ブルーは言葉を発しない。
だが、身体に絡みつくような彼の視線を感じる。
フィシスは小さく溜息を吐いて、タロットを捲る仕草を止めた。
「ソルジャー・・・・そのように見られては、占いに集中できません」
「ん?そうかい?僕の事は気にしなくていいよ」
「・・・・そう仰られても」
何が楽しいのか、天体の間に訪れてからのブルーは喋りもせずにフィシスを見つめている。
ターフルと向かい合う彼女の斜め後ろ、柵に軽く腰を下ろしたブルーから注がれる強い視線。
心を遮蔽しているのか、彼の思念は伝わってこない。
だが、下から上へと全身を舐めるように見つめてくる紅い双眸に、フィシスの集中力はどうしても安定しなかった。
「・・・・・・・・・・」
溜息を、もうひとつ。
「・・・・・ソルジャー」
「なんだい、フィシス」
にっこりと爽やかな笑みに、言葉が続かない。
これが彼の手法なのだと分かっていても、それに抗えるようにフィシスは出来ていなかった。
それもそうだろう。ブルーが、彼女をそう育てたのだ。
自分に従順であるように、自分の全てを受け入れるように、と。
いつも結局は、彼の望みどおりに事は進んでしまう。ここで頑なになっても、いずれじわじわと攻められてしまうだろう。
フィシスは諦めにも似た苦笑を浮べて、腰を上げてターフルの上に並べたカードを回収し始めた。
「・・・・・・おや、止めてしまうのかい?」
「意地悪な方。そうさせるおつもりだったのでしょう?」
「さあ、どうかな」
余裕めいたブルーの切り返しに、肩を竦めて笑う。
飄々としているようで、とんでもなく我侭な男なのだと知ったのはいつ頃だったか。
「あ・・・・ソルジャー・・・・」
ターフルの中央に置かれたカードに手を伸ばそうと上体を僅かに倒した時、背後から回された2本の腕が身体に絡みついた。
しなやかなラインを這う掌の感触に、いやでも身体が反応する。
フィシスは震えそうになる己の身体を叱咤しながら、首を僅かに逸らせてブルーを仰ぎ見た。
「ソルジャー、待って・・・・・カードが・・・・・」
「待たないよ。君はいつもタロットばかり・・・・そんなに僕よりもカードの方が良いのかい?」
フィシスの制止の声も聞かず、ブルーの手は彼女の身体を弄り始める。
知り尽くした身体。どこを触れば敏感に反応するのかを知っている彼にとって、フィシスの抵抗などあってないようなものだった。
「お願いです、待っ・・・・」
「待たない」
外気に触れる肩に口付けられ、びくりと身体が反応する。
そのまま舌で肌を味わい、金色の豊かな髪の毛を掻き分ければ、細く白い首筋が現れた。
誘われるように唇を押し当て、強く吸う。
フィシスは駆け抜ける感覚に堪らず吐息を漏らした。
「あ・・・・や、・・・・・」
「フィシス・・・・・」
肩口に顔を埋めたブルーの息遣いが耳をくすぐる。
力の抜けたフィシスの手中から、カードが一枚ずつ滑り落ちた。
「ソルジャー・・・・あっ・・・!」
やんわりと触れるだけだったブルーの手が、強引に胸を掴む。
押し上げるような手の動きに、フィシスは身体が快楽へと溺れ始めるのを感じた。
「ブルーだよ、フィシス。2人きりの時は、そう呼んでと言ったろう?」
耳元で囁かれる、熱の篭った低い声。
時折触れる唇が、ひどく熱い。
「・・・・・・・っブルー・・・・ぁん・・・・・」
「そう、いい子だね・・・・・」
従順なフィシスの言葉が気に入ったのか、彼は更に強く胸を弄した。
ふくよかな双丘が、ブルーの手の中で形を変える。
「や・・・・・ブルー・・・・」
甘いフィシスの声に脳髄まで痺れそうだった。