「よしっできたっ」
休日の正午。さわやかな日差しが窓に差し込む部屋の鏡台の前、入念に髪をセットし薄く化粧をして鏡の中の自分に微笑んでいる少女がいた。
栗色の髪を揺らしながら日下部まろんは先ほど作った愛しい恋人の為に作った弁当をバックにいれいそいそと出かける用意をする。
「ぁっ、お財布…」
まろんの視線の先には恋人、名古屋稚空の部屋。稚空とまろんは、まろんの両親が未だに忙しく一人では寂しいという理由で稚空の家に半同棲している。しかしいくら同棲しているからといって人の部屋に入るのは気がひける。
「えっと……ぃたっっ!?……?」
部屋に入りベットの上を探していると足下にプラスチック製の四角いケースがあたる。
「DVD…?これでいいんだよね」
興味本位で稚空の部屋の機械にセットしDVDを再生する。
「っ……」
TV画面には黒い水着に近い露出度が高い服を着て両手首をしばった男性の男性器をいたぶるように舐めまわす綺麗な女性が映し出され、まろんは目を見開きすぐに画面を消す。
「ぇ…ぁ……」
顔を真っ赤にし俯き困惑の顔をしながら頭の中でなんとか整理をする。
(稚空の…なのかな、稚空だって男の子だし…。ああいうのが好きなのかな…)
「みた?ちょーかっこいいよね背高いし」
「クッキーあげちゃったっ話しちゃったし」
女子高生がビデオ店のドアから何度も中を振り返り熱い視線を送りながら帰って行く。このバイト先に来る度何度見た光景だろうか。中ではそんな視線馴れているというように平然と仕事をする自分の思い人名古屋稚空がいた。
店内に入ると人が入ったことを音が知らせ、稚空も自分に気づき微笑んで近づいてくる。
「きてくれてありがとな、後少しで休憩入るから休憩室で待っててくれよ」
稚空の言葉に微笑んで頷き裏側から休憩室に入る。中は簡単に寝れるようなソファーと小さい机がありオルゴール調のBGMが流れている。
ソファーに座っていると少しして待たせて悪い、と稚空が入ってくる。
「わざわざごめんな、財布忘れて昼も買えなくってさ」
助かったよ、と頬にキスをし恋人の作った弁当を食べ出す。
「…女の子にいろいろもらってるんだからそれ食べればいいのに」
ついさっきの子達の事を思いだし両手で頬杖をつき軽く毒ずいてしまう。稚空はそんなまろんを見て微笑み軽くまろんの頬をつねる。
「やきもちかー、そんな可愛い事するとどうなるかわかるか?」
弁当を置き軽くソファに押し倒す。もちろん冗談であり、まろんが嫌がればすぐ止めようと思っていた。
しかし、まろんは稚空のいきなりの行動に先ほどの映像を思いだし頬をいっきに頬を染め俯く。そんなまろんに瞬間的にキスし舌を絡める。
「んんっ…ふ…」
「……理性抑えらんなかったらごめんな」
首もとにキスしていき服の上から豊満な胸をゆっくり揉みしだいていく。
「ね、だめ…人きちゃうからっ」
「そんな顔して説得力ないな…当分休憩する奴はいないから大丈夫だよ」
「だ、だって…や、こんなとこで…っ」
首筋にぬるりと舌を這わされ声が震えた。
服越しに胸の突起を掴まれて身をよじる。
「嫌って言ってもちゃんと身体は気持ち良いって言ってるよ」
言いつつ稚空がスカートの中に手をさしこむ。
「やぁっ、本当にやなの!」
「ふぅん?」
言葉と同時に稚空がクリトリスを軽く擦った。
「ひぁっ」
まろんから思わず鼻に掛かった声が出た。
「やっゃっ、あ、ぁっ」
こんな場所なのに、徐々に周りが気にならなくなってくる。変だ、私。
とろん、と溶けたまろんを見て稚空はそろそろかなと思った。
その予測を裏付けるように、まろんが小さく身体を震わせる。
それを悟った稚空はまろんに口付け喘ぎを奪った。
「ん、むぅっ」
苦しい、とまろんが感じるかそうでないかの内に稚空がクリトリスをきゅ、っと
摘みまろんは淡い快楽に身を委ねた。
まだ息も落ち着かないまろんをおこし、大丈夫?と聞くと、稚空はまろんの服の乱れを直してやった。
「最後までしたいとこだけど、誰か入って来たら困るしな。あんな可愛いまろん、他の奴には見せたくないし」
ほっとしたような、物足りないようなまろんに稚空が笑いかける。
「そんな顔するなって。ここまでするつもりはなかったんだから」
結果的にはしたくせに、と口を尖らすまろんの頬に稚空はキスしてやる。
「帰りにまろんの好きなケーキ買って帰るから、な?」
「……いちごののったやつ、だよ」
まるで子供なまろんの返事に稚空は思わず苦笑してしまう。
「じゃあ、お仕事頑張ってね」
と言い、休憩室を出ようとするまろんに稚空はそっと耳を噛んで囁いた。
「続きは帰ってからな」
それを聞いたまろんはまたもや顔を赤くし、足早に帰って行った。
家に着いたまろんは稚空の部屋で自分の携帯の着信音がなっているのに気付く。
そういえば、出掛けるときにおきっぱなしにしていたかもしれない。
部屋に入って画面を開くと稚空からのメールで
