「すまないな、こんな朝早くから」  
エンレッド神王家の一室に設けられた執務室、ロスメスタは集まった人々の顔を  
見渡しながら口を開く。  
これから一体何が始まるんだ――集まった人たちのほとんどに疑問と困惑の表情が  
ありありと浮かんでいる。数少ない例外は、ロスメスタと少し離れたところで死人のような  
顔をしているパジャと、そのパジャを見てニヤニヤしているフェイロンだけだ。  
「今日は、皆に知らせたいことがある」  
そう言うと、ロスメスタはパジャに歩み寄り、その腕を取って言った。  
「わたしはパジャと…結婚することにした」  
 
しんと静まりかえる室内。  
集まった人々はロスメスタの言葉を理解できていない様子だった。  
「…な、なりませんぞ!…け…結婚など!」  
いち早く正気に戻ったホル・アハ神官長が声を荒げる。  
「…一体どういうことか説明していただけませんか、陛下」  
こめかみに指を当てながらクラルが当然の疑問を口にする。それは、この部屋にいる者  
ほぼ全員の疑問でもあった。  
「どうもこうもないぞ、クラル殿。今言ったとおりだ」  
「いえ、そういう意味ではなく…」  
「わたしとパジャは今まで一緒に旅をしてきた仲間だ。その間、いろいろなことがあったが  
パジャは…女王としてではなく、一人の女性としてわたしのことを愛し、支えてくれると言った。  
わたしにとって、それは何物にも代え難い」  
再び、静まりかえる室内。ロスメスタは顔色一つ変えず平然としているが、横にいるパジャは  
恥ずかしさと腹立たしさで、苦虫を噛み潰したような表情をしている。  
「ふぅ…」  
クラルは椅子の背もたれに体を預けるとひとつため息をつく。――女王の結婚は  
言うまでもなく国家の一大事である。それを周囲に何の相談もなく決めてしまうのは  
確かに問題がある。しかし、ロスメスタの性格からして、意に沿わない相手と結婚すると  
いうことは考えにくい。ならば――という気はする。しかし――  
 
「陛下、私はその者との結婚は絶対に反対です」  
沈黙を破るように、オルジェイの硬い声が部屋に響く。  
「どうしてだ、オルジェイ殿。何か賛成できない理由があるのか?」  
「陛下は…その者が魔族と承知の上、結婚なさると言うのですか」  
オルジェイの声には明らかな非難の色がある。クラルの懸念もまさにその点だった。  
王家の長い歴史において、魔族との結婚など、もちろん前例がない。自分や  
周囲の者たちが納得しても、民衆がどう受け取るか。そのことを考えると、素直に  
賛成とはとても行かない。  
「王家の者が、魔族と結婚してはならないという決まりなどなかったと思うが?」  
少し困ったような表情を見せながら、ロスメスタは首を傾げる。  
「しかし…魔族との結婚など…民衆が納得しませんぞ」  
そう言ってオルジェイは、パジャの方に視線を向ける。  
パジャ自身もその点が気にならないわけではなかった。何も持たない自分が、国の  
象徴とも言える女王と結婚する――自分が魔族であるということ以前に、最初から  
釣り合わない組み合わせである。  
「…民衆が、ではなく、オルジェイ殿が納得できないだけではないのか?」  
ロスメスタの思いがけぬ言葉に、オルジェイは絶句する。  
「…オルジェイ殿が魔族に良い感情を持っていないのは知っている。ただ、人の価値は  
魔族であるとか、王族であるとか…そういうもので決まるわけではないだろう。  
もし人々がわたしたちの結婚に不満があると言うのなら、その不満を打ち消せるだけ  
精一杯働いて汗を流せば良い。そうすればわかってくれるはずだ」  
 
