天来を倒してから幾つかの時が経ち、郷田の領地は無事平和を取り戻した。  
平和を取り戻した張本人である力丸と彩女は、何故か領内の山で休養をとっていた。  
 
此は郷田松之信直々の「任務」らしい。  
 
勿論始めは、二人共そんなものは要らないと主張した。  
しかし松之信は、  
「休養無しでは次の任務も十分に出来ないだろう?」  
と勝手に解釈したのである。  
 
やむを得ず、二人は修行で見慣れた山を訪れた。  
この山には、二人が修行に隠る時に寝泊まりをするあばら家、疲れを癒す為に力丸が(彩女に命じられて)掘った温泉がある。  
二人にとって休養は、此処以外考えられないらしい。  
 
二人が松之信から頂戴した休養は、丸々七日である。  
 
取り敢えず二人は、あばら家の片付けを済ませると、並んで縁側に腰掛けた。  
空は、うっすらと赤みを帯びている。  
烏が二人の居る山に帰って来る頃だ。  
 
「あーぁ、殿様も何を考えてるんだか」  
彩女が唐突に言う。  
力丸は彩女を見遣ると、ふっと笑みを溢した。力丸の其は苦笑い、のようである。  
「一先ず殿に感謝すべきなのだろうが…休養を頂いても、安心し切れないな」  
「ま、アタイらが休養貰える程、平和なんだろうさ」  
「…そうか…」  
「ほら、色々考えるのは止めにして、殿様がくれた任務を遂行しようじゃないか」  
彩女が立ち上がる。  
「アタイは此から温泉行くよ」  
「そうか、行ってこい」  
何の気無しに答える力丸。  
ふと、彩女が力丸を見ながら小首を傾げ、そしてこう言った。  
「一緒に入らないのかい?」  
 
 
 
一緒に入らないのかい?  
 
 
 
其の言葉に、力丸は忍とは思えぬ程長い間を空けて答える。  
「………冗談はよせ」  
「ははっ、何で冗談を言う必要があるんだい…昔一緒に入ってただろ?」  
 
「…もしかして」  
 
彩女の白い手が力丸の股間に伸び、  
「色気の無い、こんなアタイに意識してんの…?」  
「止めろ」  
彩女の手を払い除ける力丸。  
表面上、冷静を装っている力丸の心の内では、激しい動揺が起きていた。  
 
昔は何度も彩女と風呂に入った。  
だが、力丸が彩女との違いを意識し始める頃、無意識の内に風呂は別々になった。  
 
其れ以来彩女の裸体を見たことのない力丸としては、彩女の言葉は力丸の思考を停止させるに値するのである。  
「意識、するに決まってるだろう」  
力丸はそう言葉に表す。  
彩女は間を空けて、爆発したように笑いだした。  
「アタイの何処に意識する必要があるんだい?ほら、さっさと行くよ」  
「…俺はまだ」  
「早く入りたいんだ、ゴチャゴチャ言ってんじゃないよ」  
「……………」  
力丸は彩女に引きずられながら、竹林の中へ消えていった。  
 
 
(何故こんな事になったんだ)  
 
力丸はぼんやりと思った。  
岩壁と竹林に囲まれた温泉は、程良く広い。  
だが、力丸は温泉の隅の方に腰掛けていた。前方では、彩女が手拭いで隠そうともせず、豊満な乳房と秘部を晒けだして、体を洗っている。  
性格はさておき、中々女の色気が漂う彩女を、力丸は直視出来ずに空を見上げていた。  
先程夕日に赤く染まっていた空は、もう紫と青に変わり始めている。  
「力丸」  
声に反応して、力丸が彩女の居る方を見遣った。  
目の前で、彩女の乳房が揺れている。  
慌てて力丸は、また空を見た。  
「…ふっ…なぁに恥ずかしがってんだい?女の裸なんざ沢山見てきたんだろ?」  
「見てきたとしてもだな…」  
「アタイの体を見て興奮してんのかい?ハッ…力丸も男だねぇ…」  
 
彩女が空を見上げる力丸の視界に入り込む。何時も結っている髪は下ろしてあり、しっとりと彩女の白い肌に引っ付いていた。  
「………誘ってるのか?」  
力丸は見下ろす彩女に真顔で訊いた。  
「何、そういう風に捉えるのかい…ま、力丸がしたくなっちまったんならしても良いけどさ?」  
彩女がそう言う。  
 
そう返ってくるとは思わなかった。  
 
彩女が冗談を言っている様には思えなかった。  
力丸は、もう後戻りが出来ないという現実に、何故か少したじろいていた。  
しかしゆっくりと、彩女の乳房に手を伸ばす。  
細かい傷の多い骨張った手が、ふくよかで白い彩女の乳房を包んだ。  
彩女がゆっくりと力丸の脚の上に腰掛ける。  
「…いいのか?」  
力丸は一応、念を押した。  
彩女はその念押しを、首を縦に振る事により、打ち消した。  
「力丸も、男になったね…まぁ、兄様には程遠いけどさ」  
彩女が、くすり笑った。  
 
