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第1話.カザンの戦士たち
第2話.鉱山で強制労働。エルディルがオークの機嫌を損ねてしまうこと。
第3話.エルディルの性別がバレそうになって大ピンチ。
第4話.エルディルの受難、そして決意。


【 Crusaders of Khazan 】

第1話.カザンの戦士たち

「テイク・ザット・ユー・フィーンド!」
指先から放たれた魔法力の塊が弾丸のように鋭い軌跡を描く。回避はもとより不可能。
バン!と音を立てて魔力の塊が狙い違わずに飛び顔面で炸裂し、スカインは鼻を強打したようなキーンとこめかみに響くような感覚と共に後ろへ吹っ飛ばされた。

「ま、まて、エルディル!悪かった!反省してる!なあ、バリオス?って、あら?」
片手で鼻を押さえ、もう片方の手で短めの黒髪を纏めていたバンダナがずり落ちたのを直しながら辛うじて立ち上がった少年は、共犯者の姿を求めて振り返る。
が、この計画を持ちかけてきたドワーフは不穏な気配を敏感に察知し、坂道を転がるように逃走した後だった。
気まずい沈黙に包まれたこの場に居るのはスカインとエルディルの二人きり。

木々の間を抜けてくる日差しに反射し銀色に輝くエルディルの髪。肩まで伸ばした髪の質はやや硬い方らしく、下に行くほどに重力に逆らい跳ねていた。その先端から水がはたはたと垂れている。
女性、と言うよりも少女。日差しの強い地方出身にしてはやや色白の肌が怒りと羞恥でピンク色に染まっていた。
顔を真っ赤にしながら水の中に腰から下を沈めているエルディルは、右手は攻撃魔法を放ったままの姿勢で、左手は一糸纏わぬ身体をせめて胸だけでも隠すようにして、怒りを露わにスカインを睨みつけていた。
「このすけべ!変態!ロリコン!油断も隙もないんだから!」

立て続けに罵声を浴びせられるスカインだが、バリオスにそそのかされてエルディルの水浴びを覗いていたのは事実である以上、言い訳のしようもない。
「悪かった!悪かった!あんまりエルディルが可愛くて魅力的だから、つい!な?」
エルディルの顔が更に真っ赤になり、しかし、この場を逃れるために言い繕った様な、実にいい加減な歯の浮くような言葉に更に怒りが増してくる。

「テキトーな事は言わないでいいから!さっさとあっちに行きなさい!でないと…」
再びエルディルの指がスカインの顔に向き、キュゥン、と魔力が篭る。
「わかった!わかったってば!」
わたわたと後ろに下がるスカインの手に握られていた布がばらりと地面に落ちた。
正確には、先ほどスカインが魔法を顔面に受けたとき咄嗟に盾にしようとして、しかしその役割を全く果たさずにボロボロになったモノの残骸が、崩れるように地面に落ちた。

「あら…?」
スカインがさも不思議なものを見るように、手に残った布の残骸を広げてみる。
見覚えのある厚手の青地に金糸であしらわれた紋章。だったもの。嫌な予感がスカインの背筋を這う。
恐る恐る顔を上げてその持ち主の表情を伺った。
なんとか機嫌を取ろうと笑顔を保つ努力をするが、その甲斐なく顔面がヒクヒクと引きつる。
「その、なんだ、エルディルさん?落ち着いて…な?」
スカインはエルディルの背後にゴゴゴと音を立てて黒いオーラが立ち込めるイメージを見た。


「テイク!ザット!ユー!フィ――――ンド!!」
山の方から聞こえる怒りの魔法詠唱、ズババンッ!と先ほどよりひと際大きな炸裂音、そして。
「ギャァァァ――――――ッ」
判りやすい断末魔を聞きながら金髪のエルフ男性、クレイが紅茶の淹れてある湯呑みを口に付けていた。
白いローブが目に眩しいその長身はいかにもエルフ然としており、常に微笑を湛えたような細目が、温和だが、しかし抜け目の無さそうな印象を与える。
その背後でガサガサと音を立てて茂みから顔を出すモヒカン頭。
色黒の肌に赤茶色のモヒカン。ついでに顎ヒゲも赤茶色。典型的な戦闘ドワーフの風貌である。

バリオスの汗や埃を気にしない無頓着さにはさすがに慣れたクレイだが、今は坂道を転げてきたらしくその顔が更に泥だらけになっている。
一瞬顔をしかめるクレイには気づかず、バリオスは暢気なものであった。
「いやはや、おなごの裸ひとつ見るにも命がけじゃのう。スカインめは若い命を散らしおったか…」
南無、と東洋の坊主のように祈るような仕草をするバリオスの様子に、クレイは――すぐに貴方も後を追うのでは――と思いつつも、その言葉を茶と一緒に飲み込んだ。

クレイは穏やかな表情を崩さずに、しかし酷い有様のバリオスの顔を直視しないように紅茶の入った湯呑みを差し出す。
「貴方も懲りませんねぇ。どうです?コースト産ですが口に合うかどうか。」
頂こう、と片手で会釈しながら受け取るバリオス。
「ほっほ。娘じゃよ。娘の成長を見守る父親の心境って奴じゃな。」

「ふーん。父親なんだ?」
ニコニコした笑みを絶やさずに茶を啜りながらバリオスは、うむ、うむ、と深く頷いた。
ハッと気づいたときには、エルディルの魔法は発動している。
【テイク・ザット・ユー・フィーンド】。レベルに合わせて威力が上昇する、初級にして汎用性の高い攻撃魔法。こんな状況でも威力を調節できる便利な魔法である。

「娘の水浴びを覗き見する父親がいるかーっ!」
後頭部に魔法を受け、吹っ飛ばされるバリオスを見ながらクレイは――ああ、また茶碗が割れてしまいましたねぇ――などと考えていた。

この程度で動じているようでは、このパーティとは付き合えない。
むしろ、クレイはこの馬鹿騒ぎを好ましくさえ思う。旅が始まった頃はとてもこんな雰囲気ではなかったからだ。
オークとトロルの軍勢に故郷の村を滅ぼされたスカインと、その幼馴染のエルディル。
その村と縁があって、たまに顔を出していたクレイとバリオスは急いで救援に向かったものの、間に合わなかった。
オークやトロル達、「悪の種族」と呼ばれるこれらの種族の蹂躙は徹底的で、次の朝には生き残っているものは一人もいなかった。
スカインとエルディルは山に逃げた羊を追って村を離れていたために難を逃れたのである。
燃え盛る村に飛び込もうとするエルディルをバリオスが引きとめ、そのままオーク達の支配域から脱出した。

彼等の悲しみと混乱が落ち着いた頃に、クレイはこれからどうするつもりかと尋ねる。
200歳に近いクレイは実は村の創設者の一人であり、村長の家系を何代にも渡り見守ってきたのである。
その生き残りがスカイン一人になった以上、彼の行く末を見守るつもりであった。
クレイの問いに対しスカインは即答する。悪の種族の支配に抗い、戦い続ける戦士達【カザンの戦士】になる、と。
エルディルは戸惑いながらも、スカインと一緒に行くと言った。

それから2年経った今、彼等はようやく笑顔を取り戻しつつあった。
憎しみと悲しみ以外の感情をほとんど見せなかったあの頃に比べれば、ずっと良い。
そんな事を思いながら、クレイは彼等を見守っていた。




「まったく…何であたしがこんな恰好を…」
ぶつぶつと文句を言いながら歩くエルディルの機嫌は極めて悪い。
それもそのはず、一張羅のローブがくだらない理由で使い物にならなくなってしまったのだ。
しかも悪い事に、直前に立ち寄った町は魔術師ギルドが存在しなかった為、予備のローブを調達できなかったのである。
結果、エルディルはスカインから奪い取った服を着て歩く羽目になったのであった。

青く染めてある男物の麻チュニックに膝の上あたりまでしかない黒革製の半ズボン。腰紐をぎゅっと縛って何とかずり落ちないようにしている。
とんがり帽子が余りにも服装と合わない為、チュニックと同じ色のバンダナで銀色の髪の毛を止めていた。
いつもの魔法使い然としたローブ姿とは一風変わった服装に、当のエルディルは中々慣れない様子でそわそわしながら歩いている。
慣れないのはいつもの服装と違うことだけが原因ではなかった。

