首尾よく脱出を果たしたキースは、救命艇をオートパイロットに
切り替えた。人質として連れてきたミュウの女に向きなおり、
震える繊手を掴むと、乱暴に引き寄せる。
―すると、またあの奇妙な幻影に襲われた。
まるでこの女と一緒に水中を漂っているような・・・
暖かな安心感に包まれ、まどろみつつたゆたう双子の胎児・・・
「嫌!やめて!!」
女の鋭い悲鳴にさえぎられてキースは途端に幻覚から目覚めた。
彼女の怯えが手を通してキースに伝わり、先程まで感じていた
ぬくもりの感情を粉々に打ち砕く。
チッと舌打ちすると、女のおとがいに乱暴に手を掛け、
荒々しく顔を上向かせた。
「残念だな。お前の秘密を探りたいのはやまやまだが・・・
その時間はない。お前はもうすぐ死ぬ運命だ」
双眸に鋭い光をたたえながら、冷酷に言い放つ。
フィシスは身をよじってキースの手から
逃れようと試みた。だが、がっしりと掴んで離さない
キースの腕の力に阻まれて、虚しい抵抗に終わってしまう。
「ああ、助けて!ソルジャー・ブルー!!」恐怖に駆られたフィシスは、
思わずブルーの名を呼んだ。
すると、フィシスの腕に触れていたキースの心に、
先程のあの男―タイプ・ブルー・オリジンのイメージが流れ込んできた。
―ミュウ達からの信頼厚い長としてのブルー。
―いつも優しい笑顔で彼女に接してくれる、恋人としてのブルー。
そして―
裸のフィシスがブルーに組み敷かれて喘いでいた。
真珠色の肌に汗の粒を光らせた彼女は、
両脚を男の腰に絡めて深々とその身に受け入れている。
その顔はセックスの喜悦で桃色に上気し、もう堪らない!
とでもいうような切なげな表情を浮かべていた。
(・・・・な!・・こ、これは!!)
そんな二人のエロティックなシーンを見せ付けられて、
キースの全身がカァッと熱くなった。
その熱は下腹部に集中し、たちまちコンバットスーツの前がきつくなる。
「・・・なるほど、お前は奴の情婦だったというわけか・・・」
不敵にニヤリと嘲笑うと、上向かせたフィシスの顎をつかんだ指に、
さらに力を込めた。
キースは、目の前にいるミュウの女に対する激しい欲望とともに、
なぜか―怒りと嫉妬の疼きまでも感じていた。
(どうしよう!この人に知られてしまった!!)
触れている人間には上手く心を遮断することができないフィシスは、
人間の男にブルーとの熱い愛の行為の様子を覗かれ、
さらにそれを見た彼の、自分に向けられた欲望までをも悟ってしまった。
あまりの恥ずかしさに顔面に朱をのぼらせ、耳まで真っ赤に染める。
「ミュウとは案外不便なものだな・・・」
桜色に染まったフィシスの頬を眺めつつ、長い髪を一房
すくい取り、すべすべの感触を確かめながら撫で下ろす。
身のうちに芽生えた情欲の炎がキースを圧倒していた。
自然と口中に唾液が溢れてしまい、ごくん、と音をさせて飲み下す。
キースはふるえる息を吐き出しながら、かすれた声で女に命じた。
「・・・脱げ」
「えっ?!」
「服を・・・脱ぐんだ」
彼の声は、普段とはまったく違う、軋んだ調子を帯びていた。
「そんな!・・・嫌です!いやっ!!」
フィシスは体を小刻みに震わせながら、激しく左右に首を振った。
女の断固とした拒絶に合い、内心の動揺を悟られまいとしながらも、
キースはさらに言いつのった。
「それでは、お前をこのまま基地に連れ帰るとしよう。
そして・・・ミュウの船やあの星の隠れ家について、
知っている機密を洗いざらいしゃべってもらう。
もちろん・・・タイプ・ブルー・オリジンの能力の秘密についてもな」
絶望感に打ちひしがれたフィシスは、床にくず折れた。
(私の存在が、ミュウの仲間たちを危険に晒してしまう!
あの人のことも・・・!!)
フィシスの脳裏にブルーやジョミー、ミュウたちや子供たち、
彼女にとってこの上なく大切な人々の顔がよぎった。
女が抵抗する気力を失ったことを見て取ったキースは、
内心でほくそ笑むと残酷に問いかけた。
「さあ・・・どうする?言うことを聞けばこのシャトルごと捨て置いてやる。
だが、断れば基地で拷問を受け、実験体になる運命だ」
フィシスは、震える手で首の後ろの髪をかきあげ、
首飾りの留め金をパチンと外した。そうすると、やわらかな絹の
ドレスは支えを失い、スルリ、と肩から簡単に脱げてしまう。
しなやかな女体のラインに沿って、繊細な布地が
滝のように雪崩れ落ちる。
フィシスは、羞恥と屈辱に白い肌を朱に染めながらも、
両手と長い髪でなんとか己の裸身を隠そうとし、小さくうずくまった。
フィシスのほっそりとした裸体を目にしたキースの心に衝撃が走った。
思わず、目がカッと見開かれる。
(・・・・・!!・・・・・下着を、つけていない!!!)
