「なぁ、そんなに働いてばっかりいないで、たまには息抜きでもしたらどうだ?」  
エンレッド神王家の屋敷に設けられた臨時の執務室。ライフォンは滅びたものの、かつての  
王宮はとても使えるような状態ではなかった。そこで引き続きエンレッド神王家の屋敷の一室を  
執務室として使っている。いつもは報告や陳情に訪れる役人などでごった返しているが、もう陽が落ちて  
大分経つこともあってか、部屋の中にはロスメスタと護衛のツェーリ、それにフェイロンしかいない。  
「これだけ忙しいのに、わたしが休んでいる場合ではないだろう」  
「それにも限度ってもんがあるぜ。あれからずっと働きづめじゃねぇか」  
あれから――ロスメスタの眼前でセチェンが消え、パジャの不器用とも言える告白を  
受けて以来、ロスメスタはすべてを忘れるように職務に没頭していた。クラルやホル・アハ  
神官長が休むように言っても聞き入れようとしない。そこでフェイロンの出番となった。  
何も答えないロスメスタに、フェイロンは続ける。  
「セチェンのことを忘れろとは言わねぇ。だけど、パジャに返事くらいしてやってもいいんじゃねぇか?」  
痛いところを突かれたのか、ロスメスタの表情がわずかに曇る。  
確かにセチェンのことを忘れろと言われても、一生忘れることは出来まい。だがそれは終わったことだ。  
今更嘆いたところでどうにもならない。むしろ今、心の中を苛んでいるのはパジャのことだった。  
パジャと出会い、一緒に旅をするようになってしばらく経つが、事あるごとにパジャは自分に  
突っかかってきたし、駄洒落にも激しい拒絶反応を見せる。自分も随分と厳しい言葉をパジャに  
ぶつけてきた。だから嫌われているのは当然だと思ったし、仕方のないこととも思った。  
 
「・・・わたしは、てっきり嫌われているものだと思っていたが」  
視線を窓の方に向けながら、そう呟く。  
「やっぱり気づいてなかったのか」  
「フェイロンは気づいていたのか?」  
逆に訊き返されたフェイロンは、肩をすくめながら言う。  
「そりゃあ、な。パジャはロスメスタのことをずっと気にかけていたから、いろいろ  
ちょっかいを 出したりしてたんだ。本当に気に入らない相手だったら  
いちいち突っかかったりせずに無視してるって」  
ずっと気にかけていた――その言葉がロスメスタの胸に響く。  
「そういうものなのか?」  
「ま、パジャは素直じゃないからな。そういうロスメスタはどうなんだ?嫌なら嫌と  
はっきり言ってやるべきだぜ。その方がパジャのためでもあるしな」  
そう言い残して、フェイロンは執務室を出ていった。  
 
「素直じゃない、か」  
自嘲気味に呟くロスメスタ。どうも自分のことを言われたような気がしてならない。  
パジャのことは少し時間を置いて考えよう――最初はそうすることで結論が出ると思っていた。しかし  
実際は自分の気持ちを認めたくなかっただけだ。それに、パジャと顔を合わせづらいというのもある。  
現に、あれからパジャとは一度も口をきいていない。  
「ツェーリ、パジャの部屋はわかるか?」  
突然声をかけられ、ツェーリは少し驚いた表情を見せる。  
「・・・返事をしに行くのか、女王」  
「・・・そんなところだ」  
「わかった。案内する」  
そう言って部屋を出ようとするツェーリに、ロスメスタは  
「いや、場所さえ教えてくれればいい」  
と言って制止する。  
「しかし・・・」  
「何も屋敷から出るわけではないのだ。構わないだろう?」  
こうまで言われたら引き下がるしかない。ツェーリから部屋の場所を聞いたロスメスタは  
「誰か訪ねて来たら、今日はもう休んだと伝えておいてくれ」  
と言って部屋を後にした。  
 
