台所に立っていたのは、茜ではなくくるみだった。小さく鼻歌を歌いながら、手際よく芋を剥いていく。  
ドアに立ちすくんでいる源五郎に気づいて、茜は包丁を持つ手を止めた。  
「今日は、あたしが夕食当番の代理です。茜ちゃんが具合悪くて」  
「茜さんが?どんな様子ですか?ばんちゃんを行かせましょうか?」  
「ちょっと疲れが出たみたい。熱っぽいって。寝ていれば治るって言ってたよ」  
他にも何か言いかけようとして、結局何も言えずに源五郎もくるみと並んで芋を剥き始めた。  
食事当番は夏とその他で一人ずつ割り当てられるのだが、源五郎は茜と一緒のことが多い。  
最初は関西弁で何を言っているのか分からなかったが、一緒にすごしているうちにだいぶ分かってきた。  
おそらく、夏のほかのメンバーは茜の言っていることを理解できないだろう。  
それを考えると、ちょっと優越感を感じる源五郎である。  
最近は食糧事情も安定し、みなで同じものを食べるようになっていた。  
「あ、ねえ源五郎くん、この食事、茜ちゃんに持っていってもらっていい?」  
くるみがお盆にすいとんとジャガイモのサラダを載せた。  
「え?僕が?」  
「ね、お願い」  
意味ありげに笑うくるみに半ば強引に頼まれ、源五郎は台所を追い出された。  
が、嫌な気分ではない。茜の顔を見たいという気持ちもあったのだ。  
夏Aとそれ以外は居住区域を分けている。  
秋のチームも基礎からしっかりとした平屋を作っているのが意外だった。  
自分たちが得た知識が唯一にして最高だと思っていたが、そうでもないことを思い知らされる。  
安居などはそういうことを知るたびにイライラしているようだが、源五郎としては、いずれにせよ  
新しい知識が増えるのは大歓迎であった。  
「茜さん、源五郎です。食事を持ってきました」  
遠慮がちにノックをしたが、返事がない。二回声をかけて、それから思い切ってドアを開けた。  
部屋の隅に布団が引かれており、茜が規則正しい寝息を立てていた。  
「茜さん」  
声をかけても目が覚める様子はない。額に手を当てる。かすかに熱っぽい。  
色白な頬が今日は赤みがさしている。誰もいない部屋で二人きり。しかも相手は眠っている。  
躊躇いながらではあったが、誰に教えられたわけでもないのに、源五郎は自然に顔を寄せいていた。  
茜の寝息が源五郎の長い髪を揺らし、あと少しで唇に触れる、そのとき  
「源五郎?あんた何してるの?」  
盛大にドアが開いて、蘭が仁王立ちしていた。源五郎は飛び上がるほど驚いた。  
「あの、そのくるみさんに茜さんの食事を頼まれて、それで、その、茜さんが熱っぽかったので、  
ちょっと熱を測ろうかと」  
「ああそう」  
「食事はここにおいてあります。何かあったらばんちゃんを呼んで下さい。それではこれで」  
すれ違いざま、蘭が鼻で笑うのが見えた。見られたか?キスしようとしているのを見られたか?  
