――暗闇の中に一人で沈んでいた。  
水とも泥とも違う感触の中――ただ独りで居た。  
全てが凍り付いてしまったようにも思えた。  
あの日――愛するあの人が殺されてしまってから――。  
神への怒りで狂いそうになったあの日から、望みは潰えた。  
そうだ――神など、居なくなってしまえば良い。  
…そう、思って反逆行為を重ねた。  
子供を犯し殺し、禁忌とされる同性愛にも溺れ。  
しかし何も変わらないままだ。  
あんなにも民を――自分を慕ってくれていた民を愛していたのに。  
悪魔憑き――そう言われても何も感じず殺し続けた。  
足元には血で出来た海。中から聞こえる人々の叫び、救いを求める声。  
他人の血に塗れた、自分の体。  
暗闇の中待ち続ける。  
あの人が――彼女がいつか生まれ変わる、その時を。  
再会を果たす、その瞬間を。  
 
命の生まれる音を聞いた時、わずかに彼は微笑んだ。  
――日下部、まろん。  
それが彼の愛した女性の今生の名。  
「見つけましたよ…ジャンヌ…ジャンヌ・ダルク…ようやく…」  
凍りついた時間が少しずつ、動き始める。  
数百年も待ち続けていた、恋人。  
彼は――ノイン・クロードは立ち上がった。  
「ジャンヌ――」  
名を呟く彼の瞳からは涙が溢れていた。  
微かに部屋に差し込んだ光が壁にかけられた逆さになった十字架を照らす。  
「今度は、神になど渡さない――」  
誰にともなく言うとノインは服を掴んだ。  
 
まだ幼い日下部まろんは一人きりの家の中、  
海外へ仕事に行ってしまった両親からの連絡を待っていた。  
いつか帰ってくる――そう信じてずっと待ち続けている。  
今日は雨が降っていた。  
親友の都と家の前で別れ、シャワーを軽く浴びるとテレビをつけた。  
(だれも…おうちにいない…)  
まだ小学生のまろんは不安でたまらなかった。  
今日は早めに寝ようとまろんはベッドへもぐりこんだ。  
(おとうさん…おかあさん…)  
涙目になりながら布団を握る。  
不安で押しつぶされそうになりながら――いつしか、まろんは眠りに落ちていった。  
 
優しい誰かの温もりでまろんは目を覚ました。  
目の前に知らない男の人が座っていた。  
「…?」  
??と言う顔でまろんが男の人を見る。  
まるでお伽話に出てくる格好の男性は微笑んだ。  
「こんにちは。日下部まろんさん」  
穏やかな――とても優しい声で呼ばれ、まろんもこんにちはと返した。  
「えっと…誰?」  
くすくすと笑って男の人はまろんへ挨拶をする。  
「私はノイン。ノイン・クロードと申します」  
「のいん?」  
ええ、と頷く。まろんはどうして家に居るの?と聞いた。  
「今ここはあなたの夢の中なんですよ。  
そして私は何でも出来ます――たとえば」  
ノインが指を弾くと空中からお菓子が現れた。  
「こんなことも。空を飛ぶこともできます」  
「す、すごい・・・!のいんってすごいね!」  
まろんががしっとノインの腕を掴む。  
今、ここは自分の夢の中…ならば――。  
「おそらをとんでみたい…」  
ノインは笑ってまろんを抱き上げた。  
「では外へ出ましょう」  
がら、と窓を開けてノインはたん、と地を蹴った。  
ふわっ…  
二人の体が浮き上がった。そのままぐんぐん上昇していく。  
「わぁっ…」  
ノインの服を掴みながらまろんが声をあげる。  
住んでいる街が遥か下に――遠くなっていく。  
雨上がりの街をキラキラと月が照らしている。  
「まろん、これは夢なんですよ…覚めれば、忘れるでしょう。  
手のひらで溶けていく雪のように――でも」  
ノインが喜ぶまろんの頬にキスをする。  
「いつか、あなたに会いに行きますよ」  
まろんは自分の下に広がる世界に見惚れていた。  
いつか、両親とともに見たいと思いながら――まろんの意識は遠ざかっていった。  
 
不思議な夢をみていた気がする――と思った。  
まろんは起き上がり、のびをする。  
周りを見ても誰も居ない。窓には鍵がかかっている。  
いつもの日常を繰り返す内にまろんはすっかり夢の事を忘れた。  
 
