暗く沈んだ感じ。彼との恋は、なぜだろう。常に絶望の匂いがする。  
それは私が優しい恋人を裏切って彼と恋しているかもしれない。  
それは彼と私が永久に相容れないものだからかもしれない。  
けれど、私は彼に恋してる。それだけで、今は、もう。  
 
「いつ、彼に話すつもりですか?」  
カーテンの隙間から漏れる月光に照らされた横顔で、ノインが言った。  
「何の話?」  
傍らに猫のように丸まり、まどろんでいたまろんが訊ねた。  
「これ以上彼と会い続けるのは、彼の――名古屋君のためにもなりませんよ」  
ノインがほんの少しの優越感を含んだ声で言った。瞬間、まろんが顔をしかめる。  
「それはよく分かってるわ。でもお願い、もう少しだけ私の好きにさせて」  
まろんがノインに背を向けて立ち上がった。  
「シャワー浴びてくる。先に寝てて」  
 
落ちてくる湯が全身を舐める。その感触に少しだけ身震いした。  
太腿や足先にまとわりつく白い粘液が、薄まって流れていく。  
そっと秘部に手を伸ばし、自らの愛液もこそげ落とす。  
「んっ…は……ぁ」  
無意識のうちに、まろんは自らの指でそこを愛撫していた。  
いつの頃からか、ノインと交わった後にこうして自慰行為をする様になった。  
ノインの事は好きだが、彼とのセックスは単調で、これといった満足感も得られない。  
「…っ…いや……っぁ」  
指で一番感じ易い芽を転がしながら、まろんは体をくねらせた。  
時間と共に体はだんだんと高みに上っていく。  
「あっあっあっ!!だめっ!」  
頭の中が真白になった瞬間、唇から吐息と共に言葉が滑り落ちた。  
それを聞き、はっとする。  
「……もう終りなのかな……」  
泣きそうに顔をゆがめながら、まろんが呟いた。  
絶頂に達する瞬間、彼女は恋人の名前を呼んでいた。  
それも今の恋人ではなく、切り捨てなければいけない方の恋人を。  
『稚空っっ!!』  
確かに、まろんは最後にそう叫んでいた。  
 
稚空への気持ちは一ミリグラムだって減っていない。  
ただ、ノインの方が切実に私を必要としていただけ。  
決めたの。ノインと共に生きていこうって。  
彼の残り少ない時間位は、傍にいてあげようって。  
 
見慣れたドア。一時は殆どここで暮らしていた。今でもここに来ると  
心落ち着く。二度とここにくることもないのかな、と思うとなんだか泣けてきた。  
「……まろん?」  
チャイムを押そうかと迷っていたまろんに声をかけたのは、間もなく  
まろんが別れを告げなければならない相手、名古屋稚空だった。  
「稚空……」  
彼が笑った。久々に訪ねてきてくれて嬉しい、とその笑った瞳が語っていた。  
瞬時に罪悪感がまろんを襲った。涙がこぼれそうになるのをこらえ、  
微笑む。  
「なんだか、久しぶりだね」  
「ああ。今日はどうしたんだ?」  
「……話、したいの。いい?」  
表情の晴れないまろんに、稚空は一瞬怪訝そうな顔をしたが、  
快く彼女を部屋に招きいれた。  
 
「終りにしたいの」  
 
久々に稚空と顔を合わせたまろんは、俯いたまま早口にそう言った。  
「何を終わらせるんだ?」  
「この場合の意味なんか、一つしかないじゃない?」  
「はっきり言ってくれないと、判断がつきかねるな」  
「……分からないの?」  
弱りきった声でまろんが言った。まるで、稚空にいたぶられているような、  
それほどまでにか細い、情けない声だった。  
「分からないな」  
稚空が苦笑した。視線がせわしなく揺れていて、その意味を悟った事が  
知れている。  
「別れたいの。私達」  
「どうして?」  
稚空が声を荒らげた。まろんが息を呑む。  
「あ……ごめん」  
「……いいよ、別に」  
「理由、聞いてもいいか?俺のどこが気にいらないんだ?」  
まろんが静かに首を振った。稚空を捨てるのは彼女なのに、  
まるで彼女こそが捨てられたように悲しげに囁いた。  
「そうじゃないの。稚空のこと、今でも好き。だいすき。でもね、稚空は  
一人でも大丈夫なの。けど、ノインは一人じゃ無理なの」  
「……っ、ノイン?」  
稚空が怒りに目を見開いた。まろんははらはらと涙を流しながら続けた。  
「そう。もう魔力が落ちてきてるから、永くは持たないって。フランスに  
帰って、ジャンヌの傍に眠りたいって、言うの」  
「……付いていく気か?」  
「……学校も辞めるつもり。結婚して、一緒に……」  
ごとり、とコーヒーの入っていたカップを稚空が倒した。  
慌ててそれを拭おうとするまろんを彼は制し、虚ろな声で淹れなおす、と  
呟きキッチンへと消えていった。  
 