「しかし…」  
「兄ちゃん、何を言ってもロスメスタの決意は変わんないって」  
まだ何か言おうとするオルジェイを諭すように、それまで黙っていたフェイロンが口を開く。  
「パジャはロスメスタのことが好きで、ロスメスタもパジャを受け入れた――それだけの  
ことじゃん。俺たちがどうこう言う問題じゃないって」  
「そういう問題ではない!」  
「じゃあどういう問題なんだよ?兄ちゃんがパジャのことを気に入らないのはわかるけど  
結婚するのは兄ちゃんじゃなくてロスメスタだ。そのロスメスタがパジャでいいって  
言ってるんだからそれでいいじゃん」  
あくまで飄々としたフェイロンの口調に、オルジェイは返す言葉もない。  
「しかし急に結婚なんて。一体昨日何があったんだ」  
フェイロンは当事者二人に視線を向ける。  
「それはな…」  
「余計なことは言わなくていい!」  
何か言おうとするロスメスタを、パジャはあわてて制止する。  
「ま、いいや。あとでゆっくり聞かせてくれ」  
そう笑うとフェイロンは再びオルジェイたちの方に向き直る。  
「とにかく、ロスメスタのことを女王としてではなく、ただの女性として扱うことが出来るのは  
もうパジャくらいしかいねぇよ。…それがロスメスタの望みだって言うなら、一つくらい  
叶えてやってもいいんじゃねぇの?」  
これには一同黙るしかない。…ロスメスタはこれから、名実ともに国を背負っていかなければ  
ならない。周囲の者が支えてくれると言っても、それはあくまで女王だから支えるに過ぎない。  
もちろんそれはありがたいことだ。しかし時には女王ではなく、一人の女性として、弱音を  
吐くことも、泣きたくなることもある。その支えとしてロスメスタはパジャを選んだのだ。  
 
「…ここまで言われて反対すると、我々が悪者にされてしまいそうですな」  
クラルはそう言ってアジスやホル・アハ神官長の方に顔を向ける。  
二人とも仕方がないという表情をしている。悪者にされる、というよりも、ここまで  
ロスメスタの決意が固くては、翻意させるのは不可能と言っていい。  
この三人が折れては他の者が反対しても意味がない。こうしてロスメスタとパジャの  
結婚は、なし崩し的に認められることとなった。  
 
 
「なんで俺がこんなことをしなければいけないんだ…」  
──あなたは女王の夫となるのですから、王家のしきたりなど多くのことを学んでもらわなくては  
なりません――そう言われて、朝から晩までみっちりと勉強漬けの生活を始めるようになって  
はや半月が過ぎた。だいたい、頭を使うよりも体を使うことの方が向いているパジャにとって  
勉強漬けの毎日は苦痛以外の何物でもなかった。  
「大変そうだな、パジャ」  
一日の講義から解放され、部屋で横になっていたパジャにフェイロンが声をかける。  
「…しきたりや王家の伝統なんて、俺には無縁のものだったからな。さっぱり意味が  
わからん」  
「ま、知らなきゃ知らないで別に構わないもんなんだけどな」  
「そうも言っておれないらしい。――あなたが非常識な振る舞いをされると、それはすなわち  
女王であるロスメスタの恥になる――ということだそうだ」  
「なるほど。ロスメスタのためか。そう言われちゃ仕方ねぇな。ま、せいぜい頑張ってくれ」  
そう言ってフェイロンは部屋を出ていく。ロスメスタ――言われてみれば、皆の前で結婚を  
宣言して以来、ロスメスタとは一度も会ってない。会いに行こうと思っても、こっちは朝から  
晩までみっちり勉強漬けで、身動き一つままならない。いや、会いに行こうと思えば行けない  
ことはないのだが、向こうも何かと忙しい身だ。わざわざこっちから訪ねるのも気が引ける。  
「ロスメスタを支えると誓ったのに、甘えてしまっては本末転倒だ」  
会いたいけど、ここは我慢するしかない――そう思いながら、パジャは深い眠りに落ちた。  
 