怪盗ジャンヌとしての役目を果たし、全てが終わり――  
まろんはようやく地に足をつけて暮らす事が出来るようになった。  
常に自分を見守ってくれる名古屋稚空のおかげだろう。  
ノインは時には稚空と競うように、でも何処か寂しげな顔でまろんを見守り続けた。  
前世での想いは叶う事が無いと判っていてもまろんのジャンヌを護りたい、  
その気持ちだけは変わらないままだ。  
まろんもそんな気持ちを知ってか知らずかノインを良く家に招き入れる事が多かった。  
勿論ノインの気持ちも知っているが自分は自分で前世は前世とまろんは割り切っている。  
それが、逆にノインを苦しめているとも知らずに。  
 
まろんはお茶をいれながらノインに話し掛けた。  
「そろそろ稚空との結婚の話も出始めているの」  
その言葉に僅かにノインの――紫界堂聖の顔に動揺の色が浮かんだ。  
 
「そう、ですか…それはおめでとうございます」  
高校を卒業し、稚空は他の土地の大学へと行ってしまった。  
まろんはこの家で、この場所で待ち続けている。  
――恋人が帰ってくるのを。自分を迎えに来るその日まで。  
聖は胸が痛んだ。  
思いを告げ、きっぱりと断られたと言うのに――胸が痛い。  
まろんが聖の前に茶の入ったカップを置いた。  
白いその指に婚約指輪がキラリと光る。他の人間の物だと示すように。  
聖は思わずまろんの手を取った。  
思うよりも細い手首を握り、抱き寄せる。  
「きゃっ…」  
正面から抱き合うような形にまろんは動揺した。  
「な……?」  
何?と言いたげに聖の顔を見る。  
――だが見た聖の顔は見た事も無いような悲しい、痛々しい表情だった。  
 
その唇が震え、何かを伝えようとする。  
「……」  
――愛しています。  
その一言を告げたかった。小さい時からずっと見守ってきた。  
誰よりもまろんの事を知っているし、まろんの中のジャンヌだけではなく、  
まろん自身も愛している。  
だが、ここで伝えても以前と同じようにかわされるだけだ。  
それどころか結婚の話が持ち上がっている今、その行動はあまりに軽率だろう。  
彼女の掴み始めた幸せを自分の手で汚すのは許せなかった。  
まろんにも、雰囲気から聖が何を言いたいかが良く判った。  
そして以前のようにかわす事しか出来ないのも。  
すっとまろんの手首から、聖の手が離れた。  
「…すみません」  
それだけ言うと抱き寄せた腕もゆっくりと離す。  
――微かに香る、シトラス。  
これは自分へのものじゃない。  
 
聖は目を閉じた。  
(もう…会うのは、いけない…)  
二人の体が離れようとした、その瞬間――まろんが聖へと抱きついた。  
「ごめんね…」  
まろんの心もまた、痛かった。  
こうして誰かの心を傷つけても、稚空の事が好きだから。  
「でも、ノインの気持ちもわかるから――一度だけなら、いいよ」  
まろんが着ていた服のボタンを外し始める。  
「しかし…」  
ごくりと聖は息を飲んだ。こんな事をしていいのだろうか?  
だが、まろんは明らかに誘っている。  
「…ね。しよ…」  
まろんは耳元で囁いた。  
 
やけに喉が乾いてくる。  
先ほどまろんが茶をいれたにも関わらず――  
ズキ、と下半身が熱を持ってくるのを感じる。  
『…ね。しよ…』  
まろんの声が、甘く、聖を誘う。  
昼間から――誰も居ない家で、まろんは服を脱いだ。  
下着だけとなると躊躇う聖の股間を撫で始めた。  
妙に慣れた――男を知る、触り方。  
「っ…ぅ…」  
暫くぶりの他人の手にノインがひく、と震える。  
先程から熱く、服の下で窮屈そうにそそり立つそれを、  
長く思い続けた人が――まろんが触っている。  
どこか興奮したような――熱に浮かされたような顔で  
「あ…ノインの、勃ってる…よ…大きい…」  
「お止め下さいい。あなたには――名古屋くんが…」  
「ノインはずっと、私を好きだったんでしょう?  
前世のジャンヌも、今の私も――…好きだったんだよね。  
でも稚空がいるからノインと結ばれる事は出来ないけど…  
一度だけなら抱かれても…いいよ?」  
「…まろん…」  
一時は他に想い人が居ても構わないと思っていた。  
体さえ手に入れれば心も手に入れられると。  
しかし、これは――違う。何かが、違う。  
「抱いた後は――もう、ノインとは会わないから…」  
切なげにまろんは目を伏せた。  
 
