自分が他の人とは違う種類の人間だと気付いたのは  
遠い昔、自分がまだ幼いころのことだった。  
 
仲良く分け隔てなく育てられた記憶はほどんどない。  
気付いたら大人たちは、病弱な自分の弟の周囲ばかりに集まり  
自分という存在には目もくれず、彼のご機嫌を取っていた。  
そして両親も、病弱な彼をいつもいつも心配して、  
少しでも具合が悪くなるとと、めったなことでは休まない仕事を  
二人とも放り出して、ベットの上で苦しんでいる弟の手を握っていた。  
 
勝手に外に出ることは禁じられ、  
それでも礼儀作法は厳しく躾けられる毎日。  
それでも、オレは一人でそれに耐えた。  
弟の分も頑張ろうと懸命に自分を励ましながら、  
頑張れば自分の小さな願いは、叶うはずだと信じていた。  
 
ある日、高熱が出た。  
おぼつかない足取りで、ふらふらになりながら  
その事実を執事に伝えると、すぐにお医者様を呼ぶので  
部屋でお待ち下さい、と言われた。  
東宮家で働くメイド達が、氷枕や冷たいタオルを用意し、  
体温計で熱を測ったところ、39度近くあった。  
 
大きな病気を今までしたことのなかった自分は  
その事実に酷く心細くなった。  
吐く息は浅く、呼吸することすら苦しくて、  
鳥肌がたつくらい寒くて、熱くて、涙が出そうになった。  
ようやく辿りついた医者の判断は、単なる風邪。  
疲れていたためか、症状が悪化したのだろう、と言い  
薬を処方するので安静にしておくよう、と執事に告げた。  
 
部屋の中に一人取り残され、ドアの向こうの気配だけに集中しながら  
目を閉じて、ずっと両親達が来るのを待っていた。  
大丈夫?と耳元で伝えて、優しく手を握り締めてくれる、と  
苦しくて苦しくてたまらないのに、何処か嬉しかった。  
 
けれど、その風邪が完全に治るまでの間、  
彼らがその大きな重いドアを開けることは決して無かった。  
 
理解したのは、その時だった。  
自分は親に愛されておらず、その寵愛は全て弟が受けているという事実。  
どんなに自分が努力したところで、結局は誰も振り向いてはくれないという絶望。  
 
胸が酷く痛かった。それこそ、自分はまだ病気なのではないかと思う位。  
事実、なんともいえない切ない感情が胸にこみあげ、  
目頭が熱くなる。何かを叫びたかった。けれど何を叫べばいいか分からなかった。  
それでも、ただ泣くことだけは堪えた。  
泣いてしまったら、全てが終わりになってしまうような気がしたから。  
 
自分には何も無かった。  
子供ならば当たり前のように両親から与えられる愛情も、  
病気になったときに優しげに握り締めてくれる手も。  
あったのは、忌々しい東宮という家名と、自分の名前と、もう一つ。  
 
 
あともう一つは、なんだっけ。  
 
 
歌が聞こえた。  
鉛のように重い瞼を閉じたままで、  
その音が何処から聞こえてくるかを静かに探った。  
高く高く生い茂った木の太い幹、荒いごつごつをした感触を背後に感じながら、  
意識はまだ、半分眠ったままだった。  
 
また、歌が聞こえた。  
 
最初の時には美しく、それでいて柔らかなメロディーと辿っていたにも関わらず、  
しばらくすると、僅かながらに音程がはずれ、  
曲の終わりが近い頃には、歌とは思えないほどの音に変化していた。  
終わった後には必ず、あれ、おかしいな、と言う焦るゆうな声が聞こえた。  
いつも自分の隣で微笑みながら話しかけてくれる、彼女の声だと気づくのに  
時間はかからなかった。  
 
ゆっくりと目を見開く。  
自分が目覚めたことを喜ぶように、白い花々や草の芽がざざざと揺れた。  
それに少しだけ笑いながら立ち上がり、ぱんぱん、と手で木のくずを払いながら、  
彼女に気付かれないよう、声を潜めながらその背後に近づいた。  
 
