カナリアは、私の元から飛び立った。
決して、振りかえりもせず憎い奴の所へ過ぎ去ってしまった。
愛しい、カナリアよ。
私のところから、飛び立つならば私がこの手で壊してしまおう。
いつも通り、空は晴れている。
いつも通り、生徒会室にカナリア……そう、灰音は居る。
そして、やはりいつも通り憎い奴……東宮閑雅も居る。
東宮閑雅、私から灰音を奪った人間。
私は、灰音を愛している。
だからこそ、奪い返す。
「潮……。潮っ!!」
そんな事を考えていた私の頭に、カナリアの囀りが聞こえる。
どうやら、灰音が呼んでいるようだ。
「何だ?灰音」
私は、考えていた事を頭から消し去り答える。
灰音は変らぬ調子で私に言う。
「あのね、保健室に生徒会会議の書類忘れちゃって……」
灰音がそこまで言うと、少し困った表情をして小声で尋ねる。
「一緒に、取りにいってくれないかな?」
もちろん、私が誘いに断る事も無く灰音について行く事となった。