キースはもう、身のうちに荒れ狂う情欲を隠すこともできずにいた。
興奮に息を荒くしながら、震える声で命じる。
「・・そ、そこに、横になれ・・・」
フィシスは、おずおずと従った。
シャトルの冷たい床に横たわり、せめてもの抵抗なのか、
長い金髪を、裸体を覆い隠すように纏わりつかせた。
その姿は、まさに残酷な漁師の網にかかった人魚そのものだった。
キースは彼女の傍らに膝をつくと、熱をもった固い掌で胸に触れた。
マシュマロのように不定形で弾力のある乳房が、
キースの手の中で、ぷるんっと震える。寝そべっているため
やや左右に寄った乳房はあくまでも柔らかいのに、紅く熟した
乳首だけが、その上でポチッと硬く尖っているのが対照的だ。
唇を震わせながら、やわ乳の感触に没頭していると、
ふと、金色の柔毛の生えた女体の股間に目がいった。
女の下腹部にかかっている邪魔な長い髪を手でよけると、
ピッタリと閉じられた太ももを両手で無理矢理こじ開けた。
「う!・・・ん・・・いやあっ!!」
涙ぐみ、手で顔を覆ったフィシスの悲鳴には構わず、
頭を下げて、血走った目で股間を覗き込む。
―よく・・・・・見えない・・・・・・。
局部を隠そうと無駄な抵抗をする女の両手首を
すばやくつかんで片手で太ももを押し開く。
金色の毛が生えた恥丘とピンク色がかった裂け目は見えるのだが、
その下、さらに奥の方が、むっちりとした太ももの肉と陰りに遮られて、
どうもよく確認できない。
―キースの身のうちにじりじりと焦りがつのってくる。
だが、しばし考えた末に答えがひらめいた。―・・・そうだ!!
「・・・四つん這いになれ」
低く、だが有無を言わせぬ口調で女に命令を下す。
すすり泣き、小さな声にならない声で哀願を繰り返しながら、
フィシスはキースの残酷な要求に従うために、身体を起こした。
彼に背を向け冷たい床に両腕を突くと、わなわなと震えながら
ゆっくりと腰を、上に向けてゆく。
焦れるあまり、キースは女の腰を両手でがっしりと捕らえると、
ぐいっとフィシスの尻を上に向かせた。弾みで、両肘が床につき、
お尻を高く上げる屈辱的なポーズになってしまう。
「ああっ!!!」―絶望の嗚咽がフィシスの口から漏れる。
キースの目の前に、高く突き出された白くて丸いお尻と、
パックリと割れた女の秘部があらわにされた。
ハァハァと熱い息を吐きながら、キースはフィシスの秘唇に指を伸ばした。
周囲は淡い金色の毛に覆われ、菱形の不思議な形状の
ヴァギナは貝のようなビラをはみ出させている。
小陰唇に触れると、奇妙なぽちぽちした感触が心地よい。
秘唇を掻き分けるキースの長い指を、フィシスの愛蜜が濡らし、
トロリとこぼれ出した。キースは指を濡らす愛液に一瞬躊躇したが、すぐに、
その透明な粘液を己の指にからめ、さらに女体の探索に乗り出し始める。
「ああ!・・・う!・・・ふぅん・・・」
フィシスの身体はキースの指の戯れに狂い踊り始めた。
フィシスは、キースの手から発せられる不思議な熱動に、
怯えながらも引きつけられるのを感じて戸惑っていた。
ザワザワと身体の内側を引っかかれるような、不快と快感の
入り混じったおののき・・・。
それがフィシスをどうしようもなく妖しげな気分にさせる。
本来、ブルー以外の男に触れられて感じるなどと、
絶対にあってはならないことだ。
だが、ソルジャー・ブルーに開発されきったフィシスの身体は、
男の手で秘所をまさぐられただけで、単純に昂ぶり開いてしまう。
「ふ・・・う・・くぅん・・・」
抑えようとしても喉の奥からくぐもった声が漏れ、
さらにヴァギナから甘い蜜が溢れ出した。
キースはもう、限界を感じていた。
コンバットスーツのファスナーを下ろし、興奮のあまり
わななきながら下着をずり下げると、巨大な男根が
ポンッと弾けるような勢いで飛び出した。
怒張しきったキースのペニスは全体的に赤黒く、
表面に血管が浮き出していた。
亀頭は小さな子供の握りこぶしほどの大きさに張り、
抑えきれない欲望に、それ自体が意志を持っているかのように、
ゆらゆらと上下に首を振っていた。
(ああ!!そんな!!どうしよう!!!!)
テレパシーで何でも手に取るように解るフィシスには、
四つん這いで後ろ向きになっていても、キースの物の巨大さを
はっきりと悟ってしまった。
(あんなに大きな物で貫かれたら、文字通り壊れてしまう!!)
