ガインッ!キィンッ!  
月詠学院のVTルームに剣戟の音が響き渡る。手合わせをしているのは二人の男。  
ガチガチと鍔迫り合いのあと、片方が不利と判断したのか一足飛びに距離を離す。  
「ほぉ…どないしたんや?接近戦ならそっちのほうが有利なはずやろ?  
 それなのにわざわざ離れるなんて、もう諦めたんかぁ?」  
刃を落としてあるもののそれなりの重量はある槍を軽々と振り回し、肩をトントンと叩き相手を挑発する。  
「純粋な力じゃ敵いませんからね。…それにあのままだったら顎をかちあげられてましたよ」  
「ほっほぉ…流石にそれぐらいは読めるか。ま、そんぐらいやないとワイの相手にもならんわな」  
自分の手を読んだ相手に御神は素直に力量を認める。  
「ま、それはええけどこの後どないする気や?このままやったらまた防戦一方やで。  
 ほなどうやって戦況を覆すか…見せてもらおうか!」  
距離を詰め自らの間合いで一方的に攻撃を仕掛ける。御神は槍、相手は刀。間合いの差は一目瞭然。  
ましてやパワーでも御神に分がある。必死に受けて捌いても限度がある。  
円状に動いて横を取ろうとしてもすぐさま薙ぎ払いに変化されては、後ろに下がる他はない。  
遂に壁にまで押し込まれる。  
「ほらほらもう終いか?…いんや、な〜んか誘っとるねぇ。ま、教官としては素直にのってみますか、と!」  
速度を落とした連続の突きで相手の動きを封じ込めて、そして止めの強力な一撃を繰り出す!  
相手が待っていたのはまさにそこ。止めをさすときには自然と体に溜めが入る。  
御神も達人ではあり常人にそれは見極められないが、この相手は難なく見極める。  
しゃがみこみ、突きの下をかいくぐる。それだけならば間合いを詰める前に振り下ろされて終わりだが――  
刀の柄で槍をかちあげ、御神の態勢を崩す。その後は狙いの胴体への薙ぎ払い――!  
ドゴッ!  
衝撃の音が響いたあと、御神は刃を倒れこんだ相手にかざす。  
「これでチェックメイト、やな。いやぁ惜しい惜しい。なかなかええ手ではあるけどまだまだ先の読みが足らんな。  
 ま、ワイもまだまだ現役やしお前のようなひよっこにゃあまだ負けられへんよ。…ほら、立てるか八雲?」  
「げほっげほっ!…あそこで背中から槍を回して持ち替えますか…無茶苦茶しますねぇ」  
胴体への突きにむせびながらもちゃんと受け答えをする。  
「あれ受けて悶絶しないお前のほうがおかしいわ。とっさに体捻ったやろ?  
 ま、それがそのあとに続けられなかった要因でもあるんやけどな」  
「んな事言ってー、本当はかちあげられた時一瞬焦っただろ?」  
扉が開き、二人の様子を眺めていた京羅樹が部屋に入ってくる。  
「ん、んな事あるかい!バリバリ余裕やったで!」  
「怪しいもんだ。まぁ験力なしの武術だけの勝負ならまだまだ俺達もお前らにゃ負けんよ」  
「そこは矢張り経験の差、ですか。それでもやっぱり悔しいなぁ」  
「ワイらもお前らぐらいん時に一発でかいのとやったからな。そうそう簡単に埋められはせえへんよ」  
「ほら八雲、汗拭いとけ。今日はこれまで。体休めとけよー」  
「ほんまワイら教師の鑑やなぁ、うんうん。あー、このあと仕事したくないわー」  
「残業代も出してくれないからな、ヒメの奴…。くっ、ひでぇ冗談だ…」  
「そんなリアルな話しないで下さいよ。こっちも申し訳ないとは思っていますけども」  
「いや、気にすんな。これであの時の借りを返せてると思えば安いもんだ」  
「ほらほら帰った帰った。学生は学生らしくスクールライフをエンジョイしときー」  
 
部屋を出て、休憩室でドリンクを飲みソファに横になる。  
もう辺りは暗くなり始め、校舎内には人の気配は殆どない。目を瞑り、少し疲れを取ろうとする。  
あの時の一件以来、験力を失った八雲は今、SGコースに在籍してはいない。  
最大の功労者である八雲を外す事には仲間の全員が反対したが、実際に力がなければ天魔とは戦えない。  
そのことについて学長の姫宮までもが頭を下げ謝罪したのだが八雲自身はそれが当然だと思っていた。  
それに自分ではまだ全ての力を失ったとは考えていない。それゆえに今こんな事をしている。  
先の事を考え、訓練を特別に受けさせてもらう事。  
勿論武術だけならば独学でどうにかなる。しかし験力のない者が天魔と戦う術はこうして学ぶ他無い。  
何故そんな危険を冒すのか。理由は只一つ――  
「お疲れ。今日もよっぽどしぼられたみたいね。このまま寝ちゃいそうな顔してたよ」  
慣れ親しんだ声に横になったまま目を開ける。  
「理緒……」  
そこにあったのは恋人の顔。間近で覗かれてる様子にも今では動じることはない。  
「なぁに?ホントに寝てたわけ?せっかく待っててあげたのに張り合いがないわねぇ」  
「いや、てっきり先に帰ったと思ってたよ。ありがとう、嬉しいよ」  
「ま、まぁ私はアンタの彼女なわけだしね…うぁ、恥ずかしい…」  
自分の言葉に照れる様子についつい笑ってしまう。  
今では自分で「恋人」だの「彼女」だの言うたびにこの様子だ。それが初々しくてからかいの的にもなるのだが。  
「なに笑ってるのよ。ほらさっさと帰るわよ!」  
「もうちょっとのんびりしてこうよ。明日は休みだしさ」  
「もう…しょうがないわね。ん…ほら頭上げて」  
自分の頭のあった場所に座り、また頭を下げられ太ももに乗せられる。  
「わお、理緒も随分大胆になったねぇ。誰かに見られたらどうするんだい?」  
「もうこの辺には誰もいないわよ。…まぁいたらいたで記憶、失ってもらうだけよ」  
「サラリと恐ろしいことを…。それにしてもSGコースの訓練終わってから一人で待ってたの?  