それもそのはず、スカインは17歳にもなる逞しい青年であり、身長も170cmを超えている。
対するエルディルは13歳。身長は150cmに達するかどうかと言った所であった。これで服のサイズが合うはずがない。
かと言って、クレイの服はローブであるため裾を折って大きさを調節することさえ出来ない。バリオスに至っては論外である。
辛うじてエルディルが着ることが出来るのはスカインの服だけであった。

「うう…ぶかぶか…それに、スースーしてるよう…」
情けない声で抗議するように呟くエルディルに、付き添うように後ろを歩いていたスカインが軽口を叩く。
「でも、よく似合ってるぜ?いつものエルディルとは違って新鮮だな。」
「そ、そうかな?」
エルディルは少し赤面してスカインの顔を見上げた。
「ああ、そうやっているとまるで男の子みたいぐぶぁっ!」
ガンッ!と音がしてスカインの言葉は途中から不明瞭になった。
足に杖の一撃を叩き込まれたスカインがびっこを引くように慌てて付いていく。

プンスカと怒りながら歩を進めるエルディルの前で、よせば良いのにバリオスが更に追い討ちをかけた。
「しかしなんじゃのう。もう少ししたら、今よりもっと似合うようになるじゃろうの。」
ジロリとエルディルが懐疑の目を向ける。
エルディルに背中を見せて前を歩いているバリオスはエルディルの視線には気づかずに陽気に喋っていた。
「ぶかぶかしてるのも今のうち、もう2,3年もすりゃ少なくとも胸はパツンパツンで仕方なくなるのふっ!」
モヒカン頭にエルディルの杖をめり込ませてバリオスも撃沈された。

エルディルはアホな事しか言わない二人に青筋をピクピクさせながら、このパーティの唯一の常識人とも言えるクレイの隣を歩く。
「もう2,3日もすればザイエルの町に着きますから、それまでの辛抱ですよ。」
「はあ…、あと2,3日もこの恰好なのかぁ…。」
げんなりと言った感じでエルディルががっくりと項垂れた。


数時間も歩いたろうか?エルディルが明るい声で言う。
「ね、あれ、行商人の馬車じゃないかな?」
その指差す先、200メートルほど離れたところに、確かに馬車のようなものが停止しているのが見えた。
積荷にローブか女性用の服があったら譲ってもらえないかと期待してエルディルが元気を取り戻す。
しかし、その元気は長く持たない。代わりに緊迫した雰囲気があたりには漂っていた。
馬車は路肩に打ち捨てられていたのだ。

辺りの様子から何者かに襲われて戦闘状態になった事が見て取れる。
「オークの仕業ですね…こんな街道まで出てくるとは、よほど好戦的な部族なのでしょうか…」
クレイが馬車に刺さっている矢を見ながら冷静に分析する。
醜悪な豚の頭を持ったオーク族。この野蛮な種族は荒野や岩山を棲家とするのが常であり、街道まで現れることは頻繁にあることではない。

大陸の北に位置するカザン市の周囲はオークの女王【レロトラー】の支配下にあり、その近辺では人間がまともに生活することは難しい。
しかし辺境まで来るとレロトラーの支配力も弱まるためにオーク達の統率が効かない反面、人間達の反撃も激しくなってくる。
特にここのように辺境都市を結ぶ街道で人間を襲うと人間の手痛い反撃を受けて、最悪の場合この土地を追われることさえある。
更に森はエルフの領域でもある。その危険を冒してもなお街道で人間を襲うと言う事は、大勢の人間やエルフを相手にできるほどの大規模な集落がこの付近にあるということだろうか?

そんな事を考えながらクレイは馬車の様子を調べていた。中の様子を一目見てクレイは素早く言った。
「スカイン、エルディルと周囲を警戒してもらえますか?」
スカインはその言葉にすぐにピンと来る。
クレイはスカインをリーダーとして扱っており、緊急事態以外にこのような指示を出すことは滅多に無い。つまり、この指示には意図があると言う事だ。
「エルディル、行こう。」
「うん。」

2年間の旅における経験でスカインにも察しは着いていた。
馬車の周囲の森を警戒しながら歩き、チラと馬車の方に目をやる。
予想は当たっており、クレイは馬車から下ろした死体に魔法で発火しているところだった。
遠目だが、死体は全裸の女性であることが見て取れる。恐らくオークに陵辱され、そのまま力尽きたのであろう。
その惨状をエルディルの目に触れないように配慮した指示だった。


しかしその意図とは別に、エルディルは森の奥から何者かの気配を感じ取った。
素早く魔法詠唱すると杖の先端に魔力が宿る。その杖に額をコツンと当てて、エルディルは何かを読み取ろうとしているようだった。
【ミスティック・ヴィジョン】、通称「千里眼」とも呼ばれる探知魔法である。
「関係要素が少なすぎて良く見えないけど…誰か襲われてるみたい。」
スカインがクレイとバリオスを呼び、そちらの方へと近づいて行く。
クレイは心の隅に何か引っかかる物を感じつつも、かと言って襲われている者を放って行くわけにもいかず、エルディルの示す方角へ向かった。

地面は傾斜しており、ところどころ岩が剥き出した山中の森林を登るような様子になる。
木が少なくなってきた頃、広場のように不自然に開けた場所が見えた。広場の中央には巨木が立っており、それを取り巻くように地面が踏み均されている。
「スカイン、あそこ!」
エルディルが指差したのは広場の向こう側。後ろ手に縛られた男が足を引き摺っている。
男の服装から商人であることが見て取れ、あの馬車の持ち主の一人であろう事が想像できた。その口には猿轡を噛まされ、目は恐怖に血走っている。
男の後ろには4匹のオークが剣を持って追い立てている。ブヒャブヒャと下品な笑い声を上げながら逃げる男を剣でチクチクといたぶる。

スカインはひゅうっと息を大きく吸い、剣をギリッと握り締めた。戦闘開始する時の彼の癖である。
「スカイン、待ってください!」
クレイはもう少し様子を見るべきだと思い止めようとしたが、スカインの剣が太陽の光を反射し、それが逃げる男の目に映る。
男は血走った目でスカイン達を見つけると、頭をぶんぶんさせながら猿轡を噛まされたままの口で何かを叫ぼうとしていた。
オーク達も当然それに反応する。
「くっ…仕方ありません、一気に片付けましょう!」
スカインとバリオスが先に森から走り出す。その剣と斧の射程に入らないようにクレイとエルディルが追った。
その時、男の猿轡が頭を必死に振っていた為にバラリと外れた。
「こ、来ないでくれえ!罠だっ!」

同時にドンッと音がして男の喉に矢が突き立った。
「!」
矢の刺さった向きから察するに射手はスカインの右斜め後ろ。すばやくそちらに向き直る。
同時にエルディルの泣きそうな声が聞こえた。
「す…スカイン…」
スカインが振り返った先には10匹以上のオークの群れ。その全てが弓に矢をつがえ引き絞った状態で狙いを二人の魔術師に定めていた。
更にスカインが最初に向かって行った先、スカインの背後からも10匹以上のオークが、いつでもスカイン達に向かって矢を放てる状態で姿を現した。

クレイはギリ、と歯噛みする。
さっき、もう少し早くスカインを止めることができれば。しかし、その考えも甘かったと思い直す。違和感はもっと前に感じていたのだ。
死体の血の乾き方からして少なくとも半日以上は経っていた。
なのに、その馬車の生き残りがちょうど自分達が通りかかったタイミングで逃げ回っているなど、時間的に考えて辻褄が合わない。
何も知らぬ冒険者達が馬車に近づくのを見計らい、森の奥に誘い込む目的で男はわざと逃がされたと考えるのが妥当だろう。
だとしたら、馬車に近づいた時点でオークの監視下にあったと言う事になる。さっきスカインを止めることが出来たところで、何が違っただろうか?

