焼け落ちる梁。血に濡れた畳の上に横たわる、女の姿。
気丈に、事切れるその時まで、優しい微笑みを浮かべていた。
暖かな圭の面影。 今も、鮮明に覚えている。
託された、絆の姉妹鈴。
本当の姉妹のように・・・。
圭の情愛、菊の純心、様々な想いが流れ・・・。
ちり、ちりん・・・。
ふいに夢は途切れ、意識が目覚めてゆく。
ここは・・・、そう、黒屋の巣。 土牢の、中だ。
少しずつ、意識が浮かび上がる。
胸に痛みが走った。 霞がかったままのぼやけた視界。
自分を、犯している男が居る。 男が、乳房を噛んでいる。
「やっと目ぇ覚ましやがった。」
彩女を向いに抱いている男が声を上げる。
「鮪を抱く趣味はねぇんだよ。おら!気張って股を締めねぇか!」
がくがくと体ごと揺られる。
首に下げられた姉妹鈴が、虚ろに響く。
頭上に組んで縛られたままの両腕は、
もう痺れたまま感覚が無くなっている。
幾日、過ぎたのだろうか。
犯され、気を失い、又犯されて、目が覚める・・・。
「おゥ、起きてやがったか、雌猫ちゃんよゥ。」
また一人、別の男がやってきた。
元から居る肥えた男とは対照的に、
貧相な風体の小男だ。
「んじゃぁ、俺もちょっくら相伴するぜ!」
「へっ、締まりも緩んでうんざりしてた所だ。
糞の穴にでも突っ込みやがれ。」
貧相な男は、衣を脱ぐ間も惜しいとばかりに彩女の体に寄ってくる。
「すう〜、くはぁ・・・たまんねぇな!極上だ!」
彩女の腋に鼻先を埋めながら感極まったように叫ぶ。
汗、涎、様々な体液が混ざり合い、凝り固まった腋の窪み。
「まぁたそれかよ、この変態野郎が。」
肥えた男が心底呆れたように呟く。
「放っときゃがれ!この痺れるような香りの良さがわからん奴こそ哀れよ・・・。」
吸い付くような肌、引き締まった二の腕、首筋から鎖骨に至る曲線美。
忍として生き死にの狭間を歩んできた彩女であったが、その肢体は
見事に花開き、男共を捕らえて離さぬ艶やかさを漂わせていた。
「す、はぁ〜、なんとかぐわしい・・・うぅんと凝縮された濃厚さ!
雄を狂わす魔性のにほひっ!!男ならいちころだぁ!?
この麗しい芳香の前には伽羅香だろうと何処吹く風ってなもんよッ!!!」
乳房をまさぐりながら、胸一杯に彩女の腋の臭いを吸い込む小男。
その表情たるや、正に至福、歓喜、恍惚の極み。
世に在りし興楽、其の悉くを取り揃えたるが如し。
まッこと女体とは奥深く、又諸人の趣とは捉え難きもの也・・・。
羞恥や怒りの感情など疾うに磨耗して果てた彩女は、
斯様な仕打ちに接しても只、されるがまま。
すず、鈴の音が・・・ 菊 待ってな・・・
「はぁ・・・さいでござんすか・・・。
しッかしこいつ、すっかり威勢も無くなっちまってまぁ。
さんざ暴れまわるのを張っ倒しながら犯るのが面白ぇんだがなぁ。」
「はっ!てめぇこそ変態だァ。乱蔵様と御同類って訳かよ。」
小男は彩女の伸び始めた腋の毛を丹念にしゃぶりながら、ここぞとやり返す。
所詮あぶれ者の集まり、おかしな連中ばかりが集まっている。
「じ、冗談言うねぇ!あのお人は話が違う・・・、ありゃぁ別モンだ・・・。」
別物らしい。