僕は一人で天照郷へと向かうバスに揺られていた。うとうととしつつももうすぐ久しぶりの郷へ帰れると考えたら眠気が吹き飛んでしまった。  
 僕は郷の、執行部のみんなに会ったら何を話そうか、何をしようかと考えていた。  
 特に、総代にはお土産もたくさん頼まれていたのでそれを渡すのも楽しみなことの一つだった。  
 お土産の甘味物の入った紙袋を広げて中を見てみる。僕が東京で理緒や、光ちゃんに訊ねて吟味した物だったのでかなり自信はある。  
 渡した時、そしてそれを食している時の彼女の嬉しそうな表情を早くみたいなと思っていたときバスが止まった。  
 僕はバスを降りて、郷へ向かう道を歩き出した。  
 
 久しぶりの休日で久しぶりに郷に帰ってきた。  
 もう何年も帰ってきていないのではないかという錯覚を覚えてしまう程僕は東京に馴染んでしまったらしい。  
 しかし、ここの空気はいつ吸っても素晴らしいものだ。  
 事前に帰ることは伝えていたので朱雀大門の所に出迎えが来ていた。  
 そう、執行部の三人だ。  
「センパーイ! お帰りなさーい!」  
 と、元気よく僕に向かって麒一が手を振っていた。僕はそれに気づき笑顔で手を振り替えした。  
 三人の元へと急ぎ足で辿り着く。三人は相変わらずの様子で僕は安心した。  
「先輩、長旅ご苦労様です。あ、荷物持ちますよ」  
「いや、これ君たちへのお土産だから」  
 僕は麒一に袋から取り出した書物を渡す。去年のクリスマスに欲しいと言っていたのを覚えていた。  
「あ、これ。先輩! ありがとうございます!」  
「八雲殿、お変わりないようですね」  
「ああ、桔梗さん。はい。これも君へのも」  
 桔梗さんへは僕からではなく夕からの物だった。何故かは知らないが彼女は桔梗さんになついているようだった。  
「ほう……これは……素晴らしい櫛ですな」  
 中身は僕も知らなかった物だが、桔梗さんにはよく似合っている物だなと思った。  
「八雲、お帰りなさい」  
「うん。ただいま。総代。ほら、総代がこの間食べたいって言ってた……」  
「あ、う、うん……それはほら後でにして今は荷物を置きに行きましょう」  
 総代は未だにこういったことを人前に出すのを拒む。イメージダウンに繋がるとでも思っているのだろうか。僕としては結構いいと思うのだが。  
 僕たちは郷の中へと入り、取りあえず寮へと向かうことにした。  
「結崎先輩は今回は一緒じゃないんですね」  
 麒一がそう言った。  
「うん。あいつはあいつで用事があるからね」  
「用事? ってなんですか?」  
「うーん……なんていうかなぁ……」  
 まあ、今回の僕の用事に似たようなものだなぁと思いつつ口には出さず適当にごまかしておいた。  
 そこで何気なく総代のほうを見た。  
 彼女も僕の方を見ていたらしくはたと目が合った。一瞬見つめ合ったが途端に総代が頬を朱に染め視線を僕から逸らした。  
 その様子に気付いたのか桔梗さんが不思議そうに訊ねた。  
「どうなされました? 総代」  
「な、なんでもないわよ。さ、早く行くわよ」  
 一人前に飛び出し、彼女は耳まで真っ赤に染めていた。  
 妙に僕も恥ずかしくなった。  
 
 
 僕たちはそれから郷を回り、時間を潰した。  
 夕方になってから僕は寮へと帰ることにした。  
 寮の前に着き、総代と桔梗さんとは別れることになったのだが、僕はまだ総代に土産物を渡していないことに気付いた。  
「あ、総代。これ……」  
「あ、そうね……今貰うのもあれだから、そう。明日執行部室に来てちょうだい」  
 周りには聞こえないようにひっそりと総代が告げた。  
 何故明日でしかも執行部室なのか僕は疑問に思ったが、そこは素直に頷いておいた。  
 しかし生ものなので早めに食して貰いたかった。  
 それから僕は麒一と一緒に今までのことや、最近の出来事を話していた。  
 気が付いたら夜になっており、その日は入浴してから夕飯を食べ、かつて僕に与えられていた部屋に行き、すぐに眠った。  
 
