時刻は深夜、一年が終わり、新しい年が始まって数時間が経過したころ。  
自分の部屋の大きなベッドの上で名古屋稚空は恋人、日下部まろんに押し倒されていた。  
 
 
事の起こりは、年が変わるほんの少し前。  
二人はコンビニで買ったたくさんの菓子や飲み物を手に取り、  
今年一年どうであったか思い出し、時には甘い言葉を囁きながら新年を待っていた。  
日付が変わると、寒い夜空の下、肩を寄せあいベランダで除夜の鐘の音を聞いて。  
その時は、やけにまろんがおとなしいな、としか思っていなかった。  
108つの音を全部聞いていられるほど外の寒さも甘いものじゃなかったから、幾度目かの鐘で暖かい部屋に引き上げた。  
あまりに無口なまろんに「眠いのか?」と聞いた所で、  
まろんが俺の胸に飛び込んできてその反動で二人の身体がベッドに崩れた。  
そんなふうにして、今の状況があるのだった。  
…つまり、どうしてこうなったのかは稚空にもわからない。  
 
「いって…まろん、どうしたんだよ、いきなり」  
自分の上に覆い被さっているまろんに稚空が声をかけた。  
「………」  
返事をしないまろんを不思議に思いながら、身体を起こそうとするが、一向にまろんは自分の上から降りようとしない。  
「あの…まろん?降りてくれないと起きれないんだけど…」  
稚空が困ったようにまろんに告げると彼女が口を開いた。  
そう、まろんのはず。それなのに。  
彼女は妙にテンションが高かった。  
「…だーめ!どいてなんかあげなぁい」  
「……………………?」  
あまりに上機嫌と思われるまろんの口調に、稚空は言葉がでてこない。  
呆然としている稚空と対照的に、まろんはそんな様子の彼をみて、うふふ、と笑みをこぼしている。  
「あけましたメリークリスマスー!一年間いい子だった稚空に、まろんちゃんからプレゼントがありまーす」  
正月とクリスマスが混ざっているのか、意味不明な事を言ってまろんが自分でぱちぱちと拍手をした。  
そんなことより17の男に向かって「いい子」はないだろ、と思っていると、ふんわりとまろんの香りが漂った。  
焦点をあわせると、まろんが「プレゼントー」と言いながら顔を近づけてきて、そのまま唇が触れる。  
驚いている稚空をよそに、まろんの舌が唇の隙間から入り込んできて、稚空の舌を絡め取った。  
「まろっ…」  
なんだこの味。  
言葉を塞がれたそこから、独特の匂いと味が伝わる。  
子供の頃、大人が飲むのを真似してはまずいと感じたそれ。  
いまのまろんから匂う筈もないそれは…  
 
―――酒くさい。  
そう確信する半面、稚空は自分の答えに疑問を持った。  
なんで酒がここに…?  
唇を奪われたまま横目で部屋を見渡すと、チューハイのような装丁の缶が目に入った。  
それはさっきまろんがちびちびと呑んでいて、炭酸飲料、と言われても疑わないであろう黄色いレモンの描いてある缶。  
アレか。ああ、面倒なことになったかもしれないな。  
稚空が現状を理解している間、まろんは両手で稚空の頬を包み懸命にキスを続けていた。ぷは、とまろんが息をついて、お互いに銀の糸を引かせながら唇が離れた。  
「どぉ?上手だった?」  
まろんが得意げに稚空に尋ねた。その顔はいつもの彼女以上に無防備だ。  
「まろん、お前酔ってるだろう?」  
「ねー、上手?」  
「まろん、」  
「ねーってばぁ」  
どうやらキスの感想を言うまでは話を聞きそうにない、と感じた稚空は上手上手、とまろんの頭を撫でてやった。えへへー、と嬉しそうに笑うまろんの頬が酒のせいかほんのり赤い。  
子供みたいだ、と思った。  
「なぁまろん、酒なんてどう」  
「しーっ。まだ終わってないのぉ」  
たてた人指し指を稚空の口元に持っていき、まろんが話を遮った。  
上手って言ったのに、まだ何かあるのか。  
なんなんだ、一体。ていうか話聞け。  
聞く耳持たないまろんに稚空がため息をついた。  
自分の指示通り、黙った稚空を満足そうに見て、まろんが稚空の両手首を細い手でベッドに抑え付ける。そのまま稚空の横に顔をうずめて、ぱくりと耳をくわえた。  
「ま、まろん?こら、やめろって」  
いつもならあり得ないまろんの行動に驚いて制止の声が上がった。  
これじゃあいつもと立場が逆じゃないか。  
稚空の声が聞こえているのかどうなのか、まろんの動きは止まらない。くわえた耳を甘噛みしたり舌でくすぐったり、面白そうに愛撫を続けている。  
耳が終わると今度は首筋に赤い跡をつけて。  
それに飽きたら稚空のシャツのボタンを外して、たくましい胸元にキスをおくる。  
放っておけばそのうち飽きるだろう、と諦めかけていた稚空だったがまろんのキスがだんだんと下に降りていくにつれ、自分の身体に甘く熱が宿っていくのを気付かずにはいられなかった。  
 
