暗い暗い、人が立ち寄れぬ禍々しい気が立ち込める場所――絶体絶命の危機に陥ろうとする者がいた。  
「かふ……」  
強烈な一撃を喰らい、力の全てを削がれて片膝をつく。  
「うわ、懐かしい悲鳴だな。鬼王ってのはみんなそんな悲鳴を出すのかい?」  
まるで遊びでもしているかのように何処かしら余裕を見せ、男―伊波飛鳥は相手を見下す。  
「大嶽丸様っ!!」  
女の、その身を案じる声が響くが、女は手足すら動かせない。少しでも動けば周りの者から攻撃が来る。  
「まぁ、流石にこの面子相手じゃ無理もないか。……八雲、そっちはしばらくそのままにね」  
飛鳥からの指示に草凪八雲は空恐ろしい程の笑顔で答える。  
「さて、随分手間をかけさせてくれたもんだ。素直に従えばこんなに苦しませずにすんだのにね」  
クックックッ…と笑いながら大嶽丸に近付く。無邪気な子供が虫を殺すような無惨さを伴って。  
恐怖を浮かべながら大嶽丸が叫ぶ。  
「人を無理矢理攻撃しておいて何言ってやがるんだーーっ!?」  
 
「あぁ…、もうちょっと悪役に浸りたかったのに一気に台無しだよ…。君に芸人魂はないのか!?」  
「鬼の我にそんなもの求めるな!大体いきなりやってきて攻撃をするなど…貴様、それでも人か!?」  
「だってそのほうが面白いじゃん」  
「あああぁっ!?一言で片付けやがった!?」  
苦悩の表情を浮かべて大嶽丸は頭を抱える。  
「いやぁ、それにしてもぴったりの役柄でしたよ。本当にどっちが鬼か一瞬分かりませんでしたよ。  
 今まで虐げられた恨み炸裂!って感じでこれなら空気の汚名返上ですね!」  
「…さりげない毒を吐いてくれてありがとう、八雲。君こそこんな場所でまでハーレムとはさすがだよ。  
 セクハラタッチ大王の名は本当だね。でも男に触るのはどうかとは思うんだ」  
「アハハ!よく知ってますね。空気なだけにストーカー行為も万全ですか、アハハ!」  
「はっはっはっ、上手いこと言うねぇ、はっはっはっ!」  
「アハハハハ!」  
「ハッハッハッ!」  
両者、笑顔で毒を吐きあう。辺りに殺気と怒気を渦巻かせながら。  
(こえぇ…何だこいつら。だが今のうちに逃げ――)  
サクッ  
「あいたぁー!?刺さった刺さった!容赦もなしに頭にくないを刺した!?」  
「何逃げようとしてるんだよ。それだからヘタレだなんて言われるんだぞ。せっかく人がいい計画を提案してきたってのに」  
「おっと、こんな事してる場合じゃありませんでしたね。さっさと終わらせてこんなカビ臭い場所出ないとね」  
睨み合いから一転、二人は大嶽丸の前に立つ。  
「その前に…みんなー、呉羽解放してこっちに持ってきてー」  
ハーイ、と合唱したあと、理緒と由紀と夕と操がスマキにした呉羽を投げ捨てる。  
「きゃうっ!?な、なんで私がこんな扱いを…」  
「さて本題に入ろうか。単刀直入に言うよ?天照郷に攻め入るから手を貸せ」  
「命令形!?……えっと我に拒否権というのは――」  
「そんなものあると思ってる?」  
笑顔で脅迫する。  
 
「だ、だが待て!何で貴様らがあそこに攻め入るのだ!?特に貴様は神子ではなかったのか!?」  
「いや、ちょっとした復讐ですよ」  
「あっさりと言った!?そ、そっちの貴様はどうなのだ!?」  
「このほうが面白いかなぁと」  
「あああぁ……なんて奴らだ、血も涙もない…」  
「君らに言われたくないなぁ。それにそっちにもメリットがあるんだから細かい事気にするなよ。  
 それにちゃんと報酬の前払いもするし。…八雲?」  
「了解ですよー、ほら伊吹、あの二人吐き出して」  
八雲の魂神の力が解放されると煙が立ちこめ、その中から二人の人影が現れる。  
「ぬ、ここは一体…俺は確か倒された筈だが…」  
「キャー!!羅生さまーっ!!会いたかったですぅ!!……ハッ!?」  
「呉羽が豹変した!?こんなキャラだったのか…意外に乙女チックなんだなぁ」  
「あれ、八雲、もう一人は?」  
「そこでうずくまってますよ」  
みながそちらを向くと、  
「ヤメテヤメテタベルノヤメテ…コワイコワイイブキコワイ…」  
「壊れてるー!?あ、あの白面くん?」  
「ひぃっ!?す、すいません!な、何でもしますからフルコースに分けるのはやめてくださいっ!!」  
 
しばらく経ったあと――  
「成る程な、貴様を道具扱いした天照郷の者への復讐か。…うぅっ、泣ける!貴様、苦労したんだなぁ!」  
「鬼に同情される僕って一体…、ともかくその為に力を貸して欲しいわけだ。僕らだけじゃ限度があるしね」  
「まぁ…我は構わんが、他の奴らは――」  
「あぁ〜ん、羅生さまぁ〜ん!もっと熱い抱擁を…ハッ!?わ、私は構わないですにょ!?」  
「呉羽…動揺して噛んでるぞ…」  
「ひぃっ!?も、もう食べられないのなら僕も何でもします!」  
「全会一致か……なんとなく脅された感があるが…」  
再び両手で頭を抱える。ともあれ妙な連帯感は生まれた訳だが、  
「ねぇー、話済みました?早く外出ましょうよ。こんなとこじゃあ皆を可愛がれないじゃないですか」  
女性陣に囲まれ一人場の空気が違う八雲が駄々をこねる。  
「おい、飛鳥。あいつが一番むかつくとは思わんか?」  
「それは言うな…、僕が一番そう思ってる。僕と同じような環境なのになんでこうも違うのか…」  
「泣けるな…、こっちもバカップルとお子様で苦労してるぞ…」  
「僕らは頑張ろうな!」  
固い握手を交わし、ここに一つの友情が生まれた。  
「さて、みんなに言っておくことがある。天照郷に攻め入る時だが、よいか大嶽丸。  
 我々はインペリアルクロスという陣形で戦う。防御力の高い羅生が後衛、両脇を八雲と呉羽が固める。  
 お前は私の前に立つ。お前のポジションが一番危険だ。覚悟して戦え。  
 白面はその辺で遊んでろ」  
「舌の根乾かぬうちに人権無視!?」  
 