 
 朝起きてからすぐに顔を洗い朝食を済ませ、身だしなみを整えてから手に土産を持ち寮を出た。  
 向かうは執行部室。総代に会いに行くのだ。  
「失礼します」  
 僕は軽くノックをしてからドアを開けた。  
 そこで総代はいつも通り椅子に座り何か書き留めていた。僕に気付くと微笑んで椅子から立ち上がった。  
「八雲、いらっしゃい。さ、こっち」  
 総代が自分の隣の椅子を指し言った。僕はそこへ移動し、土産をテーブルの上に置いた。  
「はい、総代にはやっぱりスウィーツだよね」  
「うんうん。ありがとう八雲。でも……あなた一つ間違ってあるわよ」  
 僕のことをじっと見つめる総代。  
 ああ、久しぶりに帰ってきたからか、久しぶりに会ったからかうっかり失念していた。  
「ああ、うん。ごめん、京香」  
「うん。よろしいでしょう」  
 二人っきりの時は名前で呼んで欲しい。  
 いつまでも彼女を総代と呼んでいた僕に京香はいつの日か言った。  
 彼女も人前で名前を呼ばれるのは気恥ずかしいのだろう。それは僕としても同じ事だ。なのでずっと総代と呼んでいた。  
「あら、これは見たことがないわね。新作かしら。でもおいしそう」  
 京香は僕の土産を見て口元に笑みを浮かべる。  
「ありがとう、八雲」  
 そしてにっこりと笑い僕の方を見た。  
 心の中で僕はこれを教えてくれた二人の女子に感謝した。  
「いやあ、そう言われるとこっちも嬉しいな」  
「うふふ。ねえ、これ二人で食べましょう」  
「あ、僕も貰って良いの?」  
「当たり前よ。なに? そんなに卑しい女かしら? 私」  
 滅相もない。  
 僕はその申し出を素直に受け取った。  
 しかし、ここにはお茶はあるが皿やフォークは……あった。  
 執行部室はもう少し物固いイメージがあったのだが。  
「先代が置いていってくれたのよ」  
「ふうん……九条さんの後の代かな?」  
 僕はそう考えながら皿などの準備をしようと立ち上がった。  
 京香も一緒に立ち上がる。僕は棚へ向かい皿と湯飲みを取り出した。  
 カチャリ、と後ろから何か音がした。  
「あの……今の……」  
「鍵、閉めたの」  
「鍵……?」  
 僕は振り向いた。京香が悪戯な笑みを浮かべていた。  
 皿を持ち、テーブルへ置く。  
「そういえば今日は他のメンバーは……」  
「来ないわ。誰も」  
「そう。あの、なんで鍵を」  
 そこで突然僕の口は塞がれてしまった。  
 京香の柔らかい唇によって。  
 
 一瞬思考が止まった。  
 その間にも京香は唇を離さず、更に僕の首に手を回してきた。  
 体が完璧に密着する。僕は自然と鼓動が早くなった。  
「っは……」  
 やっと唇が離れた。触れただけのキスが数秒足らずのことだというのに何分もそうしていたかのような感覚だった。  
「突然どうしたの?」  
「うふふ……デザートの前にはメンディッシュ頂く物よ?」  
 ぎゅっと僕の胸に頬を押しつけてくる京香。  
 あのあまりそんなことをされると大変困るのですが……。  
「あのさ……もしかして溜まってた?」  
 僕は頭に思ったことを素直に口に出してしまった。  
 京香はばっと僕の事を真っ赤な顔で見上げる。  
「だ、だって……最近全然東京に行く機会もないし……八雲ともなかなか二人っきりになれないし……何より……」  
 そこで再び俯いてしまった。  
 僕はその姿が妙に愛おしく思えすっと彼女の腰に手を回す。  
「京香」  
「え?」  
 見上げた瞬間キスをした。  
 先ほどのように触れるだけでなく、僕は舌で京香の唇を割り口内へと侵入した。  
「ん……ふ……」  
 僅かに彼女の口元から息が漏れる。  
 口内で彼女も舌を絡めてきた。  
 ねちょりと舌と舌が絡み合うのを僕は感じていた。  
「は……ふう……」  
 口を離す。僕と京香の間に唾液が糸を引いていた。それを舌で切り、手で彼女の口元を拭った。  
「八雲……」  
「京香……」  
 ゆっくりと京香がしゃがみこんだ。  
 そしてすっと僕の股間に手を触れる。  
「ん……服の上からでも分かる……」  
「……うん」  
 実はここの所僕も溜まっていた。  
 京香と前に関係を持ってから何故かオナニーをする気にもなれなかったのだ。  
 ヂィィと京香がいきなり僕のファスナーを降ろした。  
「ちょ、いきなり?」  
「いいからじっとしてなさい。これは総代命令よ」  
 ふふんと嬉しそうに総代は笑った。  
 職権乱用っていけないと思うなぁ。  
「わ……相変わらずすごいわね……」  
「恥ずかしいからやめて……」  
 京香は既に大きくなっている僕のペニスを両手で優しく包むように掴んだ。  
 そして、しばらくそれを見つめてからゆっくりと可愛い舌を伸ばして僕のペニスの先端をちろっと舐めた。  
「ん……」  
 久しぶりだからか、溜まっているからなのか、もの凄く気持ちいい。  
 京香はさらに亀頭をぺろりぺろりと舐め回す。  
「上手くなった?」  
「ん……そう?」  
 京香はそしてゆっくりと僕のペニスを口に含んだ。  
「ふむ……ん……ちゅる、じゅる……」  
 ゆっくりとペニスを吸い上げながら京香は口内でそれを愛撫した。  
 僕は背筋を刺すような快感に浸りながら一生懸命僕にフェラチオをする京香を見ていた。  
 先走りの液で京香の口の周りがねっとりと汚れ始めた。僕はそろそろ限界を感じていた。  
「あの……京香……イキそうだよ……」  
 そう言ってすぐに僕は京香の口の中に射精していた。  
 