【予定より忙しくて6時くらいにかえる】
との内容だった。
パチンと携帯を閉じると、先程のDVDの空ケースが目に入った。
「あ、入れたままなんだっけ」
取り出しボタンを押そうとしたまろんの手が止まり、恐る恐る再生ボタンへと、延びた。
「稚空がこういうの好きならしてあげたいけど…でも…」
先程の映像はあまりにも自分の世界とはかけ離れていて
もう一度再生ボタンを押す勇気は持てなかった。
しかし、まろんは心の中で、一つの決心をしていた。
そして、日は暮れていった。
六時には帰る、といいながらもあまりの客の多さに仕事を抜けられず、
家に帰ったのは結局九時近くだった。
もちろん、ケーキ屋は閉まっていたし、コンビニのケーキなんかではまろんが
機嫌を直すわけがない。
手ぶらで帰る気まずさに、稚空は顔色を若干曇らせながらも、ドアチャイムを押した。
「まろん?」
チャイムが響く音がしても、足音はしてこない。
「帰った……か」
かんかんに怒っているまろんを想像し、稚空はため息をついた。それから鍵を開けて
部屋の中に入っていく。
靴を脱ぐために身をかがめると、可愛らしい蝶のモチーフのついたミュールが目に
飛び込んできた。稚空が目を丸くする。
「まろん?いるのか?」
声をかけてみても帰ってこなかった。リビングの明かりも消えたままだった。
とりあえず荷物を下ろそうと寝室に入っていくと、ベッドのふくらみが目に付いた。
あかりを付けてみると、天下泰平、といった表情で、まろんが寝息を立てていた。
あまりにも安らかな寝顔に、稚空が口元を緩めた。そして、ベッドに腰を下ろすと
まろんの髪を撫でてやる。
そのかすかな刺激に、まろんの瞼が動いた。大きな瞳が、ゆっくりと開かれる。
「……ぅ……ん?」
「ただいま」
おきぬけの無防備な表情で、まろんが稚空を見つめた。散漫な動作といやに赤い唇が何とも
色っぽく、稚空が思わず手を伸ばす。
「おそかったのね」
稚空の手を払いのけ、妙に冷たい声音でまろんが言った。稚空が取り繕うように
微笑みかける。
「ごめんな。どうしても抜けられなくって」
「ふぅん……ケーキは?」
尋問でもするような態度で、まろんがまた冷たく問い掛けた。稚空が若干笑いを
引きつらせる。
「ごめん、ケーキ屋閉まってて」
「へぇ」
「明日買ってくるから、な?」
稚空が機嫌を取るようにまろんの髪を梳かし、口付けた。しかし、まろんは
赤い唇をとがらせて稚空から身体を離す。
「まろん」
「いや。約束破るなんて酷い」
「悪かったって!」
まろんがそっぽを向いた。稚空が困ったように曖昧な笑みを浮かべる。
「なんでもするから、許してくれ。な?」
その言葉に、まろんが顔を輝かせた。じゃあね、と上目遣いに稚空を
見やると、首を傾げて楽しそうに笑う。
「ひざまづいて謝って」
そういうと、まろんは上体を起こして布団をはいだ。現れた彼女の体に、
稚空が目を瞠る。
黒いレースの、揃いのブラとショーツ。いつも淡い色の下着を好む
まろんにしてみれば、おそろしく大胆な選択に思える。
すんなりとして色っぽい太腿に巻かれた、黒いガーター。
いっぱしの娼婦の様な恰好で、まろんは赤い唇をほころばせていた。
「ひざまづいて謝って。今すぐよ」
「はぁ!?」
あんまりにも奇妙な発言に、稚空が素っとん狂な声をあげた。
しかし、まろんは表情一つ変えない。
「なんでもするんでしょ?早く……早くおし!」
まろんがドスを聴かせて声でうめいた。稚空が狐につままれたような
表情でまろんを凝視する。
「………熱でもあるのか?」
「違うのぉ!いいから早くっ!」
まろんがだだっこのように言うので、稚空は何がなんだか解らないまま
床に正座し、謝った。
「すいませんでした……?」
「んー……まぁいいわ。よしよし、いい子ね」
まろんが満足気に笑った。上機嫌で髪を揺らし、白い脚を伸ばす。
「じゃあ次はね、足舐めて」
「………もう少し寝るか?」
あんまりな言動に、稚空が心配したように声をかけたが、まろんは
涼しい顔で聞こえないフリをしていた。
嫌がらせの一種か何かだろうか、と稚空は訝しがりながらもまろんの足に触れた。
しかし、ふと視界の端に映ったプラスティックケースに、稚空が顔色を変える。
「まろん!」
「何?早くなさい」
高慢な、女王前とした彼女の態度に稚空は複雑な笑いを浮かべた。
なるほど、それなら全て合点がいく。
「つき合わさせていただきますよ、女王様」
口の中だけで、稚空が小さく呟いた。
あ……そう、もっと…もっと…」
ぴちゃ、ぴちゃという水音に混じり、まろんの囁きが漏れた。
稚空は言われたとおりに愛撫を続けている。時間が経つにつれ、唇の
位置が上がってくる。それにつられるようにまろんの声が
だんだんと高くなっていく。
「……ああっ!だめ……そこ、いや………」
内腿の辺りを愛撫され、まろんがいつも通りの甘えたような
