「華は幸せでございますよ」  
 
 
己の膝の上で安らかな顔で眠る夫の髪をなでながら、華は優しく呟いた。  
目をつぶったその顔は、関東一と言われた美貌はそのままでもいつもの張りつめた顔より幾分幼く見え、華は彼がそんな無防備な顔を自分に見せてくれるのが嬉しくてたまらなかった。  
 
 
夫婦になる前の景虎は、周囲に対していつも緊張しているようだった。  
隙を見せたら潰される・・・まるでそう思ってるみたいに。  
その景虎の緊張を少しでもほぐしてあげたい。婚儀を挙げたその日から、ずっとそう思ってきた。  
 
 
「幸せになりましょう。一緒に」  
 
 
華は祈るように囁いた。  
幸せだったのだ。愛する夫がいて、頼れる母がいて。  
今は離れているけれど、不器用で寡黙で信頼できる兄がいる。  
ずっとずっと、永劫にこの時が続くと思っていたのだ。不穏な空気が夫と兄の周りを取り囲むまでは。  
 
 
FIN.  
 
 

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