オーク達が弓矢を油断無く構えながら包囲を狭めてきた。
スカインの脳裏に先ほどチラリと見た女性の死体が浮かぶ。
エルディルが同じ運命を辿るのだけは何があっても避けなければいけない。その想いだけが頭の中に広がる。
自分の命などそれに比べればどれほどのものか。
スカインは剣を握り締め、息を大きく吸い込む。その戦闘を始める際の癖を素早く見咎めたクレイが厳しく叱責する。
「スカイン!やめなさい!」
「そんなこと言っても!」

「私に考えがあります。…エルディル、『貴方は男の子です。』いいですね?それだけで貴方は我々と同じ扱いで済みます。決して目立った事をしないように。」
「あ、そっか…。うん、わかったよ。」
自分が男の子にしか見えない服装をしていることを思い出して、エルディルが納得する。
「そしてバリオス、判っていますね?」
「うむ。わしの出番のようじゃな。目隠しをされなければやり易いんじゃがのう。」
バリオスにもクレイの考えは判ったらしく、その場に斧を放り出した。
それに習うように、クレイとエルディルも目の前に杖を放り出す。
最後に、躊躇いながらスカインも剣を投げ捨てた。





第2話.鉱山で強制労働。エルディルがオークの機嫌を損ねてしまうこと。

「それにしても、たまたまとは言え俺の服着ててラッキーだったよな…。」
軽口とも取れない口調でスカインが囁く。
先ほどまでのエルディルであったら、間違いなくその言葉を挑発と受け取り、いつものように反撃をしていたところだろう。
しかし、エルディルは緊張した様子で俯いたまま頷いただけだった。

「そのまま貴方は男の子だと言う事で通すのが懸命ですね。」
「う、うん…。」
エルディルは小さな声で返事をしてスカインの服、脇腹のあたりをぎゅっと握った。肩が微かに震えている。
生まれ故郷をなくしてどうすれば良いか判らなかった時の感覚が思い出された。
あの頃、不安に押しつぶされそうな時にはスカインの服にしがみ付いたものだ。そして、いつもその不安をやわらげてくれたのは――

エルディルの頭にスカインの左手がフワリと乗せられた。
ずっと兄代わりだった少年の暖かい手で頭を撫でられると、エルディルの不安は和らいだ。それは今も変わらない。
エルディルはスカインの手に応えるように、身を寄せるように、更に強く服を掴んでいた。

スカインとバリオスの右手と首は木製の、しかし頑丈な枷でガッチリと固定されている。
自由になるのは左手一本のみ。必要以上に行動の自由を奪わず、同時に戦闘能力を確実に奪うと言う意図の下に架せられた枷であった。

クレイとエルディルは魔法を封じるための鉄製の首輪をかけられている。
この首輪は魔法使いの戦闘能力を封じる目的であり、魔法を詠唱しようとすると極度の頭痛を引き起こすような魔法がかけられていた。
エルディルが解錠魔法【ノック・ノック】を試したが、この頭痛はとても耐えられるようなものではなく、恐らくは強引に魔法詠唱を行うと発狂するか廃人になるであろうダメージを与えてきた。
魔法ではなくスキルである為に詠唱を必要としない「不可視の鎧」は使用可能だが、防御力を僅かに上昇させる程度では戦力と呼べるほどの効果は期待できない。

4人は戦闘手段を奪われており、代わりに採掘用のハンマーを与えられていた。
そのハンマーは武器として使うことも可能だろうが、それを防ぐために戦士達の右腕は封じられ、両手が自由な魔法使い達はハンマーを武器として扱う技術を持っていない。
このハンマーは坑道を掘るためだけに使う事を許されていた。
同じような境遇の人間が何人いるのだろうか?松明に照らされた坑道の奥からはハンマーを岩に叩きつける音、そしてオークの怒号のような声が響いてくる。


キン、キン、と薄暗い坑道に音が響く。
「この辺はどうだい?」
スカインが岩盤にハンマーを打ちつけながら囁いた。
「ふーむ。場所的には近いんじゃがのう。」
生まれついての鍛冶屋であり鉱夫でもあるドワーフ族は、先天的に非常に優れた方向感覚や距離感覚を持つ。
特にこのような洞窟や坑道など地下世界においてその能力は最大限に発揮され、自分がどのくらいの深さでどの方向に何メートル進んだのか、完璧に把握できるらしい。

バリオスはクレイの指示通り、鉱山に連れてこられた時に確認した岩山の形状を正確に記憶していた。
最初は鉱山の出口までの脱出経路を把握しオークの隙を突いて脱出する予定だった。
が、バリオスは脳内にマッピングされた岩山の表面と坑道の構造を照らし合わせ、場所によっては地表に極めて近いことを看破したのであった。
そして真面目に坑道を掘るふりをしつつ、もっとも地表に近く破壊するのに適した壁を探していた。

この鉱山は鉄鉱石を産出していたようだが、最近は鉄鉱石の鉱脈が尽きてしまい新たな鉱脈を掘り当てるための作業を強制されていた。
しかし、それは幸いとも言える。
これが鉄鉱石の鉱脈が発見された状態であったら、全員が鉱脈の場所に集められ作業させられるからだ。
今はどこで鉄鉱石が見つかるか判らないため、鉱脈を探すふりをして坑道のあちこちを探索する余地があった。

「エルディル、疲れないか?脱出の為に体力を温存しとくんだぞ?」
スカインが声をかけるのにエルディルは汗を拭きながら答える。
「うん…サボりながらやってるから疲れは無いけど、この暑さは何とかならないかなあ…」
鉱山のどこかに溶鉱炉があるのだろう。熱気が空気を伝わっており、息苦しさに拍車をかけていた。

「む、ここは良さそうだの。」
バリオスの声に全員の目が壁に集まる。その壁は他の場所に比べて石がごろごろと転がっていた。
「これはの、ここで何度も小規模な落盤が起きてると言う証なんじゃ。」
バリオスが転がっている石を確認しながら言う。
「なるほど。地上に近い場所で、かつ落盤が起きやすいと言うことは、つまりここの地盤が崩れやすいと言うことですね。」
クレイの言葉にバリオスが頷き、スカインとエルディルが安堵の息を漏らした。


バリオスが少し離れた所から指示をする。
「そう。そこの隙間が良さそうじゃな。まあ大丈夫とは思うが、確実に穴を開けたいからの。」
エルディルが壁が崩れて2メートル程の小山状に積もった石によじ登り、崩れた部分にジェムを設置していた。
それを見ながらクレイが相槌を打つ。
「ええ。爆発音ですぐにオークがやってきます。穴が小さすぎたりしても掘っている時間は無いでしょうから。」

「おい、まずいぞ。見張りが来やがった。」
スカインが小声で囁き、バリオスとクレイはさっとハンマーを持ち作業している風を装った。
慌てて石の小山を降りるエルディル。その足が石のひとつに取られる。
「うわっ!」
「エルディル!」
エルディルの声にスカインが駆け寄る。
小山から滑り落ち、支柱にぶつかって止まるような形になったエルディルが、てへへ、と笑った。

「ダイジョブ、ダイジョブ。ちょっと滑っただけだよ。」
そう言って身体を起こすと、ぶつかった柱がギギッ、と軋んだ。
エルディルが何の音かと見上げるのに合わせて柱はバキリと音を立て潰れるように砕ける。同時にそれに支えられていた岩盤が崩れ落ちてくる。
「え…」
「エルディル!伏せろ!」
ゴゴッと重い音が響き、反応できないエルディルの頭上に大量の岩石が落ちてくる。
飛び込んだスカインの身体がエルディルを庇うように覆いかぶさるのと、どちらが速かっただろうか。




「ごめんね!ごめんね!スカイン!痛いでしょ!?」
牢獄の中、半泣きのエルディルが横たわるスカインに謝っていた。
落盤は思ったよりも規模が大きかったらしく通路の向こう側まで崩れ、スカイン以外にも何人か怪我人が出ているようだった。
混乱が収拾するまで作業は一時中断され、4人は牢獄に戻されていた。
が、エルディルを庇ったスカインは脚を岩盤で挟まれ、軽くないダメージを受けていた。
「くっ…気にするな。お前を庇うのは俺が趣味でやってる事だからな…!」
こんな状況でも軽口を叩くスカインだが、その表情は激痛の為に青ざめている。