恥ずかしさに叫んで走り出したい心境だったが、それでも、頬に残る茜の頬の柔らかさは  
源五郎をますます熱くさせたのだった。  
 
我ながら自分の取った行動に驚いた。  
茜の安らかな寝息を聞いたら安心し、寝顔さえもいとおしく、ただどうしても彼女に触れたかった。  
こんな気持ちは初めてで、どうしていいか分からない。  
すぐに家に帰る気になれず、フラフラと歩いていると、視線の先に安居が怖い顔をして立っていた。  
最近は些細なことでイライラし当り散らしていて、他のチームに恐れられている。  
本来は気持ちのまっすぐな少年であっただけに、源五郎は誤解されている安居が気の毒でもあった。  
しかし、それでも、最近の安居の苛立ちは源五郎たちのフォローできる度を越えていた。  
「あまり他のチームに深入りするのはよせ。所詮俺たちとは立場が違うんだから」  
「立場って…そんな言い方はないと思うよ」  
「お前は逆上せているだけなんだよ。もっと冷静になれ」  
はき捨てるようにそういった安居に、源五郎も思わず感情的になる。  
「そんな一方的な言い方はないよ。他のチームの人だっていい人たちばかりだ。お互いに足りない  
知識を補って、協力して生活していかないと、この世界ではすぐ破綻する」  
「協力?俺たちが協力することなんてありえない。教え導いてやるだけだ」  
「でも現に、彼らは僕たちの知らないことをたくさん知っている。僕たちは全能じゃない」  
安居の体から、熱いオーラが立ち上る。本気で怒らせたかもしれない。しかし源五郎も引く気はない。  
この狭い世界で、上だ下だ言ってても仕方ない。協力しなければ病気や天変地異で一発で全滅する。  
「源五郎、お前はあいつらの肩を持つのか」  
「だからそうじゃないって」  
安居の視線が源五郎を射抜いたその時。  
「あんまりくだらない理由で喧嘩なんてしないでよね」  
草むらから野草の束を持って現れたのは、あゆだった。ぞっとするほど冷たい視線を二人に向ける。  
「あなたたちが本気で喧嘩したら、最低でもどっちか一人死ぬわね。ただでさえ人が少ないんだから  
馬鹿なことはしないでよね」  
言葉は辛らつだったが、安居の怒りをうまく吸い取ったらしい。安居は小さく舌打ちをして去っていった。  
「あゆさん、ありがとう」  
「別に、お礼を言われることなんてしていないわ。でも…。安居くんはちょっと重症ね。  
私もなるべく見るようにしているけれど、やっぱり花さんが原因なのかしら。彼女に随分突っかかるし」  
春のチームの花が、貴士先生の娘と知ったときの驚きは、源五郎も忘れられない。  
だからといって花を恨む気にはなれない。親子という観念は源五郎たちには良く分からないし、  
花を害したところで自分が手にかけた動物たちが生き返るわけでもないから。  
だが安居は、すべての元凶を花にすり替え、持てる憎悪すべてを花に注いでいる。  
「彼女に当たったところで、過去に戻ることもできないし、失ったものが蘇るわけでもないのに」  
氷のように鋭い一言を残し、あゆは家に戻っていった。  
 
風呂場は数人の女性たちが思い思いに一日の疲れを取っていた。  
夏Aの三人はは機械的にお湯に浸かってさっさと出てしまったが、残りのメンバーは二日に一度の  
お風呂をそれは楽しみにしていたので、名残を惜しむかのように浸かっている。  
シャワーは24時間使い放題だが、風呂場は男女で一日交代なのだ。  
そうでなくても一日働いてへとへとになるので、時間ギリギリまで粘っている。  
蘭と花が先に上がり、最後にくるみと茜が出た。  
茜の熱も午後ゆっくり休んだことですっかり下がっている。  
「あ、これからばんちゃん先生に見てもらうんだった。先に戻るね」  
脱衣所には茜一人が残された。着替えて周りの掃除をしていると、ドアが開いて人が入ってきた。  
くるみかと思ってそのまま無視して床を掃除する。と、気配を感じて顔を上げた。  
目の前に立っていたのは、安居だった。  
今日の風呂当番は安居で、入りしないつもにも増した凄みでにらまれたのを覚えている。  
安居は初めて会ったときから敵意をむき出しにしており、茜たちも極力かかわらないようにしていた。  
「も、もう出るからちょっと待って」  
立ち上がって荷物を取ろうと伸ばした手を、力いっぱいつかまれる。  
「痛っ…。何するん?」  
