「少々手荒くなりますがお許しください」
「…やぁっ…」
ノインの冷たい唇がまろんの首筋に落ちてくる。
自分の胸元に埋まった彼の唇を振り払おうともがくがノインの力は強く、まろんの腕を抑えつける。
「離して…っ」
まろんがノインの目を真っ直ぐに見つめる。
泣いたらいけない。
泣いたら、心まで屈した事になってしまう。
そんなまろんを嘲笑うように、ノインは次々に赤い印を刻み込んでいく。
「…愛していますよ、ジャンヌ」
呟くと、ノインがまろんの唇を捕え、重ねていく。
愛しい人のものでない感触に、とっさにノインの唇を噛んだ。
血の味がする。
「…ジャンヌ、一体どうなさったのですか?」
「…私はジャンヌじゃないわ、彼女とは違う人間なの。
あなたも本当はわかっているんでしょう…?」
「いいえ、あなたこそ私の愛する人。もう二度と神の下へなど渡しません」
そう言うとノインは勢いよく胸元をはだけさせる。
「…っ、やあぁぁ!やめて、誰か…、嫌ぁっ」
まろんは真っ青な顔で必死に手足をばたつかせる。
「…少し、おとなしくしていて頂きたいですね」
ノインが小声で何かを呟くと、魔呪符が現れまろんの腕を捕えた。
電流がまろんの腕に広がり、力が抜けていく。
「ゃっ…!」
刺すような痛みにまろんが小さく悲鳴をあげた。
辛そうな表情のまろんを見下ろすと、ノインは再び唇を重ねていく。
まろんは唇をきつく閉じて、舌の侵入を拒もうと必死だった。
腕が動かせないまろんにとって抵抗する術はそれしかなかったから。
しかし下着を押し上げられたとき、一瞬だけそちらに気を取られて舌の侵入を許してしまう。
「っ、う…」
生温い、ねっとりとした感触に嫌悪感が沸き立つ。
稚空とだってしたことなんてなかったのに、それをこんな形で奪われるなんて。
舌を噛んでやりたくても、魔呪符のせいか力が入らない。
ノインの手が真っ白な胸を揉みあげると、ぞわぞわと嫌なものが全身を包み込む。
「ぅ…ん、…っはぁ」
必死の思いで唇を離したら、急速に恐怖が全身を蝕んだ。
「ゃ…ぁ…フィ……フィン!フィン!!」
家にいたはずのパートナーの名前を呼ぶが、自分の声が虚しく響き渡るだけで、
返事はなかった。
「ど…して、フィン…?」
力なく呟くとノインがくすくすと笑いながら囁く。
「…彼女でしたら、シルクに捕えさせてあります。
私たちの邪魔をされるのは御遠慮願いたいですしね」
その言葉を聞いて、まろんの心は冷静さを失った。
魔呪符の効力もきれて腕も自由になっていたという余裕もあったし、
話し合えばわかってくれる、と思っていた。
だけど、そんな願いはもう完全に打ち砕かれた。
「やぁっ!やだやだやだぁっ」
パニックに陥り、ノインの肩を押して引き離そうとするがまろんのか弱い力で
敵うはずもなくて、ビクともしなかった。
いつまでたっても大人しくしないまろんに苛立ったのかノインが顔をしかめる。
「…大人しくして頂きたい、と申し上げたでしょう。それとも、またこれを使われたいのですか?」
そう言ってノインが魔呪符を取り出す。
それはパチパチと静かに電気を放っており、それがかえって不気味さを増しているようにみえた。
ノインの低い囁きに、まろんの身体が先ほどの苦痛を思い出してビクリと震え、
嘘のように抵抗をやめて大人しくなった。
ノインの手が晒された白い腹部をつたい、まろんのスカートへと辿りつく。
「ふ…」
とうとうまろんの目に涙が溢れだし悲しげな呟きを洩らす。
諦めたくない。
諦めてはいけなかったのに、まろんは怖くてどうすることもできなかった。
器用にスカートを外されて、もうまろんを守るのは小さな下着一枚のみだった。
ノインは一度顔を上げしげしげとまろんを眺めると微笑んだ。
「…美しいですよ、私の…私だけのジャンヌ」
「私、は…ジャンヌじゃないわ…」
まろんがノインから目をそらして嘆く。
その言葉が聞こえたのかどうなのか、ノインが本当に愛しそうに
まろんの耳に口付け、指がショーツの隙間から直接秘部に触れた。
「…ひぁっ…」
思わず声があがる。
男を更にかりたてる、鼻にかかった甘い声が。
初めて快感を与えられたそこは、熱を伴い湿り気を帯びていた。
指が、ピッタリと閉じた割れ目を解すようになぞる。
その上下の動きに、くすぐったさのような、なんとも言えない感覚がまろんを襲う。
「ゃ、やめて…っ」
正体のわからない感覚。
それがどんどん自分の中で大きくなっていくのが恐かった。
ノインの指が秘部の上の突起に標的を変え、まろんの蜜を塗りたくるように柔らかく転がす。
敏感なそれに与えられた刺激は、男を知らないまろんにとっても
十分に快感として身体を蝕む。
「んぁっ、あ、…やぁぁあっ」
どうしてこんな声が出るの。
こんな事、望んでなんかいない。
私が好きなのは、この人じゃない…!