 
天照郷の中心から離れた、誰も近寄らないような薄暗い森の中の小屋。  
那須乃美沙紀は一人、息を切らしてそこに駆けつける。学校で、見知らぬ人から渡された、と自分宛の手紙を受け取った。  
何者からかは分からないが手紙の中にはこう書いてあった。  
  君の恋人は預かった。返してほしくば一人で地図の場所までこの手紙を持ちながら来い。  
  尚、誰かに知らせようとなど考えるな。君以外の者の気配を感知すれば即座に殺す。  
最初はなにかの悪戯かとも思ったが現に若林の姿は何処にも見当たらない。  
手紙を持ちながら、との指示もあればそれを残して誰かに知らせる事も出来ない。  
元より、熱くなれば周りが見えなくなる性格も考慮して、あくまで念のためにと飛鳥はこう書いたのだが。  
ともあれ那須乃は小屋に到着する。  
「別段おかしな気配はなし…ですわね。鬼王達の罠ということもあるけど…行かないわけにはいきませんわね」  
恐る恐る小屋の扉を開け、中に入る。昼間だというのに森の中だからか辺りは薄暗い。  
中を探りながら奥まで入り、そこで探し人を発見する。  
「若林っ!?」  
体を拘束され、目と耳と口を覆われているが恋人を見間違えようもない。近付こうと駆け出したのだが――  
ビビビビビッ!  
「きゃああっ!?」  
結界のようなものに阻まれ近付くことが出来ない。  
「くっ…こんなもの…」  
「何も考えずに猪突猛進、か。その悪い癖は未だに直ってないようだね」  
験力を込めて破壊しようとした矢先に、人の声がそれを制止する。  
「誰ですのっ!若林を解放しなさい!」  
「こんな状況でも強気の姿勢か。誉めるべきか呆れるべきか…それに僕の声に気付かないのか?  
 …いや、君にとっては僕などどうでもいい存在だったね。いやいや、愚問だったね、失礼した」  
隠していた姿を現す。若林の首筋に刀を添えながら。  
「声…?……っ!?そんな、何故貴方が…?」  
「やっと気付いたんですか。存外鈍い人だ。だからこうしてあっさり誠を攫われる」  
「伊波…飛鳥、どうして貴方が若林を…!一体何のつもりですの!?」  
「やれやれ…自覚していないのだから尚たちが悪い。…まぁそれはいい。  
 天照郷を滅ぼすのに君達の力は邪魔なんでね。こうしてあそこから引き離したってわけさ」  
あっさりと「滅ぼす」と言うその様子に那須乃は思わずゾクリと身震いする。  
「な、何でそんな事を!?鬼王達ならまだしも、何故貴方がそんな事をする必要が――」  
「必要ならあるさっ!!僕を道具扱いして、邪魔者扱いをした老人や君達に復讐するという必要がね!!」  
那須乃の言葉を遮り、激昂したように言葉を紡ぐ。  
「僕に罪を背負わせて、神子としての重責まで負わせて!挙句には名家の出ではない神子はいらない!?  
 ハッ!古びた考えの老人達だ。困った時だけすがっておいて、用が済めばお払い箱か!」  
豹変したかのような飛鳥に、那須乃は言葉も出せない。  
「君達もそうだ!僕を利用しておいて、そのあとは全て忘れたようにのうのうと暮らしている。  
 そんなの、許せるはずがないじゃないかっ!!……これは正当な復讐だよ」  
飛鳥の演説が終わり沈黙が場を支配する。それを破ったのは那須乃のほうだった。  
「狂ってる……狂ってますわ!そんなの逆恨みじゃありませんか!  
 認めてほしいのなら堂々と姿を現して訴えればいいじゃありませんこと!」  
「それであの頑固な老害どもが大人しく見ているとでも!?まぁ今更なら何とでも言えるさ。  
 …それにもう復讐は始まってる。…白面」  
「なっ!?」  
一瞬にして辺りを魔の気配が包む。それと同時にどこか狂気を孕んだ男達が大勢小屋に入ってくる。  
「これはっ!?それに鬼王・白面!?浄化したはずじゃ…?」  
「あははははっ、驚いてる驚いてる!飛鳥、これでいいんだろ?仕込みは万端だよ?  
 人の心を失わせずに本能だけで動かすように天魔を憑かせる。全く難しい事をさらりと言ってくれるよ」  
「ご苦労。だがこのほうがより楽しいとは思わないか?」  
「そーだね、この女がどんな悲鳴を上げてくれるか凄い楽しみだよ、あはははははっ!!」  
「あ、貴方達…い、一体何を…?」  
「ショータイムの始まりさ。精々楽しんでくれ」  
 