声があがった。そこではっとしたように、まろんが大きく首を振る。
「だめよ!……そこは、まだダメ」
まろんの厳しい声に、稚空が面白がるような表情になる。
それから、甘えるようにまろんの腿に顔を埋める。
「……だめ?」
「だ………め」
心の揺れを悟らせまいと、まろんが表情を固くしたまま呟く。
しかし、稚空は更に身体をまろんにもたせかけ、彼女の
脚を愛撫していく。
「次はどこ?」
「………っ!」
馬鹿にされてまろんが顔を赤くした。それから悔しそうに唇をかみ締めると
覚悟決めたように脚を開く。
「分かってるでしょ?ねだりなさい」
高慢な態度を崩さぬよう、語尾に気を配りながらまろんが呟いた。
稚空はまた面白がるような笑いを浮かべた。
「何してるの。早くねだりなさい」
余裕を見せる稚空に、まろんが急かすようにもう一度言った。
そうでもしないと、上手くやれる気がしなかった。
ただでさえ心臓はドキドキしているのに。
「……まろんの一番可愛いところを舐めて、気持ちよくさせたい、…です」
しばらくした後、稚空が取ってつけたような敬語でそう言った。
恥ずかしそうな様子は見えないが、言うまでにかかった時間をためらいととることにした。
「いいわ。じゃあ脱がせて」
偉そうにそう言うと稚空がまろんのショーツに手を掛けた。
まろんが腰を浮かすとスルリとショーツは足から抜けた。
明るい照明の下、まろんのそこが稚空の目の前に晒された。
薄い恥毛の奥に甘い女の香りがたちのぼる。
「…ちゃんと私を満足させるのよ。そうじゃないとお仕置きよ」
意を決したようにそう言うと、まろんはベッドに腰掛けたまま、壁に背をもたせ
稚空の目の前に更に足を開いた。
「仰せの通りに」
楽しそうにそう呟くと、稚空はまろんの足の間に身体を割り込ませ、ひざまづくと顔を近づけて舌を這わせた。
「ふっ…ゃ、あ…んんっ、ん…っ」
ぴちゃぴちゃと舌が上下するたび、「女王様」の口からも否応なしに声がでる。
その声を少しでも抑えようと、唇を噛んで堪えるがあまり効果は無い。
かといって、あまりにも声を我慢している様子は「女王様」として、ふさわしく無いようにも思えた。
今更自分で開いた足を閉じることも出来ず、まろんは襲いくる快楽に身を焦がすしかなかった。
稚空は、両手でまろんのそこを開き、奥まで舌を突き込む。
思わず腰を逃げさせるが、後ろは壁なので上手くいかず、更に追い詰められた状態となってしまう。
「やぁっ、ん、ん、んっ…!」
一度舌を抜かれ、下から上へと一気に舐め上げられたとき、まろんは最初の限界を迎えた。
内腿がヒクヒクと震え、息が上がる。
満足させろ、と偉そうに言っておきながら、いつもより早く達してしまったことに
少しだけ悔しい思いを抱きながら次の行動をおこそうとする。
が、稚空の舌は、次にぷっくりと膨れ上がった芽に集中的に愛撫を行ってくる。
「やっ、あっ、…く、ぁ、んんんっ…!あ、あぁっ!」
一度限界まで達した余韻も手伝い、間髪置かずにまろんは再び大きく声を上げた。
しかし、それでもまだ稚空は舌での愛撫を止めようとはしなかった。
「も、もういいわ、やめなさい!」
焦りを帯びた声で、まろんが稚空の舌から逃げた。
「満足していただけましたか?」
からかうような口調で、稚空が呼吸を乱しているまろんに訊ねた。悔しさと快楽に
唇を震わせながら、まろんが稚空を睨みつける。
「……ええ。もう充分」
その台詞に稚空がふっと笑った。彼女の言葉どおり、敏感なそこは充分すぎるほど
の刺激に震え、稚空のそれが入ってくるのを待ち受けている。
「服を脱いで。早く」
「脱がせてもらえませんか?」
主導権をどうにか維持しようと、無駄に偉そうな態度でまろんが稚空に指示した。
しかし、それも間髪いれずに返され、途方にくれてしまう。
「………いいわ。ここへ来て」
まろんが自分の隣を手で叩いた。稚空が示された場所に座り、まろんと向き合う。
あまりにも堂々とした彼の態度に、まろんのほうが途惑っていた。おそるおそる、と
言った様子で彼の服に手を掛け、脱がせていく。
現れた裸の上半身に、まろんが息を吐いた。彼の身体は細身だけれどしなやかな筋肉に
覆われていて、綺麗だ。そう思うと無性に触れてみたくなって、まろんはその胸に
唇を寄せた。
「今度は女王様が舐めてくれるんですか?」
嬉しそうな彼の声音に、まろんがはっとした。これじゃあ立場が逆だ。
かりっと首筋に噛み付くと、まろんが稚空をにらみつけた。そして言う。
「やっぱり自分で脱ぎなさい。見ててあげるわ」
真っ赤になりながら言う「女王様」に、稚空が苦笑いを浮かべた。
何のためらいもなく、稚空が服を脱いだ。まろんがさっと顔をそむけ、彼が
またくくっと小さい笑いを漏らす。
「それで?次はいかがいたしましょう?」
「……そこに、寝なさい」
まろんが覚悟を決めたように言い、自らもブラをはずしてから稚空を睨む。
