***  
「姫様!姫様!」  
 
「兼続、何ですか?」  
 
「いえ、呼んだだけであります!」  
 
 
越後に姫と五エ衛門が来てからもうどれほど経っただろうか。  
 
暖かい気候、遠くに凪ぐ金色の小麦。  
城を登った少し先、書物庫に二人はいた。  
 
「姫様!」  
 
「何でしょう?…っ、え」  
 
後ろからすっと伸びた腕が、姫の細い腰に巻き付いた。  
「休憩いたしましょう」  
そう柔らかく微笑む表情とは裏腹に、腰に指が食い込む。  
 
城主より書物の整理を命じられた二人は、昼下がりからここの倉庫に篭っていたのだが。  
 
専ら整理を進めるのは姫だけ。  
兼続はそんな姫を見ては、にこにこと笑っていた。  
 
 
眩しい陽も沈んだ頃になって、漸く一段落ついた頃、兼続は休憩なんて言葉を口にした。  
 
 
「その、兼続…」  
 
「柔らかいですな、姫」  
 
「近、い…」  
 
すりすりと姫の肩に顔を擦りつけては、緩い抵抗を押さえ付ける。  
腕の中でばたばたともがいているが、そんなもの、知らない。  
 
「姫、私と交接いたしましょう!」  
 
「なっ、なにを言い出すのですか!?」  
 
あまりにも包み隠さずに言い放つ兼続に、姫は大きな瞳を零れんばかりに開いて見上げる。  
兼続は主である謙信と違い、甘い蕩ける言葉も包んだ言い方も知らない。  
 
いつだって、そのまま…ありのままなのだ。  
 
「答えは聞いておりませぬよ」  
 
低く、そう呟いたと思えば、身体が揺れた。  
 
「あ…、?」  
 
「姫様は今から、私に手篭めにされるのです」  
 
(…あぁ、また…)  
 
にっこり。  
兼続はまた微笑む。  
いつものように。  
 
 
身体を床に縫い付けられた姫は、もう逃げる術はなかった。  
ゆっくりと近付いてくる兼続の唇を受け止めるだけ。  
 
 
「ん、んっ…んぁ…」  
 
絡むように吸い付く唇。  
そこから甘い蜜が溢れているかのように、兼続は殊更にゆっくりと舐めあげる。  
 
そのまま唇は下がり、触れた箇所から熱くさせる。  
 
「あなたは悪いお方だ」  
 
「なぜ…そんな、っやぁ…!!」  
 
乱れた着物の帯を引き抜くと、柔らかな乳房が垣間見える。  
漏れなく触れる度、ひくりと揺れるその肌に欲を感じてしまうのだ。  
こんなにも兼続自身を熱くさせる、これが愛なのかと…。  
 
「嗚呼、素晴らしき柔肌でございます」  
 
「ひ、ぁっ…!?」  
 
かり、と音をたてて乳房の先に歯を埋める。  
もう膨らんで、赤く潤んでいる。  
 
「か、兼続…意地悪…しないでください…」  
 
ようやっと、姫が吐息を漏らすと、兼続は顔をあげた。  
 
「意地悪でしたか?それは申し訳ない!」  
 
身体を起こしたかと思えば、そのまま姫も引き寄せられる。  
 
「…え…?」  
 
「さぁ、姫、お好きなようにしてください!」  
 
横になった兼続の上に乗せられ、姫は困ったように瞳を潤ませた。  
 
「ど、どうすればよろしいのですか…?」  
 
「お好きなように!」  
 
「ひゃ、んんっ…!」  
 
乱れたままの着物の裾から手を滑り込ませると、姫はゆっくりと足下の褌へ触れた。  
優しく宥めるように腰を撫でていると、褌からそれを取り出し、姫は微かに腰を上げた。  
 
ちらりと兼続を見れば、にこりと微笑んでいるだけ。  
 
「…兼、続…入りません…」  
 
「入りますよ。姫のそこは、充分に濡れております故」  
 
「そ、そん、な…」  
 
「…ほら」  
 
少し腰を突き上げてみれば、先端が熱く零れる蜜に触れた。  
入口はひく、と疼き、まるで兼続を誘っているようで。  
 
「お手伝いいたしましょう」  
 
「え、待っ…兼、続、あぁっ!」  
 
ぐちゅ、と擦れた音を立てて、ゆっくりと侵入してくる。  
それは熱く猛り、姫の内を犯す。  
 
 
「あ、ぁあ…っ、ん…」  
 
「姫、恍惚としておられる」  
 
「ん、ぃやっ…」  
 
奥までたどり着くと、何もしなくても締め付けて離さない。  
姫の顔を見遣れば、濡れた瞳は誘っているようにしか見えず、倒れ込んできた身体を支えながらその目元に唇を寄せる。  
 
「動いて、姫」  
 
「ん…」  
 
一度金具が外れてしまったように、姫はこくりと頷いて心許なく腰を揺らし始める。  
前後に動く度、内壁を擦り、蹂躙し、高ぶらせていく。  
 
「あぁ…気持ち悦さそうだ…」  
 
「い、言わないで、ぇっ…」  
 
「っは、今…至極締まりましたな」  
 
「違っ、んーっ…!!」  
 
今までは撫でていただけの指が、腰を揺さぶる。  
 
(熱い。溶けて…しまう…)  
 
姫は襲う快楽の波に、もう身体を任せるしか出来なくなっていた。  
 
「姫、私が欲しくて堪らない、という顔ですな…」  
 
いつもなら反論するのに、今は首を縦に振ることしか出来ない。  
 
「気持ち悦いのですか?」  
 
「ん、…」  
 
「聞こえませんな」  
 
「気、持ち悦い…、かね…つ、ぐ」  
 
「いい子でございますね」  
 
「んあっ…、だ、だめ…」  
 
ぐ、と兼続も身体を起こす。  
今までより深く繋がり、抱き合いながらただ快楽を極めた。  
 
 
 

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