ボクはきっと天国に行けない・・・地獄にも行けないと思う。  
「おかえり貴史、今日も遅かったね」  
レコード会社はすごく忙しいらしくて、帰ってくるのはいつも夜半過ぎ。  
「下働きはコキ使われる運命だからな」  
貴史の顔がほころぶ。きっとクタクタなはずなのに無理にでも笑顔を作ってくれるのはやっぱり嬉しい。  
「ご飯食べる?」  
「悪い頼むわ」  
作り置きの煮物を温める。  
ボクと貴史は六条一間のぼろアパートで同棲――そう言い切ってもいいかな。住所が神田川沿いじゃないのが少しだけ残念かも。  
ボクの作った簡単なご飯を食べて、布団を敷いてあとは寝るだけ……。  
いきなり大きな手で後ろから抱き締められる。  
「あんっ……貴史ダメだよ。明日も仕事あるんだから」  
貴史は片手で器用にブラウスの第二ボタンを外して手を入れてきた。  
「大丈夫だってコンビニのバイト昼からだろ」  
「ぼくじゃなくて……貴史が大変なん……んっ…んっ…じゃ…ないか」  
指が乳首を擦るたびに身体に電気が通った。もやもやとした快楽が僕の身体を犯していく。  
「もう・・・しょうがないな」  
ぼくは貴史の唇を求めた。  
 
舌が絡み合い、違いの唾液がミックスジュースのように混ざり合う。  
「おいしい・・・」  
口内の温かさと、舌ザラザラした感触が気持ちいい。一分近くそうしていただろうか……少し名残惜しかったけど僕らは唇を離す。  
「はぁ…はぁ…はぁ…」  
「葵――乳首が立ってる…感じてたんだな」  
貴史はそういうと人差し指でぼくの乳首をピンと弾いた。  
「ひゃあ!」  
思わず悲鳴をあげてしまった……なんか攻められてばっかりだな、貴史だってこんなに感じてるくせにさ。  
ズボンのふくらみを上下にさすってやると、途端に貴史の表情からも余裕が消えた。  
「やるな……葵」  
「おかえしだよ……どうでもいいけど服脱いでやろうよ」  
「……それもそうだな」  
互いに服を脱ぎ捨てて第二ラウンドに入る。  
「葵、こっちこい」  
貴史はポンとひざを打って誘ってくる。ぼくは誘われるままに胡坐をかいた股座にお尻を乗せた。  
なんか赤ちゃんみたいな座り方でぼくは好きじゃなかったけど、身長差があるせいか貴史はこっちの方が燃えるみたい。  
 
「うんっ……んっ……はぁ…はぁ…はぁ……」  
「でも葵はほんと胸が弱いな……小さいから感じやすいのかな?」  
そう言いながら胸をフニフニと揉んでくる、乳房を周囲から触わっていたかと思うとイキナリ乳首をギュッと押してくる。  
「あんっ…あんっ……あんっ……た、たしかに小さいけ…ど…少しは……」  
「少しは成長してるか? 相変わらず洗濯板みたいだどな」  
「まだ……Aだけどさ……」  
「いいんだよ……このちっこいのも好きだぜ」  
右の乳房を弄りながら左側に吸い付いてくる。  
「ふぁ…ふぁあああ……そっちが……そう来るなら……」  
 ボクは少し体勢を変える。貴史の肉棒を引っ張ってボクのあそこと擦る位置に持っていく。  
「おい…葵……」  
「ボクだけじゃなくて貴史も楽しもうよ」  
 幸いにしてさっきまでの愛撫でボクのあそこは大分濡れている。愛液を少しだけ太股の方に擦り付けて。  
腰を動かすと貴史の肉棒とボクのあそこがズチュズチュっといやらしい音を立てて擦れ合う。  
「あ…葵……」  
うーん、いい声だ……相変わらずウブなんだから。  
「どう…たかし……」  
「ああ……けっこう気持ちいいぜ……」  
ボクは貴史の声が聞きたくて腰の動きを速める。  
腰を勧めるごとに僕のあそこは愛液を分泌し、スマタの動きはマスマススムーズになっていった。  
「ああ……貴史……」  
胸への愛撫とスマタ、二つの行為の相乗効果で僕の中の快楽がどんどん大きくなっていく。  
「葵、葵……」  
「あ…あああ……あひぃ…いいよ貴史!」  
感じているのは貴史も一緒だ、そう思った瞬間。快感が脊椎を通ってダイレクトにボクの脳を直撃した。  
 