「寝るだけでいいんですか?」
「他に何が……」
まろんの言葉を遮り、稚空が彼女の唇を奪った。片手で背中を支えてやると、
開いた方の手で愛液が溢れかえっているそこをかき回す。
「っ!……んっむぅっ……んん!!」
まろんがいやいやと身をよじり、顔を背けてキスを逃れた。思わず怯えた
ような表情で稚空を見返すと、彼はしれっとした顔で言う。
「急いで入れると痛いだろう?でも、これだけ濡れてれば大丈夫か」
あんまりな台詞に、まろんが真っ赤になって俯いた。しかし、きっと
顔をあげると彼の肩を掴み、ぐっと押し倒しす。そのまま馬乗りになり、
彼の目をひたと見据えると低い声で囁いた。
「黙って。私だってちゃんとできるんだから……」
そう言うと、まろんが腰を浮かして彼のそそり立ったそれを自分自身に
埋め込んでいった。一瞬眉をしかめるが、体重を掛けて身体を沈めていく。
「あっ……」
どちらのともつかない艶かしい声が、一瞬漏れた。
「あ、あぁ……ぅんっ!」
稚空に馬乗りになっているまろんが苦しげにうめいた。自らの重みにより、
彼のそそり立ったそれが奥へ奥へと突きつけられている。その突き刺すような
感覚に、「女王様」は怯えと媚を含んだ声で何度も何度も悲鳴をあげた。
「やぁ!……おねがぁっん!動かしちゃ……や……ぁ」
たまらずに腰を使い出した稚空に、まろんが哀願した。そろそろと腰を浮かせ、
どうにか快楽から逃れようとしている。
「だめなの……んっ」
「出来るって言ったのはそっちでしょう?女王様」
明らかなからかいを含んだ声で、稚空が気弱なまろんをたしなめた。
「だって、やっ!ん……」
「じゃあ俺は動かない。自分でやればいい」
淡々と言い放つと、稚空はまろんの細い腰を掴んだ。それから、それを自分の方へと
押し付ける。
「っ!あっ、あああっっ!」
甲高い悲鳴を上げ、まろんが大きく首を振った。頬は真っ赤に上気し、唇は喘ぎを
押し殺そうとわななく。稚空がいつものように鈍く瞳を光らせながら、
まろんの腰を揺さぶると、彼女がさっとすくみ上がる。
「ちょ、調子に乗らないで!」
苦しそうに喘ぎながら、まろんが稚空の手を止めさせた。稚空がむっとしたように
眉根を寄せ、まろんを見上げる。
「調子になんて乗ってないじゃないか」
「でも…私が……女王様でしょ?」
自分自身に確認するように、まろんが力なく呟いた。
「そうですよ、女王様。呼び名が気にいらないなら変えてやろうか?」
「結構よ!……とにかく、私、がしたいように……」
するの、の言葉を奪うように稚空がまろんを揺さぶった。まろんが瞳にうっすらと
涙をためながら、小刻みに身体を震わす。
「うあっ………いやぁっだ……めぇぇぇっ……!!」
稚空がもう一度彼女の腰を揺すると、まろんが目を見開いたまま動かなくなった。
きゅっときつく締まる彼女の中で達してしまわぬよう気をつけながら、稚空が
その感覚に身を委ねた。荒い呼吸だけが二人から発され、そのまま凍りついたように
どちらも動こうとしなかった。
それからしばらくすると、稚空が上体を起こした。まだ呆然としているまろんから
自身を抜き取り、彼女を抱き寄せる。
ぼうっとした表情のまろんと目が合うと、稚空はその唇を自分のそれで
塞ぎ、舌を伸ばした。彼のなすがままだったまろんの瞳が次第に熱を帯び、
這い回る稚空の舌に自らの舌を絡める。
ぴちゃ、ぴちゃ、という水音の合間から、まろんの吐息が漏れる。
顎や首に当たるその感触に、稚空が少しだけ身震いした。
「気持ちよかった?」
稚空がまろんと額を突き合わせながら訊ねた。まろんが頬を染め、目を伏せる。
「稚空は………?」
搾り出すような声音で、まろんが囁き返した。稚空がその耳を甘噛みしながら
呟く。
「可愛かったよ、女王様。でも、まろんが本当に満足したとは思えないな」
え、とまろんが稚空を見上げた。子どものように無防備な表情に
稚空はふっと笑いを漏らすと、彼女の顎をぐいと掴んだ。
「知ってる?まろんは本当は虐められるのが好きなんだ」
甘い甘い声音で稚空にそう囁かれ、まろんは胸元まで真っ赤に染めた。
「え……と、私……」
途惑っているまろんの体を、稚空は自分の膝へと持たせかけた。そして、
未だ衰えていない自分自身を口元に押し当てると、きつく言い放った。
「遊びはおしまいだ。本当のご主人様が奴隷に何をさせる教えてやるよ」
そう言ってサディスティックに笑うと、稚空はまろんの唇を指で割り開き、
彼女の愛液でべとべとになった自身をその中に押し込んだ。
舌先から伝わる自らの蜜の味に、まろんが激しく身体をばたつかせた。
しかし、稚空に後ろ手をねじり上げられてしまうとさすがに大人しくなり、
ぼろぼろと涙を流しながら彼のそれを舐め始めた。
「舐めてるだけじゃダメだ。ちゃんと口全部使え」
まろんが首を振り、口を離した。稚空が眉をひそめる。