 
「…なるほど、パジャも大変なのだな」  
次の日――フェイロンからパジャの様子を聞いたロスメスタはそう言って笑った。  
「朝から晩まで毎日みっちりじゃ、さすがに息も詰まるよな」  
そう言いながらも、フェイロンの口調はどこか面白がっているように感じられる。  
「おかげであれからパジャの顔を見ていないぞ」  
「そうなのか?」  
「パジャも疲れているだろうし、わたしが行くとかえって気を遣わせてしまうからな。  
…それに、わたしの顔が見たければ、向こうから訪ねてくるだろう」  
「うーん…パジャはやせ我慢をするタイプだからなぁ…会いたいけどロスメスタのことを  
考えて無理してるんじゃないかって気がするけどな」  
フェイロンの指摘に、ロスメスタは目をみはる。  
「なるほど、確かにそれは言えるな…しかしパジャはどれくらいの時間になったら部屋に  
戻るのだ?訪ねていったらもう眠っていて、それで起こしてしまったらパジャが気の毒だ」  
「それなら俺にいい考えがある」  
そう言ってフェイロンは、自らの考えをロスメスタに話す。  
「…しかし、そんなことで本当に喜ぶのか?」  
「パジャはああ見えて寂しがり屋だからな。口では文句を言うだろうけど、絶対に  
喜ぶはずだぜ」  
半信半疑のロスメスタに対し、フェイロンは自信ありげにそう断言した。  
 
 
「まったく…毎日これでは…体が保たんぞ…」  
一日の講義を終えたパジャは、疲れた体を引きずりながら自分の部屋に向かっていた。  
少しくらい休みをくれても良さそうなものだが、パジャの「教育」を担当している  
オルジェイは「やらなければいけないことは山のようにある」と言って取り合おうとしない。  
「フェイロンが逃げ出したのも納得できる」  
そんなことを考えながら廊下を歩いていると、自分の部屋から明かりが漏れているのに  
気づく。  
「…またフェイロンか…?」  
フェイロンが留守の間に勝手に上がり込んだのかと思ったが、昨日の今日である。  
それも考えにくい。不思議に思いながら扉を開けたパジャは、その姿勢のまま  
凍り付く。  
「遅かったな、パジャ。待ちわびたぞ」  
「……」  
「せっかく夜食を持ってきてやったというのに、すっかり冷めてしまったではないか」  
「…ロスメスタ」  
「なんだ?」  
「どうして…あんたが俺の部屋にいるんだ…」  
その場にへたり込みそうになるのをこらえながら、パジャは呻く。  
「一人で食べるより、二人で食べる方が美味しいだろう」  
「しかし…こんな夜遅くに女王が自分の部屋を抜け出したりしていいのか」  
なおもパジャは文句を言う。その様子にロスメスタは「フェイロンの言ったとおりだな」と  
感心する。  
 
「誰かさんが訪ねてきてくれないからな」  
「……」  
これにはパジャも黙らざるを得ない。  
「おぬしは…わたしの顔が見たくなかったのか?」  
「いや…そんなことはないが…朝から晩まで忙しくて…」  
見たくないわけがない。しかし、そんな暇がどこにあると言うのか。  
「ならば夜遅くでいいから訪ねてくればいいのに」  
「そんな夜這いみたいな真似が出来るか!」  
「わたしは別に構わないぞ」  
「…あんたが良くても、俺が良くない!」  
「これから一緒になると言うのに、何を遠慮することがある?」  
「ぐっ…」  
素直に「ありがとう」と言いたいのに、いざ本人を目の前にすると調子が狂ってしまう。  
「とにかく、思ったより元気そうで安心したぞ。…これなら大丈夫そうだな」  
「何が大丈夫なんだ」  
その場に腰を下ろしながら、パジャは訊き返す。  
「いや、おぬしがあまりにも疲れているようなら、わたしも自分の部屋で休もうかと  
思ったのだが…」  
「なっ、何を…」  
「少しくらい、夜更かししても問題なさそうだな」  
そう言ってロスメスタはパジャの方に体を寄せる。湯上がりなのか、ロスメスタの  
髪の毛からほのかに良い薫りがする。パジャは理性が飛びそうになるのを懸命に  
こらえるが、しなだれかかってくるロスメスタと視線が合うと、もう駄目だった。  
 