 一時間以上は経ってるはずだけど?」  
「まさか。途中までは残ってた由紀や光たちと雑談してたわよ。八雲の訓練が終わる前ぐらいに  
 『邪魔しないように先に帰るね〜』って帰ってったけどね」  
「亮や道文も?」  
「ええ。…ただバカ一人があまりにもからかってくるんで、捻じ込んで片付けといたけどね。  
 今頃カラスのエサにでもなってるんじゃない?」  
誰に何を捻じ込んだか深くは聞くまい…  
「でもホントにアンタ大丈夫なの?まだ検査は続いてるんだし、もう少し待ってから訓練を始めたほうが…」  
「肉体的にはもう何ともないし。それは理緒もその目で確認したじゃん。理緒の部屋で」  
 
数日前――  
「へぇ、ここが理緒の部屋かぁ。う〜む、男子寮より部屋が広いなぁ、うおっベランダまである。羨ましい…」  
「そうなの?それでも別に珍しいものでもあるわけじゃないのに何でそんなキョロキョロしてるのよ。  
 挙動不審よ?はっきり言って」  
「いやいや!好きな子の部屋に初めて来たらこんなものだって!」  
「そう?それにしてもよもや私が内緒で男子を部屋に入れる時が来るとは…。想像だにしなかったわ、ふぅ」  
皆の目を盗んで、それこそ必要以上に警戒しながら招き入れた事に疲れた様子でベッドに座り込む。  
「おっ!これは!いや〜、もう使う時期じゃないのになんか盛大に飾ってくれてますねぇ。感激感激」  
「あああああぁっ!?ち、違うわよ!?せ、せっかくもらったものだし、他にしまう所もなかったし!  
 べ、別に大切だからとかそういう訳でなく!そ、そうよ!失くしたら困るからこうしてるだけなんだから!!」  
枕元のすぐ横に、いつでも目に付けるようにとクリスマスにプレゼントした手ぶくろが飾ってある。  
半ば墓穴を掘っていることにも気付かず、精一杯の言い訳をまくしたてる。  
「うんうん、嬉しいなぁ。そのうち僕がプレゼントしたものだらけになりそうだね」  
「う〜〜、もう!わ、私お風呂入ってくる!いい?変なトコ漁ったりしないでよね!」  
「勿論ですとも、ハー・マジェスティ」  
「バ、バカぁ!!」  
バタンと勢い良く扉を閉められ、理緒の部屋に一人取り残される。  
今日部屋に来たのは約束を守る為。理緒を抱くために部屋に案内された。  
理緒から言われたときは驚いたが、こちらとしても恋人と結ばれたいのは当たり前。その為なのだが――  
「女の子の部屋に来て、漁るな、とは無理な相談ですよお嬢さん。さーて探索、探索ぅ!」  
クローゼットを開けて中を見る。人一人入れそうな広さのそこに衣服の類はほとんどあった。  
「本当に女子のほうが優遇されてるなぁ。…おおっ!?こ、これは!?ムッハー、た、沢山ありますねぇ!  
 ふむふむ、やはり簡素なものが多いな…おおぉっ!こ、こんな大胆なものまで!  
 お父さんは許しませんよ、こんな物!…いやいや、でも穿いてもらいたいねぇ」  
不審者のように…いや、多くは語るまい。  
「それにしてもやっぱり理緒も女の子、けっこう揃えてるもんです――」  
ドンドン  
「理緒ちゃーん、いる?宿題見せてー」  
ご満悦の状況から一転崖っぷちの状況へ。寮に鍵など付いていない。しかもこの声は――  
(光ー!?ヤバイヤバイ、隠れろ!)  
クローゼットの中に潜り込む。  
「入るよー…あれ、物音がしたような気がしたんだけどなぁ」  
(いませんから早く帰って下さい!)  
「こら、光、勝手に入っちゃ駄目じゃない」  
(あなたも一緒ですかー!?由紀さん!)  
