知らなくていい。
ただ、アナタといたかっただけだから。
「フィン!」
まろんに次の仕事を教えるため学校に向かおうとした私は、窓から入ってきた“誰か”に不意に呼ばれて硬直する。
恐かったんじゃない、振り向かずともアナタだと分かってしまったから。
「フィン!こっち向けよ!」
動かない私に、少しだけ声を荒立てて呼ぶアナタが、どんな顔をしているかなんて知りたくない。
だから、動かなかった…
いいえ違う、動けなかったの。
「……アクセス」
何も言うつもりじゃなかったのに、唇は思いを裏切って開いてしまった。
言ってしまってから、唇を強く噛んで後悔する。
アナタが近づけば、私は逃げなくてはならないから。
「なぁ、フィン…もう、止めろよ?なんで、俺たちがこんなことしなきゃならない」
切なげな声が後ろから聞こえたと思うと、急に背中が温かくなる。彼に抱き締められた。
「触らないで」
温かい、アナタの腕が私を抱き締めるけれど、私は冷たいまま。
私はアナタと共に生きることを放棄したから。
この道を選んだ理由がどんなに滑稽なものか。
誰にも知られちゃいけない。