香宮の家は、俺の乙宮の家とは比べ物にならないほどでかい。
義理とはいえ、姉に一目ぼれした俺だったが、改めて灰音が売りに出される前の環境がどんなものだったか思い知らされるようだった。
そして同じようにこの家で育てられた彼女…小牧。
お嬢様で、高飛車で、世間知らずのわがまま…最初はなりゆきで仕方なく付き合っていた俺も、次第に小牧が大切でかけがえのない人にかわった。小牧がすきだった。
小牧の部屋に通された。広い広い部屋…俺の部屋の3倍はありそうだ。
赤やピンクで統一されたかわいい家具…真っ赤なソファー、二人の写真が飾ってあるチェスト、天窓つきのベッド。
執事の人が雨でびしょぬれになった俺を見かねてシャワーに入れてくれた。すぐ帰るつもりだといったのに、灰音様の義弟様ならばと泊まるように薦めてきた。
この家の人間は、俺と小牧の関係をどこまで知っているんだろうか?
灰音が心配だ。風邪を引いてるのに、雨の中家を飛び出すなんて…ホントにバカだ。プラチナを、生徒会を皇帝にやめさせられた。好きな人に、出て行けと…。
そんなにあいつのことが好きだったのか
小牧が不安そうな顔で部屋に戻ってきた。俺の顔を見るとちょっと笑ってソファーの隣に腰かけた。
「灰音、大丈夫なのか?」
「一応…今はお休みになられてますわ」
「そっか…。お前も雨の中走ったんだろ?寒くないか?」
「あ、そうでしたわね…姉様が心配で気が付きませんでしたわ。シャワー浴びてきます」
といって室内にあるシャワールームへかけて行った。
小牧は何の意識もしないでシャワー浴びるなんていったんだろうな。純なやつめ
ベッドに腰掛けて、思った。
小牧は何で俺が好きなんだろうな…。惜しげもなく飾られた俺と、小牧の写真。
俺は何で小牧がすきなんだろうな…。いつの間にか小牧に灰音を重ねることもなくなった。
健気に、一心に真っ直ぐに、俺を思ってくれる小牧が、いつしか本当に愛しくなった。いつか、手に入れたいと思った。
シャワールームから出てきた小牧は、フリルのついたワンピースにカーディガンを羽織っていた。細いふくらはぎと足首が見えている。
「草芽は今夜はどうなさるの?」
「あー…。母さんも父さんも灰音が心配でたまんねーみたいなんだ。電話したら、出来るだけ近くにいて、何かあったら連絡して、だってさ」
「じゃあ今晩は泊まっていかれるの?」
「まーそうだな」
「嬉しい!ちょっと心細かったから…」
にっこり笑って俺の肩に寄り添う小牧が可愛かった。
そのうちにぐっすり眠ってしまったので俺は何も手が出せなかったけど。
ベッドに小牧を寝かせて、その隣に横たわった。
優しい寝息をたてる小牧をみていると、時間がたつのを忘れた。
白い肌、曲線を描く綺麗な黒髪、細く伸びた首筋と、息の漏れるふっくらとした唇
いつか手に入れたいと思っていた全てがそこにあると、たまらなく心が動いた。
そっとバレないように、起こさないように、つるつるの頬にキスした。
目を覚ます様子がないので、おでこや鼻の上にキスした。
それでも起きないから、そっと唇を重ねた。
ふと顔を見ると小牧は泣いていた
「こ、小牧…起きてたのか…?」
たずねてもたずねても、ポロポロとこぼれる涙をぬぐうことしかしない小牧が呟いた。
「う、嬉しいの…。」
え?ともう一度聞き返すと、潤んだ瞳で俺を見つめた
「草芽が…草芽は…姉様がまだ好きなのかな…って不安で、不安で…でも、キスしてくれた
…こんなに愛のあるキスは初めてだよ…」
小牧の言葉を聞いて草芽は限界を感じた。
小牧の上に覆い被さり、耳や首筋に、思いのままに唇を這わせた。
そして服を一枚一枚はいで、鎖骨や肩を撫でては抱きしめた。
「く、草芽…っ 早ぃ…だめですわっ」
小牧の言葉に耳も貸さず、草芽は不器用に小牧の体を包み込んだ。
自分の上着やシャツを脱いで、改めて小牧の顔を見つめると、また愛しさが込み上げた。
草芽の視線で体全身が熱くなっていくのを感じた小牧は思わず顔を背けた。
草芽は一息つくと、ゆっくり胸のふくらみへと手を当てた。
じっくりと大きく実ったそれを、手のひら全体を使って包み、握る。
「んっぁっ…はぁっだめ…」
初めての感覚にしわを寄せながらも、そこに愛を感じている。小牧から自然と言葉がこぼれた。
草芽は自分の持てる若い知識を総動員した。
小牧を優しく、気持ちよく包んであげるにはどうしたらいいだろう…
唇でとんがっている小さいピンクの実をつまんだり、なめたり、ひっぱったり…
その度に溢れる小牧の声は朦朧と、なすがままに流れているようだった。
止められない若い欲望が、草芽を駆りたたせる。
手で、舌先で、大きく育ったかわいい小牧のふくらみを遊んだ
嬉しいけど怖くて、嫌だけどそこに愛を感じて…
小牧は訳が分からず、ただ草芽の首にしがみついて身を任すことした出来なかった。
「草芽…っ は、恥かしいですわっいや…」
小牧の言葉に一瞬我に返った草芽は、ベッド脇のテーブルに置いてある照明のリモコンを取って調節した。
電気は消えてベッドの足元のダウンライトだけが、二人の輪郭をぼやかしつつ映す。
「これでいいか?」
「…あの、私あちらの部屋で寝…」
「今」
「草芽…私たちまだ…」
「優しくするから」
耳たぶにキスした。草芽のキスは優しい。見つめられるだけで心がとまりそうになるほど真剣な瞳。
「それとも…嫌か?」
ふとももに右手を這わすと、小牧の体がビクっと震えた。
「小牧が好きだ…好きじゃないと、こんな風に迫ったりできないよ。俺臆病者だから…」
「そんなっ草芽は…立派な方ですわ…そんな草芽が私は…」
小牧が体を起こして草芽に抱きつき唇を重ねた
「…凄く、すきですわ」
抱きしめあう体は自然と同じベッドへ沈みこみ、夜が明けるまで離れない。