既に部屋には黒屋の面々が集合しており、思い思いに酒を煽っている。  
凛の心は羞恥と屈辱で張り裂けそうになった。  
重蔵だけならまだしも、何故彼らにまで裸体を晒さなくてはいけないのか。  
 
「さあ、その桶に小便をしてみろ。」  
―そんな!  
凛の顔は青ざめた。  
裸体を彼らに視姦された上に、放尿するところまで見せなくてはならないなんて。  
「で…出来ない…。」  
消え入りそうな声でそう呟いた。  
重蔵は黙っている。  
「そんなこと…出来ないよ…。」  
哀願をするように重蔵を見た。  
しかし重蔵の言葉は非情なものであった。  
「出来なければ裸のまま縄をかけて大通りに捨て置くぞ。」  
重蔵は嘘を付くような男ではない。  
有限実行の男である。  
小便をしなければ、本彼の言うとおり、本当に裸のまま大通りに放置されるであろうことは  
間違いないであろう。そんなことになれば、有象無象の町衆の目に自身の裸体が晒されることになる。  
あるいは狼藉者達に寄ってたかって乱暴されるかもしれない。  
それは重蔵に犯されるよりも、黒屋の刺客たちに視姦されるよりも恐ろしいことであった。  
 
「さあ、早くしろ。」  
重蔵が凛を促す。  
刺客達も、少女が焦燥し、羞恥に悶える様を存分に愉しんでいる。  
「出ないんだ…。まだ…したくない…。」  
凛は既に半ベソをかいている。何とか時間を稼ぐつもりで咄嗟にその言葉が口から出た。  
「ではお前がもよおすまで、一刻でもニ刻でも待ってやる。」  
重蔵はそう言って酒を煽った。  
小便が出ない、という凛の言葉は嘘である。  
本当は先程から激しい尿意で膀胱が破裂しそうだった。  
凛はそのこと知らなかったが、重蔵は彼女の食事に強力な利尿剤を混ぜていたのである。  
今の重蔵の言葉も、彼女の尿意の昂ぶりを感じ取ってのものであった。  
沈黙が流れた。  
重蔵は相変わらず無表情のまま、黙々と酒を煽っている。  
刺客達も、凛のその時を今か今かと待ち続けている。  
ただ一人、凛だけが眼前に置かれた桶を凝視したまま動かない。  
襲い来る激しい尿意と屈辱に、顔は赤く上気し、全身から脂汗が噴出している。  
 
その沈黙に耐えられなくなったのは、双葉であった。  
彼女は凛の元へ歩み寄ると、その野苺のような乳首を摘まみ上げた。  
「早くおし!皆待ってるんだよ!」  
そう言って、親指と人差し指で乳首を押しつぶした。  
凛の顔が苦痛に歪む。彼女の瞳には光るものがあった。  
「あんたみたいな小汚い餓鬼はね、素っ裸のまま粗相をするのがお似合いなのさ!  
 さあ、早くおし!早くおしったら!」  
双葉はもう片方の乳首も乱暴に摘まみ上げた。  
「まったく…強情な餓鬼だね!」  
暫く乳首を痛め付けた後、ようやく解放してやった。  
凛の乳首には双葉の爪の後がくっきりと刻まれており、赤く充血していた。  
凛は何も言わない。俯いて、唇を噛み締めるのが精一杯だ。  
―おや、と双葉が凛の顔を覗き込んだ。  
彼女の頬を雫が伝っていた。  
「おやおや、あんた泣いてるのかい?下からじゃなく上のほうが先に粗相しちまったってのかい!  
 ははは…笑わせるね!泣いている暇があったらさっさと粗相をするんだよ!  
 聞いてるのかい!この小汚い女狐め!」  
 
双葉の戯言に皆笑った。次々と凛に卑猥な野次が飛んだ。  
自分の痴態が刺客達の酒の肴にされていることが悔しくて、凛の瞳からは益々涙が溢れ出てきた。  
「取り消せ。」  
不意に、重蔵が呟いた。場の緩みを引き締めるのに十分な凄みを持った声である。  
一同、揃って重蔵を見た。  
彼はただ一人笑っていない。瞬きもせず、刃のごとき隻眼で双葉を見据えている。  
「今の言葉を取り消せ。」  
独り言のような呟きではない。確固たる意思を持った、鉄のような響きがある。  
重蔵の隻眼に捕えられた双葉は震え上がった。あれは彼が人を殺すときに見せる視線である。  
その目で、今自分が見据えられている。重蔵の殺意がはっきりと感じられた。  
―ははは…、と誤魔化すように双葉は笑った。これが重蔵一流の狂言だと思いたかった。  
「ど、どうしたんだい?まさか重蔵さん、本気じゃないよね、こんなねんねの餓鬼に本気になって…。」  
「取り消せ。」  
重蔵の体から、黒い殺意が滲み出ているのを双葉は見た。  
いや、恐怖に怯える彼女の心がそれを感じ取ったと言ったほうがいい。  
 