前世からジャンヌを、まろんを見守り続けてきたノインを、  
まろんもきっと心の何処かで慕ってきたのだろう。  
稚空への恋心とは違う形の想いで。  
だからこそ家へと招いてくれていたに違いなかった。  
何処か、心が微妙に擦れ違っているような…そんな雰囲気の中、  
まろんが聖のを形を確かめるように撫でながら、先端を指で弄くる。  
ノインはまろんの手を取り、掴みあげた。  
「ノ…イン?」  
「まろん、愛しています」  
ノインは何かを決めたように言うとまろんの唇に自分の唇を重ねた。  
「ん…ふっ…」  
無遠慮に舌を入れ、まろんの口腔を舐め回すと、まろんの舌へと絡ませる。  
まろんは嫌がる素振りも見せず、うっとりとした顔でいる。  
「ん、はっ…ふっ…」  
ノインは掴んだ腕を放すと今度はまろんの手に自分の手を重ね、  
まろん自身の股間へと伸ばした。  
「んふぅっ!」  
まろんがビク、と驚いたような仕草をする。  
(や…恥ずかしい…)  
積極的に舌を絡ませ、口の端から涎を垂らしながらまろんは震えた。  
自分の指が――薄いパンティ越しにあそこに触れる。  
もう既に濡れて、ほんのりと染みが出来ていた。  
「ぷはっ…」  
ようやくノインは口を離すと、二人の間にキラキラと涎が糸をひいた。  
「はぁ、はっ、はっ…はぁ…」  
苦しそうにまろんが息をしている。興奮なのか、息苦しいからなのか  
耳まで赤くなっている。  
 
聖はまろんの手を使って彼女自身の秘裂をこすらせる。  
「ふ、う…ん…」  
声を押し殺しながら聖を見上げる目は  
もっとしてと言っているようにも見える。  
「――まろん」  
名前を呼び、重ねた手に力をこめる。  
彼女の中指を秘裂に合わせ、ゆっくりと指を埋めていく。  
「わかりますか?まろん…今中指の第一関節が入っていきますよ。  
もうぬるぬるですからね、スムーズですね」  
「あ、や、あああ…。あ、う…」  
(指が…あそこに指が入ってくる…!)  
自分の指が、他の人に操られて入ってくる――  
そう考えただけでじゅん、と体がうずく。  
聖はまろんの指をさらに深く埋め込ませると、抱えあげた。  
「あっ!?」  
何をするつもりか判らず戸惑うまろんに聖は微笑むと  
指を抜かないように命令した。  
 
大きな鏡の前でまろんを下ろすと鏡と向かい合わせになるように、  
鏡に良くうつるように後ろに座る。  
ちょこん、と座ったまろんの足を開かせると、  
すっかり濡れて染みが大きくなっているパンティに指をひっかける。  
「あっ…やっ…」  
上へと指を上げると、すっかりパンティが食いこむような形になった。  
まろんが指を入れたままの部分だけが妙に生々しく、隠している。  
「まろん、、指が埋まっているのが良く判るでしょう?  
こんな事してもらった事ありますか?」  
「やっ…ノイン…やめて、恥ずかしいからやめてっ…」  
首を振りながらまろんは言うが実際は指を抜こうともせず、  
聖の手をはたこうともしない。  
「おやおや。口と体は言っている事が随分と違うようですよ。ほら」  
笑い、聖はまろんの手に自分の手を再び重ねると激しく動かし始める。  
「ああ…」  
指が布越しに深く埋まるかと思うと一気にひきぬかれる。  
その度にくちゅ、くちゅといやらしい、耳を塞ぎたくなる音が響く。  
「あ、あ、あっ…」  
自分では指を入れた事が無いまろんは、恥ずかしくなった。  
布越しとは言え、伝わってくる自分の中の温もり、そして指に絡み付く襞。  
正面の鏡を見れば恍惚とした顔でなすがままになっている自分が居る。  
足をだらしなく開いている為、パンティに指が埋まっては出てくるのが見える。  
「や、いやっ…」  
透けて見える自分のあそこの形にまろんは恥ずかしくなって首を振る。  
聖はその反応を楽しむように動きを更に早めた。  
「あ、や、いや、や、や、やああああああっ…」  
ビクビクと震えながらまろんは鏡から視線を逸らせない。  
鏡の中の自分も、気持ち良さそうにしている。  
涎まで垂らして――あそこを、濡らして。  
 
