ジルベスター星系第七惑星に関する報告を終えて居住区の自室に戻るまで、キース・アニアンの心理防壁には一分の隙も無かった。  
報告中マザーに何かを気づかれたとしたら、タイプブルー・オリジンに遭遇した際の動揺ぐらいだろう。  
「ミュウは本当に長生きなのですね」「彼らは人間ではない。だから存在してはならないのだ」想像通りの答えだった。  
芽生えようとする考えをいちいち摘み取りながら自室へたどり着くと、甘いにおいが彼の鼻腔を刺激した。  
「なんだ、それは」  
ミュウの女の傍にいるマツカの姿を見て、キースは怒りに駆られた。  
「紅茶です、コーヒーでしたら…」  
「いらん」二人の間にある親密な空気のようなものが、それとわからずキースを苛立たせていた。  
「はずしてくれ、マツカ」その時まで、女をどうするか考えていなかった。「あいつらから受けたものを、この女に返す」  
そう口走っていた。  
 
女の手首を掴んで、ベッドに押し倒した。  
女はおびえていたが、抵抗はしなかった。  
「お前は仲間の船の中でもほとんど抵抗しなかったな。なぜだ」  
「…抵抗しても無駄でしょう」  
それはそうだ、しかし…。  
キースはそれ以上考えるのをやめた。肉体的にも精神的にも疲労の限界だった。だが女の顔を見ていると何故か興味を駆り立てられ、睡魔は押しのけられた。  
ドレスを捲り上げ、いったん女を起こして頭上まで脱がせる。それを掴んでいた両手首の周りに巻きつけ、長くて邪魔な髪と一緒に拘束した。無抵抗な白い裸体が、キースの眼前に晒される。激しく動悸する女の胸を見下ろしつつ、キースは自分の着衣を取り去った。  
豊かな乳房を手のひらに納めようとすると、女は小さく喘いで顔を背けた。  
その華奢なあごに手を伸ばし、口づけながら胸を揉みしだく。  
「あ、あ…」  
悦びを感じていることがキースに伝わってくる。同時に彼女のまぶたからは涙が流れ出し、それは悲しみの涙だとキースにもわかるが、その複雑な胸の内まで読めるわけではない。  
指先で乳首を摘み上げる。感じていることを恥じてか、女は少し抵抗してみせた。  
抵抗されたほうが面白い。  
片方の乳房を揉みながら乳首を指の股で挟み、もう片方の乳首の周りを舌で舐め回す。  
頬を濡らしつつ喘ぎ声を漏らすまいとする女の顔は、苦痛に耐えるがごとくにゆがみ、その表情がキースに新たな火を点けた。  
右手で女のひざの裏を持ち上げると、女は全身を震わせて逃れようとする。かまわず指を伸ばし、溢れ出る泉に浸す。  
「ああっ…」  
仰け反ると同時に女の内部は締まり、キースの指をしっかりと捉えた。女は頭上に拘束された自分の腕で声を押し殺そうとする。乳房が天井に向かってつんと立ちながら、大きく揺れる。  
キースは指で中の襞を擦りつつ、再び乳首を吸った。  
 
「ああん、いや…」  
硬くなった乳首が彼の舌の上で踊る。泉に浸した指を引き抜いてすぐそばの突起に触れると、女は一瞬彼の下で身体を硬直させた。衝撃のような歓喜がキースにも伝わる。  
「お前はどうしてこうも簡単に感じるのだ」おのずと笑みを浮かべながらキースは女の顔を見る。  
前戯も何もあったものじゃない。女は全身で、早く早くとキースを駆り立てているようだった。そういうふうにできているのだろうか。  
「お前の身体をここまでにしたのはあの男なのか」  
事実、女の泉は初めから潤っていた。今やこんこんと湧き出すその泉からは馥郁たる香りが漂い、キースをいざなう。  
その誘いに乗ってやろう。  
女にも自分にも時間がない。  
キースは一瞬、女のつぼみを力一杯つねり上げた。悲鳴に近い声を上げ、女が歓喜に打たれて四肢を縮ませる。その両足首を掴み、膝を折り曲げて開く。女の泉に顔を寄せていくと、果実にも似た甘い香りがいよいよ強く彼を刺激し、熟れた果肉はつやつやと淫らな色で彼を迎えた。  
 