「お前が…源五郎をたぶらかしたんだろう?」  
唸るように呟いた安居の視線は虚ろで、まるで壊れた機械のようだった。  
ぎりっと捻りあげられ、茜は小さい悲鳴を上げた。  
「どうやってたぶらかしたんだよ。言え!言ってみろ!」  
今までの安居は敵意をむき出しにすることはあっても、殺気を感じることはなかった。  
しかし、今目の前にいる安居からは、はっきりとした殺意が向けられている。  
茜は口を利くこともできず、ただひたすら首を横に振るだけだった。  
「お前ら…何もできないくせに、そういうことばっかりは得意なんだな。もう一人のあの女も、  
早々と妊娠なんかしやがって」  
安居は忌々しげに舌打ちした。  
「いいか、俺たちはお前らを対等になんて見ちゃいねえ。お前らがあまりにも何もできないから、  
救いの手を差し伸べてやってるんだ。そこを良くわきまえろ!」  
「何なん?その勝手な言い方!そりゃ確かにウチらは出来ひんことも多いけど、それでもみんな  
頑張ってるんよ!あんまり馬鹿にせんといて!」  
「ちゃんと日本語で話せ!」  
「日本語やっちゅーねん!アホか!」  
売り言葉に買い言葉で、気づいたら子供の喧嘩のように叫んでいた。言いすぎた、と思った時は遅い。  
「この…!大人しくしてればつけあがりやがって」  
安居の顔が怒気で真っ赤に染まる。力いっぱい突き飛ばされ、茜は壁に背中を打ちつけた。  
一瞬呼吸が止まり、ずるずると床にへたり込んだ。  
「痛い目見ないと分からないみたいだな」  
茜のあごをぐいっと持ち上げ、安居は口をゆがめて笑った。  
その時。  
 
「茜さんっ!大丈夫ですか?」  
扉を蹴破る勢いで飛び込んできたのは、源五郎だった。安居はとっさに茜を突き飛ばして立ち上がる。  
「源五郎、お前なんで」  
「あゆさんが教えてくれました。安居くんの様子がおかしいって…」  
源五郎は茜と安居を交互に見て、次第に顔色を変える。ゆっくりと拳が握り締められるのを見て、  
茜はとっさに叫んでいた。  
「ウチが悪いの!ウチが長風呂してしもて、安居くんが様子を見に来てくれたん。ほんまやて」  
源五郎がと安居が怪訝な表情で茜を見る。茜は源五郎の腕にしがみつき、必死に握り締められた拳を解く。  
安居も、これ以上揉め事を起こすのはよくないと判断したのか無言で部屋を出て行く。  
茜はほっとして床にへたり込んだ。  
「茜さん、なんでそんな嘘つくんですか」  
しかし源五郎の顔は強張ったままである。  
「ちょっと言葉で強く責められただけやわ。なんてことあらへん」  
「でも、手」  
源五郎は茜の手にそっと触れた。手首に赤い痕が残っている。安居に握り締められた痕だ。  
「ただつかまれただけや。力が強いから、痕が残ってしもてん。それだけや」  
茜は小さく笑って首を横に振った。その笑顔が、不安を内包しているような頼りなさで、  
まるで小さい子供が泣くのを堪えているように見える。源五郎は思わず茜を抱きしめていた。  
茜の肩に顔をうずめると、なんだか、自分の方が泣きそうになる。  
「ここに来る途中にずっと考えてました。もし茜さんを傷つけるなら、安居くんでも許さないって」  
「そんなこと言うたらあかんよ。大事な仲間なんやろ?ウチらには単なる怖い人やけど、  
源五郎くんたちにとっては一緒に育ってきた友達やろ?」  
小さい子供をあやすように背中を優しくさすっていると、ゆっくりと源五郎が顔を上げた。  
切れ長の瞳が熱く潤んでいる。その距離の近さに急に照れくさくなり、茜はぎくしゃくと体を離す。  
「く、くるみから聞いたんやけど、夕食、持ってきてくれたんやってね。ありがとね」  
「……」  
「ウチ、寝てたから気づかんかってん」  
「……」  
「じゃ、じゃあ、おやすみなさい、また…」  
ふわりと背後から抱きしめられた。耳とに口を寄せ、好きです、と小さい声で囁かれた。  
見上げると、源五郎の顔は見たことないほど真っ赤になっている。  
「学校では、その、こういうときどうすればいいのか、誰も教えてくれませんでした」  
真顔で言う源五郎に、茜は思わず笑ってしまう。  
「わ、笑わないでください」  
「アホやなぁ、源五郎くん。そんなんウチらも習わへんよ。自分で考えて」  
茜は腕を解いて真正面に立ち、答えを待つように源五郎をじっと見上げた。  