「あ、あ、あっ…」  
指の動きにイキそうになりながらまろんが自分の手を必死に動かす。  
もう聖の手はただ重ねているだけで動かしてはいない。  
「は、あ、あ、いっちゃう…いっちゃうううううっ…」  
ビクンビクンとしながらまろんが自分を見る。  
物欲しそうにあそこをヒクつかせて、指を飲み込んでいる。  
「あ、あ、恥ずかしいっ…でも、ダメえっ!」  
更に指を動かそうとしたまろんの手を聖が止めた。  
「やぁっ…」  
非難するような視線を向けると意地悪そうに笑う。  
「いやなようなので。止めましたよ」  
「やぁっ…ノイン…」  
「おや、もっとして欲しかったのですか?」  
まろんの手をどけるとあそこの形が見えるくらいに  
貼り付いているパンティをまた上へと引っ張る。  
「はぁっ…!」  
ズリ、ズリっとあそこがこすりあげられる。  
「いやといったりそうでなかったり…わがままですね、まろんは。  
どうして欲しいんですか…?」  
低く囁くとまろんが自分から腰を動かし始める。  
「あ、あ、ね、もっと…もっとしてっ…!」  
「何をもっとして欲しいんですか?」  
「あそこを…いじめてっ…!」  
泣きそうな声で叫ぶと、まろんは自分の中の波を感じた。  
もう、すぐに波にでもさらわれて――どうにかなってしまいそうな。  
がくがくと足が震える。  
聖はまろんのパンティを脱がすと、自分の髪を縛るリボンを外した。  
 
美しい、良く鍛えられた鉄のような髪がさらり、と流れる。  
紫界堂聖から本来の自分の姿へと戻ると、ノインはまろんの髪に唇を寄せる。  
今、この一時だけは全て自分だけのもの――  
「まろん――愛しています。ジャンヌではなく、あなたを」  
聞こえるか聞こえないかの声で呟き、そっと唇で髪の毛を愛撫する。  
「ふっ…」  
敏感になった体は、それだけで快楽を覚える。  
「ノ…イン…」  
まろんが名前を呼び、ノインへと手を伸ばす。  
顔は俯いたまま。  
(ずっとずっと感じてたの…私へのノインの痛みを、想いを。  
重くて、私には背負えないって知っていたから…  
稚空が居るから、想いには応えられないって知っていたから――)  
まろんの想いを感じたのか、ノインもその手に自分の手を重ねる。  
「まろん…」  
ノインも名前を呼び、まろんを見つめる。  
――これで最後。想いに応える代わりに、もう二度と会わない。  
(想いに応えるのは、本当の意味では出来ないけど――  
これ以上は、ノインを傷つけていくだけだから…)  
「…これを、最後にしよう?」  
強い決意が込められたまろんの手をしっかりと握ると、  
ノインは頷いた。  
 
鏡に映る二人の姿は、今だけのもの。  
切なさと、愛しさと、ほんの少しの「何か」を感じながら、まろんは鏡を見る。  
ノインが悲しそうな…寂しそうな顔で笑っていた。  
(鏡を見るのは怖かった…自分をそのまま映すから――  
でも、もうノインの想いから逃げちゃだめなんだ…)  
ノインがまろんの手をゆっくりと床に下ろす。  
「……」  
無言で全裸になったまろんのあそこを奥まで見えるように指で広げると、  
まろんに見るように促す。  
「いやっ、やめてノイン…恥ずかしいよぉ…」  
泣きそうな顔でまろんが首を振る。  
「まろん、見ないとあそこをいじめてあげませんよ?」  
「あ…やっ…」  
(稚空にすらこんなの…されてないのに…)  
「ほら、まろん?」  
ノインがあそこにあてた指で開いたり、閉じたりさせる。  
くちゅ、くちゅと言う音と共にノインの指に溢れ出てきた蜜が絡む。  
「やっ…やぁんっ」  
薄っすらと目を開けて鏡を見る。  
足を開き、あそこを広げられて――いやらしい顔をしてる自分が見える。  
「いやとか言いながら見ているのですね。  
まろんは淫乱な人だ。ここもこんなに音を立ててる。  
ほら、広げられたここが、ヒクヒクしているのが見えるでしょう?」  
「いやっ…ああ…」  
吐息を漏らし、まろんは首を振る。  
しかしノインの言葉通り広げられたあそこは奥まで見え、  
物欲しそうにヒクヒクと襞が蠢いている。  
溢れ出た蜜はまろんの太腿を、ノインの指を汚した。  
 