「ふむ…折れてはいないようですが…ヒビが入っているのは間違いなさそうですね。せめて回復魔法が使えれば…」
しかし、オーク達に使い捨ての囚人を回復するような気遣いがあるはずも無く、増して詠唱妨害の首輪を外してもらえるはずも無い。
「強行軍になりますが、いけそうですか?」
クレイは脱出計画に支障がないかを尋ねる。
幸いなことに落盤は通路を塞いでしまうほどの規模ではなく、先ほどジェムを設置した箇所も埋まらずに済んでいた。

「ああ、いざとなったらバーサークで痛みは誤魔化せるさ。」
スカインはそう言って、今も謝り続けるエルディルの頭を自由な左手で撫でた。
エルディルは不意に頭を撫でられたのにビクンと驚いて、思わずバランスを崩してしまう。
ドサッと二人の身体が重なり、顔が近づく。
「わわっ、ごめんっ…」

慌てて頭を離すエルディル。その頭がスカインの手でグイと引き寄せられた。そのまま胸板に押し付けられる。
スカインはエルディルの頭を自分の胸に抱きしめ、そのまま撫でていた。
「…あ…スカイン…?」
突然の事にドキドキと心臓の高鳴りを感じながら、顔を赤くしたエルディルがおずおずとスカインの名を呼んだ。
バリオスがヒョウと口笛を吹いて、クレイはコホンと咳払いをして、それぞれ向こうを向く。
「こうしていた方が…痛くない…かな。」
スカインはボソリと囁くように言う。

「ん…じゃ、そうする…。」
エルディルもそのまま力を抜いてスカインの胸に頭を預ける。
それだけで不思議と落ち着いた気持ちになり、牢獄の外の喧騒がやたら遠くに聞こえるような気がした。
「なあエルディル、旅に出た頃のことを覚えてるか?」
スカインがポツポツと喋り出す。
「ん、大体覚えてるけど…あの頃はドタバタしてたし…その…」
エルディルが口篭るが、スカインにはその理由が判っている。
「怖かった…か?」
「うん…。少し、ね。」
それは、旅の最中に繰り広げられる戦いが怖かったと言う意味ではない。

旅を始めた頃のスカインは故郷の村を滅ぼされた事で憎悪の塊となっていた。戦闘後は既に死んだ相手を執拗に切り刻んでいた。
バリオスを師匠として戦士の修行を積みバーサークのスキルを身につけた結果だが、それはしばしば暴走する。
スカインは暴走するのが好きだった。憎悪を開放する事が故郷を失った記憶から逃れる唯一の「逃げ道」になっていた。
しかし歯止めの無いバーサークは駆け出しの戦士がしばしば陥るミスのひとつであり、どこかでその歯止めが掛からないと戦闘中に確実に命を落とす事になる。
最悪の場合、血に酔った余り正気を失って味方をも手にかけることさえある。
師匠であるバリオスは何とかそれを止めようと試みてはいたが、憎悪に囚われたスカインが狂戦士と化すのを止めることが出来ないでいた。

それを引き止めたのがエルディルだった。
ゲラゲラと笑いながらオークの屍を切り刻み続けるスカインの背中にしがみついて、泣きながら「もう、大丈夫だから、もう、怖くないから…」と訴える少女に、スカインは我に返る。
狂乱するスカインを間近で見ていたエルディルの方がはるかに怖かったであろう。
しかしエルディルはスカインの暴走の奥底にある恐怖の記憶を敏感に感じ取っていた。
スカインはエルディルの必死な声を通じて、自分を駆り立てていた衝動の正体が「恐怖」であった事に初めて気づいたのだった。

「お前がいてくれたから、俺は正気で…いや、人間でいられたんだ…。」
エルディルは黙ってスカインが優しく頭を撫でるのに任せる。
「だから、俺はお前を守る。俺が俺でいるためにも、お前は傷ついちゃいけないんだ。」
エルディルの頭の下でスカインの鼓動がトクン、トクン、と聞こえた。
「スカイン…」
顔を上げると、スカインがエルディルの顔を見つめていた。
こんな時どうすればいいのか最初から知っているように、二人の顔が近づく。バリオスの視線がチラリと覗く。
唇が、触れる――と思ったその時、鉄格子がガンガンと叩かれ静寂が破られた。




「ぶふっ!お前達、休憩、終わり!落盤、片付ける!」
オーク特有の原始的な言葉で命令が下った。
エルディルはそっとスカインの上から離れ、スカインの手を取って起きるのを手伝う。
「大丈夫?」
心配そうに言うエルディルにスカインは、ああ、と答えて脚を引き摺りながら牢獄の外に出た。
その脚をオークが蹴飛ばす。
「ぐあっ!」
「お前、キリキリ歩く!落盤、片付ける!」
激痛に倒れるスカインに追い討ちをかけようとするオークに、エルディルが思わず飛び出した。

「止めろよ!スカインは怪我しているんだ!見て判らないのか!」
エルディルは必死でスカインを庇おうとオークの前に立ち塞がる。
「いけません、エルディル!」
クレイがエルディルに厳しく制し、素早くバリオスがエルディルの更に前に出た。
今しもオークの鞭がエルディルに振り下ろされようとしているところだった為、それを庇ったバリオスの額から、つつっと血が一滴流れた。
「すまんですのう。この小僧には良く言って聞かせておきますでな。」

何とかエルディルを見逃してもらうしかない。誰もがそう思った。
「ぶふーっ…お前、エルディル、躾ける?」
「小僧の扱いは慣れているほどに。お任せ下され。」
オークを刺激しないように穏やかな口調で説得するバリオス。
その顔とバリオスの背中に守られたエルディルの顔を見比べるオーク。

オークはぽん、とバリオスの肩を叩いた。任せると言う意思表示だろうか?
一瞬気を緩めたバリオスの身体が、その肩を乱暴に突き飛ばされて横にドッと倒れこんだ。
「!」
バリオスの庇護をなくしたエルディルがそこにいる。
「おまえ、態度、悪い!目付き、気に入らない!俺様、躾する!」

エルディルの首輪がジャラリと引かれ、他の3人が行動を起こす間も無く鉄格子の外に引きずり出された。
スカイン達が追おうとするのを防ぐように牢獄は再び閉ざされる。
「やめろよ!離せよ!このおっ!」
首輪に必死に抵抗するエルディル。しかし、その態度こそがオークを刺激していた。
「ぶふっ!やっぱり、躾、必要!」

鉄格子の外は円形状の広間兼監視部屋になっている。
この広間の中心に居れば、ドーナツ型に配置された牢獄を移動することなく監視できるのである。
しかし、それ以外にこの形状は機能を持っているらしい。
広間の中央には、天井から鎖が何本か垂れていた。
オークがハンドルを操作すると、じゃらじゃらと音を立てて2本程の鎖が降りてくる。

「離せよっ!やめろっ!」
鎖の先端にはそれぞれ手械が取り付けられており、それが抵抗するエルディルの両手に接続された。
この広間は、周りの牢獄に捉われた囚人に対して「見せしめ」として拷問を与える場でもあったのだ。
不安気なエルディルの目が、スカインのそれと合う。

――俺が俺でいるためにも、お前は傷ついちゃいけないんだ――

つい先ほどのスカインの言葉が胸に突き刺さる。エルディルは肩を震わせながらも無理に笑顔を作った。
「あは…あたし…ボクは大丈夫だから…スカインは休んでてよ…。」
――大丈夫。鞭で打たれるくらいなら耐えてみせる。男の子のふりをして通してみせる――

エルディルはスカインに心配をかけまいと気丈に笑ってみせた。
「ボクの為にスカインばかり怪我してちゃ…不公平だし…ね。ほ、ほら、たまにはボクもスカインを庇ってみたいし、ち、丁度良い機会だよね…。」
精一杯に強がっているのだろう、その身体はカタカタと震えている。

「エルディル!くそおっ!」
何も出来ないスカインがどうしようもなく激昂するのを、クレイがなだめた。
「こうなってしまっては仕方ありません…。エルディルが女の子だと悟られないよう祈りましょう。」




ぱぁん、と乾いた音が響いてオークの振るう鞭がエルディルの背中で弾けた。
「くううっ!」
細い悲鳴を上げてしまいそうになるのを、必死に堪えるエルディル。
3匹のオークによって加えられる拷問は既に数分にも及び、エルディルの背中はところどころ服が裂け、鞭によるミミズ腫れが覗いていた。