ついに腰まで辿りついたまろんの手がカチャカチャと稚空のベルトを外し始め、その行為に稚空が慌てる。  
「な、ま、まろん!」  
「あ、外れた」  
止めさせようと稚空が手を伸ばした矢先、まろんがベルトを外し終え  
ジーっという音と共にチャックを下ろす。  
まろんの白い手が稚空の股に伸びて、稚空自身に拙いながらも刺激を与える。  
「!っ、やめろよ、こらっ」  
むくむくと勃ち始めるそれに、まろんが嬉しそうに笑う。  
情けないやら、酔っているまろんに対する困惑やらで、稚空がまろんに声を荒げる。  
「〜〜〜っまろん!」  
その声を無視し、稚空のものが固く、太く、熱を帯びたのを手の先に感じると  
まろんがそれを下着から抜き出し、先端にキスをする。  
ピク、と稚空が反応した。  
まろんがそのまま口を大きく開け、躊躇いなく稚空のものを咥え込んだ。  
「く、っぁ」  
稚空が眉を顰め、小さな声を漏らす。  
そんな稚空を見て、まろんは嬉しそうに根元まで咥え込んだリ、舌を絡めたりと積極的に稚空を攻める。  
いつもと逆の立場が楽しいのかもしれない。  
酒によっているとは言え、まろんは一体どうしたんだ。  
稚空はそんな事を考えていたが、直接身体に伝わってくる刺激と  
必死に自分のものをしゃぶるまろんを見ていると、  
そんなのどうでもよくなって、理性が本能に押しつぶされていくのを感じた。  
一旦口を離し、舌だけで稚空を舐め上げていたまろんが  
再度稚空自身を大きく咥え込み、吸い上げるように口を窄める。  
「!まろ、」  
その瞬間、背中から稚空自身にかけて何かが降りていき、  
稚空はまろんの口の中に欲望をはなった。  
 
しばらく呼吸を荒くしていた稚空だが、気分が落ち着くと  
すぐに自分の足もとでぼんやりと寝転ぶまろんを抱き起こし、自分の方へ引き寄せる。  
まろんは楽しそうに稚空の首に腕を回し、だらーんと縋り付いてきた。  
「ここ、ついてる。…あー…なんか、ごめん」  
口の端に零れた精液を、稚空が指で拭ってやった。急に罪悪感が頭をかすめる。  
小さく呟く稚空を見てまろんがんーん?と首をふる。  
「ねぇー、気持ち良かった?」  
その質問には答えずに、酔っていて力が入らないのかどんどんと下へずれて行くまろんを、よいしょ、と抱きかかえ直した。  
ふと目を向けると、不服そうに頬を膨らますまろんと目が合った。  
頑張ったのにぃ、とぶちぶち呟く彼女に、稚空もとうとう観念した。  
「ああ…気持ち、良かった、…ありがとな」  
稚空が躊躇いはあるものの言葉を刻むと、まろんも満足げに笑った。  
ただ、稚空にはまだ気になる事が一つ。  
こんなこと聞いていいのか。  
答えによっては、俺、そうとう落ち込むかもしれない。  
どうしようか、くそ、気になる。行け、俺!  
「まろん?あの、こんなの今までした事なかったよな?」  
「ん?うん」  
「だよな?…じゃあ、なんでいきなりこんな事したんだ?」  
もしかして、まろんには昔の男でもいて、そいつに仕込まれてたりしてたらどうしよう?  
それがトラウマで、実は今でもセックスが怖いけど、俺に無理に合わせてるとか?  
頭の中を、まろんの昔の男(仮)が笑いながらぐるぐると回っている。  
ハッキリとした顔立ちで、勉強も運動も器用そうだ。顔だって結構良いほうだろう。俺には敵わないけど。  
あくまで稚空の想像だけれども。  
 
「都」  
「みやこ?」  
…なんだ、女みたいな名前じゃないか。  
そんな奴に絶対まろんは渡さないからな。渡してたまるか。  
都はこのことを知ってるんだろうか?何しろまろんの長年の親友だしな。  
もしまろんが言い渋ったら、都にもちょっと聞いてみよう。  
「…そんな奴の話なんて、聞いたことないぞ」  
「え」  
まろんが聞こえなかったのかな、というように大きな瞳をぱちぱちと瞬きさせる。  
「だからね、都から教えてもらったの。  
都は水無月君にいつもしてあげてるんだって。だから、やり方とか聞いたの。  
したらきっと、稚空喜んでくれるかな、と思って」  
頭の中で笑っている謎の元彼「みやこ」と、まろんの親友である「都」が一気に繋がった。  
まろんと都はそんな話をしているのか、などと思いつつも、  
まろん昔の男説の消滅に稚空はどっと汗が噴き出してくるのに気付いた。  
はあぁ、と大きなため息をつく稚空にまろんが不思議そうな顔をする。  
直後、稚空の首の後ろに回された手の力が少し弱くなってきたと感じた時には、まろんは既にうとうととしていた。  
「おやすみぃ…」  
とろん、としたまろんが俺の上から退き、そのまま隣に転がった。  
おやすみって…人をこんな気分にさせといて、先に寝ようだなんてそれはちょっと無いだろ?  
しっかり責任をとってもらうからな。  
今度は稚空が同じように、隣のまろんの上に覆い被さった。  
「待てよ、次は俺の番だろ?」  
逃げられないように、まろんの足の間に片足を割り込ませて稚空が口を開く。  
まろんが眠たそうに目をしばたかせてうん、と首を振った。  
本当にわかっているんだろうか、この酔っ払った恋人は。  
 