「へっへっへ、この女好きにしていいんだろ、大将?」  
「いい女じゃねぇか。こりゃ一回二回じゃすまねぇよなぁ」  
いやらしい笑みを浮かべ、男達は那須乃の周りを取り囲む。  
「近付かないで!くっ…こうなったら力づくででも………何で!どうして!?」  
「言い忘れてたよ。力は出させないようにしてある。だから今の君は普通の人間と同じって事になるから」  
「な、なぁいきなり犯っちまっても、い、いいのかい?」  
「や、やる?」  
不安から言葉を出してしまうが、それがより恐怖を伴うものだと那須乃にはわかっていない。  
「子供じゃないんだから男と女が揃えばやることは一つだろう?どうせもう若林とは寝たんだろ?問題ないさ。  
 …でもただ犯させるってのも芸がないな。よし、お前達、まずはしゃぶらせろ」  
飛鳥の号令とともに男達は下半身を露にする。屹立した肉棒を見せながら。  
「ひいっ!?い、嫌っ!な、なんで私が…」  
「誠がどうなってもいいのかい?」  
刀を首に押し付け、赤い糸が垂れ落ちる。  
「や、やめてっ!やるわよ!やればいいんでしょ!?」  
「おいおい、さっきから居丈高だなぁお嬢さんよ。そんな調子で大将たちの機嫌を損ねてもいいのかよ?」  
「そうそう、もっと下手にでたほうがいいぜぇ?」  
「くっ…!お、お願いします。どうかしゃぶらせて…ください…」  
その言葉が引き金になり、狂宴が始まる。  
「むぐぅ!?んっ、んんっ、んむっ………ぷはっ!そ、そんないっぺんにだなんて…!?むぐぅっ!?」  
那須乃の口に肉棒を入れて、腰を動かす。ただ己が満足する為だけに。  
「あっ、てめぇ!いきなりかよ!…まぁいいや、ほれ手も使ってやるんだよ」  
両手にも握らせ、手を動かさせる。  
「下手くそだなぁ。もっと唾を溜めたり、口をすぼませたりしろよ!」  
「んぐっ、ん〜〜っ!……じゅるっ、ちゅばっ…ぷはぁ!はぁ…はぁ…お、お願い、苦しいんですの…だから、んぐっ!?」  
「言い訳してる暇があるんならもっと上手にするんだな!」  
「おいおい、手が動いてねぇぞ?こんなんじゃ全然満足できねぇや」  
那須乃の苦しみなど少しも気にかけず罵声を浴びせる。  
それでも那須乃は恋人を救うために拙い知識を総動員して男達のものを咥える。  
「ふん、少しはまともになったか。…まぁ後ろも詰まってるから最初はとっとと出すか」  
男に頭を掴まされ激しく前後に動かされる。  
「んぐっ!?おごっ!ひゃぶっ!んん〜〜っ!!」  
握らされた手も無理矢理動かされ射精へ導かせようとする。  
「ほら出すぜ!全部飲むんだぞ!」  
ドクドクドクッ!!  
口の奥に出され、両手のものからは頭に顔にかけられる。  
口でしたことのない那須乃にとってはとても衝撃的で、だが押さえつけられてるため、飲み込まずにはいられない。  
「んぐっ…んぐっ………げほっ!げほっ!うえぇ…」  
頭を離され、ようやく苦しみから解放され喉にまとわりつくものを吐き出そうとする。だが、  
「おら、まだ終わりじゃねぇぞ。まだまだ人はいるからな。たっぷり飲ませてやるぜ」  
ヒャッハッハッと男達が下品な笑い声を出す。  
「そんな…まだ、んぐぅっ!?」  
宴は始まったばかり――  
 
 
「げほっ!ごほっ!……いや…もう、飲めない、げほげほっ!」  
どれぐらい経ったのか。既に那須乃の顔も、髪も白濁液に汚されていた。  
何人もの男から口淫を強要され、大量の精液が喉を通り匂いが鼻につく。  
「何とか一通り済ませたみたいだな。へへっ、随分綺麗な顔になったじゃねぇか」  
「途中からは素直にゴクゴク飲んでたもんな。いっつも彼氏のにむしゃぶりついてたんじゃね?」  
品位のない罵声に殺意がみなぎる。しかし今の那須乃に抗う手段はない。  
「もう…出し終わったのならいいでしょう?早く…若林を解放しなさいよ」  
むせびながらも約束を果たせと言い放つ。  
「おや?僕がいつ、解放するなどと言ったかな?そんな事は一言も言ってないよ。何を勘違いしてるのかな」  
「そんな…!これ以上何をしろって言うのよ!」  
「同じことを何度も言わせないでほしいな。…お前達、やっていいぞ」  
「いいんですかい?てっきり最初は大将がやるもんだと思ってましたけど?」  
「その人に興味はないんでね。好きなだけ……犯してやれ」  
飛鳥の合図に男達が我先にと那須乃の服を剥いでゆく。  
「いやっ!いやぁーっ!!やめて、やめなさっ!?うあああっ!?」  
体を無数の手が這いずり回り、運のいい男が前戯もなしに挿入する。  
「ひぐぅっ!うあぁ…あぐっ、いやぁ!むぐぅ!?んぐっ!?」  
膣だけにではなく、先ほどは口でしてもらえなかった男が肉棒で口を塞ぐ。  
(何これ。一体何がおこってるの!?)  
異常なまでの事態に那須乃の思考は混乱の一途をたどる。ただ、現実から逃避出来る訳もなく、  
「ひぐっ!うあっ!むぐぅ!?…ぷはぁっ!やだ、やだ…こんなのって、ひぎっ!?」  
「おいおい、お前の口は咥える為にあるんだぜ?口から離すな…っての!」  
「やべっ…こいつの中、すげぇいいぜ!すんげぇ締まって…やべ、もう…出る!」  
その一言に那須乃は今日一番の恐怖を味わう。  
「だ、だめぇっ!お願い!中に出すのだけはやめてぇ!」  
「へへっ、そう言われちゃあ……中に出すしかねぇよな…ほらよ!」  
無情にも胎内に精液が注がれる。奥に、奥に到達するように。  
「いやあぁーーっ!!あぁ…そんな、いやぁ……ひぐぅっ!ま、また!?」  
一人が出し終わればすぐさま次の男が挿入する。休む暇などどこにもない。  
「ほら、こっちも出すぞ!たっぷり飲めやぁ!」  
「んぐっ!?…げほっ、むぐぅ!?」  
前後から貫かれ射精され、体には無数の手が這いずりまわり、乳房や足に吸い付く者もいる。  
たとえ出し終わった男がいても、次には違う陵辱を加える。  
「ほ、ほんとだ!こいつの中、キツキツでた、たまらねぇ!」  
再び膣に射精される。そして外に流れ落ちる暇もなく次のが那須乃を貫いていく。  
「これじゃあいくら時間があっても足らねぇな。こっちも使おうぜ!」  
そう言って男が触れたのは普通ならば何かを入れるための穴ではない。  
「い、いやっ!そっちは違う!無理よ、無理!そんなもの…入るわけがな――ひぐぅあっ!?」  
男達は初めから同意も許可も求めてはいない。ただ使えるものは使う。それしか考えていない。  
「あはっ……ひっ……あがっ…」  
違うリズムで下半身を打ち付けられる衝撃に声も出ず、ただ空気を求めるように口をパクパクさせる。  
そして格好の得物とばかりにその口にも肉棒を挿入し、今、全ての穴を塞がれる。  
「ほらっ…また出すぞ!」  
「どうせなら一緒に出してみるか!ひゃっはっはっ!」  
同時に奥まで押し込まれ、またもおぞましい感触が那須乃の体を通っていく。  
「うあああぁっ!?いや、いやっ!助けて、若林ぃ!ひぐうっ!?あがっ!?ひいいっ!!」  
絶え間のない陵辱を見ながら飛鳥と白面はおよそこの場にふさわしくない笑いを浮かべる。  
「あはははっ!ホント人間って救えないね。守ろうとしてた奴らからこんな仕打ちを受けるなんて考えもしなかっただろうね。  
 男のほうも目の前にエサがあるだけで簡単に理性をなくして。どうしようもないね、あはははっ!」  
「これが人間の本性、か。本当に……下らない」  
 