「んっ…!」  
激しく唇を奪われ、ロスメスタは少し驚いたような表情を見せて体を硬くする。しかし  
それも一瞬のことで、すぐに瞳を閉じ、パジャの方に体を預ける。  
ロスメスタの体から力が抜けるのを感じると、パジャは自らの舌をロスメスタの口内に  
侵入させ、舌を絡め取る。  
「んんっ…ん…」  
最初は舌の動きに戸惑っていたロスメスタだったが、慣れてきたのか、自分の方からも  
積極的に舌を絡めていく。  
やがて二人は名残惜しそうに唇を離す。先程までの行為の激しさを物語るように  
二人の間に唾液の糸が繋がり、そして切れる。  
「…わたしを先に食べるのか?」  
しばらくして、ロスメスタが口を開く。夜食のことを言っているのだと理解するまで  
少し時間がかかる。それにしても…  
「…自分から誘っておいて何を言う」  
こめかみが痛くなるのを感じながら何とか反論する。  
「おぬしだって我慢していたのだろう?」  
悪びれる風もなくロスメスタは言う。確かにそのとおりだが、こうして口に出して言われると  
何だか気恥ずかしい。その様子を見たロスメスタは、少し声を落として続ける。  
「何も…無理して我慢することはない…。おぬしの悪い癖だぞ。わたしのことを気遣って  
くれるのはありがたいが、いささか他人行儀過ぎるのではないか?」  
ロスメスタの言葉が胸に染みる。あれからあえて訪ねないようにしていたのは、訪ねていくと  
どうしても求めてしまいたくなる。それで嫌われるのを恐れていたからに他ならない。  
「あんたは…嫌じゃないのか」  
自分でも馬鹿なことを訊くと思ったが、訊かずにはいられなかった。  
「まったく…そういうところが他人行儀だと言うのだ。…嫌なら、こうしてわざわざ  
訪ねてきたりはしないぞ」  
そう言ってロスメスタはパジャの頬に手を当てる。  
柔らかく、冷たい手の感触が心地よい。パジャはその手を取ると、自分の方に引き寄せる。  
 
「…続きを、するのか…?」  
パジャはその問いには答えずに、そっとロスメスタの首筋に唇をつける。  
「ん…」  
首筋から項のあたりを執拗に責められ、ロスメスタの口から甘い吐息が漏れる。  
その間にパジャの手は上着の裾を割って内側へと入り込んでくる。  
「こら…、触り方が…んっ…いやらしいぞ…」  
快楽に流されるのを堪えるように抗議の声を上げる。  
しかしパジャはそんな声を無視するように、上着の前を解いて乳房を露出させると  
愛撫によって固くなった先端を口に含む。  
「ああっ…」  
先程までとは比べものにならない快感に全身が痺れる。  
一方のパジャも、吸い付くような胸の感触に我を忘れそうになっていた。  
どれだけ触っても、どれだけ口に含んでも飽きる気がしない。  
「ん…胸ばっかり…っ!やめ…っ」  
この声を聞けるのは自分だけ――そう思うと、パジャの興奮はより一層高まる。  
乳房から口を離すと、胸のあたりから下腹部にかけて舌を這わせ、その間にスカートを  
脱がすべく、留め金を外す。  
「あっ…」  
わずかに抵抗するそぶりを見せるが、構わずスカートを脱がす。  
「…せめて…明かりを消してくれ…」  
羞恥に顔を赤く染めたロスメスタが懇願する。普段からは想像できないその姿に  
抑えきれない衝動が一気に駆け上がる。  
「駄目だ。全てを…見せて欲しい…」  
そう呟くと、閉じられた太腿の間に顔を埋めて、足を開かせようとする。  
「いやっ…やめ…くぅ…っ!」  
ロスメスタは必死に抵抗するが、思うように力が入らない。仕方なく抵抗をあきらめると  
パジャは露わになった太腿の内側に舌を這わせる。  
「んっ…、そんなところをっ…くっ…んんんっ!」  
一通り太腿を弄んだパジャの舌が下着越しに自分の秘所へ到達すると、羞恥と快感から  
大きな声が漏れてしまう。その声を聞きながら、パジャは割れ目に沿って舌を這わせる。  
「やめ…っ、…汚いぞ…そんなっ…!」  
しかしパジャは構わず同じところを責め続ける。  
 