「もうこれ以上、この屋敷にとどまることもあるまい」  
荷物をまとめながら、パジャは誰にともなく呟く。  
ライフォンを倒した今となっては、自分がこの屋敷に居続ける意味は何もない。それより、ロスメスタと  
同じ屋根の下にいると、いつ顔を合わせてしまうかわからない。それが怖かった。  
確かに、ああいう形ではあるが告白はした。ただ、ロスメスタが自分を受け入れてくれるとは到底思えない。  
今までのこともそうだが、何よりセチェンのこともある。ロスメスタの心にセチェンがある以上、自分が入り込む余地などない――セチェンが消えて無くなった今でもそれは変わらないだろう――そう考えると胸が痛む。  
ロスメスタが自分を拒絶するのは仕方がない。何よりロスメスタは王女で、自分はただの魔族に過ぎない。  
「第二藩王家の後継者」と言っても、確たる証拠は何もない。ただ、本人に面と向かって拒絶されるのは  
辛いし、とても耐えられそうにない。あの時、「他の男を愛してもいい」と言いはしたが、やはり自分のことを受け入れて欲しい――それが偽らざる本心だった。  
ただ、それが叶わない以上はどこかで断ち切るしかない。夜逃げ同然で屋敷を出るのは忍びないが  
逆に挨拶して出ていくのも変な話だ。そう自分を納得させて屋敷を出ることにした。  
荷物をまとめ、部屋を出ようとしたところで、何者かが部屋に近づく気配を感じた。最初はジャンガンかと  
思ったが、ジャンガンは数日前に「第二藩王地の様子を見てくる」と言って屋敷を出たまま、今も帰らない。  
では一体誰が――そう思っていると、扉をノックする音とともに、パジャにとって今一番聞きたくない声が  
扉の外から聞こえてきた。  
「パジャ、わたしだ。いるなら返事をしてくれ」  
なぜロスメスタが自分の部屋に――パジャは激しく動揺した。胸の鼓動が  
早くなるのを感じる。  
「・・・一体何の用だ」  
動揺を悟られないよう、短く答える。  
 
「おぬしと二人きりで話がしたい。扉を開けてくれないか」  
(なんということだ・・・)パジャは心の中で唸った。逃げるのが一歩遅かった・・・それより、ロスメスタの方から自分を訪ねてくるのは完全に想定外だった。しかしこうなってしまっては仕方がない。観念したパジャは扉を開く。  
「しかし、随分と殺風景な部屋だな」  
部屋を見渡したロスメスタは思わず呟く。  
「・・・何もなくて悪かったな」  
こんなに緊張するとは・・・自分の未熟さに呆れながら、なんとか声を絞り出す。  
「どうした?調子でも悪いのか」  
そう言ってロスメスタはパジャの顔を覗き込む。至近距離で視線が合うが、パジャはロスメスタの瞳から  
逃げるように視線を外す。  
「・・・それより話とはなんだ」  
ロスメスタが何を話に来たのかはわかる。向こうから切り出すのを待っても良かったが、嫌なことは  
早く終わらせるに限る――そう思い、あえて自分から切り出す。  
「・・・この間のことだ」  
「・・・」  
出来ることなら今すぐこの場から逃げ出したい。しかし、心の片隅にわずかな期待があるのも事実だ。  
パジャは黙ってロスメスタの言葉を待つ。  
「・・・わたしは一生、セチェンのことを忘れることは出来ないだろう」  
抑揚のないロスメスタの声に、パジャの目の前は真っ暗になる。  
二人のあいだに沈黙が流れる。  
「それでも・・・おぬしは・・・わたしをひとりの女性として・・・愛してくれるというのか」  
パジャの目を見ながら、ロスメスタは口を開く。  
「あんたは──」  
言いたいことはいくらでもあるのに、うまく言葉に出来ない。  
「──俺みたいな何も持たない、ただの魔族が相手でいいのか・・・」  
やっとの思いでこれだけ口にする。  
 