「いいじゃん、いいじゃん。お風呂でもいってるのかな?それじゃ待ってよっと」  
(ちょっと待てぇー!?)  
「んもう、しょうがないなぁ。あとでちゃんと謝るんだよ?」  
(こうなりゃ、早く理緒が帰って来てくれるのを願うのみ!)  
 
パジャマ姿の二人が理緒の部屋でお喋りをしている。これは中々お目にかかれないレアシーン!  
ギャラリーに登録はされず、脳内ギャラリーに登録する他ありません!  
「うーん、なんかこの部屋暑くない、由紀ちゃん?」  
「え、そう?私は別に…」  
「やっぱだめ!暑い!脱いじゃう!」  
(おおおおっ!?な、なんてけしからん事を!)  
パジャマの下を脱いで何ともエロチックな格好になっている。パンチラし放題ですがな!  
「ほれほれ…由紀ちゃんも脱いじゃえ〜!」  
「ちょっ、ちょっと光!やめ、きゃっ!何で上から脱がそうとするのよぉ!?」  
パジャマなだけにブラジャーは付けてない模様。乱れたところから膨らみがちらほら見える。  
(何とぉ!?女子寮とはこんな天国が存在してるのですか!スマヌ、ミッチー!君の幼馴染のパンチラは見てしまった!  
だがしかし、あともう少し!あともう少し頑張れ!もう少しで由紀の胸が露に――)  
「……人の部屋で何をやってるの」  
「あ、理緒ちゃん、お帰りー。宿題見せてもらおうと思って」  
「こ、これは違うの!光が暑いからって無理矢理脱がそうとするの!助けて理緒!」  
状況把握の為にしばし沈黙。  
「…頭痛い…、はい、これノート。貸してあげるから続きはどっちかの部屋でやってね。  
 私、今日は早く休む予定だから」  
「うん、ありがとっ!さ、由紀ちゃん行こ行こ!」  
「えええっ!?助けてくれないの!?あ、こら光、やめ、やめて、引っ張らないで…」  
台風一過――  
「…もう大丈夫よ、出てきてらっしゃい」  
「プハァッ!息苦しかったぁ…助かったよ理緒、思ったよりはやく――!」  
その表情に体が凍りつく。いかなる天魔と対峙してもこんな恐怖は得られないだろう。  
「…さて、質問したい事があるわ」  
「な、何でしょうか…?」  
「まず一つ、あの二人がきゃあきゃあパジャマを脱がしあってたとこをその目で見たか。  
 もう一つ、何でわざわざベランダではなくクローゼットに隠れたのか。  
 最後に一つ、その手に持ってる私の下着はどういう事なのか。さぁキリキリ答えてもらうわ」  
微笑んでるのに目が笑っていない。これほどの絶望をかつて味わった事があるだろうか。  
「あと、悲鳴は小さめにすることね。誰かに見つかったら女子寮に忍び込んだ不届者として  
 女子全員から制裁喰らう羽目になるから。ふふっ、まぁその前に私が制裁するんだけどね…!」  
助けて神様!助けて伊吹!天国から地獄とはまさにこのことです!  
 
「ふぅ…明日の予習はこんなものかな。さてそろそろ許してあげるか」  
自分の机から立ち上がり、ベランダへ向かい制裁を解こうとする。  
「コワイコワイボナンザコワイ……ドロドロとビリビリとヒヤヒヤが襲ってくる…コワイコワイボナンザコワイ…」  
「ちょっとやりすぎたかな…?でも当然の報いよね。…ハイッ!」  
八雲にかかっていた術が解かれる。  
「はっ!?ぼ、僕は一体こんな所で何を!?」  
「気にしない気にしない。ほら、部屋に入りなさいよ」  
「うーむ、何だか天国と地獄を味わったような気が…本当に気のせいなのかなぁ」  
「男が細かいこと気にしないの。…だ、大体ここに何しにきたのか分かってるの!?」  
顔を真っ赤にしてベッドに座り込む理緒。その隣に八雲も座る。  
「うん、約束を果たすために、だよね。…髪を下ろした理緒は何か新鮮だなぁ。ドキドキが止まらないよ」  
「そ、そう?変じゃない?…今日はちゃんときれいにしてきたんだから、た、沢山…可愛がってよね…」  
言い慣れない言葉を言ってから唇を合わせる。  
最初からお互いを求め合う濃厚なキス。少し湿り気を帯びた黒髪と理緒から香るいい匂いに理性のタガが一つ一つ外れていく。  
「んんっ…はぁ…やくもっ、やくもぉ…!さびしかったんだから…!こわかったんだから…!」  
スイッチが入ったかのように首に手を回して求めてくる。  
理緒の口内を味わいながらパジャマのボタンを一つずつ外していく。  
白く柔らかな肌が、二つの膨らみが露になり体温が上がっていくのを感じる。  
「あぅっ!すごっ…まえよりも、かんじるっ…!ひうっ!やくものてが、くいこんで…!?」  
乳房に指を食い込ませる。しかし痛みを感じさせないように優しく愛撫し、乳首を弄ることも忘れない。  
