「どうかしたのか?」
この頃の私はため息しか出ない。それは全て目の前で何かあったのかとでも言いたそうに顔を覗いてくる青年、名古屋稚空のせいだ。
――ことの始まりは昨日の夜、私達は寝室でいつものように抱き合い、まどろんでいる時のことだ…
まろん、と言いながら稚空は大きな腕で私を抱きすくめ私も彼の名を呼びながら彼の上に馬乗りになって、たくましい胸板に唇を寄せていた。
稚空は目を細め満足そうに微笑みながら右手で私の髪を撫で、そして左手は背中を撫でそのまま下の張りの良い丘へと進み真ん中のツボミを指で軽くノックする。
「ひゃっ」
私は驚きの声をあげて顔をあげると、そこにはにやにやと反応を喜ぶ稚空の顔があり、軽くにらむと笑いながら私の耳を甘噛みしてきた。すると、こっちのバージンはいつお許しをもらえるのかな、と稚空は甘く囁いてきたのだ。
「むっ、無理よお尻なんてっ」
真っ赤になって首を振り無理だと一生懸命反論するまろんに稚空は苦笑し
「慣れれば気持ちよくなるから…まぁ時間はたっぷりあるしな…」
稚空は軽く私にキスしてそのまま寝てしまった。
一方私はというと先ほどの稚空の言葉が頭の中を永遠とリピートしていてた。
―慣れれば気持ちよくなるから―
と、いう事は経験があるってことだ。そりゃぁ私が初めてした時のあの稚空の手慣れ様からして何回かは経験があるというのは簡単に察する事ができたし、それはしょうがないと思ってた。
でも現実に元カノの存在そして性に関しては元カノの方が一歩上手だという事実を知ってしまったまろんのショックは想像以上にいつまでも心に重力をかけてきた。
稚空のばかっ…デリカシーなさすぎょ…
そしてあの言葉に今も悩まされているのだ
「いいだろ、せっかくプロのものをそろえてきたのに」
と、言うと稚空は何かを取り出した。
なんと医療用の「もうひとつのバージン用」の道具だった。
「あきれた・・」
まろんはそうつぶやきながらも稚空の熱意に押され始めた。
「わざわざ病院から持ち出したんだぜ」
まろんはあきれ返っていた。そのときだった、聞き捨てならない台詞が吐かれた。
「あいつはやらしてくれたのになぁ」
「!?なっ…そんな……」
瞳に涙を潤ませ顔を上げると、そこには落胆とやるせなさの混じった顔の稚空がこちらを見ていた。
「前のは俺がしてほしい事はなんでもしてくれたぜ?まろんは俺の事愛してないんだな…がっかりだよ」
そう言葉を吐きながらベットに座りなおす。
稚空の言葉に声がでない。なんでそんなこというの…愛してるに決まってるのに…。言葉の代わりに涙が次々と頬をつたいスカートを濡らしていく。
「まろん、泣くなよ…」
そう言いながら包む様に抱きしめてやる。そうすると予想通り震えた手で抱きついてきた。そこで甘い言葉でも囁いてやると…。
「ごめんな、自分勝手な事ばかり言って…本当ごめん愛してるょ…」
そしてまろんの台詞。
「嫌わないで…なんでもする、から…」
予定通り。まろんを抱きしめながら稚空は怪しいたくらみを含んだ笑みで、嫌わないょ…なんでもするんだろ?、とまろんの耳元で囁いた。