目を閉じて何事か考えていた源五郎は、やがて茜の肩に手を置いて、そっとキスをした。  
「正解や」  
茜はそう言って源五郎の背中に自分の手を回した。  
 
最初は触れるだけのキスだったが、次第に角度を変えこすり付けるように、咥えこむように激しくなる。  
いつの間にか口が半開きになり、互いの舌が縦横無尽に絡みつき、飲み込みきれない唾液が互いの  
あごを伝って床にぽたぽたと落ちる。  
茜は立っていられなくなり、源五郎にしがみつくようにして体を預ける。源五郎は軽々と茜を抱え、  
脱衣所ののベンチに座らせた。  
「源五郎くん、どこで習たん?すっごい上手や。って、ウチも経験はそないにはあらへんけど」  
荒い息を吐きながら、茜は顔を膨らませて源五郎を見上げた。  
「授業で一通り、その、子供の作り方を。あとビデオとか本とか。そういうのは色々回ってきました」  
あくまでも大真面目な源五郎に、茜は足をばたつかせて笑ったが、やがて真顔になった。  
子供を作ること。それは源五郎や夏Aの人々にとっては至上命令で、興味本位や好奇心ではなく、  
必要な知識として与えられているのだ。  
「そやね。源五郎くんたちはそう習うんやろね。でも、ウチは、少なくとも今のウチは子供とか  
関係なく、好きな人と一つになりたいって、そういう単純な気持なんよ」  
「茜さん…」  
「だから、続けて?」  
茜は自分から源五郎に抱きついた。きっと先ほどの源五郎に負けず劣らず真っ赤になっているだろう。  
源五郎は抱きついてきた茜を全身で受け止めた。先ほどにもまして激しくキスを交わす。  
茜を抱いたまま、マットのある場所に移動する。そこに横たえて覆いかぶさる。  
風呂上りの茜はブラを身に着けていないようで、突起がシャツ越しに存在を主張している。  
源五郎は我慢できずにシャツをまくり、じかに触れた。初めて触れる女性の胸はびっくりするほど柔らかく、  
今までに触れたどんなものとも違う感触だった。突起を指でつまむと、茜は小さく声を上げる。  
胸に顔をうずめ、突起を口に含んで舌で転がしてみる。  
「やぁ…っ、あ、んっ」  
とたんに茜のかわいらしい声がして、源五郎の背中をぽかぽか叩く。もっと声を聞きたくて、もっと  
触れていたくて、源五郎は飽きることなく胸を弄った。  
と、重なりあった下腹部が、もぞもぞと動いている。茜が足をこすり合わせているのだ。  
「どうか、しましたか?」  
「もうっ、源五郎くんが胸ばっかり弄るから、我慢でけへん」  
真っ赤になった茜は、怒ったように言って、源五郎の手を取って自らの下腹部に導いた。  
「こっちも、触って」  
ショートパンツの上から触れると、かすかに湿り気を感じさせる。ごくりと息を飲んで、源五郎は  
恐る恐る下着ごと足から抜いた。秘所はすでに濡れて妖しく光っていた。  
 
導かれるように秘所に手を伸ばし、手のひらで包み込むようにしてぬくもりを感じる。  
やがて指を一本、割れ目に沿って上下に動かす。  
「くぅ…ン!あ…っ、そこ、気持ちええよ」  
茜は恥ずかしさもあったが、あえて自分の感情を素直に源五郎に伝えることにした。どこまで知識を  
持っているか分からないが、今の行為が正しいものであることを、教えたかったのだ。  
源五郎の指がにゅるっと、茜の中に入った。  
「う…ッ、あ、あぁン!」  
その歓喜の声でその行為が正しいと認識した源五郎は、荒い息を吐きつつ一気に奥まで貫いた。  
「ああ…っ、あ、あン!そこ…っ」  
茜は仰け反り、源五郎の頭をかき抱くように引き寄せる。  
源五郎は中で角度を変えてかき回し、強弱をつけて抜き差しを繰り返す。  
自分のやること一つ一つが次々に茜を乱していくのだから、たまらない。  
「んんっ、んぅ…」  
何かにつかまっていないと押し流されてしまいそうで、茜は必死で源五郎にしがみつく。  
源五郎は二本目の指を入れ、中でぐっと広げてみせる。三本目を入れようとしたが、茜がかすかに  
苦痛を感じたのか眉を寄せたので断念し、その代わりに、と親指で膨れ上がった蕾に触れた。  
「んんーっ!!や、な、何なん?」  
茜がますます声を上げる。新しいスポットを発見したのがたまらなく、源五郎は二本の指で中を  
かき回しつつ、親指を蕾にぐりぐりと押し付けた。手のひらはもう、泉からこぼれる蜜で  
ぐっしょりとぬれており、それが潤滑油となっている。  