そして前回には出来なかった行為をするために、唇を離す。  
「あれぇ…?やくも、どうして…ひゃうん!?やだっ…そんな、あかちゃんみたいな…ふああっ!?」  
乳房に吸い付き、その形を歪に変えて、舌で弄んでは唾液塗れにしていく。  
「ああっ…なに、これ…?ゾクゾクってのと、ビリビリがりょうほう、くるっ…きゃんっ!」  
ペロペロと理緒の体を余す事無く味わおうと手と口がその体を撫で回す。  
前よりも激しく、そしてねちっこく愛撫を続ける。このあとの事を考えれば必要以上に体も心もほぐしていかなければならない。  
「あんっ!はぁ、はぁ…だ、め…ちからが、はいらない…」  
首に回した手がほどかれて、後ろに倒れようとするのを支え、優しく横たわらせる。  
黒い髪がベッドに散りばめられ、胸をさらけ出し潤んだ瞳でこちらを見つめる様はなんとも劣情をかきたてる。  
「理緒、下も脱がすけど…今日はいいよね?全部見せて、理緒の全てを」  
「うん…やくもになら、ぜんぶみてほしい…!」  
パジャマのズボンを脱がし、今理緒を覆うものは薄い下着一枚のみ。  
傷付けないようにゆっくりと秘部に手を伸ばし、下着越しに触れてみる。  
クチュッ  
既に感じていたのかそこはもう濡れ始めていた。  
「うわ…もうこんなに。キスと胸へのだけでいっぱい感じてくれてたみたいだね」  
シュッ…シュッ…と割れ目に沿ってなぞるだけで下着の染みはどんどん拡がってゆく。  
「やぁ…やんっ!いやっ、いやっ…きらわないで…!わたし、そんなんじゃ、ひゃんっ!!」  
「嫌うわけがないだろ?ううん、僕でこんなに感じてくれるのはとても光栄なんだ。  
 だから…もっと濡らして。もっと乱れて。もっと僕で感じてくれ」  
 
ヌチャヌチャと卑猥な水音が響く。既に挿入するには十分とも言えるがまだ勿体無い。  
「ひうんっ!?あっ、あっ、なかに、はいって…!?ふああっ!?」  
下着の横から指を侵入させ、膣に入れる。溢れる液体と粘膜が指に絡みつき、引きちぎらんとばかりに締め付ける。  
幾分驚いた様子を見せるが、痛みはさほどないようでより喘ぎ、乱れてくれる。  
自分が理緒を乱しているという事に高揚し、普段は静かな彼女があられもなく乱れる様をもっと見たくなる。  
「ひぃっ!?あうっ!?なか…えぐられて…ひゃああっ!?はっ、はっ、うああっ!?」  
出し入れを繰り返し、クリトリスを弾いただけで嬌声をあげる。  
蜜はどんどん溢れ、もはや下着の体制を保っていない。  
「もう、脱がしちゃうね」  
トロリと糸をひくそれを片足に引っ掛けておき、遂に理緒を生まれたままの姿にする。  
表れた濡れる秘部を前に、音を鳴らし唾を飲み込む。興奮と欲望が己の頭を麻痺させる。  
乳房に吸い付き、そして秘部をいじる手の動きも止めはしない。  
「ひゃうんっ!?ひぐっ!?はぁっ、はぁっ…だめ、どっちも、かんじすぎ…きゃあんっ!?」  
上下同時の責めに理緒はもうまともな思考すら出来ない。  
ただ八雲に、恋人に自分の全てをまさぐられているのだと殆どの幸福と少しの羞恥で占められている。  
ここが寮で、いつ誰にこんな自分を知られるのか分からず、隣の部屋に声が聞こえるのでは逡巡するものの、  
今襲い来る快楽の前にどうでもいいと投げ捨てる。  
「ほら、イッて。イッちゃっていいんだよ。あの時僕がしたように、気持ちよくなって…!」  
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」  
言葉にならない絶頂の声をあげ、ピクッ…ピクッ…と体を震わせる。  
股間からは盛大に潮を吹き、八雲の手を濡らす。  
だらしなく開いた口に顔を近づけ唇を合わせる。子猫のように力なく舌を差し出してきていた。  
 
一つの達成感を覚え、すぐさま次の行動に移りたくもなるも自制する。  
力なく横たわる理緒を見て、行為に至るのは酷であるし、何よりもこの姿を見ていたいと思う。  
乱れた髪をすきながら頭を撫で、それが心地良いのか微笑むのを見て穏やかな気分になる。  
「はぁ……はぁ……はぁ、これが、絶頂、ってやつなのね…」  
「大丈夫かい?違和感やどこか痛い所とかはないかい?」  
「大丈夫…力が入らないけど、今は…幸福感で満たされてる…」  
「そう、良かった」  
額にキスをする。くすぐったかったのかクスクスと笑う。  
「なぁに?キザな真似、ふふっ。似合わないわよ。それよりも…早く、抱いて?」  
「すぐにじゃなくても、休んでからでもいいんだよ?」  
