救命艇のドアが閉まっても、キース・アニアンの興奮は納まらなかった。
動揺を抑えて艇を発進させ、その時になって初めて、手の中の女が自分の自由になることに気づいた。
あの男、タイプブルー・オリジンの女か。
キースは自分の昂った感情が、身体の一部で急速に尖り始めるのを感じた。
鉾先を向けるのに、これほど適当なものがあるだろうか。
「そこに両手を着け」
のろのろと女が席の座部に手を着くと、腰がキースの前に突き出された格好になった。
その服を裾から捲り上げ、素早く下着をひき下ろす。
「あ、何を…」
異変を感じて振り返る彼女の頬は、背部からの衝撃で背もたれに押し付けられた。
「膝で立て。早くしろ」
キースは女の両手を椅子の背に回させ、座部に膝で立つよう命じる。
あらわな白い腰をあらためて引き寄せ、長い金の髪を背の左右に払い分けた。
尻の山を下から手で広げ、十分に興奮した自身を一気に突き刺す。
「いやっ…」
細い腰を両手で掴み、女の肉を裂く。
濡れていない女を刺し貫くのは力が要った。
右手を回し、前から割れ目を攻める。にわかに蜜があふれ出し、きつく閉じられていた女の入口が彼を受け入れた。同時に、恍惚とした歓びが彼にも伝わってきた。
「これは凄い」
キースは新たな興奮が自分を包むのを感じた。
この女は自分が感じていることをここまで見せてしまうのか。
あの男がこの女に執着したのは、こういうことかもしれない。
キースは伝説の男が今頃歯噛みしているだろうと思うと、先刻までの自分の動揺の復讐をしている気になってきた。
その発想がさらに彼を昂じさせ、自身の強大な力となって女を貫く。
「ああっ…」
喘ぐ女も彼に合わせて中を締めたり緩めたりする。
その心地よさに、キースは我を忘れそうだった。
女の感じている歓喜は、白熱した金の光で彼を包む。
その中に微塵も罪の意識がないのを知って、キースは笑みを浮かべた。
さっきまであの男の名を呼んでいたのに、もうその姿に思いを馳せもしない女の業の強さ。性の執着。
「お前は抱かれてさえいれば相手は誰でもいいというわけだな」
その声が聞こえていないはずはないが、女は息荒く喘ぐばかりだった。
「それならそうと、楽しませてもらおうじゃないか」
キースは前の割れ目を探っていた指で、小さな芽だけを摘み出す。
「ああんっ」女が天を仰ぎ、キースをきゅうっと締め付けた。
目の前が真っ白になるほどの快感に、キースは足の力が抜けそうになった。
「これは…」
こんなものが存在するのか。
我に返ったキースは、ちらりと計器に目を遣る。発進してからまだ数分しか経っていない。
この短時間でこれほどの濃い営みが行えるとは。
脱力し、背もたれにかろうじてしがみついている女を見ると、キースは新たに女への興味がわいた。
ネチャリと音を立てて自身を引き抜き、女を仰向けにして、椅子に座らせる。
足を開かせ、両の肘掛けに押し付けると、熟れた股間に顔を寄せていった。
「ああっ、やめて」
女の蜜はすでに周囲を濡らすほど滴り、本当の果実のような芳香を放っていた。
局部を舐めあげると、女は仰け反ってさらに腰をキースに突き出した。
その時、舌の先に電撃のような刺激が走り、キースは気を失いかけた。
彼女の快感が一瞬、自分を打ちのめしたのだった。
これは相当な代物だ。
キースは立ち上がり、この女の処遇について思いをめぐらせた。
自分を呼ぶ、かすかなマツカの通信が艇内に響いたのはそのときだ。
「マツカか」
助かった、と安堵しながら、決断した。
「人質がいる」
女を見下ろし、自分の着衣を整えて、彼は言った。