天照郷に存在する一軒の骨董品店、菊宮堂。
骨董品店と銘打ちながら、扱う品は場所柄あやしい呪術系のものも多数。
伽月は天照館高校を卒業してから菊宮堂の店長代理として働いていた。
「そろそろ店じまいかな」
店内に陳列された商品のほこりを払い掃除する作業に追われていた伽月は、
ふと目に入った時計の針から、外はすっかり暗くなっている時間であることに気づきつぶやく。
「これで最後によっかな」
誰にともなく言葉を発した伽月の目が、その最後に綺麗にしようと商品に目が留まる。
やや小ぶりな刀、というか小刀。
それは彼が使っていたものと、そっくりな飾りの施された(もちろん別物ではあるが)小刀であった。
「イナミン・・・どうしてるかなぁ」
意識せず、握りしめた小刀を抱きしめ伽月はそれに話しかけるように囁く。
「思えば、彼にはひどいことばっかしてたよね」
誰よりも頑張っていた幼馴染、
でも、自分はそれを認めてあげられなかった。
いつも自分勝手に暴れて彼にフォローさせて、感謝はしてたそれでも口から出る言葉はいつも彼を貶めてた。
「・・・イナミン」
伽月は、そっと小刀を彼の物だと自分に言い聞かせながら服の上から秘部に押し当てる。
それだけで伽月の体は芯がじわりと熱くなる。
伽月はそのまま、小刀をゆっくりとすりあげ、
「ん・・ん・・・」
序々にその速度をあげていく。
「イナミン・・・いいよ・・・イナミン」
ただ小刀の鞘ですりあげるだけの稚拙な行為。
だが、それが彼のだと想像するだけでこんなに感じる。
これが本当に彼がしてくれていたらどんなに幸せだろう・・・
伽月は激しく小刀を上下させ、
「あっん!イナミンっ!イナミン!」
彼の名を叫びながら達した。
「・・・またしちゃったよ」
事が終わって冷静になった伽月はそっと小刀をふきながらつぶやく。
「きっと、もうイナミンは帰ってきてくれないんだよね・・・」
伽月は自分の目にうっすらと流れた涙を拭くと、小刀を丁寧に磨き棚に戻した。