「嫌。…もう待たされるのは嫌。早く…貴方と結ばれたいの」  
「…わかった。これ以上は言い訳になっちゃうね。…僕も早く君と一つになりたいから」  
濡れそぼった秘所にペニスをあてがう。  
「手、繋いで…?寂しくないように、離れないように」  
手を繋ぎ、ズブ…ズブ…とペニスを埋没させていく。指だけでもあれほどの圧迫があったのだ。  
それがペニスともなればその感覚は二人とも大きく異なってくる。  
だが八雲のほうは温もりと締め付けですぐに果ててしまわないようにするだけ。  
理緒にとっては自らの体を貫かれるという痛みと恐怖。  
それでも理緒は耐える。ここで痛いなどと言えば八雲の事だ、やめるなどと言いかねない。  
その様子を見てしまったからには苦痛を長引かせるわけにはいかない。  
「理緒っ…一気にっ、奥まで入れるよ…!」  
若干の力を込め、ペニスで貫く。  
「あ……か、はっ……」  
どれほどの衝撃だったのか。理緒は口を大きくあけ酸素を求めるかのようにパクパクさせる。  
握った手は痛いほど指を喰いこませてくる。  
そのまま理緒が落ち着くのを待つ。いくらか経ったあと、  
「何…やってるのよ…!私にっ…構わず……動いていいのよ…?」  
「でも、まだ辛いんだろ?だったら――」  
「バカ…ホントにバカなんだから…!繋がるだけじゃ駄目…!私の中で、果ててくれないと意味がないのっ…!」  
大粒の涙を零しながら、必死に訴えてくる。そのどこまでも純粋な健気さに八雲もその意を汲む。  
「…じゃあ動かすね。でも痛かったらちゃんと言うんだよ?」  
「言わない…!絶対、言わないんだからっ!」  
強がる様子が可愛らしくて、横を向いた顔の頬に口付けをする。  
「ひぐっ!?あっ、はうっ、あぐぅ!?」  
ゆっくりではあるが快楽を得られる速度で腰を動かしていく。  
理緒の手前、余裕があるように振舞ったが一度動かすと理性が吹っ飛んでいく。  
理緒の膣は奥に進めば押し戻そうと抵抗し、引き抜こうとすると今度は逃がさんとばかりに絡みついてくる。  
腰を動かすたびに頭に衝撃が走り、ただすぐに果てないように耐えるだけ。  
「すごっ!?なか、えぐられてっ、ひぐぅ!?ズンッ…ズンッてきて、おくにぃ…あたってるっ!」  
そんな中でも少しでも理緒を楽にしてあげようと胸とクリトリスへの愛撫はやめない。  
「ひいぃっ!?やっ、あんっ!かはっ…ひゃあんっ!?」  
痛みは当然あるだろう。それでも上げる声の中に少しずつ甘い声が混じる。  
同時に潤滑油の愛液も溢れ、自然と腰を振る速度も速くなってしまう。  
「ふあっ、ひっ、はっ、やっ、ふああっ!?さっきより、はやく…?うああっ!?」  
八雲も一心不乱に腰を打ち付ける。早く果ててしまいたいとも、このまま理緒の中を味わっていたいとも矛盾した考えが浮かぶ。  
「やくもぉ…やくも!やくもっ、やくもっ!!」  
理緒はただ愛する人の名を呼び続ける。痛みなど、愛する人に抱かれてる幸せの前には些細な事だ。  
「理緒っ…!理緒…いくよっ…!」  
最奥に打ち付けたあと、八雲の精が注ぎ込まれていく。  
「あ……あぁ…出てる、八雲の…いっぱい流れ込んでる…」  
愛する人を最後まで受け止められたことに幸せの笑みを浮かべる。  
「理緒…大好きだよ」  
「私も、大好き、八雲」  
繋がったまま口付けをして、二人はこれ以上もない幸福に満ちていた。  
 
「ねぇ…体は、大丈夫なの?」  
「えっと理緒さん…その台詞は普通僕のほうが言うもんですが」  
行為のあと、そのまま眠るのは惜しく二人は裸のまま一緒のベッドにはいり甘い睦み合いに入る。  
「まぁ…ちょっと変な感じはするけど。でも本当に心配なのよ。あれから沢山検査してるって言うし、  
 何かの後遺症がないとは限らないじゃない。そんな中で私のわがままでこんな事させて…」  
落ち込んだように顔を曇らせる。そんな理緒の心配を払拭させるようにデコピンをする。  
「キャッ!?な、何するのよ…」  
「こんな事、なんて言わないでよ。これは僕も望んだ事だし、長い事心配させた理緒への罪滅ぼしみたいなものだよ。  
 あの時、みんなの前でああも宣言してくれたからには早く達成させてあげないと、と思ってね」  
「ああぁ…あれを思い出させないでよ。アンタの意識が戻ってからは散々からかわれたんだから…」  
「まぁ…大体は想像つくね。…でも本当に体は何ともないよ。なんなら理緒が検査するかい?僕の体を」  
「バ、バカ!!変な事言わないでよ!……ちょっとしてみたいけど。あわわ…そうじゃなくて!  