「ひうっ!はむぅ…ひああっ!やぁ…また中でぇ…ふああっ!」  
最早何回目か分からぬ射精の感触に身を震わせる。若干体を這いずり回る手の数は減ったが熱気は未だ冷めやらず。  
勢いを衰えぬほど三本の肉棒が那須乃の体を蹂躙する。  
「んぐっ、んぐっ…はぁ、はぁ…ひゃうんっ!ま、だ、減らない…あんっ!」  
既に白濁液が付着していない場所はなく、体を動かすたびに下へ下へ垂れていく。  
多くの者が中に出していくため、膣と菊門からは結合している所から溢れ出し、摩擦のためか泡が出来ている。  
「ひゃあんっ!ふあっ!だめ…また、イク…!…ひああっ!」  
何度もこなしていけば苦痛だけでなく快楽も襲いかかり、イカされてはまたイカされ、体は敏感になっていく。  
「へへっ、またイッたかい。随分こなれてきたなぁ」  
「そりゃこんだけ休みなしで輪姦されちゃあなぁ。でも元々淫乱なのかもよ?」  
「ちが……わたしは、そんなんじゃ…ひいいっ!?」  
その様子を見て飛鳥は、そろそろか、と呟く。  
「次の舞台に移ろうか。……おい、女の顔をこちらに向かせろ。犯したままでな」  
その指示にバックから突いている男を除いて位置を変える。  
虚ろな頭で何事か、と考えて顔を飛鳥のほうに向けた一瞬のあと、今までにない悲鳴が木霊する。  
「いやぁーーっ!!いや、いやっ!やめて、見ないでぇ!こんな私を見せないでぇ!!  
 お願い、若林、私を見ないでぇ!!!」  
目と耳を覆っていたもの外し、若林に恋人の痴態を見せ付ける。  
効果は思っていた以上のもので、那須乃は半ば錯乱し、若林は目の前の事態が信じられないと言うように体をガクガクと震わせる。  
「こうでなくては面白くない!誰も君達に快楽を与えるためにここにいるわけじゃないんだよ!  
 苦しんで苦しんで、絶望を味わってもらわないと復讐にはならない」  
薄笑いを浮かべて高らかに宣言する。涙と殺意が入り混じった瞳で若林が見てくるが気にも留めない。  
「悔しいかい?僕を殺したいかい、誠?…だけど君には何も出来ない。何も守れない。  
 君が出来るのは彼女がズタズタに犯されていくのを見るしか出来ないんだよ!アハハハッ!!」  
哀しみと殺意と狂気と熱気がこの場を満たしていく。  
「…さて、僕はしばらくここを離れるけど、白面、ちょっとここを頼むよ。さすがに熱くて気分悪いよ。  
 あぁ、お前らはそのまま犯し続けろ。ただしくれぐれも壊さないように」  
「ひぐぅっ!?いやっ!もうやめてぇ!!これ以上…汚さないでぇ!!!」  
悲鳴を背に、小屋の扉は無情にも閉じられていった――  
 
 
日も落ち暗闇が辺りを支配するようになった頃。狂宴は少し様相を変えながら未だに続いていた。  
「しっかし随分とまぁ、大人しくなっちまったもんだなぁ。最初のあの抵抗してたのが嘘みてぇだ」  
「そりゃお前、こんだけやられっぱなしじゃあ大人しくもなるだろうよ」  
「今も彼氏に見られてんのに、ウンともスンとも言わねぇ。ちょっとつまんねぇよな」  
「それにしてもすっげぇ量だよな。一人頭五、六発じゃすまねぇぞ」  
「へへっ、おい、ちょっと掻き出してみろよ」  
反応の薄くなった那須乃の膣とアナルに指を無造作に入れ、中身を掻き出す。  
何度も大量の精液を流し込まれたそこからは、固まりのようにゴブゴブと零れだす。  
「ははっ、すっげぇ。おい、どうだ?自分のアソコからこんなに流れ出た感想は?」  
「も………やめ………なんでも……します…から……」  
息も絶え絶えというように、白濁に塗れた顔でかすれた声を出す。  
「なんでもするってよ!おら、じゃあ床に零れた精液を飲み干しな!」  
抵抗する気力などどこにもなく、言われるままに床に舌を差し出し舐め取っていく。  
「いい格好だなぁ。こんなん見てたらまた勃ってきたぜ。ほらケツだせよ、また入れてやるぜ、っと!」  
「ひんっ!……ゆる…して。たす……けて……」  
「ほらほら喋ってないで床を掃除しろよ。せっかく出してやったんだからちゃんと飲めよな」  
そう言って顔を白い水溜りに押し付ける。  
「人間も理性がなくなれば獣以下だね。こういう恐ろしさは人間だけが持つもの、か。  
 まったく昔からちっとも進歩してないや。……ん、お帰り。そっちの用は済んだのかい?」  
扉が開け放たれ、飛鳥が戻ってくる。その表情に陰りが見えるのは気のせいか。  
「…まだやっていたのか。臭いな、男は殺せ」  
「いいのかい?僕は喜んでやるけど」  
「補充はいくらでもきくだろう。さっさと二人以外を殺せ」  
先ほどまでと同人物とは思えぬ程の凄みに、白面ですら恐怖を感じる。  
急変した事態に男達は慌てるも、力のない者にはどうする事も出来ない。  
白面の手によって無惨にも肉塊と化していくのを糞尿を垂れ流しながら見るしかない。  
断末魔の悲鳴が響き渡るなか、血と精液の水溜りに沈む壊れた那須乃を見る。どこか楽しげで、どこか哀しげで――  
「彼女も壊れたよ?少しばかり僕にも残っていた人の心は彼女のお陰で綺麗さっぱりなくなったよ。  
 これでもう、君たちを苦しませずにすむ。サヨナラ――」  
白銀の光が二度、振るわれた。  
 
 
 
