砂漠ギツネを狩ることによって得られる銀銭の多さに、刀女は有頂天になっていた。
(洛陽に戻ったら、新しい武器を買おう……)
そんな想いに捕らわれて、足許の砂が奇妙な動きを見せていることに気付かないでいた。
静かに、しかし確実に、砂の小さな流れは刀女を追っていた。
そろそろ料理屋に向かおうと身体の向きを変えた途端、足許の砂が大きく崩れ、刀女は尻餅をついた。
「あ……ッ」
それが、砂漠に来て間もない人間の誰もが恐れる、砂虫だと気付くのに、時間はかからなかった。
「よりによってこんな時に……!」
上質肉は、もう残り僅かだ。
『キシャァァァァァッッ』
体勢を整える暇もないままに、砂虫の醜怪な頭部が振り下ろされる。それを辛うじて刀で受け止めるが、こんなことをしていても、気休めにしかならない。
何としてでも立ち上がって逃げ出さない限り、死ぬのは目に見えている。
「どけぇぇぇぇ!!」
不自由な姿勢からの刀女の捨て身の一撃は、あっさりとかわされてしまった。
『ガゥァァァァッッ』
砂漠の生き物とは思えないような、たっぷりした体液を撒き散らしながら、砂虫は刀女にもう一度頭を振り下ろす。
「アァ……ッ」
辛うじて身をかわすものの、刀女は砂虫の体液を浴びてしまった。
瞬間、身体の芯が熱くなる。
「……な……何なの……? これ……」
体液を浴びたところに、じんわりとした痺れに似た感覚があった。それはたちどころに皮膚を掻き毟り、体内に浸透する。
砂虫は頭部をゆらゆらと揺らしながら、攻撃をするでもなく刀女の様子を窺っているように見えた。
「何……アッ、ひゃうっ」
強烈な何かが、背筋を駆け抜けた。快美とも悪寒ともつかない未知の感覚は、刀女の思考を徐々に奪っていく。
体液はまるで明確な意志を持っているかのように、刀女の張りのある肌を滑り、陰部へと集まり始めていた。
「あぅ……はぁ、ン……ッ」
そこは既に、砂虫の体液だけではない潤いで満ちていた。
刀女とて、自分の身体を何も知らない訳ではない。王大侠に育ててやった恩を返せと云われ、何度も求めのままに身体を抱かせてやったこともある。
しかし、老人に抱かれたその時とは明らかに違う何かが、陰部を熱く滾らせている。
疼痛にも似たもどかしさに突き動かされるまま、刀女の指は、徐々に陰部を自ら愛撫し、指を沈めた。
「あ……アッ、……くふぅ……。はあぁ……」
刀女のあられもない声と姿態を確認すると、砂虫は幾筋にも別れた舌を出し、刀女のしなやかな身体を包み込んだ。