「ん! んむう!」  
 僕の吐きだした精液が彼女の口から溢れた。  
  ちゅぷりとペニスを口から引き抜き、彼女はごくりと僕の精液を飲み込んだ。  
 口周りが白濁色の液体で卑猥に汚れていた。  
「なによ、あなたも充分溜まってるんじゃない……」  
「いや、はは……」  
 僕は京香を立たせると机に手をつくよう指示した。  
「こうかしら?」  
「そうそう。お尻を突き出して」  
 そう言うと彼女は恥ずかしそうに可愛くお尻を僕の方に突き出した。  
 僕は彼女のスカートの中に手を突っ込み下着の裾に手をかける。  
「あ、ちょっ」  
「脱がすね?」  
 返事を待たず僕は彼女の下着を脱がす。太股まで下ろし、スカートをまくり上げた。  
「濡れてるね」  
「う……」  
 京香は恥ずかしそうにぎゅっと目を瞑った。  
 顔はすでに真っ赤だ。  
 僕は指で彼女の秘所に触れる。ちゃくっと水音がした。  
「あ……」  
 ゆっくりと指で秘所をなぞる。  
「ひん……!」  
「これくらい濡れてるならすぐ挿入しても大丈夫だね」  
「ん……八雲……」  
 京香が熱っぽい瞳で僕を振り返り見た。  
「大丈夫、いれるよ」  
「うん、来て……」  
 ゆっくりと僕はペニスを京香の秘所に押し当てる。  
 ゆっくりと亀頭が膣内へと侵入していく。  
 ズブリと僕のペニスが完全に京香に飲み込まれた。  
「あ! 八雲ぉ!」  
「動くよ」  
 ズッズッと僕は前後に腰を動かす。  
 その度ペニスと膣がこすれて僕に快感を与えた。  
 動くたびに京香は「あっあっ」と声を漏らす。  
「あんっやくもっ……なかで凄い……動いてるぅ」  
「京香……はっ……気持ちいいよ」  
 僕は一度京香からペニスを引き抜き彼女と向かい合わせになる。  
 そして再び彼女に挿入した。こうすれば彼女の顔がよく見えた。  
「やくもぉ、やくもぉ……」  
「ん……京香……!」  
 ピストン運動を激しくしていた。  
 動かすたびジュクジュクと水音が響き、僕と京香の結合部から僅かに泡が溢れた。  
「あん! イク! 八雲! イっちゃう!」  
 京香が僕の首筋に手を回し叫んだ。  
「京香……僕もイク……!」  
「八雲ぉ……!」  
 ビュク、っとは京香の膣内に射精した。  
 ドクドクとザーメンが京香の中へと注ぎ込まれていく。  
「いやあ……八雲の……ヒクヒクしてる」  
「京香……」  
 僕は優しく京香にキスをした。  
 ペニスを引き抜くとそこからごぼりとザーメンが溢れた。京香をテーブルの上に寝かせる。  
 京香は肩で息をしながら微笑み。  
「私も愛してるわよ、八雲」  
 と、いつの日かの答えを貰った。  
 
 それから僕たちはしばらくしてから向かい合ってケーキをほおばっていた。  
 なかなかの味であり、僕も夢中で食べていた。  
「うふふ……」  
「ん? どうかした?」  
 突然京香が笑い出し。僕はどうしたのだろうかと訊ねた。  
「ううん。なんでもない」  
「? 変な人だなぁ」  
 僕は再び自分のケーキへとフォークを伸ばした。  
 そこで京香がぼそりと言った。  
「本当に恋人同士なんだなぁ……」  
「ん?」  
 僕にはなんと言ったのか聞こえなかったが彼女は嬉しそうに微笑んでいた。  
 
 
「なるほど。総代に今日は執行部室に近づいてはいけないと言われたのはこういったわけでしたか」  
「うわ!」  
 突然桔梗さんが表れた。  
 どこから来たんだ? ドアには鍵が……って天井裏!?  
「南宮先輩! ずるいですよ! 草凪先輩と二人で……」  
 麒一は忍者だったなぁ……って今の発言は少しどうかと思うぞ。  
「麒一! 貴方まで……もう、なにをしてるの!?」  
「いえ、総代にあそこまで念を入れられては何かあるなと思いまして」  
 桔梗さんが言った。  
「僕は草凪先輩を捜してました。で、水間谷先輩が執行部室にいるっていうから一緒に来たんですよ。  
でも鍵がかかっていたので上に上がって来ました」  
「え?」  
 なんか嫌な予感がした。  
「あの、桔梗さん……?」  
「いえ、お二人は熱々ですね。としか私は言えませんね」  
「桔梗!」  
 京香がそう叫んだ。  
 麒一は何がなんだか分からないと言った顔をしていた。  
 僕は恥ずかしいと思いつつ、頬がゆるんでいたと思う。  
 僕は言った。  
「ケーキ、食べる?」  
 京香が凄い勢いで振り返った。  
 
 
 完  

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