「あ……そうだ、ありがとう」  
さっきまでシーツを握りしめていた更紗の左手が  
朱理の右手を絡め、そこにそっと唇を寄せた。  
「何の話だ」  
動きを止めた朱理が不機嫌そうに眉をひそめる。  
「大仏事件のとき。助けてくれたよね」  
「……」  
深くなる眉間の皺を気にすることもなく、  
更紗は朱理の指を一本ずつ口に含んでゆっくり舌を這わす。  
「この手が……あたしを助けてくれた」  
「ふん」  
「ありがとう……」  
更紗の手をきつく握りしめ、朱理は自身をより深く沈めた。  
 

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