何度も唇に優しい感触が降りる。
その感触は、たまに頬や額をたどり、また唇に戻ってくる。
何度かそれを繰り返した後、水無月は都をゆっくりと抱えあげた。
「お姫様抱っこだなんて、ガラじゃないから恥ずかしいよ」
俯き加減でポツリと漏らすと、
「いいじゃないですか。僕だけのお姫様、って事で」と、それこそガラでもない言葉が
返ってきたので、さらに気恥ずかしくなってしまった。
たまらず顔を上げたら、思いっきり目が合ってしまったので、
照れ隠しに首をのばして頬にキスをしたら、額へお返しのキスが返ってきた。
水無月はゆっくり都をベッドに横たえ、窓際へ歩く。
(あ、カーテン閉めてくれてるんだ・・・)
自分を簡単に抱え上げた両腕。そっとベッドに下ろしてくれた、優しい瞳。
思い返して、かぁっと、頬に朱が走る。
都はぎゅっと、両目を閉じた。
ベッドのスプリングが軽く沈む。水無月がこちらにきたことに気づき、都の体が心持ち
固くなる。
どうしていいか分からないのでそのままじっとしていたら、まぶたに軽く口づけされた。
恐る恐る目を開けると、少し緊張した面持ちの水無月がこちらを見つめている。
「い・・・、委員・・・」少し張り詰めた空気を和らげたくて言いかけた言葉を、水無月は制した。
「ちゃんと、名前で呼んで下さい」
「え?」
思わず目を開けると、少し照れたような、困ったような水無月の顔が、近くにあった。
「ちゃんと、僕の名前で言って下さい。"委員長"じゃなくて僕の名前で」
「や、大和・・・?」名前を呼ぶだけなのに、言いなれてなくてつっかえてしまう。
だが、水無月は嬉しそうに微笑み、都に覆いかぶさると、首筋に顔を落とした。
「好きです。都さん・・・」
水無月は左手で都の右手をぎゅっと握り締め、空いた右手をウエストに添える。
何度も好きだと繰り返しながら、都の首筋を軽く啄ばむ。
「ふ・・・っ」小さく漏れる吐息。
「くすぐったいですか?」
「ううん。そうじゃないけど、何だか変な感じ・・・」
「なら、これは?」
言うと、都の首筋を舌でなぞる。
「やぁ・・・っ!」
濡れた暖かいモノが首筋を往復するたびに、ざわざわとした感触が都を襲う。
顔を真っ赤にさせ、声を上げるまいと歯を食いしばる表情が可愛くて。もっとそんな顔が見たくて、
水無月はウエストに添えていた手をゆっくり上へ滑らした。
「ぁ・・・」
服の上から、胸にそっと触れる。
ゆっくりと円を描くように、服の上から胸を揉みしだきながら、都の唇を唇で塞ぐ。
「んっ・・・ふ・・・」
舌を唇から差し入れ、歯列を軽くつついてやる。
それでも都はぎゅっと歯を噛み締めたままなので、水無月は服の裾から手を入れ、下着越しに
胸を少し強く掴んだ。
「やぁっ・・・」思わず声をあげる都。
軽く口を開けた隙に、水無月は舌を都の口腔へ差し込んだ。
「ん・・・ぁ・・・っふ・・・」
戸惑う都の舌を己の舌で追い、絡めながら。右手は胸をいったん離れ、洋服のボタンに手をかけた。
深いキスを繰り返しながら、ゆっくりと胸のボタンを外していく。
一つ外す毎に、白い肌が少しずつ現れる。
まだ少し寒い外気に現れた肌が触れる度、都の体に細かい震えが起こる。
頭がくらくらする。・・・いや、頭の芯が、ぼうっとしてくる。
(どうしたのよ、私・・・)混乱する都の頭にも、次第に霞がかかっていく。
胸の鼓動は一向に収まらないし、何だか何も考えられない。
(もっと、余裕があると思ってたのに・・・っ)
水無月の唇に、指先に、自分が解けていくのが分かる。
触れられる度に、震える体。
我慢しても、出てしまう、声。
恥ずかしくて、死にそうなのに、でも、嫌じゃない。
それは、自分を少しでも安心させようと握ってくれている手があるからなのか。
目が合うたびに降ってくる、キスのせいなのか。
そんなことを思っているうちに、上着のボタンは全て外されてしまった。
「や・・・っ、見ちゃだめ・・・っ・・・。んんぁ・・・」
舌を絡め取られているから、上手く喋れない。
水無月はしばらく下着越しに胸の感触を楽しむと、ブラの肩紐をずらし、都の背中に
手を滑り込ませて、ホックを外しにかかった。
・・・が。