時間は少し遡る――  
これほどまでに胸糞悪くなるとは思っていなかった。覚悟は出来ていたつもりだったが、自分はどうにも弱い人間のようだ。  
そして弱いことを自覚しているからこそ、こんな事をしでかしている。  
もう少し強くて、何か縋るものでもあれば違う選択肢を選んでいたのだろうか?  
「……今更何を。馬鹿げてる」  
独りごちて歩みを進める。もう戻れない、戻る事は出来ない。  
「ようやく来たか。結界は既に十分だぞ」  
湖畔の傍で大嶽丸と落ち合う。今宵の狙いはあと二人。  
「ありがとう。ならば早速術に入ろうか。わざわざ長引かせる意味もない」  
「人が鬼に礼を言うとはな。とことん変わった男だ。…その荷物は何だ?」  
飛鳥の手に持つドッジボール大のものが入った袋が目に入る。  
「なに、ちょっとした土産さ。使うかどうかは分からないけど、念の為にね」  
それ以上深くは聞くな、という言葉の裏に隠されたものを読み取り、大嶽丸も詮索はしない。  
「…そうか。ならば我の力を吸い取り術を完成させろ。……もう後戻りはしないのだろう?」  
沈黙を肯定の返事として、術の構成に意識を注ぐ。  
これで一先ずの区切りがつく。もう、前に進む他はない。  
 
「――い、――ろ」  
ここはどこだろう?私は何をしてるのだろう?いや、それよりも私は誰なの?  
「おい、結、起きろ」  
結?そうだ、私は紫上結奈。なんでそんな事も忘れていたのだろう?  
「……宗家」  
寝起きの眼をこすりながら自分を呼びかけている人を見る。  
「その呼び方はやめろと言ったはずだぞ?全く……それにしても珍しいな。お前が居眠りとはな」  
「す、すいません。少し疲れてるのでしょうか……あ、でも大丈夫です。執行部の仕事に支障はないですから」  
天照館の執行部の机から起き上がり、目の前の書類にとりかかる。  
「そうか?まぁ無理はするなよ。お前に倒れられては俺達は書類に襲われる羽目になるからな」  
おどけたように笑い、つられて笑ってしまう。こんな一時が続けばいいのに。  
「だが今では***もいるからな。少しは楽か」  
「え?」  
誰かの名前を言ったような気がしたが聞こえない。それに当てはまるような人物すら思い出せない。  
「お前が眠ってる間に、大方は***が片付けたようだ。全く***様々だな」  
まただ、また。名前の部分にだけノイズが走る。ひどく不快な、そして寂しい気持ちになる。  
「俺は用があるから先に帰るが、お前も程ほどにして切り上げるんだぞ。じゃあな」  
「あ…総だ――」  
それを聞こうとして呼びかけたが既に姿は扉の向こう。もやもやした気持ちのまま取り残される。  
あれは何だったのだろう?誰を呼んでいたのか。  
ただその事を考えるだけで気分が陰鬱になる。  
「…嫌……気持ち悪い…」  
いや、果たしてこれはそれだけが理由だろうか。この気持ち悪さは数日前からの――  
コンコン  
ノックの音に誰か部員が戻ってきたのだろうかと、思考を遮り、平静を装う。  
「どうぞ、開いてますよ……っ!?」  
扉の所には数人の学生達。ニタニタといやらしい笑みを浮かべこちらに手を振る。  
また今日もなのか――  
 
誰も近付かないような空き教室に連れてこられる。その部屋には二十人以上の学生がいやらしい笑みでこちらを見てくる。  
全身を舐め回されるように、頭からつま先まで好奇の目に晒される。  
「やっと来てくれたねぇ。みんな待ちくたびれちゃったよ」  
ドンと突き飛ばされ、周りを取り囲まれる。  
「お願いです…!もう、こんな事やめてください…!」  
数日前からのお馴染みの台詞。無駄とは分かっていても言葉にせずにはいられない。  
「まだ言うの?だから俺達が満足したらって言ったろ?その時にこの写真を返してやるって」  
ピラピラと一枚の写真が振るわれる。そう、抵抗出来ないのも全てはこの写真のせい。  
いつ撮られたのかは分からないが、皆が武器を持って任務に出かけるところを撮られた。  
執行部の内容を一般の者にばらす訳にもいかず、ただ彼らの言うがままにされる。  
「そんな…!いつ、満足して下さるんですか!?」  
「さぁ?明日か明後日か。一ヶ月後か一年後か。紫上さんが嫌なら他の子に頼むんだけどねぇ?」  
それだけは出来ない。自分一人で済むのなら誰かを巻き込む事は出来ない。  
「わ、わかりました……どうぞ、私を好きにして下さい…」  
望まぬ言葉を言う以外に選択肢はない。  
「そうだなぁ…今日はまずパンツ脱いでよ。どうしてもそれに触りたいって奴がいてね」  
皆に見られながら下着を脱いでいく。  
「こ、これが紫上さんのパンツ!や、やべぇ!たまらねぇ!」  
下着でペニスを包み、その学生は自慰に耽る。そしてすぐに射精し、下着は精液塗れになる。  
「うっわ、すげぇ早漏。なーにが楽しいんだか。ズコバコやったほうがもっと気持ちいいのによ」  
ギャハハ…と下品な笑いが木霊する。  
「ほ、ほら見てよ紫上さん。君のパンツが精液だらけだよ!こ、これをまた履いてよ!」  
「おっ、そりゃ中々面白そうだな。履いたらスカートまくって見せてくれよー」  
どうしてこんな事を思いつけるのだろう。共に学んできた人たちが実はこんなのだったのか。  
グチュリと濡れるそれを受け取り、再び履いていく。生暖かい感触が気持ち悪い。  
スカートをまくりあげ、卑猥な格好を見せる。下着からはポタポタと精液が垂れ落ちる。  
「ははっ、たまんねぇな!紫上がお漏らししてるみたいだぜ!」  
「なぁ、もう犯ろうぜ。もう辛抱できねぇよ!」  
「そんなにがっつくなって。ちゃんと順番守れよ」  
「いきなり中出しすんなよ。最初ぐらいは普通にやりたいからな」  
押し倒され、下着を剥ぎ取られる。  
「お願い、いきなりは、ひぐぅ!?い、痛い、痛いのぉ!いやぁ!!」  
体を気遣う事無く、テクニックもなく、ただただ強引に腰を振られる。  
「さて、お口も留守させちゃ悪いからね。ほらほら口、開けろよ」  
「いぎっ!むぐっ、んぐっ!?…じゅるっ、ぺろっ…んん〜っ!?」  
ここ数日の経験で口に入れられた時は唾液を溜めて舐め取るほうが早く終わる事に気付く。  
そんな事に気付きたくもなかったのだが、窒息で意識を失うよりかは幾分マシだ。  
「へへ…フェラのほうも結構上手くなってきたなぁ。まぁあれだけ突っ込んで飲ませりゃ上手くもなるか」  
「胃の中がザーメンづくしになるまで飲ませたもんな。ん?どうだ?おいしかったろ?」  
あんなものおいしいわけがない!  
そう叫びたかった。だが叫ぼうとどうしようがされる事は結局同じ。  
「…ぷはっ!はぁ…ひぎっ、うああっ!お願い、そんなに…激しくしな、ひああっ!?」  
「いいからお前は喘ぎ声だけ上げて犯されりゃいいんだよ!うっ…!ほら、ぶっかけてやる!」  
膣から抜かれ勢い良く顔に精液をかけられる。鼻にくる生臭さがより嫌悪感を増していく。  
「よし…!おら全部こぼさず飲むんだぞ…!」  
口の中で肉棒が暴れ、喉の奥に直接流し込まれる。どれだけ飲まされようと未だにこの纏わりつく感覚は慣れない。  
「うえぇ…苦い…どうして、こんな事…」  
「そんなの知らねーよ。俺らはただスッキリできりゃそれで十分だし。ぎゃっはっはっ!」  
 