「・・・わたしはずっとパジャに嫌われていると思っていた。だから・・・正直びっくりした。でも・・・嬉しかったのも事実だ。・・・わたしは女王として生きていかなければならないし、その座を捨てることは出来ない。それでも・・・パジャはわたしを支えてくれるのか」  
「なぜそんなことを聞く、女王、いや、ロスメスタ。・・・俺はあの時、全力であんたを助けると誓った。女王だからとかそんなことは関係ない。俺はただ、ロスメスタの力になりたい。それだけだ」  
無意識の内にロスメスタの両肩を掴んでいたパジャは、言い終えて我に返り、あわてて手を離す。  
「わたしも同じだ。・・・パジャが魔族だとか、そういうことは関係ない。・・・その気持ちだけで十分嬉しい」  
そう言ってロスメスタはパジャの方に一歩歩み寄る。  
「ロスメスタ・・・」  
パジャはロスメスタを抱き寄せる。 甘い香りがパジャの鼻孔を擽る。  
「わたしは・・・不器用な女だ。・・・パジャの望むような女にはなれないぞ。それでもいいのか?」  
パジャの腕に抱かれながら、ロスメスタは呟く。  
「馬鹿なことを言うな。俺は別に何も望まない」  
「駄洒落もやめないぞ」  
「うっ・・・」  
思わず言葉に詰まる。確かに駄洒落だけは勘弁してほしい。ただ、やめてくれと頼んだところで、聞き入れてはくれまい。  
「・・・理解できるように努力する」  
「それは嬉しいな」  
そう言ってロスメスタは顔を上げる。そして、どちらからともなく唇を重ねる。  
(これが、女性の・・・唇)  
柔らかく、甘いその感触にパジャの理性は飛びそうになる。  
唇を離すと、閉じていた瞳を開いたロスメスタと目が合う。  
 
「・・・なんか、不思議な感じだな。パジャとこうなるとは・・・考えたこともなかった」  
それはパジャ自身も感じていることだった。旅をしているときは些細なことで喧嘩ばかり。それが自分自身の好意の裏返しと気づくまで、随分と時間がかかってしまった。  
「すまなかった」  
「・・・何を謝る必要がある?もう済んだことだし、おたがいにつまらぬ意地を張っていただけだ」  
ロスメスタはそう言って笑うと、今度は自分からパジャの唇に自分の唇を重ねる。  
さっきより、長く、激しいくちづけ。ロスメスタの唇を貪りながら、パジャは服の上からロスメスタの腰の下あたりを愛撫する。  
「・・・!」  
ロスメスタは突然の感触に体を震わせる。  
唇を離したパジャは、そのままロスメスタの耳元に唇を近づけ、耳朶をそっと咬む。  
「あっ・・・!」  
未知の刺激に、ロスメスタの口から思わず声が漏れる。  
その間にパジャはロスメスタの体を後ろ向きにして、背後から両手で胸を愛撫する。  
「・・・っ・・・ああっ・・・!」  
ぎこちなくも激しい愛撫に、ロスメスタの体から力が抜け、パジャの体にしなだれかかる格好になる。  
パジャはロスメスタを抱きかかえると、部屋の隅にあるベッドまで連れて行き、そっと横たえる。  
「脱がせてもいいか?」  
上着に手をかけながら、ロスメスタの耳元で囁く。  
羞恥に頬を染めながら、小さく頷くロスメスタ。女王として振る舞うときは決して見せることのないその表情に、パジャの興奮は高まる。  
そんな自分を落ち着かせるように、ゆっくりと上着の留め金を外し、肌着をたくし上げる。そして、露になった双丘の先端に唇をつける。  
「・・・っ!」  
声を上げまいと必死に歯を食いしばる。しかしパジャは留守になった手でロスメスタのスカートをたくし上げ、太腿に手を差し入れる。  
「あっ!やめ・・・っ・・・!んんっ・・・!」  
刺激に頭は真っ白になる。その間にパジャはロスメスタのスカートを剥ぎ取り、下着の上から秘所を愛撫する。  
 
