―――お屋形さまは私を見ない。あの方が縋るのは毘沙門天のみ・・・  
窟から戻った悠は、奇妙な虚脱感に襲われ早々に床に入った。  
 
 
わかっていた。わかっていたのだあの方のお気持ちは。  
 
 
零れる涙を拭おうともせず、悠はひたすら謙信公へ想いを馳せた。  
このような悲しみに襲われたとき、己を慰める方法はいつもひとつ・・・  
悠は、そっと指を夜着のうちへすべりこませ、股間に這わせた。  
「お屋形さま・・・」  
その名を言葉に出すだけで、耳が火照る。  
かっと燃える耳朶の熱は奥深く染み込み、彼女をくらくらさせる。  
その眩暈をごまかすために、彼女は己の体を指でまさぐった。  
 
 
 くちゅ。  
 くちゅ。  
 
 
夜の静寂に淫らな音が響く。お悠はそっと瞳を閉じた。  
頭の中で、愛しい謙信公の姿を思い描く。  
あの、何者をも見透かすような澄んだ瞳で見られている、そう思うだけで割れ目の奥にむず痒さが生まれた。  
太腿を指先でなぞれば、産毛の逆立つ気配が全身に走った。  
 
 
「・・・・・・ぁ」  
 その、見られているという妄想だけで割れ目の奥が熱くなり、液が溢れるのを感じた。  
割れ目を左右に開くと、溜まっていた液がドロッと溢れ出てくる。  
生温かい液を指先に感じながら、それを割れ目に塗りたくった。  
熱くなっている頬、高鳴っている心の臓、火照っている体、それら全てを、謙信公がが見ている。  
 
 
「・・・ぁ、ぁ、ん・・・は、ぁ・・・」  
 
 
私の声を、あの方が聞いている。  
指先で割れ目を擦れば、止め処なく液は溢れて、指を濡らしていく。  
左右に広げて突起を剥き出しにして、もう片方の手でその突起を擦ると、小さな痺れが連続で走るような快楽を味わえた。  
「・・・・・・んん、ぁ・・・はぁ、ぁ・・・」  
 
快楽の走る度に震える私の体を、無様に足を広げて割れ目を弄る私の姿を、耳まで真っ赤にして半開きの口から涎を垂らす私の顔を、あの方が見ている。  
 
「・・・や、ぁ・・・!」  
悠は夜着の上から豊かな胸を掴んだ。  
布越しに、小さな感触。  
立ち上がって敏感になったそこを指で優しく何度も何度もつまむと、体の奥がまたひくひくと震えて、尻から腰、背中、うなじへと、甘美な波がせり上がった。  
 
 
「・・・・・・んっ・・・・・はぁ・・・」   
 
波に押し流されるように、指を二本侵入させた。  
 
 
「・・・・・・ぁあ・・・あ・・・はぁ・・・」  
 
 
ぬるぬると熱いそこは、指の先端をくわえると何度も締め付けた。  
反対の手で今度は直に胸をなでまわすと、痛いほど堅くなった乳首を小指の腹でくるくると転がす。  
 
「・・・あっあぁ・・・あんっ」  
 
無意識に腰が小刻みに動く。  
 
 
―――もっと、もっと・・・!お屋形さま・・・!  
 
 
悠はたまらなくなり、夜着を全て脱ぎ捨てると 仰向けになり軽く膝を弛めた。  
溢れた蜜でなめらかなそこを、再び指の腹で小さく往復させる。  
 
「ああっあっ・・・んっ・・・んっ・・・んっ」  
 
口からこぼれる嬌声を何とか飲み込もうとしたが、無駄なことであった。  
すでに悠の頭に羞恥という言葉はなく、あるのはただ謙信への想いと、淫らの女の性のみである。  
涙ぐむ目を拭いながら、彼女は己の指遣いに没頭する。  
 
「・・・あっ・・・ん・・・はぁ・・・」  
このような恥ずかしい恰好で、お屋形さまのの事を思い出している。  
そのことに言いようのない罪悪感と、この上ない快感を悠は同時に感じていた。  
片方の指は膣を、もう片方の指はもっとも敏感な部分を、休むことなく前後する。  
 
 
「・・・・は、ぁ・・・ああ・・・ああぁん・・・」  
 
 
膣が幾度となく悠の指を締め付ける。  
緩んだ瞬間に抜き差ししようとすると、また締め付けた。  
根本まで入れた指を少し強引に出し入れすると、ニチュニチュという音と一共ににどんどん溢れてくる。  
もう我慢できなくなって、敏感な部分を擦る指の動きを激しくした。  
「あぁっ!!あぁっ!!」  
指を小刻みに震わせ、強く押しつける。  
「ああっあっ・・・ああっ」  
 
 
差し込んだ指で、壁面をぐいぐいと刺激する。  
指をくわえ込んで締め付ける入り口を、 抜けない指でわざと小刻みに出し入れしてまた刺激を与える。つま先が痺れる。  
「・・・はあっ・・・ああっもう・・・!」  
指先を押しつけて左右に細かく動かしたその時。  
 
 
 
「はっ・・・あっあぁあああん!!!!!!!!!!!!!!!!」  
 
 
 
荒い息の中で達し、悠はぐったりと横たわる。  
呆然としたまま口を閉じて漸く、こぼれていた涎が頬についていることを知った。  
上半身を起こして、片方の頬を涎に濡らした顔で目を開く。  
しかし・・・そこには誰もいない。  
いつもどおりの居室があるだけで、人の姿はない。  
あの方は私のことなど見ていない。  
「・・・・・・ああ」  
根元まで濡れている指を虚空へ伸ばしてみても、あの方には届かない。  
   
 
翌日、悠は仏門へ入ることを家族へ告げた。  
 
 
FIN.  
 

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