「ああ、いやあ…」女の声には泣きが混じる。  
愚かな女だ。  
唇全体で周囲の肉に吸い付き、泉の中心には舌を挿入していく。  
刹那、大きな驚愕が彼を襲った。  
それはまさに彼の好む味と香りだった。  
自分が何かの中毒になるとしたら、この味をおいて他にないだろうとキース・アニアンは思った。頭の奥がしびれていくようだった。  
自分の決断に間違いはなかった。  
唇をさらに押し付け、彼は舌で泉の源まで掘り下げようとする。救命艇の中ではゆっくりと味わっている余裕はなかった。  
もしかするとあのときの衝撃は、この味によるものかもしれなかった。危険を冒してもこれを持ち帰る価値は十分あった、とキースは考えた。  
その味と香りが、女の感じている歓喜に反応して刻々と芳醇さを増していくと気づいて、キース・アニアンはさらなる驚きを覚えた。  
あるいは女の歓喜に触発された自らの興奮がそう感じさせるのだろうか。  
女は組み敷かれたまま、身体をひくつかせている。  
拘束された両腕を頭上に上げて仰け反った女のあごと細い首を見やると、キースは攻撃的な衝動が自分の下半身に集中してくるのを感じた。  
だが、まだだ。  
卑猥な音を立てて女の泉を吸い尽くそうとしている自分を、キースは止めることができなかった。泉は涸れる気配もなく、彼を恍惚とさせ続ける。  
だが突然、女の両腕が巻きつけられたドレスの拘束から外れて宙を舞った。  
「いやあっ!」自由になった腕を振り回し、女は上体を反らせてキースの唇から逃れようとする。その腕を再び捉え、キースは次の瞬間いきなり自身で女を刺し貫いた。  
「ああ、ん…」  
待っていたのか。  
一瞬で悦びに満ちた表情に変わった女の顔を見て、キースは笑った。  
すぐにその真っ白な悦びが光となって女から溢れ出し、キースを快感で包んで溺れさせる。  
女の中で動きながら、彼は目の前が明るい光で満ちてくるのを歓喜の念で迎えた。  
価値は、十二分にあるではないか。  
女の思念が清らかな光を湛えているのが可笑しかった。身体はこんなにも淫らに反応しているというのに。  
キースは自身を引き抜いた。弛緩している女の身体を裏返し、膝を立たせて腰をひきつける。後ろから刺すと、女は背を反らせて感極まった声を上げた。  
「これがいいのか。そんなに喜んでもらえるとは思わなかったぞ」  
キースは自分が声を立てて笑い出すのではないかと思った。高揚した気分で女を突き続け、一気に達してすべてを押し流した。  
 
キースはE−1077のコンパートメントにいた。  
部屋の壁には魚影のフォログラムが青暗く映し出されている。  
突然、白くしなやかな魚が大きく前面に現れ、背を金色に光らせながら明るい水面へと泳ぎ去りようとした。  
待て、と叫んで彼はその後を追う。手を伸ばすと、いきなり明るい水上へ出た。  
女の豊かな金髪が鼻先にあった。その影に白いうなじと華奢な肩が続く。こちらに背を向けた女が、キースの腕の中にいた。  
時計を見ると、眠っていたのはごく短時間のようだ。  
それにしてはなんとも心地よく、深い眠りだった。全身の疲労が嘘のように消えているのを感じた。良質な睡眠に勝る薬はない。  
シャワーを浴びる必要があった。女の身体に回していた手を引き抜くと、女が身じろぎした。  
この女をどうするかまだ決めていないことを、キースは思い出した。処分するにしても収容所へ送るにも、もうあの味が味わえないのは惜しい気がした。  
「起きろ」  
だがもう一度女の肩に触れると、彼女はびくりと全身を震わせて彼から逃れた。おびえているようだった。  
キースは、女に自分の考えていることを読み取らせてしまったことに気づいた。  
「ナスカを攻撃するのですね」  
「ミュウのいる場所はすべて焼き尽くされる」知られてしまえば隠すこともないだろう。女の腕を掴んでベッドから降りようとすると、女はキースの手を振り払った。  
怒りに駆られて彼女の頬を叩く。勢いで突っ伏した女の肩を乱暴に掴んで引き摺り下ろそうとするのを、女は寝具にしがみついて抵抗した。  
その手を引き剥がすためにキースは再びベッドに乗り女の背にまたがった。そのあごを掴んで無理に自分のほうを向かせる。  
「何をしても無駄だ。マザーの指示ですべては動き出している。元はと言えばお前が私を逃がしてくれたお蔭だが」  
震えている女の顔を見下ろしていると、回復した身体に新たな興奮が満ちてくるのをキース・アニアンは感じた。  
「そうか、まだその礼が足りなかったか」  
はっと、女が身を強張らせるのがわかった。  
 