重蔵は間違いなく本気である。本気で自分の命を奪う気でいる。  
もし、今己の吐いた言葉を取り消さなければ、次の瞬間には確実に自分の首は飛ぶであろう。  
今度は双葉が脂汗を流す番だ。彼女の口内は恐怖に乾き、戦慄いている。  
「わ、わかったよ…。取り消すよ…。」  
掠れた声で彼女は言葉を搾り出した。誰しも己の吐いた言葉を取り消すのは屈辱である。  
自尊心が人一倍高い彼女には尚更であろう。  
しかし今はそんな誇りよりも、己の命のほうが大事である。  
震え上がる双葉に、重蔵はさらに言葉を重ねる。  
「凛に詫びろ。」  
思わぬ言葉に、双葉の呼吸が一瞬止まりかけた。  
重蔵の心のうちが全く読めなかった。  
―この小娘を嬲り者にするのではなかったのかい?そのために私達を呼んだのでは…?  
そう口から飛び出しかけたのを、彼女は慌てて止めた。  
今何か物を言ったら、確実に自分の命が無いであろうと悟っていた。  
 
「わ、悪かったよ…凛…。」  
凛の顔を見ずに、うな垂れたままそう呟いた。  
それでもまだ重蔵は彼女を許そうとはしない。  
今度はさらに手をついて詫びろと言う。  
―これではわたしが嬲り者ではないか…!  
双葉の心に重蔵に対する怒りと屈辱の波が押し寄せた。  
そして次の瞬間にはそれが目の前の凛に対するものに変わった。  
この小娘の強情のせいで、自分が恥を晒さなければならないことが、何よりの屈辱であった。  
しかしその感情を表に出す事は己の死を意味する。  
―この餓鬼め…後で覚えておいで…!  
屈辱を何とか心の奥底に押し込んで、彼女は畳に手をついた。  
「悪かった…この通り…許しておくれ…。」  
暫く頭を下げていると、重蔵からようやく許しが出た。  
もういい、席へ戻れ、と言う。  
ふら付く足取りで自分の席へ辿り着いた双葉を隣の単葉が支えた。  
 
「凛、もう泣くな。」  
重蔵はそう言って、凛の頬を己の指で拭った。  
しかしその次には早く粗相をして見せろ、と言う言葉も忘れない。  
双葉以上に、凛には重蔵の心が読めなかった。  
この男は一体何がしたいのであろう。自分を辱めたいのである事は分かるが、  
それならば先程の双葉に対する言葉は一体何なのか?それに今の自分の涙を拭った行為は  
何を意味するのか?そしてその上で衆人環視の元、全裸のまま小便をしろと言う。  
重蔵が凛の背中を優しく擦った。陵辱者のそれではない。愛しいものに対する行いである。  
「さあ、もう出る頃だろう。意地を張るのは止せ。俺も皆もお前が恥をかくのを待っているのだ。」  
重蔵が凛の股間の下に桶を置き、もう一度言った。  
「さあ、恥をかけ。俺の見ている前で、うんと恥をかけ。」  
重蔵に急かされて、凛にはもう何かを思考する余裕は無くなっていた。  
ただ、下腹に力を込めた。  
次の瞬間、堰き止められていた鉄砲水が堰を破って噴出するように、彼女の股間から勢いよく飛沫が上がった。  
彼女の小便は見事に桶の中心部に当たり、飛び跳ねた飛沫が畳と彼女の足を汚した。  
隣で見ている重蔵の唐紅の着流しにも彼女の水滴がついたが、彼はそんな事は気にも留めていない。  
羞恥に悶える凛の表情と、股間から飛び出る小便を交互に眺めている。  
「そうだ。それでいい。うんと恥をかけ。恥をかいて恥をかいて、俺に相応しい女になれ。」  
凛の耳の奥で、そう呟く重蔵の声が聞こえる。  
彼女の股間から小便が止まる気配は、まだ無い。  
 
 
―ちっくしょう!  
双葉が喚いた。秀麗な顔立ちは怒りに崩れ、般若のように歪んでいる。  
「何だってんだい!あの餓鬼め!あたしに恥をかかせやがって!」  
そう言って一気に杯を煽り、それでもまだ足りないと銚子に直接口をつけ、中の酒を胃袋に流し込んだ。  
その様子を双子の弟の単葉が相変わらずの仏頂面で眺めていた。  
部屋の中には双葉と単葉の二人だけの姿しか見えない。  
ここは二人に与えられた彼らのための居室である。行燈が僅かに二灯瞬くだけの、薄暗い部屋である。  
「恥をかいたのは凛のせいではないと思うが。」  
単葉が抑揚の無い声で、怒り狂う姉を諭した。  
正鵠を得た言葉であるが、今の双葉にはそれが気に入らない。  
それをしゃくしゃくと口に出す、単葉も気に入らなかった。  
 