「ひうっ!やんっ、うあっ、ひゃあんっ!むぐ…んむぅ…!?」  
何人かの陵辱が終わった次の時、声の様子が明らかに違ってくる。  
(いやっ!なんで…なんで気持ちよくなんてなるのよっ!?)  
「おっ、ようやく感じてきたか。いい声上げてくれるじゃん。こりゃますますハッスルしちゃうぜ」  
少年は肉棒を出し入れしながら胸を揉みしだき、クリトリスを容赦なく弄る。  
「ひいぃっ!?やっ、はっ、だ、めっ!ひゃあっ!?ひぐっ、あんっ!」  
「なんかイキそうじゃね?おい、派手にイカしてやれよ!」  
「イク時の声、聞きたいなぁ。お前、口から抜いておけよ」  
「ちぇっ…いいとこだったのによ。まぁ、イキ顔見といてやるか」  
「よっしゃ!ラストスパートだ!」  
腰の動きが早くなり、受ける衝撃と快楽が津波のように襲いかかってくる。  
「やだっ、いやっ、こんなのっ、ひんっ、やだぁ…!」  
何も考える余裕がなくなり、頭の中がどんどん白くなっていく。  
「おらっ、イけっ…!!」  
ドビュルルッ!  
「いやああぁぁああぁ!!!」  
膣の最奥で射精されたと同時に、体を痙攣させ、潮を吹き、絶頂に至ってしまう。  
(いやなのに…つらいだけなのに…こんな人達にっ…!)  
「派手にイッたなぁ。こっちまでびしょびしょになっちまったぜ」  
「な、なぁ、俺もう我慢できねぇよ。二つだけじゃ時間かかってしょうがねぇ。ケツも使おうぜ」  
「まぁ…一回イカせたからもう大丈夫かね。よし三人ずつでやろうぜ」  
(何か言ってる……だめ、体が動かない。やすませ――)  
「ひいいあぁっ!?だ…め…いったばかりで、敏感に…ふあああっ!?」  
少年の上に跨らされたと思ったら、いきなり膣に奥まで貫かれもう一度絶頂に達してしまう。  
「ははっ、またイキやがった。どれ、さすがにこっちは少し濡らしてから…っと!」  
今度は激痛が襲ってくる。  
「ひぎぃっ!?あ…な、んで…そんな…とこ…ひぐうっ!だめぇ!動かさないでぇ!」  
ズグ、グズ…と違うペースで衝撃がやってくる。  
膣で受ける快楽とアナルで受ける激痛に、まともな思考が出来るわけもない。  
「お口も留守ですよーっと。おおっ!?衝撃が直接伝わって、中々いいぞ!」  
一週間前にはこの身で男のものを受け入れるなど考えもしていなかった。  
それが今では一人で三本もの肉棒を咥えこんでいる。  
無理矢理絶頂に達せられ、望まぬ中出しを何度も何度も受けてしまった。  
粘っこくて濃い精液も、まるで小便のような精液も、固まりのような精液もこの喉を通った。  
ここから逃げ出したい。誰か助けて。  
(宗家!那須乃!宝蔵院先輩!若林君!一之瀬さん!琴音ちゃん!御神君!…***!!)  
今、最後に呼んだのは誰なのだろう?知っている、なのに思い出せない。今、呼びかけたはずなのに。  
どこからか舌打ちの音が聞こえた気がした。  
 
「ひっ!?やっ!また…んああっ!!」  
またイカされた。心は屈してしないはずなのに、体は正直に快楽を受け入れてしまう。  
「ははっ!またイキやがった。さっきからビクビクしっぱなしじゃね?」  
「いやいや言ってる割にだもんな。おら…飲みな!」  
「お前ら飲ませすぎだろ。まぁ気持ちはわかるけどな。もう普通の女が一生に飲む以上は飲ませてるよな」  
どうして笑いながらこんな事が出来るのだろう。自分さえ良ければ他人なんてどうでもいいのか。  
執行部のためと思ってきたが何故自分だけがこんな目に合うのか。  
体から男達が離れた時にその思いが爆発してしまう。  
「もう…嫌っ!!楽しくなんてないっ!気持ち良くなんてないのっ!どうしてこんな事出来るの!?  
 私は人間です!でも…貴方たちは人間なんかじゃないっ!!」  
はぁはぁと息を荒げ、思いのたけをぶつける。だがそれは少年達の心を逆撫でするだけで。  
「うるせぇよ」  
髪を掴まれ顔を上げさせられる。  
「言ってくれるじゃねぇか。でもな誰も最初からお前を人間だなんて見てないんだよ。  
 てめぇは奴隷だ。俺達の便器なんだ。公衆便所なんだよ」  
「あー…俺もちょっとむかついた。いいぜ、それなら自覚出来るようにふさわしい場所でやってやろうじゃねぇか」  
髪を掴まれながら無理矢理違う場所へ連れていかれる。  
男子トイレの中まで連れていかれ、洋式便器の上で体を縛られる。  
「い、痛い!な、なんでこんな所で!?」  
「お前にゃお似合いの場所だろ?少しは優しくしてやったけどこっからは容赦なしだ。犯しに犯しまくってやる。  
 前も後ろも口も全部中出ししまくってやる」  
少年達のギラギラした目に恐怖が増していく。  
「んじゃ早速…入れてやるぜ!」  
「うああっ!?ひぐっ、あがっ、いやあぁっ!!」  
今までよりも大きな悲鳴が出る。怖い怖い。本当にこの人達は「人間」じゃない。  
これまでのじっくりたっぷりとねぶるような責めとまるで違う。  
力強く強引に捻じ込み、押し込んでくる。このままでは壊される。  
「いぎぃっ!?あうっ、いやっ、こわれ、る…壊れるっ!!」  
「あぁ、ぶっ壊してやる!くらえ!」  
膣に精液が流し込まれる。何度経験してもこの感覚だけは慣れない。  
「休ませてなんかやらねぇからな。夜中にゃ帰してやろうとも思ったが今日は帰さねぇ。  
 明日は休みだし、中出ししまくってやる!」  
間断なく貫かれては胎内に吐き捨てられる。その繰り返しだった。  
何人もの少年が入れ替わり立ち代わり己の欲望を満たしていく。  
「うあっ……ひぐぅっ!?もう…はいらな…んああっ!?」  
喘ぎ声など出なく、ただ悲痛な弱弱しい叫び声しか出せない。  
「おい、見ろよ。出てきた精液が便器に溜まってるぜ。とりあえずこれが満杯になるまでやりつくすか!」  
それでも五分の一程度でしかない。終わりはいつ来るのか。予想も出来なかった。  
「安心しな!今、新しい奴も呼んでる最中だからな。何本でも咥えさせてやるぜ!」  
恐怖が、絶望が襲い来る。  
「嫌……嫌……いやあああぁぁああぁ!!!」  
 
