――夢を見る。
『あんたなんかいらないっ…――産まなきゃ良かったっ…!』
何度も繰り返し叫び、僕をたたくあの人の夢。
『あんたなんかいなければ』
…やめろ。
『産まなければ良かった』
僕は一度だってあなたに産んでほしいと願った事はない!
口の中に酸っぱい、とも苦いともとれないいやな味が広がっていく。
――あの人の映像が消えたかと思うと、今度は踏み切りの映像が目に入った。
遮断機が下りてくる時の警告音がけたたましく響く。
目の前には、あの日の小さい僕。
自分が楽になりたかった訳じゃない。
ただ――僕は――
夢は電車が小さい僕へ近付いた所で覚めた――。
「っ…!」
何かを言いかけ、目が覚めた。
「ー…」
手のひらが汗ばんでいる。
(今更なぜ?)
今も僕を苦しめる死ぬ前の記憶。
もう既にあの人も僕も、生きてはいないと言うのに。
(くそっ…)
手を額に当て、ひざを抱え横を見、自分の目を疑う。
(めーちゃん…?)
裸で横たわる僕のかつての仕事上のパートナー。
でも何故裸で?
(ああ…そうか)
昨夜、彼女から僕の方へと来たのだったか。
ゆっくりと頭が覚醒し、数時間前のことを思い返してみる。
――昨夜、彼女は…めーちゃんは酷く傷ついた顔をしていた。
理由は聞かないでおいたから、何故泣いていたかは僕は知らない。
「いずみくん…抱いて…」
無言で頷き抱き寄せ――キスをした。
ただそうして欲しいなら、するだけだから。
重ねた唇が熱い。そっと舌を絡めてみる。
「んっ、んっ」
背中に回した手で優しく背骨をなぞるように愛撫する。
うなじを軽く指先でこそぐると合わせた唇から熱い吐息が漏れた。
唇を離し、耳元で囁く。
「相変わらず敏感なんだね、めーちゃんは」
「っ…」
びくん、と僕の腕の中で小さく体が震える。
ぎゅ、と胸をわざと鷲掴みにし、服の上から指で乳首をつまんだ。
「んぁっ!」
「もう乳首たってるんじゃないの?」
「ちがっ…」
僕を見返すめーちゃんの表情に、僕は自分の股間が熱くなるのを感じる。
「やっ、乱暴はっ…ぃやっ…」
言葉とは裏腹の、虐めてほしいと言ってるような表情。
実際僕は知っている。彼女がどうすれば感じるかを。
「うそつき」