「五月蝿いっ!」  
そう一喝し、銚子を弟の胸に投げつけた。  
中に残っていた酒が零れ、彼の寝着と畳を濡らした。  
八つ当たりもいいところであるが、それに対する単葉の特別な反応は無い。  
黙って手ぬぐいを取ると、寝着と畳に零れた酒を拭き取った。  
「くっそぅ…重蔵の奴…なんであんな餓鬼がいいってんだい…!  
 あたしのほうが身体だっていい!伽だっていいに決まってる!  
 それなのに何で…!」  
地団太を踏んだ拍子に、彼女の乳房がまろび出た。  
「ほらっ!見ろっ!この乳を!これで男は蕩ける筈なんだ!  
 なのに何で何だいっ!」  
彼女が暴れる度に、豊かな乳房が波を打って揺れた。  
酒が入っているせいか、透き通るような白い肌にほんのり赤みが差し何とも扇情的である。  
しかし単葉は姉の乳房など見ようともしない。今まで見飽きるほど見てきている。  
今更どうこう言われても、何とも思わない。ただ黙って手ぬぐいで酒を拭き続けた。  
 
弟に無視されたと感じた姉はますます狂乱した。  
諸肌を脱いで、上半身を完全に露出させた。  
「見ろっ!見ろったら!!ほら!ほら!!ほら!!!」  
自ら両の乳房を鷲づかみにし、弟に迫った。  
重量感のある柔肌に、彼女の爪が痛々しく食い込んだ。  
全くこうなっては色気もへったくれもあったものではない。  
「ほら!ご覧よ!ほら!ほら!…ちょいと!何とか言ったらどうなんだい!!」  
己の乳房を力任せに掴んで強調している姿は、まるで色情狂か山姥である。  
彼女の美貌も、その激しい気性の前には何の役にも立たない。  
「ああ、とてもそそる…堪らない…。」  
姉の怒りを静める為に口にした言葉も、この美しき山姥には通じない。  
「嘘言うんじゃないよ!!」  
そう言うなり、いきなり弟の股間を鷲掴みにした。  
これには流石の単葉も面食らい、いつもの無表情にも恐怖の色がありありと浮かんだ。  
下手に彼女を刺激すると、このまま一物を握り潰されかねない。  
彼の心情は虎の檻に入れられた、憐れな奴隷そのものである。  
「何なんだいこれは!!何だって言うんだい!!!」  
弟の一物は、当然のことながら萎えきっていた。  
「ちっくしょう!!この皮被り!!」  
双葉は棄て台詞を吐き捨て、弟を解放した。  
 
そのまま彼に背を向けて、ドカリと腰を下ろした。  
「何でだよ…何であんな小娘が…何でだよ重蔵…。」  
「それは直接重蔵に聞け。」  
そう言おうとして、口を噤んだ。彼は腹立たしいほど鈍感な合理主義者である。しかし今それを口に出すと、  
姉の怒りに油を注ぐ事になることぐらいは、彼にも判った。この場は黙ってやり過ごすに限る。  
だが、双葉がそうさせてくれない。  
自分と凛、どちらが女として魅力的か詰問してきた。  
「俺は塩鮭がいい。」  
そっぽを向いたまま、単葉がぼそりと呟いた。塩鮭は彼の好物である。  
現代と違い、この時代では珍味の部類に入る。  
「何だって!?もう一度言ってごらん!!」  
からかわれたと思った双葉が凄んだ。目が据わっている。  
「いや、何でもない…。」  
単葉はそう言ったきり後は押し黙ってしまった。こうなっては暖簾に腕押しである。  
怒りをぶつける相手が無反応では、面白くも何ともない。  
彼女も弟を相手にするのを諦めたようだ。  
「あーもう!面白くない!今日はもう寝るよ!」  
そういい捨てて奥の寝室に入っていく姉の後姿を見て、単葉はほっと胸を撫で下ろした。  
寝室には布団が二つ並んで並べられていた。その内の右側の布団の上に、倒れこむようにして双葉は身を横たえた。  
隣の布団は当然単葉の物である。奇妙なことであるが、この姉弟はいつも二人一緒に行動を取る事を常としていた。  
食べる時も、町をふら付く時も、そして寝る時もである。風呂に入る時さえ一緒であった。  
幼い頃からそうして来たのであり、二人ともそのことに疑問を抱いた事は無い。  
 
