は腿に接吻をし、膝の裏を撫ぜた。  
ぴくん、と更紗を身体を反らす。  
「ふうん…こんなとこも、気持ち良いんだね」  
いっそう高く脚を持ち上げると、浅葱は膝裏に舌を這わせ、丹念に舐めた。  
右手は足首に、左手は秘所へとそろそろと近づく。  
膝裏を舐めながら、浅葱の指は更紗の桃色の秘所へと近づき、その襞に触れた。  
襞をくるくるとさまよいながら、ようやく現れ立ち始めた赤い蕾をくっ、と掴む。  
「ああっ……いやっ」  
浅葱は脚を下ろし、舌と指で更紗の秘貝を開く仕事にかかった。  
赤い蕾はまだ開かず、蜜を垂らさない。  
浅葱は中指で蕾を捏ね、舌で花びらをゆるゆると揺らした。  
「そろそろだね」  
冷たい指をつつ、と貝の割れ目に這わせる――と、一本、指を差し入れる。  
「痛――っ」  
「痛くないよ、だって、君は処女じゃないもの。赤の王のお手つき、でしょ?」  
 
浅葱は秘所奥深くに指を差し入れ、ますます赤く色づき始めた蕾を舐めた。  
と、とろり、と蜜がこぼれる。  
「ほうら、痛くないでしょ」  
くつくつと浅葱は笑うと、ぐぐっ、と指を壷に突き刺した。  
一本が、二本になり、その指は左右の壁をくいくいと、刺激する。  
その度に、ぴく、ぴく、と更紗の肉環が蠢く。  
痙攣しているかのように身体を震わす更紗を見下ろして、浅葱は溜息を吐く。  
「営みの前の戯れでこうなら、本当にしちゃうとタタラの身体は壊れちゃうかもね――」  
止めて――と、拒むように、更紗の手が動いた。  
浅葱はその手を掴み、ぐい、と己の猛りを更紗に突き刺した。  
「嫌あぁぁぁぁぁっっ!!」  
「黙って、タタラ!」  
浅葱は猛りを更紗におさめる。  
「ああああああっ!!」  
「タタラ!」  
浅葱は、ゆるゆると、そして徐々に激しく腰を動かし始めた。  
 
「浅葱ってば!離して!」  
「黙って」  
浅葱は叫ぶ更紗の唇を己の唇で荒々しく塞いだ。  
「んんっ…っ!」  
荒々しい接吻は、徐々にゆっくりとしかし情熱的に更紗の舌をなぶった。  
更紗の腕を押さえつけ動きを封じていた浅葱の腕はいつのまにかはずされ、その腕は  
柔らかに更紗の身体を包んだ。  
甘く、ゆるゆると更紗の中を探るような浅葱の腰の動き。  
そして、甘くとろけるようなキス。  
更紗は我知らず浅葱の長い舌に促されるかのように、自分の舌をおずおずとからめ始めた。  
二人の舌がからまりあい、更紗の腕もいつしか浅葱の身体に回される。  
更紗は腰の奥がゆっくりと暖かく、熱くなっていくのを感じた。  
(更紗、抵抗しなさいよ……叫んで、暴れて、殴り倒してでも逃げなさい!)  
理性を奮いおこし、更紗は目を開けて浅葱を見上げた。  
浅葱が静かに自分を見つめている――まるで自分が犯されているかのように、  
苦しげに切なげに――深く遠い瞳。  
「浅葱」  
(何でそんな顔、するのよ。浅葱)  
更紗は手を伸ばして、浅葱の頬に触れると、小さく苦く微笑んだ。  
 
浅葱はゆっくりと浅く腰を動かし続ける。かと思うと、急に深く突き刺す。  
突かれる度に更紗の身体はビクンビクンと震え、ぴりりと足先にまで甘い痺れが流れて  
つま先がピンと反る。  
はぁはぁと激しくなる息を隠そうと、更紗はぎゅうっと口を閉じて顔を反らした。  
露わになった首筋に、浅葱が唇を押し付ける。  
最前の痛めつけるかのような接吻で出来た跡を優しく癒すようなキス。  
舌が耳たぶをとらえ、舌で転がす。耳の輪郭をゆっくりとなぞるように舐めると、  
浅葱は舌先を耳の中に差し入れた。  
「やっ……ん!」  
更紗は身体を捻って抵抗するが、太く熱い楔で結び付けられた身体は、動くたびに  
ますます深く結びついていく。  
浅葱の細く長い指先が更紗の乳房に触れる。人差し指と中指でゆっくりと蕾を  
ほぐすかのようにこね回すと、小さな蕾は赤みを増し、赤く大きく色づき始めた。  
それを浅葱はかりり、と噛む。  
舌先で頂きをなぶられ、転がされ、軽く吸われ始めると更紗は堪らずに嬌声を上げた。  
「いやぁ、ああっ…んん!!」  
 