「はぁ…はぁ…」  
彩女の体は、本当に女としては上質の肌を持っていた。  
力丸は、実際幾度か女を抱いた事はあるが、彩女程夢中になれそうな肌質の女はいなかった。  
力丸が彩女の乳房を揉みしだいたり、乳首を舌先で舐め上げたりするだけで、彩女は身震いをする。  
乳房を堪能し終え、力丸がふと、彩女を温泉を囲う岩の上へ座らせた。  
彩女は、岩壁に寄りかかる。  
「脚を開け」  
力丸の言葉に、彩女はとろんとした表情でうなづくと、自分の脚を開いて持ち上げた。  
秘部を晒け出す格好に、彩女が頬を赤らめている。  
力丸はその秘部に顔を近付けて、彩女の秘部を眺めた。  
「ぬらぬらと光ってるぞ…?」  
「そ…そんなに近付いて見るな…っ」  
「こんなに脚を開いて見せびらかしてるのは彩女ではないか?」  
「そ…それは…っあぁッ!!」  
言いかけた彩女の秘部に、喰らい付いた。  
 
ついばむように彩女の敏感な部位を刺激する。  
 
ちゅぱちゅぱ…くちゅっ…  
「んぁ、あ、ふ…っ」  
 
水音と喘ぎが辺りに木霊する。  
力丸はいつも修行を共にしてきた彩女が、こんなにも魅力的な体をしているとは思いもせず、益々興奮が高まってきていた。  
何故気付かなかったのか…  
其れだけが不思議でならない。  
「り、りきまるっ…早く…」  
普段力丸に懇願などしない彩女が、淫らな格好でそう言う。  
そろそろ力丸も理性を失いかけていた。  
力丸は立ち上がり、固く勃ち上がった其れを、彩女の襞を押しやる。  
「いくぞ」  
力丸が彩女の腰に手を当てがい、彩女の中へ進んでいく。  
 
ず、ず…  
 
「…ッ…!」  
思った以上に太く固かった力丸の其れに驚き、彩女はびくりと体を身震いする。  
苦痛に歪む彩女の表情にさえ、力丸は興奮を覚えた。  
 
彩女が待ってと言う前に、力丸がぐいぐいと中に進んでくる。  
「い、やぁ…まっ…!!」  
 
何か違う感覚が力丸にはわかった。  
何かを押しやりながら進むと、彩女が激しく身悶えする。  
力丸は、そんな事実に目を丸くした。  
彩女が羞恥心をあおられて、視線を反らす。  
「…血…」  
彩女は処女だった。  
意外だった為か、力丸の腰の動きは止まってしまう。  
 
…か  
 
「構わずやりなよ」  
彩女が力丸の首に腕を回して、フッと笑みを浮かべた。  
何時もは皮肉たっぷりに微笑む彩女が、今日は何処となく無邪気なように思えた。  
「彩女…」  
力丸が彩女の頭を撫で遣ると、ゆっくりと律動を始めた。  
 
ちゅ…くちゅ…  
 
「…ん、うぁ…あ」  
彩女の中は、力丸の固い其れによってぐちゃぐちゃに掻き回されている。  
乱れ、体を貪るようにして二人は律動を繰り返した。  
 
ず…ずちゅ…  
 
「はぁ、はぁ、り…りきまる…!」  
彩女が恍惚の表情で力丸を見ている。  
其の事実が更に力丸の衝動を高めていく。  
「そろそろ出すぞ…っ」  
律動は更に激しく、彩女の最奥を無遠慮に貫き続けた。  
「力丸…中は駄目…っ!」  
彩女がぎりぎりに保つ理性の限りでそう述べると、力丸は彩女の頭をぽんと叩く。  
承諾してくれたらしい。  
「あぁ、あ、く…ぅああぁぁっ…」  
「………ッ…!」  
彩女がびくりと体を震わせると同時、力丸が彩女の中から逸物を引き抜き、彩女の腹部に精を吐き出した。  
 
「彩女」  
「何だい」  
「どうして、俺を選んだんだ?」  
二人は寄り添うようにして縁側に腰掛けていた。  
もう辺りは闇に包まれ、焚き火の明かりだけが二人を照らしている。  
「…其れは、さ」  
彩女が揺らめく火を、ぼんやりと見遣りながら言葉を続けた。  
「アタイをよく知ってる誰かに、貰って欲しかったからさ…アタイの処女」  
何時、何が起こっても、辛い思いをしないように。  
「平和なこの世だ、そんな事…」  
「平和程危険なものはないよ、力丸」  
彩女は遮るようにそう言うと、力丸に微笑み掛けてみせるのだった。  
 

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