楽譜を持ちながら、また彼女は歌い始めた。  
先程とは違って、今度は音程が上手くとれたようだ。  
彼女の声に従って、静謐な空気が振動する。  
数分間のソロコンサートを終えたとき、彼女に自分の存在を気付かせるように  
ぱちぱちと手を合わせ鳴らした。彼女がはっと振り向いた。  
 
「…た、…た、高成様っ」  
 
自分の存在にようやく気付いた時、灰音は楽譜で自分の顔を隠してしまった。  
何故そんなことをするか分からずに黙って見つめていると、  
顔の上半分だけをオレに見せて、聞いていましたか?と尋ねた。  
 
「今のは綺麗だったぞ。」  
「今のは、ということは…まさか最初からお聞きになっていたのですか…?」  
「ああ、まあな。」  
 
答えると、彼女は再び顔を隠してしまった。  
それでも、隠すことの出来なかった耳の部分や首元が紅く染まっていたことで  
灰音はただ他人に自分の歌を聞かれて  
照れているだけなのだと気付き、笑みが零れた。  
 
「音楽で、歌のテストが近いんです…。  
 本当なら、こんなところで唄うべきじゃない、って分かっていたのですが…。  
 その、家は防音対策をしてないし、音楽室は合唱部の方々が使っているし。」  
「俺は別に構わないぞ。こんなところに、今の時間は生徒も来ることはないしな。」  
「でも、高成様は眠っていたんですよね?」  
 
そう尋ねられ、思わず苦笑いをすると、  
すみません、と言いながら彼女はふかぶかと頭を下げた。  
 
「この場所は俺の私物じゃない。だから謝る必要はないよ。」  
「…でも。」  
「謝るのは俺の方か。歌の練習を中断させて悪かったな。」  
 
謝罪の言葉を口にすると、め、めっそうもございません、と言いながら  
灰音は慌てたように顔をあげ、両手を横に振った。  
ようやく彼女の顔が見れたことに、ほっと安堵する。  
 
「続けてくれ。」  
「…え?」  
「歌の練習を続けてくれ、と言っているんだ。」  
「…けど…、高成様の邪魔に…。」  
「ならない。灰音が唄っているところをもう一度見たい。」  
 
素直に自分の気持ちを伝えると、彼女は一瞬だけ目を見開き  
驚いたかと思ったら、またすぐに笑った。  
彼女から少しだけ距離をとり、草のクッションに腰を降ろす。  
ゆっくりと灰音が深呼吸をする。  
彼女の周囲の空気が、その一瞬だけ停止したように思えた。  
 
ずっと昔に、子供じみた物語を書いたことがある。  
家の者に勧められて、半ば無理やり作ったものだ。  
いくら気持ちをこめたところで、いくら立派な出来であれ、  
その手柄は全て閑雅のものになる。それが腹立たしかった。  
けれども、その頃になると、どうやっていけば自分が生き残れるか、  
うまく世を渡っていけるかという知恵がついていた。  
ここで断るのは得策ではないと判断した俺は、  
嫌々ながらも、物語を作った。  
 
初めは何を書いていいのか分からず、頭を抱えて悶々としていたが  
出来るのなら自分だけが書けるものにしようと思った。  
弟には書けない、自分だけが書けるもの。  
つまりは、自分の分身を。  
 
その結果できた文章は、自分の満足のいくものだった。  
コンクールでは最高の賞を取れたし、  
それが弟の称号であったとしても不思議と嬉しかった。  
認められたのは閑雅ではなく、この自分だと思ったから。  
 
けれどそんな考えは、その後粉々に打ち砕かれた。  
 
誰も、気付かないのだ。  
 
この物語には、ありのままの自分の姿が書いてあるのに。  
東宮当主としての、閑雅しか見ていない。  
閑雅を賞賛することだけを目的に、本を読み、  
当たり障りの無いことを口にする。  
その本に、どんな想いを込めて、  
どんな気持ちで自分がそれを書いたのか、誰も気付かない。  
誰も、知ろうともしてくれない。  
そのことに目の前がまた真っ暗になった。  
 