誰かが私たちを探しにやってくるかもしれない。  
第一、まだ戦は終わっていないのだから。  
後ろから、浅葱もろとも斬り付けられるかもしれない。  
 
(でも、止められないよ、浅葱――)  
 
遠くで聞こえるはずの、戦場特有の荒々しい音が聞こえない。  
ただ、少しだけ荒くなっている浅葱の呼吸の音だけに更紗は耳を傾けた。  
見上げると、見慣れた、あきらめたかのような悲しい瞳。  
無理やり微笑もうと歪む唇。  
タタラ、と呼ぶ涼やかな怒ったかのような声。  
全部、全部、浅葱なんだ。  
信用なんてしてなかった、されてなかった。  
敵意が好意に変わったと思った。  
(ねえ、浅葱――)  
更紗は胸の中で浅葱に語りかける。  
それが、どれだけ嬉しかったか、あんたに判る?  
 
更紗は脚を浅葱の背中に上げ、そして腰を突き上げ、いっそう深く突き刺さるように  
浅葱を求めた。  
浅葱はそれに応えるかのように、更紗の腰の奥まで楔を打ち込む。  
浅葱が動く度に起こる、甘い痺れ。更紗はきゅう、と自分の蜜壷がしまり、ひくひくと  
蠢くのを感じた。  
ふっ、と浅葱は苦笑して言う。  
「タタラ、あんまり『締めつけ』ないで。行けなくなっちゃう」  
「あ、ごめん……」  
更紗は自分の身体の貪欲さに赤面した。  
朱の昇った頬に、浅葱がやさしく一つ、キスをした。ぽとん、と浅葱の汗が更紗の口の中  
に落ちた。  
こくん、と更紗は飲み込むと、更紗は何故か無性に悲しくなって、浅葱にしがみついた。  
「浅葱、浅葱、一緒に行こうね。新しい国を――」  
(―― 一緒に、新しい国を作ろう)  
浅葱はそれに答えず、いっそう激しく更紗の腰を突き上げ始めた。  
「ひゃ…ん!んんっ。あ、あ、浅葱」  
更に大きく熱く張った浅葱に肉槍が更紗の中に満ちる。くちゅくちゅ、と更紗の蜜が流れ、  
互いの腿を濡らした。  
更紗は自分がどんな風な体勢でいるのか、どこまでが自分の腕なのか脚なのか、分から  
ない――まるで浅葱の中に自分が溶けてしまったかのように。  
 
「あっ、ああ、ああ、浅葱。んっ、んん……!」  
ぐい、と腰を突きつけられた瞬間、更紗は腰の奥からの甘い痺れが背中を通り、頭の中  
にまで達するのを感じた。  
痺れが爆発し、身体ががくがくと震え、頭ががくん、と落ちる――  
崩れ落ちる自分の身体を支える浅葱と、ひらひらと雪のように舞う灰、そして月光を背に  
きらりと浅葱の頬に光る何かが見えた気が――した。  
目前が暗転すると、更紗は気を失った。  
 
 
「寒…」  
更紗は起き上がると、自分が岩間深い死角になっている場所に寝かされている事に  
気づいた。衣類も、いささか乱暴にだが整えられている。  
「あさ…ぎ?」  
更紗は、きょろきょろと辺りを見回し、浅葱を探した。  
戦は終わったのであろう、あたりは静まっている。  
(そうだ、私、探して――朱理の)  
更紗は、立ち上がると、ゆっくりと戦場跡へと戻っていた。  
 
「見つけた」  
愛しい人の片腕が、敵味方入り乱れる屍の中に紛れていた。  
「ごめんね。朱理」  
呟くと、更紗はすがるようにそれを己の頬にあてた。  
「冷たい、ね」  
つい最前まで己を抱いていた腕、そして今自分が埋めようとしている腕――どちらも、  
愛しく、そして切ない程に冷たかった。  
「――ここに、埋めるね、朱理」  
 
何を一緒に埋めるんだろう?  
更紗を土をかけながら、思う。  
体中に残る、愛の残滓。まだ身体に残る疼き。そして、想い。  
 
――タタラ、僕と朱理と、どっちを選ぶ?  
 
タタラなら、浅葱を選ぶ。  
更紗なら?  
更紗ならどうするの?  
 
更紗は、ただ俯き、土を穴に落とし続けた。  
月光の下、罪までも、埋めてしまおうかのように。  
 
<了>  
 

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