Chiaki side
『……』
「はぁ…なんて送ればいいんだょ…」
一人の青年が冷たい床に文字を打ち込めずにいる携帯を片手に座り込み自分のやるせなさに髪をかきあげる。
携帯の画面には恋人、日下部まろん宛の送信mail作成画面で続きが書けないまま止まっており、先ほどから稚空はその画面とにらめっこばかりしている。
「…迷っててもしょうがないよな」
苦笑しつつ送信ボタンを押し、携帯を閉じ、ベットに横たわる。
…
………
………………
「っ…」
まだ時間にして一分も経っていないが我慢できずベットから起き上がり再び携帯を開く。
「…まだ一分も経ってないし来るわけ無いか…かっこわりぃ…」
髪をかきあげながら苦笑し、携帯を投げ捨てる。
ため息をつき何か飲もうかと立ち上がった時、軽快な音楽と共にmailの受信が完了された。
一気に心拍数が上がる。どんな返信が来ているのだろうか。いや、まろんからのmailではないかもしれない。そんな事を頭の中で考えながらおそるおそる携帯を開き、ボタンを押すとそれはやはりまろんからのmailで表示のボタンを押すと、
『大好きっww(*∩ω∩*)』
一瞬目を見開いたものの、顔がゆっくりほころんでいき返信を書く。
今にも幸せがこぼれてきそうな顔に先ほどまでの不安そうな顔はどこにも見あたらなかった。
人間の気分なんて重い様であんがい軽いものなんです。
Maron side
『さっきはごめんねっ、ぁの……』
「ぁーっもぅっ……なんて送ればいいのょ…稚空怒ってるかな…」
一方、稚空の恋人まろんもベットの上に正座し携帯の画面と格闘していた。
今回の喧嘩もいつものように他愛のないことだった。しかし、あれだけ言い合った後、仲直りする事は何度喧嘩をしてもなれる事はなかった。
「………もっと素直になれたらな…」
ため息をつきながら稚空からもらったネックレスを眺め、苦笑する。
ピリリリ♪♪
稚空専用の着メロが部屋中に響き、バッ、とまろんは起きあがり素早く携帯画面を開く。
mailは稚空からで本文は、
『さっきは本当に悪かった。許してほしい』
「…これだけ、稚空らしいかな」
ほとんど用件のみの単調なmailに呆気にとられ少しの間画面を眺め微笑んでいたが、少しして今一番稚空に伝えたい自分が強く思っている事を文字に記し送る。
「明日は稚空の為にグラタン作ってあげようかなっ」
ピリリリ♪♪
『俺も』
人間思っている事はだいたい同じ、喧嘩したくないなら自分がされて嬉しい事をしてあげるだけの事です。