(凄い…中から…溢れてくる)  
自分の唾液とロスメスタの愛液で、下着はもうぐっしょりと濡れている。  
パジャは太腿の間から顔を離すと、下着に手をかけてゆっくりと下ろす。  
すると下着と秘所の間に幾重にも液体の糸が連なる。  
「こんなに濡らして…はしたないな」  
パジャはそう言うと、溢れ出した愛液を指で拭ってロスメスタに見せる。  
「見せなくても…わかっている…っ!」  
「本当か?まだまだ溢れてくるぞ…」  
そう言って再び秘所をまさぐると、指の動きに反応してロスメスタの体がビクッと震える。  
やがてパジャは手の動きを止めて、着ているものを脱ぎ始める。  
服を脱ぎ終えると、ロスメスタの体を後ろからそっと抱く。  
直に触れる肌のぬくもりが心地よい。  
「ロスメスタ…いいか」  
足を広げて、秘所に自分のものをあてがいながら言う。  
「…ゆっくり…してくれ…」  
「ああ」  
短くそう答えると、パジャはゆっくりと自分のものをロスメスタの中に挿入する。  
「はあ…っ!やあ…ああっ…」  
最初の時ほどではないが、慣れない痛みに声が漏れる。  
「動くぞ…」  
「…ん…っ…」  
ぎしっ、ぎしっ、と床板がきしむ音が聞こえる。ゆっくりと腰を動かしながら、空いた手で  
ロスメスタの胸を愛撫する。  
「んっ…!あっ…!やっ…!ああっ…!」  
次第にロスメスタの声が大きくなる。それと同時にパジャの快感も高まり、腰の動きが  
自然と激しくなる。  
 
「やっ!激し…っ!んっ…!」  
膣内をかき回される感覚に声も途切れ途切れになり、白い肌にはうっすらと汗が浮かぶ。  
二人の結合部からはとめどなく愛液が流れ出し、淫靡な音を奏でる。  
「あっ、んんっ…!もうっ…!ああっ…!」  
ひときわ声が高くなる。それに伴って、膣内の締め付けも一気に増す。  
「…そんなに締めたら…くっ…出てしまう」  
「…んっ!…いいぞ…中で…!…してもっ…!」  
激しい動きに息を切らせながらも、はっきりとロスメスタは言う。  
その言葉を受けて、パジャは最後のスパートとばかりに激しく突き上げる。  
「あっ!んんっ!ああっ…!…っ!」  
ロスメスタの全身が大きく痙攣する。  
「…くっ…!」  
高まる締め付けに、程なくしてパジャもロスメスタの中で自らを解き放つ。  
「…はぁ…んぅ…」  
熱い迸りを受け、ロスメスタの口から甘い吐息が漏れる。  
「ロスメスタ…いったのか?」  
繋がったままの体勢で息を整えながら、パジャは囁く。  
「ん…そう…みたいだな…」  
少しうつむき加減で答える。  
パジャはロスメスタの顔を自分の方に向かせると、そっとついばむように  
唇を重ねる。  
「しかし…おぬしも…強引だな」  
しばらく唇の感触を楽しんだあと、何かを思い出したようにロスメスタが言う。  
「何がだ」  
「…こんな床の上で…。せめて…明かりは消して欲しかったぞ…」  
先程までのことを思い出したのか、ロスメスタはほんのり頬を赤らめる。  
やはり少し強引すぎただろうか…そんなことを考えながら、パジャはロスメスタの中に  
残したままの自らを抜こうとする。  
 