「ね、もう…早く…して…」  
「まだですよ」  
くすくすと笑い、まろんの手を取った。  
「まろん、両手で自分のあそこを広げて下さい。  
良く、見えるように」  
「できな…い…よっ」  
まだ恥ずかしがるまろんにノインが囁く。  
「先程私に迫った事の方が、恥ずべき事ではないのですか?」  
「!…そ、それは…」  
「それにまろん。恥ずかしがっている割には――行動が伴っていませんよ」  
「…いじわる…しないで…」  
「いじわるなんかしてませんよ。  
まろんがいつまでも恥ずかしがっているから、言ってるだけの事です」  
ノインが服を脱ぎ始める。  
「全て脱ぐまでに、自分のあそこを両手で広げていないと、入れませんよ?」  
「やぁっ…」  
(体が熱いのに…欲しいのに……そんなのっ…やっ…!)  
まろんがおずおずと自分のあそこに手を伸ばした。  
すっと近くに触れるだけでピク、と体が反応する。  
(こんな…こんな事…)  
はぁ、はぁと息を荒げ、熱に浮かされたように朦朧としてくる。  
自分の体ではないかのように熱いそこを両手で広げると、ノインを見る。  
ぬる、と蜜が指に絡んだ。  
 
「恥ずかしいのではなかったのですか?」  
くすくすと笑われ、目を閉じる。  
「…いじわるなのね…ノイン…」  
「いじわる?ふふ、あなたを愛しているからこそ――ですよ」  
服を脱いだノインが足を開き、自分であそこを広げるまろんの前に座る。  
「はっ…あ…」  
(全部、見られちゃうっ…)  
ノインがじっくりと観察するように眺めるとそれだけでまろんが震えた。  
とろとろと蜜は溢れ、太腿から床へと伝い落ちる。  
「ね、はや…く…」  
(もう…我慢できないの)  
恥じらいつつも言葉通りに行動するまろんへと手を伸ばす。  
「愛してますよ…心から」  
「……ノイン」  
決して愛している、とはまろんは言えなかった。  
恋人から婚約者へとなった人が居るから――。  
少し困ったようなまろんにノインはキスをし、すぐ離す。  
「あなたが、誰を愛しているか――それぐらいは、知っています。  
決してその心が私に向かない事も」  
「ノイン…私…」  
「あなたの事を前世から見ているのですよ、わたしは。  
ジャンヌの時も…まろんの時も、いつもわたしは見ていた。  
あなたが、私への愛の言葉を囁く日が来なくても…  
わたしは、あなたを――愛しています」  
まろんの髪を撫で、優しく微笑む。  
「ただ一度だけでも、あなたと一つになれるだけで私は良いのです」  
あそこを広げたままのまろんの手を取る。  
「…それだけで…良いのですよ」  
 
自分に言い聞かせるように呟くと、まろんの手にくちづけをする。  
――悪魔となった今でも、あなただけを愛しています。  
そう、届かない想いを込めて。  
「ノイン…」  
ゆっくりと、唇を離しまろんの開いたあそこへと自分のを宛がう。  
ぬるぬるとしている――これなら、楽に入るだろう。  
「今だけは、わたしだけのまろんで居てください。  
あなたの心を、わたしだけで占めていてください――」  
切なげに囁くと、まろんが返事をする前にぐっと腰を突き出す。  
「う、あっあ…」  
ぬぷっと中に入ってくるのが判る。  
「は、あっ…入ってくる…ノインの…入って…!」  
初めて稚空以外の人間のが入ってくるのを感じ、まろんは熱くなった。  
これは、裏切りだ。稚空への――自分への。  
そう思っていても、ノインを受け入れたかった。  
ただ、稚空と離れて寂しかったのを埋めたかっただけかもしれない。  
ただ、ノインを利用しているだけかもしれない――。  
いずれはっきりさせなければと思っていた。  
ノインがいつまでも過去の想いに捕らわれているならば終わらせなければいけない。  
抱かれる事が本当に必要かどうかも判らなかった。  
でも、ノインの待ち続けた想いだけを無視していくのはできなかった。  
自分だけが幸せになってしまってはジャンヌが生まれ変わるのを待った彼に申し訳無かった。  
想いに応えられない償いになるとは思わない。  
しかし今、言葉にならない何かが普段のまろんではしない事をさせている。  
「ノ…インッ…」  
自分の体に重なってきたノインの手を握る。  
「まろん…」  
少しためらいがちに握り返し、更にまろんへと体を寄せる。  
温かい、まろんの中が優しくノインを包み込む。  
「はっ、ああ、熱いっ…ノインの…熱いっ…」  
ノインは根元まで入れると一息つきまろんの顔を見た。  
 