「や、やぁ…っ!あかん、指、抜いて!もう、もうウチ…ッ!」  
高みを味わった茜はびくんびくんと仰け反ったあと、ゆっくりと弛緩した。  
「茜さん、大丈夫ですか?」  
突然糸の切れたようになってしまった茜に、源五郎は起き上がって不安そうな顔を浮かべる。  
「大丈夫や。気持ちよすぎてイッてしもた。あー、びっくりした」  
「行く?どこに?」  
大真面目に問い返す源五郎に、茜は小さく笑って起き上がり、股間に手を伸ばした。  
すでにその部分は見て判るほど盛り上がっており。触れられただけで源五郎は後ずさりした。  
「あ、ああ茜さん、いったい何を」  
「今度は源五郎くんをイかせてあげるよってに」  
「だからどこに?」  
半泣き状態の源五郎に乗っかってジャージを脱がせて、茜は姿を見せたソレをそっと手で包んだ。  
「て・ん・ご・く」  
 
茜自身、それほど経験豊富ではないが、手と指を使ってソレを愛撫し始めた。  
「あの、あのいいです。そんなことしなくて」  
源五郎はおそらく生まれて初めてであろう行為にかなり動揺している。  
学校で教える範囲では、おそらくこういうことは習わないだろう。  
しかし茜は構うことなく続行する。すでに痛いほど反り立っているソレは、手で扱き上げるたびに  
先走りの液を放ち、茜の手を濡らしていく。  
「源五郎くん、びっくりしたらあかんからね。これは、普通のことなんやからね」  
先に言い置いて、茜は股間に顔をうずめ、ソレを口に含んだ。  
「!!!!!」  
予想どおり飛び上がるほど驚いた源五郎であったが、そのあまりの気持ちよさに茜を止めることも忘れ、  
暴発しないように我慢するのが精一杯であった。  
源五郎のソレはかなり立派で、茜も口に含むのがやっとであった。指と舌を使い、丁寧に舐める。  
頭上で必死に声と暴発を我慢している源五郎の気配も伝わってきて、より愛おしさがこみ上げる。  
ぎゅっと口をすぼめて深く吸い上げると、今までにない反応が伝わってきた。口の中でソレが膨らむ。  
「あ、茜さん、出ます!顔離して」  
源五郎が茜の顔をぐいっと引き離すのと、顔めがけて発射したのはほぼ同時であった。  
白濁液が茜の顔を汚し、源五郎はまるで人を傷つけてしまったかのように狼狽する。  
「ご、ごめんなさい茜さん、僕、初めてで、その、本当に」  
「ええよ。ウチので気持ちよくなって、それでなんやろ?」  
タオルで汚れをふき取っていると、源五郎のソレは一度精を放ったばかりだというのに、  
すでに起き上がり始めていた。  
「元気やね、源五郎くん」  
「はぁ…スミマセン」  
「謝らなくてええよ。嬉しいんや。今度はちゃんと、ウチにして」  
再び二つの影が一つになる。源五郎は茜を抱き寄せ、激しくキスを交わした。ところどころふき取り  
切れない己の白濁液がこびりついており、それがまた、よりいっそう源五郎を激しくさせた。  
噛み付くようにキスを交わし、舌を絡ませ、唾液を交換する。  
その間もあいた手は茜の胸を激しく揉み、頂を親指でこねくり回す。  
「あふ…ッ、あうン」  
茜は切なげに眉を寄せ、源五郎の背中をかき抱くが、バランスを崩して床に倒れこむ。  
源五郎の長い髪が茜の降り注ぐ。たくましい胸板に手を置いて、鼓動を確かめる。  
閉じられた足がこじ開けられた。大きく開脚し源五郎を招き入れる。源五郎も膝立ちになっていざり、  
足の間を割って入って屹立したソレを、茜の蜜壷に挿入した。  
 
「……ッ!!」  
最後にこういうことをしたのは、この世界に来る前のことだ。  
三年ぶりに男を迎え入れたその体は小さい悲鳴をあげた。源五郎のソレはまだ全部入りきっていない。  
茜は何度も大きく呼吸をし、力を抜く。  
「あの、大丈夫ですか?」  
なみだ目で歯を食いしばっているのを見て、源五郎が不安そうな顔をする。  
「大丈夫や。だから、もっとちゃんと入れて。最初はキツいんやけど、じき慣れるから」  
「でも」  
「ええから。早く、ウチの中を源五郎くんでいっぱいにして」  
そういわれると、源五郎も理性のたがが外れてしまい、本能の赴くままに体を進める。  
中が狭いのか、途中で突っかかってしまうのだが、一気に腰を進め、一番奥までたどり着いた。  
「全部…入ったね」  
処女ではない。しかし、一つになれたことに、なぜか涙がこぼれてきた。  