――頑張ってくれ…耐えてくれ…エルディル!――
祈るような気持ちでスカインは鉄格子を握り締め、エルディルが耐えるのを見守る。他の2人も同じ気持ちだった。
「どうだ!痛いか!生意気な小僧!」
ぱぁん!と更に激しく鞭を入れられるエルディル。
「ふぁう!…う…悪かったよう…生意気言って、ごめんなさい…」
エルディルは何とかオークの怒りを解こうと謝る。悔しいとか、そんな事を考えていられる状況ではなかった。
鞭で打たれるたびに、喉の奥から男の子のものではない細い悲鳴が飛び出しそうになるのだ。
それをいつまで押さえ込めるか判らない。鞭で打たれすぎて意識が朦朧としたら、恐らくありのままに叫んでしまうだろう。

そうなる前に、とにかく終わらせなければ。エルディルはオークの怒りを納めることに専念していた。
オークはそんなエルディルの様子に概ね満足したらしい。
「ぶふっ!エルディル、生意気言ったら、躾する!忘れない!」
そう言って思い切り力を込め、最後の一撃といった風に鞭を振り下ろす!
バシィン!と容赦ない痛恨の一撃が加えられ、エルディルの意識に火花が散った。
「くぅっ!!…ぅ…ぁ…っ!」

スカイン達はぎゅっと鉄格子を握ったまま、祈った。
叫ばないでくれ。耐えてくれ。これを耐えれば、あとは脱出するだけなんだから――
その祈りが通じたのだろうか?エルディルは痛みの波をぐっと飲み込んで、その波が通りすぎる。
が、同時に緊張が解けた瞬間に失禁してしまった。
「はうう…」
湯気が立ち上り、黒皮の半ズボンの裾から熱い液体が流れ落ちる。
ここまで痛めつければそうそう生意気な態度には出るまいと、オークはその様子を満足そうに眺めていた。

オークの一匹がハンドルを操作するとエルディルを戒めている鎖がジャラジャラと降りて来て、エルディルの足が湿った地面についた。
「あは…ボク、お漏らししちゃったよ…恥ずかしいな…もう…」
安堵も手伝っているのだろうか、照れを隠すような事を言いながら手械を外されるのを待つエルディル。
オークは角度的にエルディルの身体が邪魔で、手械を外すのに手間取っている。
「ぶひ!エルディル、身体、邪魔!あっち向け!」
そう言ってエルディルの身体を乱暴に掴み、グイ、と向こう側を向かせた。

「ひゃんっ!」

エルディルの悲鳴に、その場の空気が凍りついた。
あるいは、失禁した直後で本当に意識が朦朧としていたのかも知れない。
それはエルディルにとっては全くの不意打ちであった。もちろんオークにもそんなつもりは無かった。
だからこそ、思いもかけずに膨らみかけた胸を鷲掴みにされた瞬間、反射的に叫んでしまったのだ。

「…あ。」

エルディルは致命的な失敗を犯してしまった事に気づいた。
3匹のオークは目をぱちくりとさせてエルディルを見る。
そのうちの一匹、エルディルの胸に触れたオークが自分の手に残る柔らかな感触と、たった今聞こえたエルディルの悲鳴とを反芻するように思案する。
そしてエルディルに顔を近づけて、クンクンと臭いを嗅いだ。
「な、なんだよう…」
慌てて男の子の口調に戻るエルディルだが、オークは確かめるように言った。
「エルディル、女の子?」





第3話.エルディルの性別がバレそうになって大ピンチ。

「そんなわけ無いだろ!エルディルは男だ!服装を見て判らないのか!」
たまらずにオークに答えたのはスカインだった。
それを完全に無視してオークはエルディルに問い詰める。
「エルディル、女の子?」
エルディルは震えながら頭をぶんぶん振る。
「ち、違う!ボクは男だっ!」
その頭からオークが乱暴にバンダナを抜き取る。パラリと銀色の髪が自由になり、肩まで落ちた。
そのエルディルの顔をまじまじと見るオークの目に好色そうな色が浮かんだ。
クレイは目を背けるように反対を向いた。バリオスも無念そうに顔を落とす。

「ぶひっ!エルディル、男の子!確かめる!」
ジャラリと音がして、再びエルディルの足が地面から離れる。
「やめろよ!ボクは男だってば!」
エルディルが必死に足をバタバタさせるが、背中に鞭が入れられる。
「ふあっ!」
一撃で大人しくなるエルディルにオークが厳しく言う。
「エルディル、身体検査!男の子なら、問題ない!違うか!?」
「ふええ…」

もはや泣き出す寸前のエルディルの背後、ナイフを取り出したオークがエルディルのチュニックをサクッと裂いた。
すぐさまナイフを下に移動させ、腰紐をブツリと切る。
「あっ…」
切れ目の入ったエルディルのチュニックがビビッと引き裂かれた。
同時にストンと半ズボンが落ちそうになり、エルディルは太ももをギュッと閉じることで何とかそれを防いだ。
チュニックの下は水色のタンクトップ。
ぶかぶかだったチュニックと違いピッチリとしたタンクトップは、エルディルの身体のラインを正確に浮かび上がらせている。
膨らみかけの胸が、どうしようもなくエルディルの性別を物語っていた。

「ぶひひっ!エルディル!これでも男の子か!?」
エルディルの前に立つオークがいやらしく笑いながらズボンを下ろし始める。
「ボクは男だっ!胸に、ちょっと脂肪が寄っちゃってるけど、男だっ!」
もはやエルディルの弁解は苦しいものでしかない。
それを楽しむようにオークはズボンを引っ張り、エルディルはそれをさせまいと必死に太ももでズボンを挟み込んで耐えた。

しかし、そんな抵抗をものともせずにオークはゆっくりとズボンを下ろしていく。
「ふええ…男だってば…男だってばぁ…」
泣きそうになるエルディルが助けを求めるようにスカインの方を見た。
「スカイン…どうしよう…このままじゃ、バレちゃうよう…」
その言葉だけでも充分にエルディルが女の子である事を物語っているが、追い詰められたエルディルはそんな事を気にする余裕も無く、スカインに助けを求めていた。

「エルディル!くそっ!どうすればっ!」
スカインは鉄格子をガンと叩き、しかしどうしようもなく唇を噛む。
「きゃうっ!」
エルディルの悲鳴が上がった。
スカインの目に、エルディル背後に立ったオークが両手でエルディルの小さな胸をタンクトップ越しにギュッと掴み上げる様子が映る。
「やめろっ!!エルディルに触るんじゃねえっ!!」
鉄格子をガシャガシャと揺さぶるようにスカインが激昂するが、オークはそのスカインに見せ付けるようにエルディルの膨らみかけの胸をキュッと押し潰し、ふに、ふに、と揉んで見せた。
「ふええっ」
「やめろ!手を離せえっ!」

更に叫ぶスカインに、オークが心底楽しげに言う。
「ぶひひっ!お前、言った。エルディル、男の子!なら、問題ない!」
言いながら、オークの両手の指がエルディルの小さな胸の先端をそれぞれ摘み上げる。
「ふあっ!」
エルディルがビクンと反応するのを見ながら、オークは更にその摘んだ乳首をキュウッと引っ張る。
「やっ!痛いっ!」
乳首を指で挟まれ、そのまま引っ張られる痛みにエルディルが身を捩じらせた。
その隙に、正面にいたオークがズボンをするりと脱がしてしまう。
「あっ…」

ストン、と落ちたズボンの下からタンクトップと同じ水色の下着が現れる。
「ぶふっ!エルディル、本当に、男の子?」
この期に及んでなお、オークはエルディルを精神的に追い詰めて喜んでいた。
「ふええっ…あたしは、男だってばぁ…ふええっ…」
エルディルは涙を流しながらも男の子であると主張する。もちろん下半身を隠す下着にはそれを証明する突起物は影も形も無い。

背後のオークがエルディルのタンクトップを下から捲り上げ始めた。
「やだあっ!やだようっ!」
頭をぶんぶん振るエルディルに構わず、タンクトップがするすると捲られていく。
「エルディル、男の子なら、恥ずかしくない!大丈夫!」
「あ…あたし、男の子だもん…恥ずかしくなんか…ないもん…くぅ…」
気丈に言うエルディルだが、その顔は発育途上の胸を晒される羞恥で真っ赤に火照り、涙が溢れそうになっている。
タンクトップはそのまま脱がされてしまい、両腕を戒めている鎖のところまで持ち上げられてしまった。