 
月が天の真上に来る。暗く静かな森の中にある天照郷。  
その中の学校の一室で、未だ肉の塊は動き続けていた。  
「んあ……ひぎっ…?うぇ…げほっ…」  
気持ち悪さに胃の中のものを吐き出す。白いものが吐き出され、それが飲み込まされた精液だと理解するのにしばらくかかった。  
無惨な様相だった。膣とアナルからは絶え間なく白濁液が零れ、異常な量が便器に溜まっている。  
体に付着していない場所などなく、鮮やかだった黒髪も白く塗り潰されていた。  
何度も意識を失っては衝撃に覚醒させられる。  
四肢の感覚もなく、生きている、という自覚すらないざまだった。  
「これで何周目だぁ?さすがにもうほとんど反応なくなっちまったなぁ」  
「見ろよこれ。こんなに出されたのか、何リットルあんだよ」  
「そろそろここから降ろしてみるか」  
拘束が解かれ、糸の切れた人形のように床に倒れこむ。  
焦点の定まらぬ目で、ヒューヒューとかすかな息遣いがなければ死人のようだった。  
「おい、これ生きてんのか?」  
「なーに、そうそう死んだりしねぇって。そうだ、どうせならこの溜まった奴飲ませればまともになるんじゃね?」  
「ひでぇ事思いつくなぁ。まぁ溺れる寸前なら目ぇ覚ますわな」  
バケツで便器に溜まった精液をすくい取り、口を開かせ流し込む。  
「んぐ……んぐ……んんっ!?んむぅ〜、んんっ、うおえぇぇ!」  
「はは、起きた起きた!」  
バケツに残っていたものをそのまま顔にかける。  
「げほっ!げほっ!……はぁ、はぁ……もう……や……しぬ…」  
それでもあとから合流したものは出したりないのか肉棒を刺し入れる。狂気にとり憑かれたように。  
数時間後――  
紫上は精液の湖に沈んでいた。  
少年達は帰ったのか、どこかで休憩でもしてるのか姿は見えない。束の間の休息だった。  
逃げ出そうにも体は動かない。ただ白い液体の上で身を委ねることしか出来ない。  
そこに一人の少年が近付いてくる。顔は見えない。ただ口元が哀しげに微笑んでいた。  
「随分酷くやられたね。でもこの狂った有様こそ一種の美しさがあるよ」  
優しい口調で語り掛けられ、顔を触られる。愛しい人にするそれのように。  
「…だ……れ…?」  
聞いたことのある声。頼りにしていた人の声。  
「可哀相に。まるでおもちゃが捨てられてるようだよ。…でもおもちゃって壊したくなるよね」  
ペニスが挿入される。中に溜まった精液を掻き出すように、押し込むように。  
「本当はこうならなくても良かった。君にはチャンスを与えていたんだよ?」  
「チャ……ンス…?」  
「そう。でも結局君は答えられなかった、思い出せなかった。……いや、思い出さなかったのかな?  
 あの人が帰ってきたことで、心が満足してしまったからかな?」  
(あの人?帰ってきた?何を言ってるの?)  
「ほんのちょっと期待してたけど、やっぱり何処にも僕の居場所はない。それを確認させられただけだった」  
少年の顔から涙が、紫上の顔に落ちて濡らしていく。  
「だけど怒りはない。ただ…ありがとう。これで、僕から人の心がなくなった。  
 もう弱さはなくなった。自分のするべき事をするだけだと確認できた。……だからありがとう、紫上さん」  
射精された感覚を受けると、紫上の意識は暗闇に沈んでいった――  
 
 
「いやあああぁぁああぁ!!」  
叫び声とともに体ごと起き上がる。はぁはぁと息をつき、周りを見渡す。  
いつもと変わらぬ自分の部屋。寝間着が汗を吸い取り、少し気持ち悪い。  
「夢……夢か」  
終わりのない悪夢を見ていた。自分の体を多くの者が蹂躙していく悪夢を。  
何故あんな身の覚えもない悪夢を見ていたのか。あの人が帰ってきて、もう何も心配する事などない筈なのに。  
「でも、悪夢で良かった…」  
「確かに夢は終わり。でも続きはまだこれからだよ」  
一人呟いたあとに、人の声が耳元で囁かれる。  
「誰っ!?」  
振り向いても誰もいない。しかし声は変わらず紫上に纏わり付く。  
「それに君はまだ目覚めちゃいない。一度目をつむり、よく自分の体を眺めてごらん?」  
妖しくもあるが、言われたとおりにしてみる。一体何が変わるというのか。  
まぶたを開けて、自分の様子に愕然とする。  
「あ……あぁ…嘘、嘘よ…こんなの…いや……いやぁ…」  
体には何も身に付けていない。それだけでなく体には大量の白濁液が付着していて、もたげた頭からも垂れ落ちる。  
股間からも絶え間なく溢れ出し、愕然とする。  
これは悪夢と同じ。悪夢の続き。何が現実で何が夢なのかも分からない。  
「ようやく気付いたね。でもいい夢だったろ?安堵したあとのその信じられないという表情…堪らないね」  
声の主が姿を現し、見知った顔に驚きを隠せない。  
「伊波…君…?どうして、貴方が…?」  
「君達に復讐を、この地の者に復讐をするために。…まぁ色々と理由はあるんだけどもういいや。  
 今はもう、自分がこうしたいからこうするだけ。わざわざ理由付けるのももう…面倒くさい」  
冷たい瞳で言い放つ。そこにかつて共に戦った時のあの優しい瞳は何処にもない。  
「復讐って……何でそんな事を!?」  
「那須乃も同じ事言ったね。面倒だからこれで我慢してくれ」  
そう言うと頭の中にイメージが入り込んでくる。那須乃に降りかかっている陵辱の場面をまざまざと見せ付けられる。  
「いや…違う、違う!私達はそんな事思ってない!貴方の事を忘れてなんかいない!」  
「嘘を付くなっ!!!」  
怒声が部屋に響き渡る。  
 