「ぃやだぁっ…助けてぇ…っ稚空…!」
大粒の涙が頬を伝い、愛する人の名前を必死に叫ぶ。
「稚空…ちあきぃ…!」
違う男の名前にノインがあからさまに苛立った表情を見せる。
「…何故他の男の名前など?私はあなたの事を、500年待ち続けたのですよ。
あなたの心の奥には必ず私がいるはずです」
憎々し気に言い捨てると、秘部に指を突っ込み乱暴に掻きまわす。
「ひっ…んんあぁぁっ」
異物感にまろんが驚愕の声を上げた。
ぐちゅ、ぐちゅ、と卑猥な音が、小さく声をあげながら泣くまろんの耳にも、
サディスティックな笑みを浮かべるノインの耳にも届いていた。
「あっ、あっ、ぁ…」
時々ひくひくと震えるるまろんを見て、ノインが指を抜く。
「そろそろ…良いですかね」
きつく目を閉じて望まない快感に耐えていたまろんがその言葉の意味を理解し、
目を大きく見開いた。
「や…嫌っ…ジャンヌじゃないの…私はっ…!!」
まろんが全てを言い終わらない内にノインがまろんの腰を支え、自分のものをあてがう。
ひきつるまろんの顔を見据えると、気遣いなく腰を突き出した。
「いやぁぁぁぁ!!」
まだ男のものを受け入れたことのない、受け入れる準備も十分でないそこは、
乱暴な侵入に痛々しいほどに広がっている。
「さすがに…少しきついですね…」
ノインが眉根をよせて呟いた。
「嫌、嫌、痛いよぉっ!」
耐えられる筈ない痛みにまろんが狂ったようにノインから逃れようと暴れる。
「やだぁ!助けてっ!助けてぇ…!」
我を忘れて泣き叫ぶまろんの腕に電流が流れる。
「ああぁぁ!」
両腕に魔呪符が張り付きビリビリと痛む。
「そんな声を出さないで下さい、折角神からあなたを開放してさしあげたのに」
身勝手なノインの言葉にまろんが絶望を露にする。
「…ぁ…あぁ……」
―――奪われてしまった。
初めてを、こんな形で。
どうして、どうして…神様は私を見ていてはくれなかったの?
ノインのものが一番奥まで収まりきると、
無理矢理広がったそこは熱く焼けるような痛みを伴う。
ショックで唇が震え、ただ一点を見つめ続けていた。
しかしノインが動き始めるとさらなる痛みに意識が強引に引き戻される。
「いたい…っ!やめて、止めてぇ!いっ、あぁあ!」
「最初は痛くとも、すぐに良くなりますよ」
こんな痛みが快感に変わるなんて、そんなはずない。
混乱の中で、ノインに対する恐怖感が大きく膨れ上がる。
自分を保つ事ももう出来なくなってしまうくらいに。
手首の自由を奪われ、まろんは彼の動きに従うしかなかった。
気持ちよさなんてかけらもない。
引き裂くような下半身の痛みと腕に流れる痛みに全身を支配され、
抵抗することも声を出すことも許されはしなかった。
「くっ、ぅん、いぁっ…」
唇を噛み締め、悲鳴を漏らさないように痛いだけの行為に耐える。
一体いつになったら終わるんだろう。
悔しさと、悲しみと、絶望の絡み合う頭でぼんやりとそう思っていた。
限界が近いのか、自分の上で動くノインの律動が早まった。
ただそれだってまろんには痛みを増やすだけのことで。
「…ジャンヌ…愛しています…!」
ノインがそう呟くと、うめき声を洩らし彼は果てた。
まろんには、永遠と思えるような、恐怖に満ちた時間だった。
中でびくびくとノインのものが震え、熱い液体がまろんの秘部を満たしていく。
中で出されることだけは避けたかったけれど、もうまろんには抵抗する気力も、
ノインに懇願する気力も残っていなかった。
全身を絶望に包まれ瞳の色が失われていく。
「これからはずっと一緒ですよ…私とともに生きていきましょう」
ノインが格好を整えて、頬や耳にキスをおくる。
先程の行為など、嘘であったかのように、優しく。
「それでは参りましょうか」
瞳に何も映っていないまろんを抱きかかえる。