「やだ……お願い、舐めるの、嫌……」
涙ながらの哀願も、稚空の目には媚態にしか映らない。うんと嫌そうに顔をしか
めると、突き出す形になっていたまろんの白い尻に掌を振り落とす。
「やぁっ!!」
ばしんっ、と乾いた音が立ち、彼女の腰の辺りに赤い手形がついた。
まろんは機嫌を伺うように稚空を上目遣いに見てから、自分の愛液と唾液で
濡れている彼自身を頬張った。
「いい子にしていれば気持ちよくさせてやるよ。だから、言う事を聞くんだ」
唇をすぼめて顔を上下させたり、舌先で弄んだりとまろんが懸命に愛撫を
続けた。稚空も恍惚とした表情でまろんの髪を撫でていたが、いきなり彼女の
頭を押さえつけ、欲望を放った。白濁した液体が彼女の口内に放出され、
ぷぅっと頬が膨れる。
まろんがその液体の苦味と酸味を孕んだ独特の味に目を白黒させた。
稚空は彼女の口から自分自身を抜き取ると、ひとさし指を彼女の唇に突きつけた。
「全部飲むんだ。一滴でもこぼしたらお仕置きだぞ」
冷たく低い響きの台詞に、まろんがまた瞳を潤ませた。
熱い液体を口に含んだまま、まろんが涙目で首を振って必死に訴える。
「飲め。絶対にこぼすんじゃない」
しかし稚空に強い口調で命令されると、怯えたように身体を強張らせ、それを飲み下した。
男の味が喉にひろがる。
しかしそのねばついた感触に慣れていないのか、まろんはむせてしまい
少量のそれがシーツの上に飛び散った。
「けほっ、っ、は…」
なんとか息苦しさが収まると、絶対にしてはいけなかった失敗にまろんの顔が青くなる。
恐る恐る傍らの稚空の顔を見上げると、そこには眉を顰め、冷たくまろんを見下ろす彼がいた。
「誰がこぼしていいっていった」
「ゃ、ごめんなさい、あの…」
明らかに昼間の優しい姿とは異なる稚空にまろんが動揺する。
そう、まるであのDVDの中の女優のような、いたぶる瞳。
「お仕置きが必要みたいだな」
そう言い放つと稚空はベッド下の、自分が脱いだジーンズからベルトを抜き取る。
ベルトを手にした稚空にまろんが怯えの色を表した。
「や…叩くの、やだ…」
昼間見たDVDでは女の人が男の人を鞭で打ってた。
稚空の手がまろんに伸び、その手にまろんが反射的にビクリと震え、
その身を守る為に、両手で頭を抱え込むような姿勢になる。
しかし、稚空の手はその両手を掴んだ。
「叩かないよ。叩くと痛いだろ。だから」
こうするんだ、というセリフと同時にまろんの両手は頭上でベルトに固定された。
その行動の意外さにまろんが息を吐く。
そして稚空はまろんをベッドに押し倒すと、ベッド脇の引出しから何かを取り出した。
始めまろんは稚空が手にした物が何なのか理解できなかった。
稚空がスイッチを入れ、それが動くのを確認したときまで。
稚空が手にしたそれは、クリトリスにも刺激が行く様に作られた二股のバイブだった。
「やだ…それ…そんなの…」
まろんの拒絶の言葉には耳も貸さずに、稚空がそれをまろんの中に突き入れた。
「ぁああっ」
ずぶぶ、といとも簡単に、それはまろんの中にすっぽり収まった。
二股にわかれた部分も、丁度敏感な場所に当たっている。
それを確認すると、稚空はバイブのスイッチを入れた。
「!ぁあ、っあ、あん、やあぁっ!」
手を固定されたまろんが、下半身だけを捩じらせ、その凄まじい快楽から逃れようとする。
しかし逃れられるはずも無く、すぐにまろんは一度目の限界を迎えた。
そんなまろんを見て意地が悪そうに笑うと、稚空は立ちあがった。
「俺は風呂に入って来るから、俺が上がってくるまでそうしてろ。それが罰だ」
稚空の冷酷な宣言にまろんがいやいやと首を振る。
「やっ、ぁ、やだっ、待って、っあ、あぁあ!」
「痛くないだろ。どうせ20分かそこらだ、それぐらい我慢してろ」
そういうと、稚空は寝室のドアを開け、バスルームに向かっていった。
「やぁっっ!!あっやっ……!や…いかな、い…でぇ……」
弱々しい、搾り出すような声音でまろんが懇願したが、無情にもドアが乾いた
音を立てて閉まった。それを見計らったかの如く、下腹部に埋め込まれた異物が
めちゃくちゃに暴れだす。
「んっぁぁあっ?!やだっ、や、ぁああっ!」
まろんが泣き声を上げて、首を振った。瞳に滲んだ涙が頬を伝って落ちていく。
容赦のない、直接的な快楽に頭の中を揺さぶられるような感覚に陥る。
「ぅあっ……や…もぉ、やだぁ……やぁ、んっ!!」
ひくひくと苦しそうに喘ぎながら、まろんがまた達した。腰をくねらせ、どうにか
快楽を遠ざけようとしているが、効果はない。
「ふ、あ、ああ……やぁ……ちあき……やだ……嫌ぁ」
何度目かの絶頂を迎えた辺りから、まろんの声が目に見えて弱くなっていった。
身体が快楽に耐性を持ってしまい、なかなか達せないのかもぞもぞと腰を動かしている。無理やり高みに持ち上げられて弄ばれることより