俺はは気付いて欲しかったのだ。  
自分が、ここに存在しているということ。  
何かを求めて、必死にそのために生きているということ。  
その何かが分からずに苦しんでいること。  
ありのままを書いた。なのに誰も気付いてくれはしない。  
それほどまでに、自分の想いを人に伝えるのが難しいのか、と。  
いつか本当の自分を分かってくれる人が現れるのではないかという薄い期待は  
現実という嵐のような風に吹き飛ばされてしまったのだ。  
 
耳の奥に、優しげな澄んだ声が届く。  
 
彼女の声により過去へと物思いにふけり、  
そしてまたそれによって、今へと意識が戻った。  
照れながら終わりました、と言う彼女に手招きをすると  
少しだけ早く歩いて座り込み、どうでしたか?と俺に尋ねた。  
大きな瞳で不安そうに尋ねる灰音に、見事だと伝えた。  
 
「お世辞はいらないですよ?」  
「人の好意を素直に受け取った方がいいぞ。」  
「本当に、そう思ってるんですね。」  
「ああ、そうだ。」  
 
 
「…よかった。」  
 
 
目を細めながら嬉しげに笑う灰音の表情を見て、胸の鼓動が早くなった。  
長い髪がゆらりと揺れて、どこからか射し込んだ陽光がきらきらと輝く。  
蒸気した頬、赤く濡れた唇。決め細やかな白い肌。  
それにどうしても触れたくて。  
 
触れたくて。  
 
気付いた時には、彼女の体を草むらに押し倒して、  
強引にその唇を奪っていた。  
 
「…ふ…っ…あ?たか…んっ」  
 
突然のことに驚いて、慌てて抵抗し始める灰音の体を押さえつけて、  
自分の唇を彼女のそれに重ねていた。  
最初は啄ばむように、そしてそれだけでは飽き足らずに、  
閉じた唇を舌でつついて、強引にねじ開けた後に  
唾液と一緒にぬるりと舌を入れた。  
 
奥に逃げ込んだ彼女のそれを探りあて、絡めとりながら、  
焦らし、最後にきつく吸い付く。  
呼吸さえも与えぬそれに、彼女は苦しそうに自分の胸元を掴む。  
それでも止められなくて、灰音に触れたくて  
一時唇を離してはまた、同じ口付けを繰り返す。  
 
「…は、あ…っ」  
「…灰音」  
「あっ…高成さまっ…な、何して…」  
 
彼女のしていた自分のネクタイを取上げ、唯一開いた胸元から  
自分の手を差し込む。盛り上がった隆起に触れると、灰音の体がぴくんと動いた。  
 
「…だ…だめです…っ、あ、触らないで…」  
 
耐え切れず、上半身の服を両手で開く。  
ぶち、と布の切れる鈍い音が聞こえたが、そんなこと今は気にもならない。  
白い肌の上に同じような純白の下着。隠れている部分を剥ぎ取ろうとすると  
灰音が思い出したかのように暴れ始めた。  
 
「あ、…いや、いやです…。こんなところで…」  
「誰も来ない。」  
「そういうことじゃなくて。」  
 
彼女の言葉を無視しながら、行為を続けようとすると  
手足をじたばたと動かしながら俺に抗う。  
最初はそれに黙っていたが、いい加減に怒りが込み上げてきて  
灰音の両手を、見つけた小さな木の根元に、ネクタイで縛りつけた。  
 
「や…たかなり…これ、はずして…。」  
「駄目だ。」  
 
涙ながらの懇願をあっさりと拒絶すると、彼女の瞳が一瞬だけ暗くなった。  
剥ぎ取った彼女の上着を遠くに投げ、辛うじてその機能を成している  
白の衣を、ゆっくりと上へとずらしていく。  
淡いピンクの先端が目の前に現れ、ゆっくりとそれにしゃぶりついていく。  
 