それは何でもない夢。胸のうちで反芻して楽しんだり、時には語らったりする様な。  
例えば、一番好きな人と結婚して、その人と自分の間に子供が生まれる。  
二人で子供に愛情を注ぎ、時には喧嘩したり、泣いたり喚いたりしながら  
ともに育てていく。同じように老いていく。いつまでも互いを愛し合い続ける。  
それは何でもない夢。誰にだって実現可能な夢。  
 
彼女は一人その夢をかなえる。俺はそれにおいていかれる。  
彼女は俺以外の男と共に生きていく。俺は切り捨てら、『いい思い出』よ微笑まれ、  
そのうちに忘れられる。そう思うと怖気が走った。  
二つのカップに濃いコーヒーを注ぐ。カップの中の熱い液体は、自分の胸のうちを  
溶かしたような色をしていた。  
「……私、今日、もう帰るね」  
まろんがキッチンに顔を覗かせて、おずおずと言った。泣きはらした真っ赤な目で、  
あの男のもとへ帰るのだろう。今日のことを全て話し、慰められるのだろう。  
そう思うと怒りと嫉妬で気が狂いそうだった。  
「戻れ」  
漏れた稚空の低いうめき声に、まろんが怯えたように目を見開いた。  
「ちあき……?あの、私、」  
「いいから戻って座れ。話はまだ終わってない」  
口から出たのは、自分でも驚くくらい恐ろしく、怒りに満ちた声だった。  
まろんがまた泣き出した。マスカラが溶けて、頬に黒いかすがこびりついている。  
「頼むから、一方的に終わらせないで欲しいんだ」  
稚空が哀願するように震える声で言った。その弱々しさに少し警戒を解いたのか、  
まろんが小さく頷き、リビングに戻っていった。  
それを見届けると、稚空は殆ど衝動的に置いてあった瓶を引っつかみ、彼女の  
カップに注いでいた。  
 
「ジャンヌの傍に眠る、か」  
稚空がカップに入ったコーヒーを弄びながら呟いた。  
それに対するまろんは、中途半端な警戒心と彼への哀れみ、そして未練にも似た愛情の  
間で戸惑っていた。  
「いいご身分だな。結局、あいつは最後にお前を選ばない」  
稚空が軽蔑するようにまろんをみた。その視線にまろんは居たたまれなくなり、  
思わずカップに口をつけた。  
舌に走る苦味に顔をしかめる。コーヒーが飲めないのは稚空も知っていたはずだ。  
それなのに、こうして差し出すという事は愛が醒めた証拠か、あるいは嫌がらせか。  
沈黙が場を支配する。カップに入った液体は喉を焼きながら滑り降りていく。  
カップの底が透けて見えた。どれだけ飲んでも喉が渇く。  
「いいの、それでも」  
まろんが震える声で呟いた。稚空の双眸がまた細くなる。  
「……構わないわ。だって、ノインの命が永くないのは、元はと言えば  
私のせいだもの……」  
「見損なった」  
稚空がはっきりと言い放った。まろんがはじかれたように顔を上げる。  
「聖女の誇りも、ジャンヌの意思も忘れたのか?まろんがそんなに弱い人間だとは  
思わなかった」  
「……ほっといてよ!いいの、それでも構わないの!そう生きるって自分で  
決めたの!稚空は口を挟む権利なんてない!」  
涙が溢れてきた。伸びてきた彼の手を、全身に力をこめて払う。  
「もうお別れなの!さよなら!」  
そう言って勢いよく立ち上がった瞬間、まろんの体が傾いだ。  
受身も取れずに床にと倒れてしまったため、肩をしたたか打ちつけてしまう。  
「…っ……?」  
全身が熱い。頭がぼんやりする。霞がかったまろんの意識の中で、稚空の笑い声が  
妙にはっきり響いた。  
 