辛くて苦しい状態に、まろんがまた情けない泣き声をあげた。
「やぁ……も、ぅぁあ……助………け、てぇ……」
全身を震わせてからかすかなうめき声をあげると、まろんが口をつぐんだ。
ぐったりと目を閉じると、自分の意識が遠のいていくのを感じた。
がちゃりとドアが開く音がし、稚空が寝室に入ってきた。
あまりに静まり返ったそこに、彼がぎょっとする。
「まろん?」
慌ててベッドに駆け寄ると、まろんは人形のように青白い顔で
横たわっていた。稚空が頬を叩くと、小さくうめいた。
「ったく……おい、起きろ」
ほっとしたように息を吐くと、稚空が低い声でまろんを揺り起こした。
しかし、彼女は瞼を少し震わせたくらいで、目覚めようとしない。
どうしたものか、と稚空が一瞬だけ考え込んだ。しかし、悪戯を思いついた
子供のように目を輝かすと、まろんから外れ、ベッドの上で蠢いていた
バイブに手にとると、彼女の中に押し込んだ。
「んっ……ぅんっ、ふっ……」
まろんが鼻にかかった声を上げ、腰を動かした。キスをねだるように
唇を開き、赤い舌をちろちろと覗かせる。
自分に優しく抱かれている夢でも見ているのだろうか。
まろんのあまりの無防備さに、稚空が呆れたように肩をすくめた。
それから浮つく彼女の腰に手を掛けると、バイブを動かす手を
はやめていく。
「んっ……うう、ふっ……あ、ん、ああっつっ!」
きゅう、っと秘肉がバイブを包みこみ、まろんが果てた。
その瞬間閉ざされていた目が開かれ、まろんが快楽と驚きに視線を彷徨わせた。
「おはよう」
いまだに何が起きたのかがつかめず、おろおろとしているまろんに向けて
稚空が淡々と声をかけた。冷たい瞳に、まろんが怯えたように身体を縮める。
「あの……今、わたし………」
頼りない声で訊ねてくるまろんに、稚空は口元が緩むのを押さえられずくくっと
低く笑った。それから、小さく耳打ちしてやる。
「覚えてない?寝ながらイケるなんて、よっぽどいい夢みてたんだな」
まろんの全身ががばっと赤くなった。首を振り、絶望したように目を伏せている
ところを見ると、達してしまったのは覚えているらしい。
「あ、解ってた?だとしたらさすがだな。こんなにいやらしい子、滅多にいない」
その朱に染まった耳朶を甘噛みしながら、稚空がまろんを責め立てる。
真っ赤になったまろんの目の淵が、また潤み始めた。
「いや……っ…違うの………知らなかった…」
「何を?」
「やぁっ!」
何を求められているのかが解ったのか、まろんが大きく身をよじった。
どうにか逃げようともがくが、稚空に手首をベッドに押し付けられているので
上手くいかない。
「何を知らなかったんだ?何が違うんだ?」
「いやぁっ!お願い、やめて!嫌なのっ!」
よっぽど事実を認めたくないらしく、まろんが悲鳴をあげた。しかし、稚空は
怯むことなくまろんを抱きすくめ、何度も何度も意地悪く訊ねる。
「何が嫌?どうして嫌?」
遂に、まろんがか細い声を上げて泣き出した。
彼女の頬をぬらす涙を見、稚空がぞっとするほど冷たい笑いを浮かべた。
不幸な事に、まろんの涙で曇った目は彼のその表情を捕える事は出来なかった。
「教えてくれないなら、無理やりにでも聞こうか」
稚空が誰に言うわけでもなく、ぽつんと呟いた。まろんは彼に組み敷かれた
体勢のまま、ぐずぐずと泣いている。その唇にそっと自らの唇を
重ねると、稚空は無防備になった彼女の体にそっと手を伸ばした。
いつの間にか腿に触れていた彼の手に、まろんがぴくんと身体をひくつかせる。
唇を奪われたまま、不思議そうに稚空を見上げると、彼はまろんの唇を開いて
舌を割り入れながら腿を撫で回した。
そして、だらんと開かれたまろんの腿の間に手を滑らせると、愛液でべとべとに
なったそこを愛撫していく。
「ん……む、ぅ…うん………ん!」
柔らかい動きで這い回る指先に、まろんが腰をくねらせた。
何度も達した後の身体は、驚くほど素直に反応している。
「あ……はっ……ぁん、ぃや……あん」
唇が離れると、甘ったるい喘ぎ声が漏れてきた。まろんがはっとした様に
唇をかみ締める。
稚空の指がまろんの濡れそぼった秘所に入れられた。途端に
淫らな水音がもれ、彼女が顔を背けて小さく震えだす。
「なぁ、何が違うんだ?」
くちゅ……くち……ちゅ。
「んっ………ふ、あぁ、あ、ん……やぁ…」
「何を知らなかったんだ?」
「やっ!ん、は、ぁ……きゃあ……ん」
入れらていく指が増えるたびに、まろんが頬を上気させて身をよじる。
指の動きはどんどんと速くなり、まろんの声と動きはどんどん大きく
なっていく。
「あはっ、あ、あ、ん、あぁっ!」
彼女の喘ぎがいよいよ高くなった辺りで、稚空が指を動かすのを止めた。
「ぇ……?」
まろんが途惑ったように稚空を見上げた。稚空は意地悪く笑いながら、
てらてらと光る指先を弄んでいる。
「ねぇ、あの、なんで……」
やめちゃうの?