こんな世界に飛ばされて、好きな人と結ばれる日が来るなんて、思わなかった。  
一つになることがこんなにも嬉しいなんて、思いもしなかった。  
源五郎は涙のわけを問おうとはせず、顔を寄せて涙を吸い取った。  
二人はつかの間、繋がったまま体を密着させていたが、やがて、源五郎が動き始めた。  
浅く抜いてピストン運動を繰り返す。  
「んっ、あ、あぁン!」  
浅めに抜き差ししていた源五郎だが、次第に、子宮に届けとばかり腰を叩きつける。  
繋がった部分から水音が漏れ、抜き差しする空気音もまた、茜たちの耳を打つ。  
いったん火のついた源五郎の本能はもはや止めようがなく、しゃにむに打ち込んでくる。  
鈍い痛みを感じつつ、それ以上に一つになった喜びが茜を支配する。  
源五郎が茜を抱えたまま起き上がり、対面座位の形になる。  
源五郎のたくましい上半身は汗でぬれており、発射と快楽をこらえて歯を食いしばっているのが  
セクシーでもあり、茜は顔に張り付いた髪をかきあげてやる。  
頬を挟んでキスを交わす。上も下も繋がっている。その事実がより興奮を煽る。  
「茜さん、そろそろ、限界なんですが」  
「中に、出してええよ」  
「でも、そうしたら」  
子供が、という源五郎の不安げな声をさえぎって、茜は自ら腰を振って結合を深める。  
源五郎もまた最後の力を振り絞って腰を動かし、茜を抱きしめる。  
「あ…あっ!も、駄目ぇ…っ」  
「く…っ」  
源五郎の精が、茜の中で弾ける。二人は同時に高みを迎え、折り重なるように床に崩れた。  
 
「もし子供が出来たら、くるみの子と同級生やね」  
「この世界には学校がないから、あまり意味がないと思うけど」  
「ものの例えやん。でも、今回で出来ることはないなぁ。ちょうどアレ終わったばっかやし」  
風呂場で二人で並んで湯船に浸かりながら、取り留めのない会話をする。  
湯はだいぶ冷めてしまったが、火照った体にはちょうどよかった。  
体を重ねたことで、すべてをさらけ出したことで、二人には目に見えない親密感が芽生えている。  
「それに、やっぱり妊婦二人はあかんね。もうちょっと生活が安定しないと、子供は作れんわ」  
「もうじき安定しますよ」  
そやね、と茜は源五郎の肩に頭を乗せる。  
「あの、茜さん、あまり密着されると、そのこっちの都合が」  
「えーっ。まーたぁ?ほんまに元気やね。夏Aの人たちはみんなそんなに精力絶倫なん?」  
「絶…。いや、普通だと思いますが。その、好きな人が一緒にいればこうなるのは、男として」  
しどろもどろと言葉を濁す源五郎がおかしくて、茜は心持ち体を離した。  
実際のところ、あの後三回もしてしまったので、これ以上はカンベンというのが本音である。  
「安居くんには知られないようにしなくちゃね。バレたらまた言われるなぁ、源五郎を  
たぶらかしたんはお前かーっ!てね」  
「そんなこと言われたんですか…」  
ぶくぶく、と源五郎は湯船に沈んだ。  
「気にしてへんからええよ。あれで、源五郎くんのこと心配してるんでしょ?」  
「そう言ってもらえると、助かります…」  
「じゃあ、そろそろ帰ろっか。あんまり遅くなると、みんな心配するし」  
「…もうちょっと」  
上がりかけた茜の手を取り、無理やり自分の腕の中に抱き寄せる。  
「茜さんに会えて、良かった。今初めて、ちゃんとした人間になれた気がする」  
「源五郎くん…?」  
「今までの僕は特殊な環境で生まれ育って、人々を教え導き子孫を残せと命令され、思い込み、  
ただそれだけのために、ただ生きるためだけに生きてきた。でも、今は違う」  
見上げる源五郎の瞳は迷いなく澄んでいる。初めて会った時の、俊敏ではあるがどこかうつろで  
翳を帯びていた源五郎の姿はどこにもない  
「僕たちも知らないことは山のようにあって、足りないところを補って暮らしていく。その中で  
信頼関係が生まれて、愛情が芽生えて、結ばれて、子供が出来る。生きるって、そういうことでしょう?」  
「…そやね」  
茜は何度も頷いて、源五郎の手を握り締めた。  
繋いだこの手は二度と離さない。  
                         <終わり>  
 

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