はあはあと肩で息をし、惚けたような顔でノインを見つめている。  
前世の時と全く変わらない、澄んだ眼差しで。  
(――ああ…やはり、あなたはジャンヌでもあるのですね…)  
数百の月日を経ても変わらない眼差しにノインは胸が熱くなる。  
まろんは自分の中で脈打つノインのモノを感じる。  
十分に濡れているので痛くは無いけれど――心が痛い。  
愛してくれている稚空を、婚約者を裏切っている事実。  
稚空と変わらない、いや、それ以上の想いで愛してくれているノインを、  
ただ傷つける事しか出来ない自分。  
二人を同じように愛するなんて器用な事はできない。  
「…まろん?」  
まろんのそんな心情に気付いたのか、怪訝そうな顔でノインが見ている。  
慌てて笑みを返すとノインと繋いだ手に力をこめる。  
「…いいよ、動いて…今だけは、ノインだけの私だから――」  
「ありがとう、まろん」  
頷き、ノインはゆっくりと動かし始める。  
「う、あ、あんっ…もっと激しくても、だいじょう、ぶっ…ああんっ」  
「ふふ、まろんのが良く締めつけてくれますよ」  
じゅぶ、じゅぶとノインが動く度に音がする。  
溢れかえった蜜が絡み、潤滑油の役目となって動きをスムーズにしてくれる。  
「は、あっ…あ、あ、ああ、あっ」  
「っまろんっ…!」  
じゅぶ、じゅぶ、じゅぶっ…  
まろんの中を掻き回し、抜き、一気に根元まで入れながら乳房を揉む。  
いつの間に、こんなに『女』へと成長したのだろう。  
ノインの中のまろんは子供の時と何ら変わり無いのに。  
手のひらからもはみ出すほど大きい乳房を手でこね、形を変え楽しむ。  
 
「は、あ、あっ…!」  
まろんの手が離れ、ノインの背中へとまわされた。  
ノインは開いた手でまろんのクリトリスを探る。  
「ひゃっ…う!」  
ぶるッとまろんが震え、目を見開く。  
もう既に固く勃起したクリトリスをつまみ、痛くならない程度に転がす。  
「は、あ、あっあっつあっ!」  
ピクン、ピクンと震える体を抱き締めて更にピストンを早める。  
きゅううっとまろんの襞が締まり、ノインへと絡みつく。  
「うっ…」  
まろんの締め付けに顔をしかめながら耐える。  
ノインの背中に爪を立て、まろんが甘い声を漏らす。  
「あ、あんっ…ダメ、もう、だめぇっ…くるッ…きちゃうぅっ!」  
ビクビクと体を震わせ迫り来る何かにまろんも耐える。  
「ノイン、もうだめっ…もう、だめぇぇっ!イッちゃう!イッちゃうっ…!」  
「まろん、私ももうっ…」  
「あ、なら、いっしょ…に、いっしょに!」  
ノインはまろんの体を強く抱き締め、頷く。  
「あ、あ、あ、あはっ、あ、は、あ、あああああああああ、っ…っ!」  
声にならない声をあげ、ノインにしがみつく。  
体が浮いてどこかへ飛ばされそうになる――そんな快楽の中、ノインへと縋る。  
「ノイン、ノイン、ノインッ…も、だめ、いくッ…いくううううううううううっ!」  
「まろんっ…愛してますっ…」  
ぎゅうぅっとしがみつきながら――まろんは絶頂を迎えた。  
更に締めつけられ、ノインも我慢できずにまろんの中へと放つ。  
どく、どくと中に出されるのを感じ、まろんははぁぁあ、と息を吐いた。  
 