という言葉が暗に含まれる響きで、まろんが訊ねた。稚空は指先を
一舐めすると、彼女の口にすべり込ませた。
まろんは一瞬だけ眉をひそめたが、指に舌を這わせた。その行為にすら
興奮してしいるのか、腿をもぞもぞと擦り合わせている。
「んんっ、ふ、うむ…ぅん」
「もっと気持ちよくして欲しい?」
空いたほうの手で彼女の胸を愛撫しながら、稚空が訊ねた。まろんが
上目使いに彼を見つめ、小さく頷く。
「してあげようか」
彼女がまた小さく頷いた。視線をそらし、恥らったような態度をとっては
いるが、それとは裏腹に秘所からはとめどなく愛液があふれ返ってきている。
「じゃあ、言って」
稚空は気軽にいい、まろんの口から指を抜きとった。
「……………気持ちいいこと、して?」
たっぷり10秒以上考え込んでから、まろんがちいさなちいさな声で呟いた。
稚空が首を振る。
「聞こえないなぁ」
「……わたし……まろんに、気持ちいいことしてください……」
絞り出すような声で、まろんが囁いた。羞恥で顔中が真っ赤になっている。
まろんの言葉に、稚空は相好をちょっと崩した。が、また首を振る。
「違う。何が違ったんだかを言って欲しいんだ。何を知らなかったんだ?」
ひょうひょうと言い返す稚空に、まろんが泣きそうに顔を歪めた。
「…どうして意地悪ばっか言うの?私に優しくするの、嫌なの?」
小さな小さな声でまろんが、それでもしっかりと言い返した。
ボロボロと涙を流す瞳はふせられている。
「まろんがそういう態度とるからだよ。ちゃんという事きかないから」
稚空は少しも動じた様子は無く、淡々と言葉を返した。
こう言えば少しは優しくしてくれると思ったのに。予想外な返答にまろんは思わず稚空を睨み上げた。
「だってさっきはあんなに優しかった!いっぱい好きだよって…」
それをきいた稚空は始めは驚いたような顔をしていたが、
やがて何かに気付いたように笑い、まろんの頬を手で包み込み額を突き合わせる。
「…いつ?俺、今日のいつまろんに優しくした?」
「だから、さっき…」
眉を顰め、なに言ってるの、といった様子でまろんが答えるが、
はっとしたように口をつむぎそのまま耳まで赤くなった。
自分がさっき見た夢での事を勘違いして稚空に言ったことに気付いてしまったせいで。
「ちがっ…ぁ、間違えたのっ…今日じゃなくて、この前!」
包み込んだ手の中で、しどろもどろに説明するまろんが可笑しくて、
つい稚空はくすくすと笑いを漏らしてしまった。
「へぇ?」
「ね、この前あったよね、寝起きだからぼんやりしてて…」
「さっき見た夢のことと間違えた?」
「そう!」
焦りのためか、思わず返事をしてしまい、
まろんの顔からさぁっと血の気が引くのを稚空は容易に見て取れた。
「俺、優しかったんだ?」
もう言い逃れが出来ないと観念したのか、まろんは俯いて何も喋らない。
「それで、気持ちよくて…どうなったの?」
直接的な質問にまろんの肩がびくっと震えた。
稚空は何も答えないまろんの首もとに顔をうずめ、丹念に愛撫を始める。
すでにとろとろに溶けている秘所にも手を伸ばし、中に入れず、
外側を指でなぞる様に触れた。
「…っ、ゃ…」
思わずその先を望んでしまいそうな言葉をしっかりと噛み締め、
まろんが身体を強張らせた。
それでも稚空が耳を甘噛み、息を吹きかけるとまろんの表情が歪む。
足りない。足りない。足りない。
「俺、入れた?こういう風に?」
その言葉と同時に、指が浅くまろんの中に入れられクルクルと円を描く様に動かされる。
「ぁはっ……」
ちがうの。指なんかじゃないの。もっと大きくて…
「……ちあきの、が入って…きて」
「うん」
「…頭が、真っ白になって…目の前、に、稚空しか、見えなくて…」
「それで?」
「…イきまし、た」
その言葉に稚空が柔らかい苦笑を浮かべた。そして、まろんの中に入れていた指を
さらに押し進める。
「んっ!あっ、やぁ………っ!!」
「そう言われると妬けるな。あれ、俺じゃないのに」
ぐちゅ、ぐちゅと漏れる水音よりも小さな声で稚空が呟いた。
「うぁ……ど、どいぅ…う、意…味……?」
抗えない快楽に押し流されそうになる己を必死で押し留めながら、まろんが
訊ねた。稚空が呆れたように息を吐いて言う。
「まだ解らない?」
稚空の言葉に、まろんが一瞬困ったように眉根を寄せた。考え込むように遠くを
見てから、おずおずと稚空を見上げる。
「わたし……」
「うん」
「寝ながら……あの、あれに……」
「あれって?」
稚空がにやにやと笑いながらまろんに訊ねた。まろんが目を伏せるのと同じ
タイミングで、稚空が彼女の一番敏感な突起を痛くない程度にひっかいた。
「きゃぁんっ!」
「言って。あれって?」
まろんが逡巡するようにぎゅっと目を瞑った。しかし、火照った身体をどうする
事も出来ないのか、瞳がどんどん暗くなり、唇が震えている。
もう少しで、完璧に落ちる。
そう思った瞬間、稚空はひどく楽しい気分になった。
こんなに可愛い子、本当に滅多には見つけられない。
「……ぁ」
「ん?」
「……………バイブ」
消え入りそうな小さい声で、まろんが遂に答えた。簡単な問いの答えを引き出すのに
ここまで時間がかかるとは、とも思ったが、理性を取り去れた事だけで
よしとする。
羞恥の最後のラインを超えてしまったのか、まろんは虚ろな笑いを浮かべて
稚空を見つめている。嬉しそうに稚空はまろんにキスすると、甘く囁いた。
「教えて、どうなったんだ?」
「…寝てるとき…稚空、に……入れられて」
「それで?」
「そのまま、動き出して、それで………イきました」
まろんが薄く笑いながら呟いた。その表情は狂っているようにも見えるが、
ひどく色っぽいのも事実だった。
その顔に煽られたように、稚空の指の動きが激しくなり、それに連動して
まろんの身体が大きく跳ねた。
「つまり?」
「まろん、は……んっ!!ぁ、ふぁ…バ…イブにイかされたんです……ぅあっ!