スカインですら直接見たことの無いエルディルの裸身。
水浴びしているところを覗いただけでは見て取れなかったが、それは意外なほどに発育が進んでいた。
エルディルの胸は明らかに膨らみかけており、胸から腰へと下るラインは女性らしい滑らかさを帯び始めている。
かと言って、大人の女性と言うにはあまりにも未熟すぎるその身体。
それは、「少女」から「女性」へと変化を遂げるほんの僅かな期間にしか見ることが出来ない、大人でも子供でもない不思議な肢体であった。
オークは容赦無くその未成熟な身体をもてあそび始める。

エルディルはタンクトップ越しでなく、直接胸を掴み上げられる感覚にビクンと反応した。
両手いっぱいにワシワシと揉みしだくにはあまりにも小さな胸の膨らみ。
その緩やかな丘をきゅうっと絞り上げるように捕らえ、その指先が滑るままに乳首をきゅむっと摘み上げる。
「ふやあっ!やめてよう…」
エルディルの訴えはもはやオークの興奮を止めることは出来ず、オークは興奮を隠すことも無く、ぶふーっ、ぶふーっ、と息を荒くしながら、エルディルの右の脇の下をくぐるようにその胸に顔を近づけた。
むちゅ、と音を立ててエルディルの胸に生暖かい不快な感触が感じられる。
「やっ!やだっ!吸っちゃ、やだあっ!」

エルディルの拒絶を他所にオークはその小さな胸にむしゃぶりついたまま離れない。
それどころか、ちゅうっ、ちゅうっ、と音を立てて力強く吸引する。
舌先で乳首を捕らえ、執拗に転がし、追い詰め、じゅり、じゅり、と舐めながら吸い続ける。
「はわ…ふああ…っ」
胸をしゃぶられる感触に耐えるように、ぶるぶると震えるエルディル。
ズボンを脱がせたオークも頭上でエルディルの胸が吸われているのを見て、自分も負けじとエルディルに顔を近づける。
その鼻先にあるのはエルディルの下着。水色に染められた小さな薄い布で、腰の左右の細い紐で留められている女性用のものであった。
「エルディル、男の子!確かめる!」
「やっ…」
エルディルが反応するよりも早く、オークはだらしなく口を開けてパンツ越しにエルディルの股間に吸い付く。
「ひゃううっ!いやあっ!」

エルディルが足をバタつかせるが、オークはいとも簡単に両手でそれを押さえ込んでしまい、逆に股を開かせるように足をぐいぐいと広げていく。
そうして無防備になってしまった股間にむしゃぶりつくように、オークの口がハムッと覆いかぶさる。
「やあ…さっき…お漏らししちゃったのに…汚いよお…」
そんなことは全く気にも留めず、夢中でオークは舌を伸ばしてパンツ越しにエルディルの股間を嘗め回す。
「ふやあっ!ふええんっ!汚いようっ!」
オークは一旦口を股間から離し、もう一度エルディルを精神的に虐める。
「ぶひひっ!男の子なら、おちんちん、あるはず!確かめる!」

そう言ってオークはエルディルの腰の左右の紐を摘んだ。
「ふええんっ!やだやだっ!うわああんっ!」
頭を振っていやいやをするエルディルに、オークは更に尋問する。
「正直に言う!エルディル、男の子!?」
残酷な質問が繰り返され、無駄と知りつつも、それでもエルディルは必死に答えていた。
「うわああんっ!あたし、男の子だってばっ…だから、やめてよう!」
エルディルが泣きじゃくりながら訴えるのを聞き、オークは満足げに笑った。
エルディルのパンツの紐を摘んだ両手が、ゆっくりと左右に引っ張られる。
しゅる、と微かに音を立てて紐が滑る。オークはわざと恐怖を煽るように、ゆっくりと紐を引いているようだった。

小さな布が、パサリと音を立てて――地面に落ちる――。


「ぶひっ!エルディル、おちんちん、ない!エルディル、これでも男の子!?」
オークが嬉しそうにエルディルの身体をスカインの方に見せ付ける。
「やめろ…やめてくれ…もう、やめてくれ…っ!」
見るに耐えず、スカインがオークに懇願の声を出してしまう。

いったいどうすれば良いのか?この悪夢からエルディルを助け出す方法は、どこにあるのか?
どこかで与えられる選択肢を間違えなければ、ギリギリのところでエルディルを救い出せるんじゃないのか?
そんな、非現実的な考えさえ頭をよぎる。
しかし選択肢などと言うものが存在するとしたら、もはやそれは選択済みであった。今更選択肢を変更することなど出来るわけもない。

遂に生まれたままの姿に剥かれてしまったエルディルは真っ赤になって涙をこぼしながら訴えていた。
「ふええっ…あたし、男の子だから…だから…もう、許して…」
いまだに男の子だと主張するエルディルにオークの興奮が高まってくる。
隠すものが全く無い、恥毛の一本さえ生えていないエルディルの股間に顔を近づける。
「エルディル、男の子!おちんちん隠してる!探さないと、だめ!」
そう言って、舌を伸ばす。

「そんなっ…そんなの…」
エルディルの反応を楽しみながら、オークの舌がピトッとエルディルの股間に触れた。
「エルディル、この中に、おちんちん、隠してる!」
「ふええんっ!隠してなんかいないようっ!ふええん!」
エルディルがもう何を言えば良いか判らずに頭をぶんぶんと振っていた。
その胸にむしゃぶりついていたオークが、ちゅぱっと音を立てて唇を離す。
「隠してないなら、エルディル、女の子!?嘘ついた!?嘘ついたら、許さない!」
エルディルに恐怖を与えようとするように、その小さな胸がぎゅうっと潰される。
「あうっ!」

にゅ、と柔らかい感触と共に、エルディルの割れ目に舌が押し入った。
「ひいんっ!」
オークは舌の先を硬くすぼめて目いっぱいに伸ばすようにして、エルディルの割れ目に沿ってツツッとほぐす様に上下に動かす。
秘裂のやや下側に、オークの舌がヌルリと埋没する箇所があった。
「ひゃあんっ!やあっ!そこはっ…!」
ぴちゃ、にちゃ、と卑猥な音を立ててオークが唾液をそこに塗りこむように舌を動かす。
「ひんっ…やだっ、やだぁ…っ!」
エルディルがモジモジと腰をくねる様に動かしてオークの舌から逃れようとするのを、両手で太ももをガシッと押さえ込んでしまう。
そのまま舌を硬く細くすぼめて、更にエルディルの奥深くに侵入しようとする。
「ふうっ…そんなとこ…舐めちゃ、やあ…」

にゅぽっと舌が引き抜かれる。
「ぶひっ!エルディル、男の子、ここに、おちんちん隠してるか?もっと調べる?」
続けて背後のオークが胸をぎゅうぎゅうと虐めながら脅すように言う。
「それとも、エルディル、女の子、嘘つき?嘘つきには、お仕置きする!」
「ふえええんっ」
どっちを答えても酷い目にあう。オーク達は残酷にエルディルを追い詰めて楽しんでいた。
答えられないエルディルに、待ちわびたオークが舌を伸ばして、再び割れ目の肉を押し分ける。
「ふああっ!」
そして、今度はツツッと肉を押し分けながら舌を上に動かし、プリッとした感触のモノを舌先で捕らえた。
「ひゃあんっ!」
エルディルが敏感に反応したのを見て、オークは更に舌先を小刻みにプルプルと動かしてエルディルの割れ目に隠された突起を嘗め回した。

エルディルの背中がビクンと跳ねる。エルディルが今までに一度も感じたことの無い感覚が背骨を突き抜けたような気がした。
その感覚は身体の奥底から弾け出したように、逆らいようも無くエルディルの全身を走り抜ける。
未知の感覚に、エルディルは恐怖を感じた。
「ふあっ…やだっ…なに…?」
その問いには答えずに、オークは再びニュムッとクリトリスを舌で包み込む。
「ふやあんっ!」
再びエルディルの身体に慣れようのない強烈な刺激が走り、腰がビクンと弾けた。
これを続けられてはいけない。何だか判らないが、これを続けられると自分が自分じゃなくなるような。そんな強迫観念がエルディルを駆り立てる。
それに追い討ちをかけるように、舌先がプリプリっとクリトリスを弾きまわすように愛撫した。
「ひんっ!」