「…ん…、…あ、だめっ…そんなことしたら…」  
 
一方の手では白く膨らんだ乳房を円を描くように揉みながら  
舌で固くなった果実を弾くと、その度に灰音は体を震わせた。  
どこまでも続く緑の絨毯の上、彼女の白さが目に眩しかった。  
 
振動を与えながら先端を少しだけ噛むと、灰音が首をふるふると振った。  
自由にならない手がもどかしくゆれ、顔にはりついた髪が美しかった。  
首筋に唇を落とし、鎖骨の部分に強く吸い付く。  
紅くなったことを確認して、体を起こすとじれったそうに動かす  
彼女の下半身に気がついた。  
 
「…あ…や…あんっ…」  
「ここも、触って欲しいのか?」  
「ちが、違いますっ…!」  
「でももう、こんなになってるぞ…」  
 
紅いスカートを着せたまま両足を地面に大きく開く。  
上と同じ色の下着が、唯一彼女の秘部を隠す役割を果たしているが、  
その布についた、一筋の線。  
その線にそって、人差し指で彼女の中をなぞる。  
少しだけ固くなったその部分をきゅ、と摘むと、  
灰音はまた頬を染めながら、嬌声を上げた。  
 
「…あ、…ああ…ん…あ、たかなりさま…」  
「どうした?」  
「…ん…もっと、もっとつよくして…。」  
 
両手を握ったまま、殆ど裸に近い灰音が懇願を繰り返す。  
それに応える様に、俺は灰音からスカート意外すべての服を奪いさり、  
彼女の足の間に自分の顔を埋めた。  
 
既にぐちゅぐちゅに濡れたその部分に、指を押し当て  
静かに彼女の中に挿れていく。  
初めのうちは中にはいった異物を拒絶していたものの、  
奥へ奥へと突き進んでいくにつれ、それは弱弱しいものになっていく。  
 
「…ん…あっ…」  
「もっと欲しいか?」  
「…え…、あ、やああっ…」  
 
一旦中に入っていた指を抜き出して、その数を増やし、  
勢いよく突き入れていく。  
突然のことだったせいか、灰音は泣きそうな声を上げていたが、  
ずくずくと突き上げると、次第に甘い吐息へと変化していく。  
 
「…ふ…あ…っ…」  
「…灰音…。」  
 
指を差し入れしたまま、陶器のように滑らかなあらわになった肌の感触を  
空いていたほうの手で楽しむ。時に、もう一度膨らみへと指を這わせて  
小刻みに動かすと、それと同じように彼女の体が震えた。  
すでにとろとろと透明な液が流れ出すその場所を、執拗に撫で回し、  
彼女の半開きになった唇に、もう一度自分の唇を押し付けた。  
どちらのものとは分からない唾液が、彼女の頬を濡らしていた。  
 
紅くなった頬に唇を何度も落とし、耳元で彼女の名前を呼ぶ。  
彼女のゆらゆらと動く白い足に、兆しはじめた自身が触れ、  
その昂ぶりが増していった。  
 
着ていた制服を脱ぎ捨て、そのままに彼女の上へと覆いかぶさる。  
目に涙をいっぱいに為ながら、灰音は何度も高成様、と名前を呼んだ。  
両足を自分の肩に掲げ、ひたりとその部分に自身を押し当てる。  
 
「灰音…、挿れるぞ…。」  
「あっ…ん、あ、ああっ」  
 
淡い絨毯の波を掻き分けて、ぐい、と彼女の中へと侵入を果たす。  
十分に濡れほぐされたその場所は、先端部分さえ通り過ぎれば  
あとはすんなりと受け入れた。ひたり、と汗が落ちる。  
多分、痛くはないはずだけれど、それでも手を縛った体制では辛いのか  
苦しそうに、体を捩っていた。  
しばらくは彼女の生暖かい粘膜を感じながら、灰音が落ち着くのを待つ。  
次第に苦しそうだった息が、鼻にかかったような声に変化したのに気付いて、  
その瞬間注挿を始めた。  
 
