もう君なしではいられなかった。  
長い髪、切なげな笑顔、細い肩、まっすぐな言葉…ほしくて、ほしくて、たまらない…  
だけど、そんな自分が怖かった。  
そんな自分を灰音に近づけたら、灰音が壊れてしまうのではないか、と。  
 
 
今日もいつものように、授業をさぼった。思えば、灰音に気持ちを伝えてから、さぼることが多くなった気がする…灰音は…  
「高成様ぁー!!」  
遠くから灰音が呼んだ。  
「あっあの…“生徒会室”ですかっ?」  
「ああ」  
「私も一緒してもいいですか?」  
「だめだ」  
それでなくてもギリギリなのに、二人きりになったら何をするかわからない。  
「い…言いたいことがあるんです…」  
灰音は頬を赤らめながら、自分の顔を見上げた。もう限界だ。  
「勝手にしろ」  
「は…はいっ!!」  
 
生徒会室の私室に入った。ここは自分以外はあまり入ってはこれない。パタンという扉の音がすると、しばらく沈黙が続いた。灰音の言いたいこととはなんだろうか。「灰音」と呼ぼうとした瞬間、  
「灰音は閑雅様のものです…」  
その名前を聞いて、胸がずきっとした。もう灰音の口からは聞きたくない名前だった。  
「けど…高成様が忘れられないんです…」  
一瞬、自分の耳を疑った。  
「私の心の中には、閑雅様がいました。けど…いつもそばにいてくださったのは高成様です。」  
「灰音…」  
「高成様を消すことなんてできないんですっ…」  
灰音はいつのまにか目に涙を浮かべていた。そんな灰音を抱きしめずにはいられなかった。  
「高成さ…」  
「わかった…灰音、わかったよ…ありがとう」  
さらにあふれ出す灰音の涙を止めるように強く口付けた。  
「ふ…」  
何度も唇を重ねながら、灰音の上着を脱がせ、ベッドに押し倒した。  
 
灰音…愛してる…  
 
もう灰音しか見えなかった。灰音も自分に身をゆだねているようだった。  
灰音のリボンを取り、胸元が見えるところまでボタンをゆっくりはずした。そこから手を差し込んだ。  
ふと、このまま灰音を壊してしまうのではないかという恐怖が自分を襲った。  
差し込んだ手を戻し、灰音から離れた。  
「…高成様ぁ?」  
灰音は不思議に思ったのか、上体を起こした。  
「怖いんだ…」  
「え?」  
「…灰音を壊してしまいそうで…」  
すると、灰音は自分に身をよせて言った。  
「私…高成様だったら…すべて受け入れます…大丈夫です」  
「灰音…」  
そんなことを言ってくれる灰音が愛しくて愛しくてたまらなくなった。  
自分が上に着ていたものを脱ぎ去り、また灰音に覆いかぶさった。  
 
灰音を確かめるように、口付けながらシャツの上から胸のふくらみを触る。  
「…ん…ふ」  
灰音の口から吐息がもれる。シャツのボタンをすべてはずし、首筋に口付ける。  
「…あっ…」  
灰音が上に着ていたものをすべて取り去る。少し赤みをおびた白い肌が現れる。胸のふくらみに直に触れ、その突起をつまむ。すると、灰音は背中をそらす。首筋にはわせていた唇をその突起に移動させる。  
「…ああっん…」  
灰音の息もあがっていく。胸に唇をはわせながら、スカートの中に手を入れる。布越しでも熱く湿っていた。すっとひと撫ですると、灰音の体はぴくんと跳ねた。ひと撫でしてかたくなったものを触る。  
「…あっ…あっ…はぁんっ」  
そして、灰音の体を隠していたものをすべて取った。  
「…た…高成様ぁ…」  
潤んだ瞳で自分を見つめる。自分自身も熱くかたぶっているのがわかった。また灰音を強く口付けた。そして、灰音の熱く濡れた部分へ手をのばす。くちゅくちゅと音を立てた。  
「…あぁんっ…」  
灰音も自然と足を広げるが、刺激に耐えられず閉じてしまう。  
「灰音…」  
ふいに呼ばれた灰音は自分を見た。何か言いたそうにしていたが、襲ってくる刺激に反応するしかできなかったようだった。  
 
くちゅくちゅという音と灰音の吐く息が部屋中に響く。  
「灰音…」  
灰音が自分を見た瞬間、灰音の中に指を入れた。  
「…い…やぁんっ…」  
音と灰音の声が倍になる。指を抜き差しするたびに濡れていく。最後指を抜き、その指でひと撫でした。  
「…んっはぁっ…」  
また灰音の体がぴくんと跳ねた。今度は自分がはいていたものを脱ぐ。  
「灰音…いいか…」  
「…はぁ…はい…」  
灰音に口付けて、自分自身を灰音に入れていく。  
「…んっ…くっ…」  
「…灰音…大丈夫か…」  
「…あんっ…はい」  
すべて入ったところで、灰音が言った。  
「高成様…あっ…愛してます」  
「俺も…だ…」  
腰を動かし始めた自分はもう止めがきかなくなっていた。  
「あっ…ああっ…あっ」  
「愛してる…灰音…」  
「あっ…あぁぁんっ!!…」  
次の瞬間、灰音とともに自分も果てた。  
 
灰音とはまだつながったままだった。  
「はぁはぁはぁ…」  
息のあがっている灰音を優しく抱き起こした。灰音の肌が自分に触れる。  
「…た…んっ…高成…様…はぁん…」  
灰音の熱い息が自分にかかった瞬間、自分自身がまたたかぶり始めた。  
「…んっ…」  
灰音もそれを感じたらしい。  
「灰音…もう一回」  
まだ全部を言い終わらないうちに、こくんと灰音が頷いた。目の前にある灰音の首筋に優しく口付けると、灰音を思い切りつき上げた。  
「あぁっ…あぁぁん!!」  
好きだ…好きだ…好きだ…  
さっきよりも強く、あふれ出す想いを灰音に流し込むように、強く強く抱いた。  
 
灰音にシーツをかけた。灰音は二度目に果てた瞬間、  
「高…成…様…」  
とつぶやいて、眠りについてしまった。ここまで疲れさせてしまってすまないという気持ちと、ここまで自分を許してくれた愛しい気持ちで、灰音の額の汗をぬぐって口付けた。  
 
着替えて生徒会の仕事をしていると、しばらくして、私室の扉が開いた。  
「高成様…」  
「起きたか」  
「はい…すいませんでした…ベッド占領しちゃって…」  
「いや…」  
まだ灰音はだるそうだった。  
「灰音…ごめん…」  
「へ?」  
灰音をここまでにしてしまって…  
すると、灰音はにっこりと微笑んで、自分に耳うちした。  
「………」  
そのあと、灰音は生徒会を飛び出していった。  
 
ガタガタガタガタ  
椅子から落ちた。顔が赤く、耳まで熱くなった。  
「ははは…」  
 
『私…幸せでした…』  
 
灰音はそう言った。幸せだったのはこっちだ。  
「灰音…」  
 
 
まだ耳に君の声が残る。いつまでも響いていてほしいと願った、いつまでも…  
 

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