目を背けるようにヒクン、と反応したエルディル。
生まれてから今まで感じたことの無い刺激と、それに対する自分の身体の反応にエルディルは突き上げてくるような底知れぬ恐怖を感じていた。
何とかそれを止めさせる為に、禁断の言葉を口にしてしまう。
「う…ふええ…。あたし、女の子です…女の子だから、もう、もうやめて…」
涙をポロポロと零しながら遂に認めてしまったエルディル。


スカインがガクッと力を失うように膝を着いた。
「…もう…やめてくれ…やめてくれ…たのむ…」
震えるように絞り出すスカインの言葉も虚しく、エルディルの胸がきゅうっと強く掴み上げられる。
「くうっ…!」
「エルディル、嘘つき!お仕置きする!」
オークが突然エルディルの胸から手を離し、その代わりに太ももの付け根の辺りをガシッと掴む。そのまま軽々と引き寄せ、腰を高い位置に持ち上げた。
ジャラリと鎖が音を立ててエルディルの身体の角度が傾く。
「あ…」
両手で吊るされたまま、お尻をオークに突き出すような姿勢になってしまい、エルディルが怯えたように後ろを向く。
その目にいきり勃ったオークの男根が映った。





第4話.エルディル受難、そして決意。

「うあ…やだあ…やだよお…ふええ…」
魔術師の例に漏れず知性の高いエルディルは、その経験は無くともオークが何をしようとしているのか理解できた。
理解できてしまうだけに恐怖はより大きくのしかかり、それに耐え切れないエルディルは魔術師でもなんでもないただの女の子のように泣きじゃくる。
「エルディル、ずっと騙してた。だから、お仕置き!」
そう言ってオークはエルディルの秘裂に両手の親指をあてがい、クイッと左右に開かせる。
「やあっ!…ごめんなさい…ぐすっ、嘘ついてごめんなさい…ひっく、ひっく、謝るから…だから、もう許…ひぃん!」

ぷにゅ、と突然の感触にエルディルの必死の哀願が妨げられた。
オークの男性器の先端が、両手の指で押し広げられたエルディルの秘裂に触っている。
粘膜への突然の接触ではあったが、先ほど正面にいたオークが唾液で充分に湿していたせいか、痛みと言うほどのものは無い。
「あ…」
エルディルは後背位のような姿勢で自分の秘密の部分に触れられた事に気づくが、反応を示す前にオークの方がアクションを起こす。
オークは強めにエルディルの身体を引き寄せる。
「ふわあっ!やあっ…い、たい…っ!」
エルディルの秘裂に触れているペニスの先端が、乱暴な力でエルディルの身体の中に侵入を試みていた。

体格の大きいオーク族のペニスは人間のそれよりも1.5倍ほどの大きさがある。
その亀頭部分が、エルディルの秘肉を押し分けて入り込もうとしている。
「くうっ…!」
羞恥や悔しさ、悲しさもあったが、秘裂を押し開こうと加えられる圧力に肉体が悲鳴を上げていた。
耐えるように仰け反ったエルディルの目から涙がこぼれる。

にゅぶ。と、ぬめるような感触と共に、オークの亀頭がエルディルに納まった。
オークは興奮に目を血走らせて、ぶふーっ、ぶふーっ、と息を荒くしたまま行為に集中している。
亀頭部分だけをエルディルの膣の入り口に納め、そのまま、ゆっくりと引き抜くような動きをする。
「あ…くぅ…」
エルディルの吐息と共に、亀頭がギリギリのところまで顔を出した。そこで再び、にゅぷ、と亀頭部分を埋め込む。

エルディルの処女膜は比較的閉塞型なのだろうか?そうでなくとも恐怖により萎縮していたであろう。
それ以上奥へは一歩たりとも進ませまいとするように、強固な壁に守られているような感触でオークの亀頭が押し返される。
オークはそれをほぐそうと試みるように、亀頭部分だけでにゅぷ、にゅぷ、と出し入れを繰り返していた。
「ふやあ…こんなの…いやあ…う…ひっく」
エルディルは身体をこわばらせてオークの侵入を許すまいとしていた。
しかし、そのエルディルの抵抗はオークの嗜虐的な興奮を昂ぶらせ、オークはエルディルの抵抗を力任せにぶち破りたいという衝動が突き上げてくるのを感じる。



エルディルのウェストを掴むオークの両手に更に力が加わった。
「うあ…」
もうだめだ。と、エルディルは観念した。観念した途端、今すぐにしなくちゃいけないことがあることに気が付く。
今じゃないと。恐らく一生のうちで、今じゃないと意味が無い。自分の想いを、ちゃんと伝えなきゃいけない。
エルディルは恐怖を振り払ってスカインの名を呼んだ。
「ね…スカイン…スカイン…?」
スカインはハッと目を上げる。
涙に濡れたエルディルの目が必死に恐怖を振り払うように、スカインに微笑みかけていた。

「…あたし…あたしね…スカインが大好き。ずっと、ずっと昔から、貴方だけが大好きだよ。」
何でこの気持ちをもっと早くに伝えられなかったのだろう。今更ながらエルディルは思う。
誰もが、時間はもっとゆっくりと流れるものだと思っていた。
とっくにお互いの気持ちは判っていた。その二人の想いが大きくなるまで育てる時間が、もっと先まで与えられているものだと信じていたのだ。
エルディルは何年もあると思っていたその時間が、あと数秒も残されていないことを悟っていた。
その数秒をせめて悔いの無いように、痛がったり泣き叫ぶだけではなく、本当の気持ちを伝えるために使いたい。
その想いが、エルディルに恐怖を乗り越えさせていた。

オークの剛直がメリッと音を立てて食い込む。
「くうっ!…あたしの”初めて”…スカインにあげたかったよ…ホントだよ?」
ミリミリと容赦なく襲いかかる痛みに耐えながら、涙を流しながら、エルディルは訴え続ける。
「はううっ!…出来れば…出来ればで良いんだけど…。あ、あたしのこと、嫌いにならないでくれたら…うれしいな…」
息も絶え絶えそこまで言うのが精一杯だった。それ以上は何も言えなかった。
彼女に残されていた時間が、たった今、尽きた――。

ブツリ、とエルディルの身体の奥で鈍い音が響いた。

「くうああぁぁああ――――――――――っっ!!」
エルディルの身体が激痛にビクッビクッと跳ねる。
「エルディル―――っっ!!」
スカインの叫びは届いただろうか?エルディルはガシャガシャと鎖を鳴らし、何とかその想像を超えた痛みから逃れようとする。
それを押さえ込むようにウェストをしっかり掴み、処女膜を突き破ったオークは更にぞぶり、と侵入を深めた。
「ふああああっ!!…痛いっ!痛いよう!」



頭をぶんぶんと振り涙を散らしながら痛みを訴えるエルディル。
その悲痛な声が、スカインの胸に突き刺さる。
それに耐え切れないようにスカインは膝を付いたまま鉄格子を掴み、うなだれる。
泣きそうな、掠れそうな声で、ちくしょう、ちくしょう、と言っているようだった。

エルディルのの膣は激痛で痙攣を繰り返し、それがオークのペニスをギュウギュウと痛いほどに締め付ける。
「ぶふっ!エルディル、一生懸命、締め付ける。気持ちイイ!」
言いながらオークはエルディルの腰を掴んだまま、自分の腰をぐっと引く。
膣の中でペニスが激しくスライドし、オークのカリが処女膜が破れたばかりの傷口をゾリゾリッと擦りあげた。
「うああっ!いたいぃ…っ!」
エルディルが痛みを訴えながらヒクン、ヒクン、と痙攣するのにも構わず、オークは再びエルディルの腰を乱暴に引き寄せた。