 それに教官達から聞いたもの。私達の訓練のあとに特別に訓練を受けるんですって?何考えてるのよ!?」  
身を乗り出して問い詰めてくる。ただただ八雲の身を案じて。  
「情報が早いねぇ。言いそびれたことは謝る。…でもね、先の事を考えればそうするべきだって思ったんだ」  
「でも八雲にはもう験力はなくなってしまったって…。私達を助ける為に…」  
「こら、そこで暗くならないで。でも完璧に、全てがなくなった訳でもないんだよ。まだ天魔も視えるしね」  
「それって、つまり…」  
「伊吹の力の残り香かもしれないし、いつかまた力が宿るかもしれない。その時の為に。  
 …それにいつでも理緒と同じ世界に居たいしね」  
「なによ…それじゃまるで私が頼りないみたいじゃないの…キャアッ!?」  
理緒の体を引き寄せ抱き締める。  
「今言った後者は僕のわがままさ。男ってのは女の子を守る事に価値観を見出す愚かな人間なんだ。  
 例えその子が自分より強くても。…それに理緒もいつも僕と一緒に居たいだろ?」  
「今更言わせないでよ、当然でしょ?これだけ私を女の子らしくした責任は一生かけて取ってもらわなきゃ」  
満面の笑みを浮かべ理緒のほうからも抱きつく。  
「ならばお願いがありまして、どうかひとつお聞き届け願いたい」  
急に変わる口調に訝しげに聞いてみる。  
「…可能な内容であれば」  
「いやね、今のままの理緒でも十分可愛いんだけど、もっとこう…セクシーなのとかアダルティな  
 服や下着を着てもらえればなんて、アハハ……あ、あれ理緒さん、そんな術の詠唱なんて物騒な冗談は…」  
「冗談だと思う?」  
「す、すいません!やっぱり調子乗りすぎました!だ、だからやめてやめてボナンザだけはやめ……」  
その日、声にならない悲鳴が女子寮に響き渡ったとか。  
 
 
「あぁ…我ながらよくあんな真似が出来たものよね…。あのあとは大変だったし…」  
「へ?何かあったの?…ま、まさか寮長にばれたとか」  
「ううん、それはないわ。ただね…隣の部屋の子が次の日やたらとニヤニヤしてたのよ。  
 あの子には多分バレてるわ…」  
「うへぇ…マジですか。こりゃもう寮では出来ないね…どうしようか?ホテルとかに行く?」  
「それこそ誰かに見つかったら余計にやばいじゃない。お金も勿体無いし…っていやいや!  
 アンタ何言わせるのよ!それじゃまるで私が頻繁にしようと言ってるみたいじゃ――」  
「もう僕とはしたくないの?」  
「あぅ…そ、そりゃしたいけど…」  
「大丈夫、大丈夫。実際問題見つからなきゃいいわけだし……ね?」  
そう言い放ち、頭の下のスカート中に手を伸ばす。  
「あっ!?こ、こら、何やって…ひんっ!?ちょ、ちょっと…まずいって…きゃうんっ!?」  
素早くスカートを捲り上げ、顔ごと秘部に近付く。  
「あれ?理緒…こんな赤い派手なパンツ履いたりして、もしかして期待してた?」  
「いやっ…こんなとこじゃ、ふああっ!?だ、だって…やくもが、ひゃんっ!はいてほしいって…いってたし、  
 よろこぶんならとおもって…やあぁっ!?で、でもこんな、がっこうで、なん…ひゃうんっ!」  
「そうか、嬉しいな。僕の為にか。こりゃ期待に沿わないとね」  
下着の横から指を入れる。相変わらずの締め付けだが濡れ方は前よりも早い。  
「だめっ…だめっ…!だれかにみつかったら、あんっ!」  
「でも理緒のここはどんどん濡れてくるよ。こんなになったら中途半端は良くないよね」  
「でもっ…でもぉ…!」  
ズチュッ…ズチュッ…と音を立てながら出し入れを繰り返す。  
「さっき、自分で言ってたろ?もう辺りには誰もいないって。……そうだ」  
ニヤリといやらしい笑みを浮かべて、顔の位置はそのままで椅子の前にしゃがみこむ体勢になる。  
「やくも…?なにが、そうだ、なの…?はうんっ!」  
「ちょっと、ね…」  
理緒に見つからないようにドリンクの空き缶を入り口のほうに投げ捨てる。  
カランッ…  
「ひいいいぃっ!?」  
音がした瞬間、理緒の膣がキュッと締まる。口は開けっ放しでどうやら軽くイッたようだ。  
「う、うそ…いや、いやぁ…」  
この世の終わりでも来たかのような絶望の表情を浮かべる。  
「あれ…ちょっとやりすぎた…?ご、ご免!い、今のは僕が空き缶を投げたんだってば!」  
慌てて謝り、真っ赤な顔で涙を浮かべながら睨まれる。これは殴られると思ったが、  
「ば、ばかぁ…ほんとうに、おどろいたんだからぁ…ぐすっ。わたしの、こんなすがた…  