まろんの片頬に手を添え、唇を寄せる。舌を割り入れると、アルコール特有の味が伝わってきた。  
どうしたらチューハイ一杯でここまで酔えるんだ?まあ、まろんだしな。そんなに酒に強そうだとは思えない。  
妙に納得して入ると、まろんが手で稚空の胸をとん、と押して身体が離した。  
「…稚空、お酒くさぁい」  
……酒くさいのはお前だろ、と呟いたがまろんには聞こえてないようだった。  
20歳未満は飲酒禁止なんだよー、と文句を言うまろんの唇を塞いで言葉を奪う。  
パジャマの裾から手を差し入れ、温かな乳房を下着ごと揉みほぐす。まろんの身体から力が抜けるのを感じ、  
稚空は下着を抜き取ると二つの桃色の突起に手を伸ばした。  
わざと中心で膨らみかけている突起を避け、その周辺をくりくりと指で刺激すると、ものほしげにまろんの腰が浮く。  
「ぁ…んん」  
恨めしそうにこちらを見てくるまろんに稚空は苦笑し、中心を軽く爪でひっかいた。  
「ぁあ!」  
まろんの身体の中で溜まった欲求が一瞬で放出され、またすぐに沸き上がってくる。もっと、もっと欲しい。  
「…稚空、もっとぉ…」  
甘えたようにまろんが稚空に身体をすりあわせる。いつもと違い、積極的なまろんの様子に稚空もどんどん高まっていく。  
先程まろんが自分にしたように、白い上半身の至る所にキスをおくって印をつけて。  
一方の下半身にも手が伸び、早々とズボンを脱がしていく。  
ショーツの上から敏感な突起を探り当て、人指し指ですりすりと擦るとまろんが自分から腰を押し当ててきた。  
「ココがいいの?」  
聞くと、まろんがこくこくと首をふった。いつもならそんな事言えば、真っ赤になって拗ねるのに。  
素直な反応に満足したのか、稚空が上半身へのキスをより一層激しくする。  
ショーツのわきから指を差し入れて、濡れ具合を確かめながら指を沈めていく。  
「くんっ…!」  
水の溢れる音とまろんのあえぎが重なった。上下運動を繰り返しながら、空いた指で敏感な突起をいじってやる。  
「やー、やん、ぁっあ…」  
自分の身体の中を擽られているような感覚にまろんが腰をくねらせる。  
アルコールのせいでいつもより敏感になっているのかもしれない。  
稚空が指を引き抜き、トロトロに溶けたそこに再び熱を持った自身をあてがうと一気に腰を進めた。  
 
「は、ああぁぁああ!」  
急速な侵入に、まろんの身体が弓なりに反った。  
与えられる快感をもっともっと貪ろうとまろんが稚空の背中にしがみつく。  
「ぁんっ、あ、ちあきぃっ…」  
きゅうきゅうと絞め上げるまろんの中に、稚空も更なる快感を求めてより速く動く。  
今すぐにでも放ってしまいたいような、まだこの締め付けを味わっていたいような、甘い選択。  
淫らな水音が二人をどんどん高めていく。稚空のものが奥に当たるたび、体が大きくはねてしまう。  
痛いほどの快感に、思わず逃げてしまうまろんの腰を稚空が引き戻して固定した。  
「やぅっ!稚空…ダメ…っ、ぁ…イくぅぅぅっ!」  
「っう…っ」  
連動するように、一方が果てるともう一方も続けて白い快楽に呑まれていった。  
 
 
数分後、先に息を整えた稚空がまろんの額に汗でへばりついた髪の毛をのけてやり、  
頬と唇に触れるだけのキスをする。  
それすら快感の余韻の中では甘く響くのか、まろんが擽ったそうに身をよじらせる。  
稚空はそんなまろんを幸せそうに見つめていた。  
そのまま抱きしめていてやると、まろんからは寝息が聞こえてきた。  
新年早々、可愛いまろんが見れたよなぁ。  
明日になっても今日のことを覚えてるんだろうか。  
もし覚えてたら、しばらくはこのことでじっくりと虐めてやろう。  
これからのことを考えると、稚空はつい頬が緩んでしまう。  
「覚悟してろよ」  
心の底から楽しそうに囁くと、稚空は気だるい身体を起こしバスルームへと向かっていった。  
 

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