触れるか触れないかの臆病さで、  
オレはきみにくちづけた。  
きみは小鳥のように震えたけど、  
けして逃げようとはしなかった。  
 
そのまま二度、三度と口づけて、  
息が上がっても止められなくて、  
苦しさに紛れて二人草むらの上になだれ込んだ。  
仔犬がじゃれあうみたいに転がるうちに  
小瑠璃はくすぐったいと笑い出して、  
オレも小瑠璃のくりくり頭がくすぐったくて、  
結局二人笑いながら抱き締めあった。  
気に入りのくりくりに鼻を埋めると、お日様と風の匂いがする。  
 
「ひゃひゃひゃ、ハル、くすぐったい!」  
 
ねえ、小瑠璃。  
どうしようもなく、胸が熱いよ。  
膨らんで、溢れ出して、世界が満ちる。  
ここにピアノがあったなら、  
オレは今までの人生で  
きっと最高の演奏をきみに聴かせることができるだろう。  
 
「小瑠璃」  
 
いつかきみに聴かせたい。  
きみと共にいる喜びを。  
 

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