「あっ…待ってくれ…」  
その感覚に、ロスメスタが声を上げる。  
「もう少し…このままで…いてくれないか」  
「どうしたんだ」  
「その…おぬしのぬくもりを…もう少し感じていたいのだ…」  
パジャの問いに、ロスメスタは少し恥ずかしそうに答える。  
その言葉に、力を失っていたパジャのものが反応し、ふたたびロスメスタの中で  
大きくなる。  
「あっ…また…」  
「…すまない」  
節操のない自分に自己嫌悪を抱きつつ、パジャは謝る。  
「いいのだ…おぬしがしたいなら…何度でも…」  
そのあとは自分でも恥ずかしいのか、声にならない。ロスメスタが言い終えると同時に  
パジャは腰を動かし始める。その動きに合わせるかのように、ロスメスタの腰も自然に動く。  
「くっ…きつい…」  
一度達したばかりだというのに、気を抜くとすぐ達してしまいそうになる。  
このあいだまで処女だったロスメスタの締め付けは、それほどまでにきつい。  
「んっ!…パジャ…またっ…!いくのか…」  
激しくなる動きに耐えながら、ロスメスタが口を開く。  
「…ああ…」  
「わたしもっ…!もう…少しで…んっ…!一緒にっ…!」  
最後の方は声にならない。それと同時に締め付けも一層増す。  
「くっ…!出すぞっ…!」  
「んんっ…来て…くれっ…!」  
その言葉に合わせるように、パジャは腰を深く打ち付け、ロスメスタの最深部に自らの  
欲望を放つ。  
 
「ああっ…!ん…!」  
熱い迸りを子宮に受け、ロスメスタもふたたび上り詰める。  
「…はぁ…はぁ…」  
しばらく呼吸を整えると、パジャはロスメスタから体を離す。  
「…んっ…」  
結合部からはおたがいの愛液と白濁液が、先程までの行為の激しさを物語るように  
溢れ出す。秘所から太腿に伝う感覚に、ロスメスタの口から声が漏れる。  
「まだ…溢れてくるぞ…」  
後始末のため、秘所を紙で拭いながらロスメスタが呟く。  
「中で出したが…今日は大丈夫だったのか?」  
その光景を見ながら、パジャは当然の疑問を口にする。  
「ふふ…今更そんなことを気にするのか」  
どこか嬉しそうにロスメスタは言う。パジャは言葉を返せない。  
「この間のこともある。…わたしは…別にできてしまっても…構わないぞ…」  
「しかし…」  
自分のしたこととは言え、やはり気にせずにはおれない。  
 
「…もう良いではないか。…それとも、おぬしは子供が欲しくないのか…?」  
寂しそうな表情を見せるロスメスタに、パジャはあわててかぶりを振る。。  
「いや…ただ、あんたは大丈夫なのかと思って…」  
「だから言っておるだろう?…こういうことは、成り行きに任せるしかないのだ」  
そう言ってロスメスタは、パジャにそっと身を寄せる。  
「わたしは…何人でも子供は欲しいぞ」  
「そうなのか?」  
「…おぬしは子供が嫌いか?」  
ロスメスタに訊き返される。  
「いや…しかし、大変ではないのか…?」  
「ふふ…それくらい、別にどうと言うことはないぞ。…パジャが、そばにいてくれるなら…」  
そう言ってロスメスタはパジャの目を見つめる。  
「何か…こそばゆいな」  
「…わたしもだ」  
居心地が悪そうに首を竦めるパジャを見て、ロスメスタはいたずらっぽく微笑んだ。  
 
了  
 
 

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