 やくもいがいにみせたくないんだからぁ…ばかぁ、ばかぁ…」  
泣きじゃくり、健気な言葉を紡いでくれる理緒に罪悪感が起きる。  
「ご免、本当にご免。ちょっと悪戯が過ぎたみたいだ。もうこんな事しないから、ね。だからもう泣かないで?」  
「ぐすっ…じゃあキスして…?私のこと、大好きだって思いながら唇に、首に、体にキス、して…?」  
 
口付けをしていきながら、制服のボタンを外していく。やがて乳房を包む赤いブラジャーが現れる。  
「うわぁ…下着一つでこんなに興奮の度合いが違うもんだなぁ。やっぱり僕の為に付けてくれたんだ?」  
「だ、だって私の部屋でこれ持ってたじゃない…。こういうの好きなんだと思って…」  
「へ?僕が持ってた?」  
「ああいや、何でもない、何でもないわよ!た、単に八雲に喜んでもらいたくて…」  
制裁によって記憶を失わせたことには触れないでおこうとする。  
「うん、こういう理緒も素敵だ。こんな素敵な彼女を食べちゃえる僕は幸せものだよなぁ」  
「へ、変な言い方しないでよ。……私、食べられちゃうの?」  
「うん、たっぷり、じっくりとね」  
ブラジャーから乳房をこぼれ出させ、肌色の果実にかぶりつく。  
「ひあっ!?あぅっ、あぁ…ひゃうっ!やっぱ、これだめぇ…ゾクゾクきちゃうっ…!」  
熟した果実のような柔らかさに、しかしその頂は存在を主張するように固くなり始める。  
片方を口で吸い、もう片方を手と指で揉みしだく。  
「ふわぁ…まえより、かんじちゃうっ…!あうんっ!やぁ…やくもぉ、もっとして…?」  
もうここが学校ということは気にならず、どうやらスイッチが入ってしまったようだ。  
だらしなく足を開き、半裸に近い格好で八雲にされるがままになる。  
「ひぅっ!あんっ!はぁ、はぁ…やくもの、くちのあとがいっぱい…ひゃあぁっ!?」  
自分の体についた赤い痕に恍惚の表情を浮かべ、嬌声を上げる。  
「下ももうこんなに濡らして…どう?もうしてほしいかい?」  
準備は万端で、理緒がそれを求めていると分かっているのに敢えて尋ねる。  
「やだっ…!そんな、こと、いわせないでよ…ふああっ!?」  
グチュリと指を挿れ、言葉を止めさせる。この先の事は理緒の口から言わせたいのだ。  
「そんなことってどんなこと?ちゃんと言ってくれないとわからないよ?」  
自分でも意地悪だとは思いながらも、ただ指の挿入だけで済ませようとする。  
「ひぃっ!?だめっ…ひとりで、イカせないでぇ…。やくもと、いっしょが、いいからぁ…」  
「じゃあちゃんと言って?理緒が僕にどうされたいかちゃんと説明して?」  
「あぁ……やくもの、ペ、ペニスで…わたしを、つらぬいて…ください…。  
 やくもと…いっしょにイキたいから…!」  
あの理緒の口からこんな事を言わせたと、思わず体がゾクリとくる。これも男としての本能か。  
ご褒美とばかりに唇を合わせる。  
「ありがとう、そう言ってくれて。…じゃあ一緒にいこうか」  
 
「ほ、ほんとに…こんなかっこうで、するの…?」  
ソファの背に手をつかせて八雲に尻を突き出す格好で立たせる。  
「やっぱりいろんな格好も試してみないと。意外と癖になるかもよ?」  
「で、でもこんなどうぶつみたいな…。それに…やくものかおがみえないよ」  
振り向かねば顔は見えない。それが理緒を若干不安にさせているのだが、八雲は構わず続けようとする。  
「大丈夫…そんな寂しさなんか感じる暇がないようにするから…ねっ!」  
ズブリ  
「ひぐぅっ!?そ、そんな…いきなり、おくまで…ひうっ!?やあっ!あんっ!ふああっ!?」  
赤い下着を履かせたままその横から一気に奥まで挿入する。  
一度の絶頂で十分に濡れて、ほぐれていた膣は八雲のペニスを難なく受け入れる。  
「うああっ!?おくにっ…ひびいて…?ひゃうっ!やくも…はげし…あぅんっ!」  
いきなりの速度での挿入と、八雲の姿が見られない事に感度が増しているのか、あられもない声を上げてしまう。  
一方、八雲のほうも前回とは違った感覚を味わっている。  
(こ、これは!突くたびにどんどん締め付けてくる!?そ、それにおっぱいがプルプル震えて…)  
理緒の膣を奥まで突くたびに、制服から零れ落ちた乳房が動きに沿って揺れ動く。  
その様子があまりにも艶めかしく躊躇いもせずに手を伸ばす。  
「あうっ!ひゃあっ!?はぁ…はぁ…これ、じゃあ…あしにちからが…ひゃあんっ!?  