暫く重なったまま、二人は動かなかった。  
はあ、は、はあと呼吸だけが部屋に響く。  
「…まろん」  
最初に口を開いたのはノインだった。  
自分の腕の中でまろんが泣いているのに気付いた。  
ぽろぽろと、溢れ出た雫がまろんの頬を濡らしている。  
ノインに声をかけられ、まろんが自分の手で顔を覆った。  
「…なさい…ごめんなさいっ…ノイン…」  
「なぜ、あなたが謝るのです?わたしが――謝るべきでは…」  
今更中に出した事に気付きノインが申し訳なさそうにする。  
まろんはただ首を振った。  
「ごめんなさいっ…ごめんなさい…」  
繰り返すその言葉にノインもどう声をかければ良いのか判らなかった。  
まろんから自分のモノを抜くと開いたまろんのあそこからどろっと精液が溢れかえる。  
床を汚したそれをノインは複雑な心境で見つめた。  
想いを遂げたはずなのに――何処か、心が寒かった。  
何が?何が違ったと言うのだろう。  
服を整えるとノインはマントを全裸のまろんにかける。  
ひっく、ひっくと泣いているまろんをマントでくるみ、抱き締める。  
「すみませんでした――あなたを、傷つけたくは無かったのに」  
その優しい言葉にまろんが首を振る。  
「ちがっ、うの。ノインは悪くないわ…応えられない私が…悪いの…」  
「でも、結果としては抱くことであなたが傷ついてしまった…」  
「ノインは、悪くないの――」  
まろんが泣きながら繰り返す。ごめんなさい、ノインは悪くない、と。  
ノインは溜息をつき窓を見た。  
もう既に夜の闇に閉ざされ、何も見ることが出来ない。  
まろんを抱え上げるとノインは窓を開けた。  
「ノイン?」  
驚くまろんに黙ったまま、ノインは地面を蹴った。  
 
ふわり、と二人の体が浮き上がる。  
風に乗り、ノインは上へと向かった。  
まろんも真剣なノインの表情に何も言えない。  
街が見下ろせるまで高く昇るとノインはまろんに話しかけた。  
「――昔も、こうしてあなたと空を飛んだことがあったんですよ。  
あなたはもう既に忘れているかもしれませんが。  
わたしは、あなたの幸せを、と考えてきました。  
怪盗ジャンヌとなったあなたと出会った時は自分しか見えていませんでしたが。  
今は、わたしよりもまろん…あなたの幸せを。  
――あなたにとっての幸せにわたしが邪魔ならば、あなたの元を去りましょう――」  
きらきらとした光を見つめノインがまろんに囁く。  
「――あなたの人生に、これから多くの幸せが、あるように」  
「ノイン…ごめんなさ…」  
まろんの言葉を唇で塞ぎ、ゆっくりと目を閉じる。  
「ん、ふっ…」  
ゆっくりと唇が離れ、ノインがまろんをもう一度抱き締めた。  
「…あなたが、愛しい人といつまでも在れるように。  
わたしは遠くから、見守っていますよ」  
「ノ…」  
何かを言いかけたまろんの額に手をかざし、術をかける。  
とろん、とした顔になったかと思うとまろんは気を失った。  
「さようなら、まろん」  
辛そうな笑顔で呟いた。  
 
 
まろんの記憶から抱いた事を消すとノインは手紙で遠くに行くことを告げた。  
連絡先は一切書かなかった。彼女のこれからを思えば、当然の行為だろう。  
自分の存在が邪魔になってくるだろうからとノインはシルクを連れ、フランスへと戻った。  
 
――暗闇の中に一人で沈んでいた。  
水とも泥とも違う感触の中――ただ独りで居た。  
全てが凍り付いてしまったようにも思えた。  
――暗闇に、光が差した。  
凍りついた心は溶け、穏やかな光の中、一人でいる。  
今はただ、愛する人の、幸せを。  
結ばれることではなく、彼女が幸せになれるように。  
多くの、幸せを得られるように。  
ただ、それだけを想い、光の中にいる。  
静かに時間が流れ――また彼女が死んだとしても、再び待つだろう。  
彼女が生まれ変わるその日を。  
恋人として結ばれるのではなくただ見守り続けよう。  
いつまでも、いつまでも――。  
他に誰かを愛したとしてもそうしていくだろう。  
悪魔である彼には時間があるのだから。  
 
 
――あなたの人生に、これから多くの幸せが、あるように  
 

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