「はぁぁぁ……いっちゃった……あっ!」  
貴史の先っぽからドクドクと吐き出される精液を少しだけすくって口に運ぶ。なんか不思議だ……こんなに苦くて臭い液体なのに好きな人のものだと思うと美味しく感じられる。  
「葵…そろそろ……」  
「うん」  
ボクは布団に寝っ転がって貴史を待つ。  
くちゅ…と音を立てて……貴史のペニスと、ボクのアソコが触れる。肉棒はボクの中に入るのを待ちわびるかのようにヒクヒクと動いてた。  
「…いくぞ」  
「あっ、あっ、あんっ……」  
入り口の肉を押し広げて肉が入るこんでくる。とても熱くて、とても硬い。  
気持ちいいが流れ込んでくる。  
「……すごく…すごく熱いよ」  
「いい感じだ…葵の膣中すごくしまるぞ……」  
貴史はそういうと注送だけじゃなく、上下や回転の動きを入れて、ボクの膣中をかき回した。微妙に変わるセックスの快楽。  
貴史のペニスがクリトリスを擦るたびに、ボクの意識は快楽の階段を三段飛ばして駆け上がっていく。  
「あん…あん……あんっ……気持ちいいよ……!」  
貴史の腰使いはますます激しくなっていく。  
ボクも快楽を貪りたくて、貴史の動きにあわせて腰を振った。  
「ボク…ボクいっちゃうよ……」  
「俺もいきそうだ…一緒に……」  
「一緒にいくー!」  
ボクの最深部、子宮口を強く叩かれる。  
その瞬間、ボクは全ての意識を解き放った。  
直後、貴史も射精したみたい。ボクの膣中は暖かい精液に満たされる。  
絶頂の直後の刺激に、脊髄の奥に埋まってる神経がプルプルと震えた。  
 
気がつくと、カーテンの隙間から朝日が漏れていた。  
コーヒーの匂いがプーンと香る。  
「おはよう…どうだ飲むか?」  
すっかり着替えた貴史がコーヒーを差し出してくる。  
「あ…ニブチンがいる……」  
ボクはシーツの隙間から手だけ出してコーヒーを受け取る。けど、貴史を  
ジト目で見つめるのは辞めない。  
「おい…どうしたってんだよ?」  
「行為のあと、とっとと寝ちゃうなんて非常識だっての……ああいうのは事後のフォローが大切なんだからね」  
「悪かったよ……ほら、昨日は疲れてたからさ――」  
貴史は言葉を切るとボクの額に口付けする。  
「これで許してくれよ」  
苦笑いを浮べながら、手をパンと合わせる。  
「……はあ、しょうがないなー」  
惚れた弱みなんだろうな……こういう可愛い行動されちゃうとそれ以上怒れなくなっちゃう。  
「俺は、もう出勤だけど……」  
「ボクは二度寝する……ふぅ」  
そんな、物欲しそうな顔しないで欲しいな。――立ち上がってお出かけのキスをしてあげると貴史はいつもの調子で部屋から出て行った。  
「さて、二度寝する前にシーツだけでも洗いますか!」  
 
――ボクは千夏を不幸にした。  
――貴史を不幸にするかもしれない。  
でも、この恋だけは譲れないんだ。  
でも、きっと大丈夫。  
「ボクは運がいいんだもん」  
 

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