柔らかい空気にまどろむ部屋の中。  
まろんがふと目を覚ますと、隣には寝息。  
寝ていても端正な稚空の顔を見ていると、  
先程までの行為の事が思い出され、なんとなく恥ずかしくなってしまう。  
「ぶにー」  
言いつつ、稚空の頬を引っ張ってみる。  
普段よりもいくらか幼い顔になり、子供の時の写真を見せてもらおう、と思った。  
「ん…」  
ふと稚空が声をあげたので、まろんは起こしちゃったかな、と心配したが  
どうやらまだ夢の中らしく、ほっと胸を撫で下ろす。  
まろんが、痛かったかな、と引っ張っていた頬を撫で、改めて彼の顔をまじまじと見てみる。  
女の子みたいにきめの細かい肌。  
二キビとか、無かったのかな。  
運動してるときとか、肌に流れる汗がなんだか色っぽい。  
その肌にかかる、サラサラの髪の毛。  
いい匂い。  
まっすぐで良いなぁ、私、癖っ毛だからなぁ。  
稚空はまっすぐな方が好きなのかな。だったらちょっと…考えるかも。  
そのまま髪を伝ってあるのは、形のいい耳。  
私はこの耳にキスするのが好き。  
私の、どんなに小さな喘ぎ声も容赦なく聞こえてしまうこの耳に。  
今日もきかれちゃったなぁ、隠したつもりだったのに。  
くっきりと二重の線が着いた、閉じられた目。  
まつげ長くていいなあ。  
この目が、優しく笑ってるときの顔に弱い。すごくすごく、大好き。  
おじさまは稚空よりちょっとタレ目かな?  
 
そして、最後に辿りついた口。  
この口から、優しい言葉も、意地悪な言葉も出るんだ。  
稚空に唇を重ねられると、身体の力が抜けてしまう。頭の中も真っ白で、なんにも考えられない。  
どうしてなんだろう。いつか慣れるときが来るのかな。  
いつもすごい恥ずかしいけど、慣れるって思ったら勿体無いかも。  
 
まろんの指が、稚空の唇に伸びて、触れる。  
そのままそっと撫でてみると、唇を重ねられているときとは違う、  
いやらしくない、健康的な感触がまろんに伝わった。  
……柔らかそう。  
……あったかいかな?  
幾度となく触れていたが、ふいにまろんは稚空の唇に吸い寄せられるように自らの唇をそっと重ねていた。  
 
触れた、だけ。  
まろんは、啄ばむだけのキスをしたのは久しぶりだったことを思い出す。  
ねっとりとした、頭が真っ白になってしまいそうないつものキスとは違い、  
口の先で、お互いの温度を感じ合うキス。  
一瞬熱くなり、その熱はすぐにどこかへ行ってしまう。  
この熱を、もっと感じていたい。とどめておきたい。  
そう考えた時、まろんは稚空と再び唇を重ねていた。  
甘く、とろける熱を求めて。  
ああ、だめ、稚空が起きちゃう。  
でも、もう一回だけ。もう一回…  
幾度かそのキスが繰り返された時、またまろんは心地よい眠りに包まれウトウトとまどろみはじめた。  
 

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