「怖がることはないだろう、お前が大好きなことをしてやるのだ」髪をまとめて背中から前へ落とし、あらわにしたうなじに舌を這わせる。  
「ああっ…」女が首を反らせる。  
女の脇から手を差し込んで、キースは乳房をまさぐった。  
「お前はこれが好きだろう」中指の腹をこすり付けると、女の乳首は瞬時に硬くなる。その反応のよさは驚嘆すべきものだった。  
「やめて、もう…」シーツに顔を押し付けて女が喘ぎ声を隠そうとする。  
「そしてこれも好きだ」もう片方の手を腰骨の下から滑り込ませ、割れ目を指で掻き分けて泉に達する。案の定、すでに彼を待ち受けていた蜜が溢れ出した。  
その近くで硬くなっているつぼみを、またしても指で強く押さえる。  
「いや、いやよ」のた打ち回る女はしかしその動きで自分自身を刺激しているともとれた。女の肌が汗で湿り気を帯び始め、キース自身も熱くなってくる。  
女の白い背中を背骨に沿って下から舐めていった。攻撃的な衝動が彼の中で大きくなりつつあった。  
「あ…あ…」舌の動きに併せて女が背を反らせる。その隙を突いて女の腕を掴み、上体をひねって身体を仰向きにさせた。  
女の上にあらためてのし掛かり、乳首に歯を立てる。悲鳴が上がった。  
「これは嫌いなようだな」血の味がした。女の思念がおびえた暗い色に変わる。その血を吸うと、女が感じる恐怖がぞわぞわと伝わってきた。  
同時にキース自身から湧き上がる喜びが彼女に伝わったはずだった。女の恐怖が一層強まった。暴れる手を押さえつけなければならなかった。  
だが女の抵抗は火がついたように激しく、女がベッドから落ちようとするのを阻止するためにキースは二度女の髪を掴んで引き寄せ、大人しくさせるために何度か頬を打ち、脇に拳を当てた。  
再び組み敷かれた女の顔は涙に濡れていた。  
かまわず、さらに乳首を吸う。足の間に伸ばした指で、つぼみを強く摘んで揉むしだく。  
女が恐怖の中でか細くも確実に悦びを感じていることが、彼にはわかっていた。  
面白い。  
キースは女の表情と思念が複雑に変化し続けるのを、観察し続けた。女の悦びは恐怖に打ち勝ちつつあった。彼の舌が噛んでいない方の乳首を転がしだすと、ついに悦びが勝利した。  
 
キースは女を裏返して抱き起こし、すでに屹立していた自身の上に座らせた。  
後ろから手を回して乳房を攻め続けながら下のつぼみもしっかり刺激してやる。つぼみへの刺激がそのまま女の中の締まり具合に連動している。  
女は両手を前について、上体を支えるだけで精一杯だった。  
乳房からウエストに手を移し、軽く女の身体を持ち上げたり下ろしたりを繰り返すと、女はすぐに動きを覚えて自ら動き出した。  
教えがいがある。もしかするとこれまで女はこうした体位を知らなかったのではないかとキース・アニアンは考えた。  
あの男はノーマルな正乗位で満足しそうだ。  
キースの口元に笑みが浮かぶ。女が自分で腰を振っている。あの男に見せてやりたいものだと彼は思った。  
女の背を押して、上体を倒させる。一回引き抜いた自身を刺しなおそうとして、考えが変わった。  
ベッドから降り、脱力している女を抱き上げて、シャワールームに入る。女を床に座らせてシャワーの湯を一緒に浴びた。ソープの泡を身体に伸ばすと、女は嫌がった。  
「大人しくしろ」乱暴に腕を引く。女は立ち上がろうとして、床で足を滑らせた。小さな叫び声を上げ、女はうずくまる。足首をひねったようだった。  
「大人しくしないからだ」キースは女を床に押し倒す。その髪をかき上げ、耳たぶを噛んだ。  
「いやあ…」開いた女の口にも頬にも容赦なくシャワーの湯が降り注ぐ。泣いているのだろう。  
キースは女の両手をそれぞれ押さえつけ、泡がすべて流れ去る間、女の顔を凝視していた。  
何かが不思議だった。だがそれが何なのか、やはりキースにはわからなかった。  
湯を止めて女の膝を開き、泉に手を伸ばす。我慢できず、すぐに口を近づけていった。ひと舐めすると、ぴくりと女の身体が反応する。その味は期待を裏切ることなくキースの舌をしびれさせ、彼は歓喜に打たれた。  
女の香りが、シャワールームの湯気の中に立ち込め始める。温められた香りはさらに濃厚に匂いたち、彼を強く酔わせた。  
女を手離さなくてはならないのが、返す返すも残念だった。  
キースは蜜を吸い上げながら、肉を甘噛みした。熟れて張り切った果肉は別の生き物のように息づいている。女の上気した頬は湯に当たったせいばかりではない。微かな喘ぎ声を漏らし、女の身体は新たなる悦びを迎え始めていた。  
次は少し強めに噛んだ。女が身をよじって嫌がる素振りを見せる。  
手離す前に、味わい尽くしてやる。  
魅惑的な香りを放つ果実。その果肉に歯を立てて、キース・アニアンは最後の蜜をすすった。  
 
 

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