―これで一人飲みなおせる。  
単葉がそう思ったとき、寝室の姉から声が飛んだ。  
「あんた!ちょっとこっちへ来な!」  
杯に酒を満たしていた途中であった単葉が憮然とした表情を見せた。  
―またか。  
そう思った。  
愚図愚図していると、再び声が飛んで来た。  
「何やってんだい!?早く来な!あたしの言うことが聞けないのかい!?」  
やれやれ…双葉に聞こえるように大きく溜息を一つついて、彼は寝室へと足を運んだ。  
寝室に入ると、双葉が仰向けのまま寝着の裾を腰まで肌蹴け、大股を開いて弟を待っていた。  
異様な光景であるが、単葉は驚きもしない。あられもない姉の姿を見下ろしたまま、襖の陰で突っ立っている。  
愚図な弟を急かすように、双葉は言った。  
「このままじゃ寝付けないったらありゃしない!あんた、しゃぶっておくれ!」  
「…わかった。」  
単葉は頷いた。  
―たまには自分でやれ。  
そう言おうとしたが、止めた。  
これ以上姉を怒らせれば、一人酒を飲めなくなる。それならばここで彼女を二度三度満足させてやればそれで済む問題だ。  
それほど時間も掛からないであろう。  
「上手くしゃぶっておくれよ。」  
双葉の言葉を聞き流し、彼は姉の股間に顔を埋め、秘部にしゃぶりついた。  
 
真に奇怪な光景である。だが、これが彼ら姉弟が物心付いた時から営んできた、秘事であった。  
最初は性に対し好奇心旺盛であった双葉が、無理やり弟に処理させたのが始まりであった。  
それ以来、双葉は寝付けなかったり心が昂ぶったときなど、決まって弟に慰めさせた。  
単葉も姉に慰められる時もあるが、本当に彼女の気の向いたときだけである。  
以前彼は自分が姉を慰めてやった回数と、自分が姉に慰められた回数を記録し、それを双葉に見せ付けてやったことがあった。  
お前のほうがこんなに愉しんでいるじゃないか、これでは不公平だ、というわけである。  
しかしたちまち彼女の癇癪が弾け痛い目にあったため、以後その記録は封印せざるを得なくなった。  
だが彼は今でも姉に内緒で記録を書きとどめ続けている。  
そしてこれまた奇怪なことであるが、二人の行為がそれ以上進行する事も無い。  
ただ互いをの秘部を慰めあって、それで終わりである。  
この歳になるまで、その行為を幾度となく繰り返してきた。  
 
「あんた…上手だよ…ああ…そこだよ…そこ…いいよ…。」  
暗闇の中に、双葉の嬌声だけが響いている。  
痒いところに手が届く、とはよく言ったもので、単葉の舌技は彼女の沸点を絶妙に捕え、  
彼女を悦楽の渦の中へと引き込んでいった。何しろ年季が違う。姉の悦びを自在に操ることなどお手の物だ。  
既に双葉は二回ほど絶頂を迎えている。  
今までの経験から三回も満足させてやれば、それで自由にさせてもらえるはずであった。  
だが今夜の彼女は、さらに尻の穴も舐めてくれとねだりはじめた。  
単葉の動きがぴたりと止まった。別に姉の尻の穴を舐めるのが嫌だからではない。大体、これまでに何度も  
舐めさせられてきている。だが反面、彼が双葉に尻の穴を舐めてもらった事は今だかつて一度も無い。  
そのことに対するささやかな抗議のつもりであった。  
そんな弟の心底を見透かしたのか、双葉が甘えた声で悶える。  
「今度あんたのも舐めてやるからさ…だから早くしておくれ…。」  
「本当だな?」  
「本当さ…だからお願いだよ…。」  
そう言って、腰を扇情的に揺さぶった。  
―やれやれ、仕方ない。  
単葉は、姉の願いを聞き入れてやった。双葉の身体がくの字に反り、嬌声が一オクターブ上がった。  
 
単葉の予想通り、三回の絶頂を迎えた双葉は悦びに疲れ、今はすやすやと寝息を立てている。  
その寝顔は子供のように穏やかで、そして美しい。先程の般若の体が嘘のようである。  
単葉は、愛液と自身の唾液で濡れた姉の秘部を手ぬぐいで拭ってから、乱れた裾をきちっと直してやり、  
彼女の身体に布団を掛けてやった。  
それから寝室に酒を持ち込んで、一人煽った。酒の肴は姉の寝顔である。  
彼は先程の双葉の質問を思い出していた。  
―凛と自分、どちらがよいのか。  
彼が塩鮭と答え、はぐらかした質問である。  
単葉はそっと姉の頬を撫でて呟いた。  
「俺は、お前のほうがいい。」  
 
                             〜続く〜  
 
 

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