「濡れてる・・・」  
パジャはそう呟きながら、何度もなぞるように指を動かす。  
ロスメスタはシーツをぎゅっと握り締め、未知の快感に耐える。  
しばらく下着の上から秘所の感触を堪能したパジャは、ロスメスタの下着に手をかけ  
そっと下ろす。  
そしてロスメスタの足を開くと、今度は直に指で秘所を愛撫する。  
「んっ・・・!はあっ・・・ああっ!」  
パジャの指の動きに翻弄され、ロスメスタはされるがままになっていた。  
やがてパジャの指は、ロスメスタの中に侵入を開始する。  
「痛っ・・・!」  
その言葉に、パジャは我に返る。  
「・・・初めてなのか」  
パジャの言葉にロスメスタは目を逸らす。  
「・・・わたしの口から・・・言わせる気か・・・?」  
「いや・・・」  
自分を落ち着かせるように、パジャは息をつく。  
「だから・・・もっと・・・やさしくしてくれ・・・」  
「ああ」  
そう言うとパジャはロスメスタに覆いかぶさって、ゆっくりくちづけをする。  
「・・・入れていいか?」  
唇を離すと、パジャはロスメスタの耳元でそう囁く。  
無言で頷くロスメスタ。パジャは服を脱ぐと、ロスメスタの秘所にそっと  
自分のものをあてがう。  
「行くぞ・・・」  
そう言ってパジャはゆっくりと侵入を開始する。  
「・・・あっ!・・・くっ!」  
初めての痛みに、ロスメスタは堪らず声を上げる。その様子を見たパジャが動きを止める。  
 
「大丈夫か?」  
「・・・っ・・・構わない・・・!」  
「・・・無理はするな」  
「・・・いいからっ!・・・続けてくれ・・・っ・・・!」  
その言葉を受けて、パジャは侵入を再開する。  
「・・・くっ・・・んんっ!」  
純潔の証を破り、パジャのものがすべてロスメスタの中に埋まる。  
「・・・全部・・・入ったの・・・か・・・?」  
痛みに耐えながら、ロスメスタは口を開く。  
「ロスメスタ・・・」  
パジャはロスメスタの瞳から零れた涙の痕を舌で舐めとると、ゆっくりと出し入れを開始する。  
「・・・んっ・・・くっ、あっ!」  
無意識のうちに、ロスメスタもパジャの動きに合わせて腰を動かす。  
(きつい・・・もういきそうだ・・・)  
初めてのロスメスタの中は締め付けがすごく、気を抜いたらすぐに流されてしまいそうになる。  
何とか堪えていたが、もう限界が近い。パジャは流されないように動きを早める。  
「あっ・・・!激し・・・っ!・・・ゆっくりっ・・・!」  
激しい動きにロスメスタは翻弄される。  
「くっ・・・いくぞ・・・」  
パジャのその言葉に、ロスメスタは閉じていた瞳を見開く。  
「あっ・・・だめっ・・・中はっ!・・・っ!」  
「くっ!」  
しかしその言葉と同時に、パジャはロスメスタの中に堪えていたものを放つ。  
「・・・あ・・・」  
ビクッ、ビクッと震えて、自分の体の奥に熱いものが注がれる。  
「はぁ・・・はぁ・・・」  
達した満足感に、息をつくパジャ。ゆっくりとロスメスタから体を離すと、結合部分から破瓜のしるしと自分のものが混じった液体が流れ出し、シーツを濡らす。  
 
「・・・できたら・・・どうするのだ」  
暫くの沈黙のあと、ロスメスタが口を開く。  
パジャは何も言い返せない。勢いに任せて達してしまったが、冷静になってみると、事の  
重大さに気づく。  
「まったく・・・ひどいぞ」  
そう言ってロスメスタは溢れ出した残滓を指で拭う。  
「しかし・・・いっぱい出したな。・・・もちろん、責任は取ってくれるのだろうな」  
「ああ・・・」  
「ならば話は早い。明日にでも式の日取りを決めよう」  
「え?」  
話についていけず、パジャは惚けたような声を出す。  
「こういうことは、できてしまってからでは遅いからな。早いうちに式を挙げてしまおう。いいな」  
「ちょっと待て!どうしてそういう話になるんだ!」  
「どうもこうもないだろう。おぬしも男らしくないな。・・・それとも、わたしと結婚するのは  
いやなのか?」  
「うっ・・・」  
もちろんいやではない。ただ、あまりにも話が突飛過ぎる。  
「ならば決まりだ。・・・これからも、よろしく頼むぞ・・・」  
そう言って微笑むロスメスタ。その嬉しそうな笑顔に逆らうことは、今のパジャに出来るはずもなかった。  
 
了  
 

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