「忘れてなんかいない?はっ、酷い冗談だ!現に君は今の状況に満足しているじゃないか!?  
 九条さんが帰ってきて、自分の想いを貫けて自己満足に浸っているだろう!?それに夢の中でも言っただろう?  
 僕の事を思い出せなかったと!僕の名が呼ばれた時も!君が誰かに助けを求める時もっ!  
 結局君は僕の名を認識しなかった!君は、九条さんがいればそれで十分だと思っているんだよっ!!」  
悪夢を思い出す。あの時ノイズがかかっていたのは伊波の名前だったのか。  
そして伊波の言う事も否定出来ない。確かに九条が帰ってきた事で心は満ち足りていた。  
「だからもう…僕も容赦はしない。……ありがとう、人の心を捨てさせてくれて。  
 あとはせいぜい…夢の続きを楽しんでくれ」  
またも部屋の景色が歪む。現れたのは屋敷の男達。従者や使用人たちが生気を失くして、しかし荒い息をつきこちらを見ている。  
「どうして…ここに貴方達がいるの…?いや…いや!もうあんな事したくない!」  
悲痛な声をよそに男達は体にむしゃぶりつき、欲望を満たそうとしてくる。  
「うああぁっ!?やめてっ、やめてよぉっ!もう私を犯さないで!もう私を汚さないでぇ!!」  
三つの穴は全て肉棒で埋められ、両手にも握らされ、髪に足に押し付けてくる。  
使われていない場所などない。道具のように人形のように、文字通り骨の髄までしゃぶられてゆく。  
「…ぷはっ!いや、助けて!誰か助けて!宗家、たすけ――」  
「…彼はもういない。残っているのは『彼だった』ものだけだ」  
ゴトリと何かボールのようなものが視界に入る。信じられない認めたくない有り得るはずがない。  
だけど目に映るものは誤魔化しようがない。そこにあるのは首。首「だけ」しかなかった。  
「い、いやあああぁぁぁあぁぁ!!!」  
人が出せるとは思えぬ声で叫び、それと同時に男達の精が降り注ぐ。  
紫上は男達を振り払い、その物体を掲げる。流れ落ちる血が精液と混ざり合っていく。  
「宗家…そうけ。アハ……アハハ……いや…いやぁ……アハハ…アハハハハハハハハハハ…」  
泣き声と笑い声が同時に紡がれる。そのうち嗤い声だけが響くようになる。壊れたレコードのように。  
それを見てももう何も心に湧いてこない。那須乃の時のような不快さも感じられない。  
復讐を果たしたという達成感も感じない。もう自分に人の心はないから。  
男達はそんな紫上に意にも介さず群がってゆく。心を失くした肉の塊が醜悪に睦みあっている。  
「サヨナラ、昔の僕が焦がれた人。この地が滅びるまでの間、せいぜい楽しんでくれ」  
心を失くした者達と心を壊された者をどこか懐かしそうに見つめてから、心を捨てた者は暗闇に消えていった。  
 
悲鳴があちらこちらで響き渡る。男も女も幼子も、区別なく天魔の牙に引き裂かれ食い千切られていく。  
悲鳴のオーケストラを、懐かしい天照館の執行部の部室で鑑賞する。  
老人達は既に殺した。苦痛を与え、延命させてはいたぶり、泣き喚いてから生きたまま天魔に喰わせた。  
現在の執行部の面々は八雲たちが相手をしている。  
「随分、色のない顔になりましたね。まぁ何が起きたか大体は想像出来ますけど。  
 あとは約束通り執行部や退魔班の面子は僕が引き受けます。僕の邪魔さえしなければどうでもいいですよ。  
 …もう会う事もないでしょう。さようなら、飛鳥さん」  
普段と変わらぬ様子でそう言って八雲は姿を消していった。  
「これで手伝いは終了か。このあとはもう何もしなくていいのだな?」  
「雑魚や憑かせた者を暴れさせるだけで、もうここは崩壊する。…十三連座を壊そうと、荒神を蘇らせようと好きにしろ」  
「そうか。ではそうさせてもらおう。もう我らは貴様に触れようなどとはせぬが…達者でな」  
「ははっ、鬼にそんな事を言われるとは思ってもいなかった。お前達も忘れるな。  
 どんな世界になろうといずれ貴様らの前に立ち塞がる者が出てくる。忘れるな…人間はお前達が思っている以上に恐ろしい存在だ」  
大嶽丸達とはそう言って別れた。  
今日、少なくともこの地は滅びる。進歩するのをやめたこの郷は世界からなくなる。  
これでいい。だけどもうどうでもいい。  
自分の周りにはもう誰もいない。暗い暗いこの一人きりの小さな世界こそ自分の居場所だったのだ。  
それだけは邪魔させない。自分はこれから先、一人ぼっちで生きて一人ぼっちで死んでゆくのだ。  
その最後の障害を排除する為にここにいる。彼らに既にあのイメージは送った。  
部室の扉が開かれる。かつて共に戦った者達が、信じられない、信じたくないという表情を浮かべて。  
こちらも立ち上がる。刀を抜いて殺気を放つ。もう語り合う必要はない。だけど、  
「さぁ殺し合おう。君たちは人の世界を守る為に。僕はこの一人きりのちっぽけな世界を守る為に」  
最後の心の欠片が、一粒の涙となって落ちていった。  
これは一つの可能性の未来の物語――  
 
 
<完>  
 

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