「くはぅっ…っ!!」
処女膜の痛みがじんじんと続いているまま再び襲った挿入の痛みに、エルディルの神経に火花が散るようなショックが走る。
戦闘で大ダメージを受けたときのようにに目の奥がジンジンする。
そのままオークは興奮を叩きつけるように、乱暴に腰を引き、打ちつけ、弾けそうな欲望を隠そうともしないままにピストン運動を繰り返す。
ガクンガクンと揺すられる度にエルディルの抵抗は段々力を失い、その体力が否応無く削り取られて行くのが誰の目にも判る。
しかしオークは自らの欲望を満足させることに夢中になっていた。

「ふああ…あ…痛い…痛いよう…くうぅ…」
最初の身体を引き裂かれ穴を穿たれるような激痛の波こそは収まったが、傷口を擦られるような鈍痛はなおもエルディルを苛んでいる。
その目は半ば朦朧としており、もはや抵抗する気力さえも奪われていた。
力なく吊るされるままのエルディルを、オークは激しく貪るようにペニスで突き上げていた。その腰を振る速度が快感に駆り立てられる様に次第に速くなっていく。

ぶふ、ぶふ、ぶふ、とオークの鼻息が荒くなり、快感の頂点に向かって突き進む。
それはエルディルの膣を穿つペニスの動きになって現れ、その度にペニスの先端がエルディルの膣の奥をゴリゴリと責め立てる。
「ふあっ、ひぃん、ひぃん、痛い、痛い、ひぃん!」
既に抵抗する力を失ったエルディルが、膣の奥を乱暴に掻き回される苦痛に再び声を上げる。
「ぶひっ!エルディル、まだ元気!」
オークは勝手なことを言って更に激しくペニスを打ち付けた。
「ふああんっ!」

そのオークの動きが頂点に達する。
「ぶひっ!出る!出るよ!」
「や…」
エルディルが一瞬反応しようとしたが、それよりも早くオークがエルディルの身体を捕まえ、胸の辺りをぎゅうっと抱き締めるようにしがみ付いた。
「あっ!やだあっ!」
膣内に射精されるのを身体を捩って逃れようとしていたエルディルだったが、それを行う前から封じられてしまう。
そのままオークはぶるぶるっと軽く痙攣し、溜め込んだ欲望を開放した。

エルディルの胎内でオークのペニスが跳ねるようにビクンと弾ける。それが合図だった。
びゅるんっ!びゅるんっ!と熱いモノがエルディルの胎内に迸る。
オークは射精の快感をより深く味わう。
ペニスをぶるんと震わせるたびにグイッと強く抱き締めた身体を腰に叩きつけるように引き寄せ、エルディルの膣をえぐる様に擦り上げる。
そうして、射精で敏感になった亀頭に更に強い刺激を求めていた。
その動きに合わせ、3回、4回、とエルディルの中にオークの精液が放たれる。
「あぁ…あぅ…」

エルディルはオーク族の習性を良く知っていた。
人間やエルフの女性を好み、捕らえた女性を陵辱し、その下劣な欲望を満足させる野蛮でケダモノのような種族。
女の子だとバレたら犯される。そんなことは判りきっていた。それがたった今、現実になってしまった事を実感するエルディル。
にゅずっと乱暴な感覚と共にペニスが引き抜かれた。
「くふうっ…」
再びズキンとエルディルの膣内が痛む。
膣内に吐き出されたオークの精液が、エルディルの処女膜であった傷口に沁みたのだった。

エルディルを宙に吊るしている鎖がジャラジャラと降ろされた。
手枷を外されるが、いまだに後を引く痛みに脚がガクガクして、とても逃げられるような状態ではない。
オークはエルディルの首輪の鎖を容赦なく引き寄せ、崩れそうになるエルディルを無理やり立たせる。
「あうっ…」
エルディルは首輪を引かれた事よりも、無理に歩かされたことで股間にズキンと痛みが走り、呻くような苦痛の声を上げてしまう。

「ぶひひっ!エルディル、処女、もらった!」
オークの誇らしげな言葉にエルディルは、処女を奪われてしまったと言う事実を実感してしまう。
オークに捕らえられた時点で、そして、最初に悲鳴を上げて女の子であるとバレた瞬間にこの運命は確定していた。
だから、スカインもバリオスも一生懸命エルディルを庇っていたのだ。
それをたった一度の油断で全て無駄にしてしまった。エルディルはそれが申し訳なくて、切ない。



「ひっく、スカイン…みんな…あたし、「女」になっちゃったよ…あは…まだまだ、子供のつもりだったんだけどね…。ぐすっ、ぐすっ」
スカイン達の精神的ダメージを気にしているのだろうか?泣きじゃくりながらも、気丈に平静を装うような言葉を紡ぎだすエルディル。
その股間から破瓜の血が、そしてオークの放った白濁液が、痛々しく太ももを伝う。

誰も声を出せない中、スカインが絞り出すように呟いた。
「エルディル…すまない…お前を、守れなかった…ごめんな…ごめんな…」
せめて、一瞬でも早くエルディルのボロボロにされた身体を抱きしめてやりたい。泣き疲れた頭を撫でてやりたい。
気休めでも良いから、もう大丈夫だと囁いて安心させてやりたい。
「おい!もう気が済んだろう!早くエルディルを戻せ!」

スカインが立場も忘れてオークに叫ぶ。
しかしオークはエルディルの首輪をジャラリと引き寄せ、まるで勝ち取った戦利品を見せ付けるように背後から抱きしめ、両手でその乳房をふにふにと揉んで見せる。
「だめ。エルディル、みんなで、可愛がる。もう、そこには戻らない!」
オークの言葉は予測可能なことであったが、改めて聞かされると耐えられないような過酷な現実がスカインの心に鋭く突き刺さる。

そのままオークはエルディルの首輪を引きよせた。
「エルディル、こっち、こい!」
「やだあっ!みんなの所にいたいようっ!」
エルディルが頭をふりふり首輪を引っ張る鎖を掴んで抵抗する。

「ぶふふっ!そんなにここが良いなら、夜は、ここで可愛がる!犯される姿、毎晩、仲間に見せる!」
「………っ!」
オークの残酷な言葉にエルディルは言葉を失い、顔をふるふるして拒絶する。
「でもエルディル、魔法使い!役目、ある。こっち、こい!」
再び容赦なく鎖を引くオークに逆らえず、エルディルは通路のほうへと引き立てられていく。

「止めろ!それだけやってもまだ足りないってのか!やめろ―――っ!!」
脚が動かないのを引きずって鉄格子を掴み、スカインが絶叫した。
オークはそれに好色そうな笑みを浮かべて答える。
「ダメ。エルディル、魔法使い!エルディル、ラ・フリンジャになる。だから、ダメ。」
弱りきったエルディルだったが、オークの言葉に反応して顔が更に青ざめた。
「やだ…そんなのやだぁ…」

「ラ…何だって?とにかくエルディルを離せ!」
【ラ・フリンジャ】と言う単語を聞いてクレイの顔もピクリと反応していた。彼とエルディルだけはその名前と意味を知っているかのようだった。
「ぶひっ!さあ、こい!」
鎖がジャラリと冷たく響き、腰が力なくガクガクと震えるエルディルを無理やりに連れ去ろうとする。
それを、最後の力で抵抗するようにエルディルは押し留まった。
スカインの顔を見つめ、必死に言葉を伝えようとする。

「ね、スカイン…あたし、信じてるから…くうっ!」
エルディルが更に強い力で首輪を引かれ、苦悶に声を漏らしながらも話しかける。
「クレイ…後は、発動するだけだから…みんなをお願い…ね?」
クレイはエルディルの意図がすぐに判る。
後は発動するだけ。それは落盤に仕掛けたヘル・ボム・バーストのジェムの事だろう。
確かに設置済みのジェムはいつでも発動可能な状態になっている。しかし、それが意味する事は――。
「そんな!貴方は…っ!」

それは壮絶な、そして悲痛な決意であったろう。エルディルは無理やり笑顔を作り、言った。
「だから…信じてるから…。あたし…ぜったい負けないから…頑張るから…。きゃんっ!」
鎖で乱暴に引き寄せられるエルディルにそれ以上喋る事は許されず、通路の暗がりへと連れて行かれる。
「エルディル―――――っっ!!!」
鉄格子を掴んだままスカインの絶叫が坑道に響き渡った。



続く




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