「馬鹿だなぁ、まろんは。俺がこんなことで諦めると思うのか?」  
どうしたんだろう。力が入らない。訳を稚空に問い詰めたかったが、ろれつが  
まわらない。  
「せいぜい泣きながらあいつに謝る事だな。『フランスには一緒に行けない』って」  
稚空がまろんを嘲るように言った。その声には愛情や信頼のかけらも  
感じられない。  
「ど…する……気…な…?」  
「ずっと、おかしいと思ってた」  
何を、と訊ねようとした途端にまろんの体が抱え上げられた。  
「ずっと気になってた。どうして見慣れない指輪をつけてるのか。  
どうしていつもと違うシャンプーの匂いがするのか、どうして」  
そこまで言うと、稚空が一瞬だけ、酷く悲しげな表情を覗かせた。  
その瞳に、まろんが涙を流す。  
「どうして、俺が付けた覚えのないキスマークつけて、俺に抱かれるのか。  
でも、やっぱり信じたかった。きっと、どこかにぶつけただけだって。  
馬鹿だよなぁ……」  
言い終わるとまろんを寝室まで運び、ベッドへ投げ出した。着ていたシャツの  
前をはだけさせて、まろんに覆い被さる。  
「俺は、俺はまろんを失いたくない。まろんには失望したけど、それでも  
離れていくよりはずっといい。きっと、分かりたくもないだろうけど……」  
稚空の唇がまろんのそれに触れた。しかし、まろんはぼんやりと遠くを  
見つめたまま、それを拒もうとも受け入れようとせず、静かにしていた。  
 
稚空の長い指がまろんの衣服をはがしていく。  
体の異変も手伝ってか、まろんは二、三度首を振った以外は大人しかった。  
稚空が好きだった。彼の優しさが、時にはうっとうしくなるくらいの愛情が、  
さみしい時に抱き締めてくれる力強さが。  
「何…でこうな……った…の?」  
息苦しさを抑え、なんとか言葉を紡ぐ。稚空はすこしだけ笑って答えた。  
「神経がだめになる薬が、コーヒーの中に。そんなのが体に入ってる時に  
したら、たまらないだろうな。きっとダメになる」  
「…ど………して?」  
まろんが祈るように目を閉じた。頬に涙が伝う。  
「ごめん」  
それだけ言うと、稚空は椅子にひっかけてあったネクタイでまろんの目を  
覆った。柔らかい感触が皮膚に触れ、思わず身を諌めた。  
視界を塞がれ、戸惑っているまろんを稚空は背中越しに抱き締め、耳元に吐息を  
落としたり、首筋を撫でたりと愛撫を繰り返した。  
まろんが初めて、拒絶の声を上げた。  
「…嫌ぁ……」  
 
 
どうしてこんなことになったんだろう。  
人工的な暗闇のなか、まろんは恐怖に震えながら考えていた。  
ノインと付き合うようになったのは三ヶ月ほど前。  
彼は最近めっきり老け込んでいた。誰もがそのことを心配していた。まろんもその一人だった。  
話す機会があって訳を尋ねると、魔力が落ち始めていて命が長くないと彼はいった。  
その姿に同情したまろんは彼と以前にまして親しくするようになった。そしてそのうちに  
身体の関係を結んでしまった。  
そのままずるずると付き合い続け、結婚の申し込みをされたのは先週。  
ずるいと分かっていたが、ノインの言葉を聞くまで稚空と分かれる気は毛頭なかった。  
稚空は優しい。一緒にいると楽しい。何もうしろめたくない。  
そんなよく出来た恋人を手放してまでノインを選ばなければいけない理由なんて  
一つもなかった気もしていた。  
プロポーズの言葉に  
『貴方のために死んだジャンヌのかわりに』  
といわれるまでは。  
そうか、ノインの本当に好きな人は、ジャンヌは私のために死んだのか、と思った  
途端にひどい罪悪感に苛まれ、彼との結婚を承諾した。  
事の発端は、そこだった気がする。  
 