あ……んい…やらし、い子…ふぁあ……な、んです…………あああ!!」
その一言が鍵となり、次の瞬間には稚空のそれがまろんの中に埋め込まれていた。
勢いよくつきたてられたそれに、まろんの身体が弓なりに反り返った。
「あ!あああああぁあっ!!や、ぁ、んふっ……」
柔らかい彼女の胸に顔を埋めると、稚空は赤く充血した頂点を口に含んだ。
まろんの口から甘いうめき声があがり、同時にきゅうっと中が締まった。
きつくきつく締まるそこに、稚空が一瞬だけ辛そうな顔をした。
しかし、まろんをぎゅっと抱き締めると、腰を突き動かしていく。
「ぁあぁっ!ふっ、あ…ぁ、っん、ん!!」
突き立てられる度に、まろんがたまらないといった様子で腰をくねらせる。
濡れそぼったそこからは粘膜のこすれ合う音がいやらしく響きだし、
二人をさらに興奮させる。
「や……ぁっ…いやぁっ!!」
「嫌じゃないだろ」
ぐいと奥まで突かれ、まろんが大きく首を振った。その言葉尻を稚空が捕え、
意地悪くも訂正していく。
「はぁん………そ、おで……ひゃ…っ」
回らない頭と舌でまろんが答え、もぞもぞと身体を揺すった。見ると、しきりに
固定されたままの腕を気にしている。
「………取って欲しい?」
稚空の提案に、まろんがこくこくと頷いた。へらりと媚びるように笑い、腕を
揺すってみせる。
「とってぇ……やだ、こんなの」
「人に物を頼む言い方が違うだろ」
そういうと稚空が痛くない程度の力加減で白い胸を叩いた。乾いた音とともに
そこが赤くはれ上がる。
「ひゃっ!」
「言い方があるだろう、ちゃんと言え」
「……うでの、とってください」
「誰に言ってるの?」
嬲られるような視線と質問にまろんは一瞬だけ面食らったようだが、熱にうかされた
頭では反抗する気も起きないようで、素直に言葉を紡いだ。
「………腕の…はずしてください、ご主人さま……」
「よくできました」
稚空は嬉しそうに言うと、まろんの腕を戒めていたベルトを外した。
か細い手首にはうっすらと赤い痕がついている。
「んっ、ふっ……ぅん」
自由になった腕を稚空に廻しながら、まろんが嬉しそうに身体を摺り寄せてきた。
鼻にかかった甘い声を上げ、腰をくねらせている。
緩やかな動きで動くその腰を、稚空がいきなり押さえつけた。
「……え?」
「何か言う事は?」
稚空が面白くなさそうに呟いた。まろんがしばらく考えてから、上目遣いに囁く。
「……ありがとうございます、ご主人さま」
「そう、いい子だ」
可愛らしい囁きに、稚空がにっこり微笑んだ。まろんが少しだけ照れ、それを隠す
ように顔を首に埋める。
「ねぇご主人さま……もっと……もっと気持ちよくして下さい……」
可憐な表情と仕草で、小さな「奴隷」は「ご主人さま」におねだりをした。
ほんの1〜2時間程前までは「女王様」として高慢に振舞っていたとは思えない
程に素直でか弱い口調で。
稚空は心底楽しそうに頷くと、まろんの腰を支えて動き出す。
「ん、んぅっ、っ……うぁっ!ふ、ぁぅ、ん!!あ、ああぁっ!」
甲高い嬌声をあげながら、まろんは一人でどんどんと高みに上っていく。
稚空が柔らかな彼女の中を壊さんばかりにかき回し、深いところまで突き入れていく。
快楽に涙を浮かべ、無意識のうちに稚空の背中を引っ掻き回していた。
その鋭い痛みに彼は痛そうに顔をしかめ、まろんを睨みつける。
しかし、彼女はそんな事にも気付かない様子で、一心不乱に喘いでいる。
「あ、あぁっ、すご……いぃっ!!きも…ち、い…気持ちいいっっ!ぁんっ!」
まろんの愛液でぬるぬるにぬめっているそこが稚空自身を締め付け、彼の全てを
吸い尽くそうするかの様に襞が絡みついていく。