 やだっ…それ、されたらわたし…ひぅっ!あんっ!ひいぃっ!」  
膨らみの形をグニャリと変えて、乳首をつねっては優しく弄り、本能の赴くままに行動する。  
「やく、もっ…!だめ…どうじにされたら、あたま…へんになるっ…ひんっ!」  
そして胸だけというのも勿体無いと感じたのか、片手は二人が繋がっている部分に動かす。  
「ひゃあああっ!!だめっ、だめっ…!からだ、ささえられなくなる…!」  
膣の最奥まで貫かれている衝撃に胸への愛撫。加えてクリトリスへの刺激ともなれば理緒が今受けている快楽はどれほどか。  
二人が繋がっている部分からは既にグチョグチョに濡れている下着を通り越して床に愛液が垂れ落ちている。  
それをすくい取り理緒の顔まで持っていく。  
「ほら、理緒のあそこからこんなに垂れてきてるよ。…舐め取ってみて」  
まともな思考が出来ていないのか舌を差し出しチロチロと八雲の指に付いた愛液を舐める。  
指を舐められているくすぐったさと、自分の体からでた汁を舐めるという光景に興奮は最高潮になる。  
「ひぐぅ!?あうっ!?なかで…おおきくなって、うあぁっ!?はげしっ…!?」  
打ち付けられる体の音が更に激しくなり、二人の汁がより流れ落ちていく。  
「ひあっ!も…だめ…やく、も…あぁん!いっしょに…いっしょにぃ!!」  
卑猥な音が聞こえなくなる。それと同時に  
「んあああああぁーーっ!!!」  
理緒の叫び声が木霊して、絶頂の余韻に二人の体が二度、三度震える。  
「あぁ…は……また、なかに…そそがれてる…あはぁ…」  
だらしなく口を開ける理緒の顔を自分のほうに向かせ、唇を奪う。  
二人が繋がった所と赤い下着の間から収まりきらなかった精液が零れ落ちていた。  
 
「や、八雲…そんな敵でもいるかのようにギラギラ辺りを見回さなくても…」  
寮までの帰り道、二人並んでの途上。  
「だって今理緒はノーパンなんだよ!?もし風が吹いて誰かに見られたら大変じゃないか!  
 僕以外の奴に見せてたまるもんかっ!!」  
「あああっ!?だからって口に出す必要はないでしょうが、バカッ!!」  
学校で下着を履いたままの行為であった為、理緒のパンツは愛液と精液でとても履けるものではなかった。  
現在ビニール袋にいれカバンの中にしまってある。  
「ひゃうっ!?あぁ…スースーする。…もう零れてたりしてないわよね…」  
しかもきっちり膣出しまでしたものだから、歩く間に垂れないように注意しなければならない。  
「そういえば冷静さを失ってたけど、二回も中出ししたんだよなぁ…こりゃ下手すると一気にパパですか!?」  
「自分でやっておいて何を今更…。そ、そんなに…出来たら嫌なの…?」  
不安からか寂しげな表情で見つめてくる。  
「いや、責任はきっちりと取るよ。ただ、しばらくは二人きりでイチャイチャしたいな、と思ってさ」  
「バ、バカぁ…そんなのこれから先いつだってさせてあげるってのに…」  
小声で呟く。  
「え?何て言ったの?」  
「な、何でもないわよ!た、ただこの先、私達どうなるのかなって」  
二人で考え込む。  
「理緒は大学進学だろ?いきなり鎮守人にはならないだろ?」  
「うん…まぁそのつもりなんだけど。アンタは?」  
「うーん、鳳翔さんから神祇庁に来ないかって誘われてるけど、一応大学に行かせてもらえる余裕もあるみたいだし。  
 やっぱりお互いもうちょっと広い世界を見たいよね」  
「なら一緒の大学に行く為にもアンタにはもうちょっと成績上げてもらわないとね」  
「うへぇ…まぁ頑張るけどね。一緒の所じゃないと同棲も出来ないしね」  
「ど、同棲!?い、いったいいつ決定したのよ!?」  
「あれ、さもそれが当然だと僕は思ってたんだけど…恋人同士で、この先別れるなんてこと有り得ないからその方が安上がりじゃん」  
「た、確かにそうね。うん、そうよね!別にそのほうが一日中ベタベタ出来るからって訳じゃないわよね!」  
「やっぱりそうしたいだね。いや、一日と言わず二、三日ぐらい構いませんよ?」  
「バ、バカぁ!!」  
恋人同士のじゃれあいが続いていく。叩かれないように走って先を行く。  
「ほらほら、捕まえてごらんよ?」  
様々な局面を経て、こうして理緒と居られる。それはとても幸せな事で。  
多くの心配をかけたこの人と離れる事など考えられない。  
何よりも彼女の声で自分は帰ってきたのだから。  
「このバカ…!待ちなさいよ!!」  
だからどんな時でも離れたくない。この温もりが自分を変えてくれたのだから。  
命を懸けてまで守ってくれて、その力を失った。  
ならば次は自分が守る番。  
二人の距離が縮まっていく。  
「ハァ…ハァ…捕まえたわよ」  
「捕まっちゃったね」  
周りから見ればどこにでもいるカップル。そう見られる事が今の理緒にはとても誇らしくて。  
チュッ  
不意打ちのキスに八雲が呆然としている。その顔がとても可愛らしくてとびきりの笑顔が浮かんでくる。  
「こんな私にした責任は取ってもらうんだから。嫌だって言っても絶対離さないんだからね!」  
 
 
<完>  
 

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