稚空の唇が耳に触れた。塞がれた視界のなか、肌の暖かみや快感がストレートに  
伝わってくる。思わず声が漏れそうになったが、ぎりぎりのところで呑み込んだ。  
神経をダメにする薬、と彼はいったがそれは麻薬か何かの類だろうか?  
自分はこのまま弄ばれ、壊れてしまうんだろうか。  
稚空の手がまろんの胸を包んだ。そのまま荒くもみしだかれる。痛みに眉根を寄せたが、  
彼はそんな事気にもとめていない。  
「痛っ……っ!」  
今まで柔らかく愛撫されてた耳をきつく噛まれた。痛みに声を上げると、胸にも  
爪を立てられてしまう。あまりの乱暴さに眩暈がした。  
そのまま荒々しく、なおかつイマイチ熱のこもらない愛撫を稚空は延々と繰り返した。  
下半身には触れず、胸や耳などのいつもの弱点は荒めに、唇や頬やウエストなど、  
普段はあまり攻めない部分を柔らかく、かつ時間をかけて愛撫する。  
薬の効果かどうかは知らないが、時間が経つにつれてそんなかすかな快楽にさえ  
まろんは溺れ始めていた。手足が鉛のように重く、抵抗する気も失せる。  
稚空の唇が、指が、吐息が身体を這い回る。触れた場所には小さな火がともされる。  
その火種は胸の奥深くでくすぶり続け、彼女の身体をじりじりと焼いていく。  
淡すぎる快楽に物足りなくなったのか、まろんの唇から言葉が漏れた。  
「……お願い、もっと…して……?」  
 
「いいの?そんな事言って」  
稚空がふ、と小さく笑いながらまろんに訊ねた。思わず言ってしまった一言に  
まろんは真っ赤になりながら頭を振った。  
俯いて全身を固くする彼女の胸を稚空がそっと撫でた。まろんの細い腕があわ立つ。  
「あっ……」  
蜜のように甘い嬌声を上げ、まろんが腰を浮かせた。  
「……そんな顔して、何期待してるんだ?」  
稚空がまろんの耳に唇を寄せ囁いた。吐息が当たって、思わず身をすくめる。  
押し黙ったまま、まろんが唇を噛んだ。巻かれたネクタイが皮膚にこすれて痛い。  
頭の中が混乱していて、本当は泣いてしまいそうだった。  
稚空の顔が見えないから、彼が今何を考えているのか理解することが出来ない。  
思考がまとまらず、だんだん意識が遠ざかっていく。時期に理性も使い物にならなく  
なるだろう。  
恐怖が全身にべたりと張り付き、心をかき乱す。  
「……っ!」  
不意に、稚空が胸の突起を口に含んだ。舌で柔らかく転がされると、まろんの身体が  
びくびくと跳ねた。  
「やっ!あっ、あ、あ、ぃ、いやぁっ!」  
それだけで本当に達してしまいそうだった。それを許すまいとまろんが足を  
ばたつかせ、大きく首を振る。  
犯されているのに果ててしまうというのはノインに対しての裏切りであると同時に  
稚空に対する降伏に値してしまう。それはまろんにとって目下最大の恐怖だった。  
「あ、あぁ…ゃっ……」  
神経を張り詰め、まろんは快楽をどうにかやりすごそうとしていたが、次第に  
とろりと表情が溶けて、抵抗する力が弱くなっていった。  
 
「んっ、ふ……っあ……あぁあっ!」  
かりりと稚空が突起を軽く噛んだ。まろんが身体をのけぞらせる。  
もう少しで果ててしまう。あと少しで負けてしまう。  
がたがたと全身が震えた。必死でノインの顔を思い出して気を紛らわそうとする。  
「あぁあっ!やっ、っひぁ………ぁ?」  
まろんが大きく声を上げて稚空に限界を示した。それに気付いた彼は何の躊躇いもなく  
口を離した。  
「……稚空?」  
驚きにまろんが声を上げた。身体が熱く、燻った火が今、煌々と燃えているようだ。  
「無理やりなのにイきそうだったんだ?」  
淫乱、と稚空が囁いた。声音の甘さに、まるで愛の言葉を囁かれたような錯覚に陥る。  
まろんが弱々しく首を振り、言葉を否定した。稚空が微笑みかける。  
「捨てたはずの男に、イかされるんだ?」  
まろんが泣きながらいやいやした。稚空はことさら優しく声をかける。  
「泣くなよ、まろん。泣いたって身体が鎮まるわけじゃないんだから」  
遂にまろんが声を上げて泣き喚き始めた。彼を突き飛ばし、逃げようと躍起に  
なるが、逆に押さえつけられ下着を剥ぎ取られてしまう。  
まろんの剥き出しの下半身が外気に触れて、ぴくんと痙攣した。  
稚空は片手でまろんの両腕を束ねると、もう片方の手でゆっくりと震えているそこを  
撫でた。  
 
