「大丈夫か?」
「大丈夫…って言いたいところだけど全然駄目だわ…」
風邪を引いてしまった。
それもかなり酷い…咳は出るし、寒気はするし、頭がボーっとする…
先日、菊が寝込んだというので見舞いに行ったが運悪く風邪をもらってきてしまったようだ。
「どうも彩女は風邪に弱いな」
「あんたと違って、繊細なんだよ…」
力丸はというと、長い付き合いであるが風邪を引いた、ということは唯の一つもない。
だから、こうして風邪を引くと看てくれるのはいつも力丸だった。
「食欲はあるか?一応粥を炊いたが…」
「ん…卵粥なら食べる…」
「お前はいつもそれだな」
「あんたがいつもそれしか作らないんだろ…」
風邪を引いたとなれば、力丸は粥を炊くが毎度毎度卵粥。
が、力丸の作る卵粥の味は格別だった。
二杯、三杯と食が進む。
「彩女…本当に調子が悪いのか?」
「病人が食欲あっちゃいけないのかい?」
「そんなことはないが…」
「なら、いいだろう?はぁ…ご馳走様…」
炊いてあった粥を綺麗に平らげ彩女はまた布団に潜り込んだ。
「後片付けをしてくる。大人しく寝てろ」
「はいはい…」
腹も膨れ、体も温まったところで睡魔に導かれるように私はゆっくりと目を閉じた。
私は夢を見ていた。
幼い頃の夢……夢の中でさえ私は風邪を引いていた。
そして隣には力丸…そういえば私がいつ起きても隣にいてくれたっけ…
「力丸…」
………
……
…
「…い!彩女!?」
「あ…れ?」
気づくと彩女は、寝ていたはずの布団にはおらず力丸の胸に抱かれていた。
「…何してんだい?」
「それはこっちの台詞だ!戻ってみればいきなり抱きついてきおって…」
「抱きついた!?アタイがかい?」
全くもってそんなことは頭にない。
「あぁ、そうだ。『寒い、寒い』と震えながらな。で、寒くないのか?」
「あ、あぁ…寒い…」
「なら大人しく寝ていろ」
「あ、ちょっと待った」
大人しく寝よう、とも思ったがどうもまた夢を見るような気がする。
彩女は再び、今度は意図的に力丸に抱きついた。
力丸の胸の中は布団のなかとは違った暖かさがある…
「…今度はなんだ?」
「体温高いね〜あんたの胸板は」
「何が言いたい?」
「…暖めとくれよ…アタイの身体の芯まで…ね?」
一組の布団に大の大人が二人…
まるで一人で寝られない子供を寝かしつけているようだ。
彩女は力丸の胸に顔を埋めた。
「昔…一度だけこんな風に寝たことあるの、覚えてる?」
「いや…覚えがない」
無理もない答えだった。
彩女でさえ今の今まで忘れていた記憶だ。
まさか夢に出ようとは思ってもみなかったが…
「昔は昔、今は今…あたいみたいな娘抱いて、あんたにゃ情欲の一つもないのかい?」
「………」
彩女の一言に力丸は黙りを決め込んだ。
「はぅんッ!」
力丸のやや冷えた手が彩女の胸元へと滑り込むと
手は優しく胸の膨らみを撫で始める。
「昔は昔…か。よくここまで豊満に育ったものだ」
「ぅ…ぁんッ!!」
力丸の指が着物の下で胸先の小さな果実を弄ぶ。
成すがままに彩女はそれを受け入れた。
二人の唇が重なる。
どちらが先というでもなく、求め合うのは同時だった。
「ん…ふぅ、ふむぅ……んぅ…」
互いに舌を絡めあい…時には浅く、時には激しく…
「…はぁ、んぅっ…ふぅ…んんぅッ!?ふむぅぅッ!!!」
胸を撫でていた手は、いつの間にやら片手だけとなり、
どこからともなく伸びていたもう片手が彩女の下腹部に忍び込んだ。
何の前触れもなしに彩女の身体に衝撃が走る。