「あ…は…っ…やあっ…たか、そんなのだめ…っ」  
「…は…いね…、いいのか?」  
「そんなの…んっ…、あ、ああっ…んあっ…」  
 
肉と肉が叩き合う音が耳に響く。  
動くたびに揺れる胸のふくらみを手で揺らしながら、  
ずくずくと彼女の最奥を突く。その度に彼女は甲高い声を洩らす。  
 
「…あ、…たかなりさま…っ」  
「…灰音っ…」  
 
ぴったりと体を密着させ、更に激しく彼女の体を求める。  
腰を動かしながら、目を瞑ってその快感を耐える彼女に、  
わざと自分たちが繋がっている部分を見せ付けて、  
その瞬間にきゅっと締まった灰音の内部に、堪えきれずまた強く振動させる。  
 
「…あ、…や…うで…はずして…」  
 
泣きながら懇願する彼女の言葉に従うように、  
すんなりと俺は拘束していたネクタイを外した。  
それにホッとしたように彼女は薄く笑って、俺の背中に腕を回した。  
二人で絶頂を向かえたのは、その後すぐだった。  
 
最初に本の中の「自分」に気付いてくれたのは、灰音だった。  
優しくて、それでいて切ない俺が書いた絵本を、大好きだと彼女は言った。  
只一人、自分がここに存在するという証を与えてくれたのは彼女。  
弟の代わりではなく、自分という確かな存在が灰音の側にいたい、と訴えていた。  
 
高成様、と呼ぶその声も、照れながら微笑むその姿も。  
「灰音」というその存在自体を、俺は心から愛していた。  
 
はっと目を覚ますと、驚くほど灰音の顔がすぐ近くにあった。  
心配そうに覗き込む姿に少しだけ笑って、地面に投げ出された体を抱き寄せた。  
彼女は目を見開いて、それでも嬉しげに笑って、自分の名前を呼びながら、  
俺の頬に両手をあて、ゆっくりと羽のように軽いキスをする。  
 
彼女の手首に食い込んだ、紅い衣擦れの跡が痛々しく広がっていた。  
その元凶は自分の行為だとすぐに思い当たり、  
彼女にそれを謝罪した。灰音はそんな俺に首を振った。  
 
「でも、出来ればこっちの方が私は嬉しいです。」  
 
そういいながら、灰音は俺の手に自分の指を絡め、強く強く握った。  
横たえた自分の体を気遣いながら、それでも、ここにいるよと伝える為に。  
子供の頃、あれだけ欲しかった優しくて暖かなぬくもりを、  
灰音は自分に、こんなにも簡単に与えてくれた。  
そのことが嬉しくて、嬉しくて。思わず泣きそうになってしまって。  
それを堪えて無理に笑った自分の顔は、彼女の目にはどんなふうに映っているだろうか。  
 
忘れられない魔女の歌。  
 
忘れてほしくなかったのは、今自分がここにいるということ。  
必死で誰かに愛されたくて、誰かを愛したくて、  
それでも何もいえない自分に気付いて欲しかった。解放して欲しかった。  
押さえ込んだのは、東宮という家ばかりではなく。  
只一つ自由になったはずの心を、自分自身で殺していたのだ。  
いつどんなことがあったとしても、その心は自由だったはずなのに。  
 
そのことに彼女は気付かせてくれた。  
無意識かもしれないけれど、俺にはそれで充分だった。  
今はこうして、俺は彼女を愛しているし、彼女に愛されたいと強く願っている。  
その希望は、叶いつつある。  
自由になった心は、もうきっと自分ですら止めることができない。  
 
腕の中にいる彼女が、くすくすと笑う。  
子供みたい、と言いながら優しげに、温かく笑って。  
しばらくしたら、もう一度彼女に歌を唄ってもらおう、と心の中で俺は決意する。  
優しい風に沿いながら放つ彼女の声を、何より誰より自分が忘れないように。  
大丈夫、俺はここにいる。ほら、その証拠に、  
楽しげに唄う彼女のすぐ横で、自分も同じ歌をきっと口ずさんでいるはずだから。  
 

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