どう思われてもいい。憎まれても、恨まれても。  
だけど、どうか忘れないで欲しい。愛し合った日々を、あの時の確かな気持ちを。  
愛してる。狂おしいほどに。なのに、どうして去っていくのだろう。  
あんなに大切にしていたのに、どうして奪われてしまったのだろう。  
 
「愚か者」  
まろんの目隠しを取ってやると、稚空がそう言って口元だけで笑った。  
「別れ話をするときは、場所を選ばないとな」  
「……ひどい」  
秘部への執拗なまでの攻めに耐えながら、まろんがなんとか呟いた。  
「男が逆上して力ずくで、だなんて話、腐るほどあるじゃないか」  
「でも……っ!!」  
きゅ、と敏感な突起を摘まれ、まろんが四肢を硬直させた。  
稚空がその様子に苦笑する。  
「でも、それに感じてイっちゃったら、無理やりだなんていえないんじゃないか?」  
「ぁ……んっ…ふっ、あ、やっ……」  
そのまま突起を愛撫され続け、まろんの意識が揺らぎ始めた。  
このまま溺れたら、稚空のものになる。  
ノインを裏切りたくない。  
でも………。  
「も…う、やめ、よ…う……よ」  
まろんが泣きながら囁いた。稚空が視線だけ動かして彼女を見る。  
「止める?何を?」  
稚空の指が彼女の中に埋められた。くちゅ、と水音が漏れる。  
「く、ぁ…んっ……!」  
「やめていいのか?気持ちよくなりたくないのか?」  
稚空が笑い、埋めた指を動かす。まろんの身体がびくびくと揺れる。  
「ゃあ……やめ、てぇっ……!」  
まろんが大きく頭を振った。稚空が空いた手で胸の突起も嬲る。  
「やっ、やっぁ…う、あっあ!」  
そのまま敏感な肉芽を撫でてやるとそれまでの抵抗も虚しく、まろんが果てた。  
 
身体がベッドに沈み、全身がくたりと伸びだ。けれど、頭は冴え渡り  
瞳だけは爛々と光っている。身体のだるさがつき物のように落ちたのだ。  
自由になった思考の中で彼女の目が瞬間、嫌悪に輝いた。  
しかし、稚空の顔をまじまじと見つめると一度驚きに見開かれ、そして  
哀れむように彼を見つめた。  
「なんだよっ!」  
稚空が彼女を怒鳴りつけた。視線の優しさと含まれる同情に心を乱される。  
「何なんだよその目は!」  
稚空がまろんの腕をベッドに押し付け、思い切り睨みつける。  
そのまま低く唸り、彼女を殺しそうなほどの気迫で唇をかみ締めた。  
「一体何なんだ!何が言いたいんだ!」  
腕をきつく掴んだ。まろんが痛みに眉をひそめたが、すぐにあの  
表情にもどった。稚空が声にならない叫びをあげる。  
 
「……泣かないで」  
まろんの言葉が魔法のように稚空を支配した。彼は呆然としたまま唇を  
ふるわせた。  
押さえつけられていた手が自由になった。軽くなった両手でまろんは、  
彼を抱きしめ髪を撫でてやる。  
「そんな風に泣かないで。怒ってないから」  
稚空が驚きに目を見開き、言葉を否定するように首を振った。  
「何を言ってるんだ、まろん……」  
「泣かないで。ごめんね、不安にさせて」  
まろんが世の母親がそうするように愛情を込めて彼の頬を撫で、  
額にキスしてやった。  
 
 

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