それまで感じていた背徳の快感は一気に冷え、
恐怖のあまりスーッと気が遠くなった。
キースは、揺らめく男根に手を添えて女の秘唇に押し当てた。
中心の穴があるところに見当をつけ、少しずつ力を込めてゆく。
(もうダメ!犯される!!)
フィシスは、ガクガクと全身を震わせ、涙で顔をくしゃくしゃにしながらも、
最後の最後に精一杯の儚い抵抗をせずにはいられなかった。
「いやああああ!!助けて!ブルーーー!!ソルジャー・ブルーー!!!!!」
心の底からの悲痛な叫びがフィシスの口から溢れ出る。
その願いも叶わず無常にも貫かれようとした、まさにその時―
「キース、僕です!聞こえますか!? マ ツ カ で す !!」
飛行艇内に、天上からの声が降りそそいだ。
「えっ!?」
キースは、驚きのあまりガクッとバランスを崩してしまった。
そのはずみで己の分身を自分で強く握りすぎてしまい、
強烈な痛みが張りつめきったペニスから全身に広がった。
キースの口から思わず悲鳴が飛び出る。
「いでででででっ!!!!」
「キース!怪我をしたんですか?!」事情を知らないマツカが叫ぶ。
「え!?あ、いやその、なんだ、違う・・」
キースは、しどろもどろに言い訳することしかできなかった。
「今から僕のサイオンシールドであなたを包んで、そこから脱出させます!」
「ええっっ!?もう!?・・でも、あの、いや、その、ちょっと・・・待ってよ!」
うろたえるキースの返事を聞いたマツカは、チッと舌打ちした。
「何言ってるんですか?!キース、僕は忙しいんですよ!!!
時間がないんです!!これから基地に帰って
“11PM”見なきゃなんないんですから!!」
「・・・・・・・・え?・・・・“11PM”って・・・え?これSFなのに、
な、何でお前だけ昭和の時間軸なの???」
「うるさいな!どうだっていいじゃないですか!!
早くしないと温泉コーナーのウサギちゃん見逃しちゃうんですよ!!!」
「う・・・ウサギちゃん・・・・て・・・・・」
思わぬ超展開に混乱しきったキースは、ただただポカンとするほかなかった。
何が起こったのかは知らぬが、どうやら最大の危機だけは
回避できたことを悟ったフィシスは、この隙にとばかり
すばやく身をひるがえして脱いだドレスを胸元にかき抱いた。
「ああっ!!」
そんなフィシスの変り身を見たキースの口から思わず嘆きの声があがる。
涙目になったキースは虚しく彼女に手を伸ばしたが、
無情な天使の声は最後の希望までをも引き裂いた。
「さあ、行きますよ!!」
白熱したグリーンのフィールドがキースを包み始めたか、と思うと
救命艇からまるで引き抜かれるように無理矢理テレポートさせられてしまった。
「ああーーーー!!いにゃぁぁぁぁぁぁーーー!!!!!!!!」
キースの奇怪な悲鳴が宇宙空間に尾を引いて流れる。
―その姿は、まるで畑からすっぽ抜かれた、大根のようだった・・・
マツカのサイオンによって無事に救出されたキースは、
飛行艇の床にドサリと投げ出される格好で転送された。
「無事でよかった!キース!」
しかし、操縦席から振り向いたマツカは、キースの姿に愕然と目を見張った。
コンバットスーツのファスナーは下まで全開に引き下ろされ、
たぎったままの局部が雄々しく上を向いてはみ出していた。
(な!?・・・この人、ウサギちゃんって聞いただけで、
もう抜く準備していたのか!?どこまで童貞丸出しなんだ!!)
紳士的でフェミニストなマツカは、昔から何処に行っても女たちの人気者だった。
無骨な軍隊の中にあって、決して他の男たちのように威張ることをせず、
どんな女性に対しても常に優しく振る舞う。
彼女たちはそんなマツカに単純に感激し、贔屓して可愛がり、
時には・・・その体までも惜しげなく与えてくれた。
グレイブと懇ろな仲のあのミシェルでさえ、基地のひと気の無い一角で
こっそりとキスをねだってきたこともある。
もちろんその時のマツカが、いつもの愛らしい笑顔で
彼女の望みに応えたことは言うまでも無い。
実は彼のそんなモテぶりがキースを含め、
男たちからの更なる反感を煽っているのだが、
それもこれも愛される代償であって仕方が無いことだと、
意外なほど図太い性格のマツカはあっさりと受け流していた。
性生活に不足を感じたことのないマツカにしてみれば、
キースの存在は天然記念物にも等しかった。
マツカは彼に出会ってからすぐに、実はキースがまだ
女を知らないことを思念で見抜いていた。
それからは、キースに大人しく従いながらも心の中では彼のことを
「機械のように完璧だけれど、ヌーブラが何なのかも知らないキース」
とか「その日に穿くパンツの柄までマザーに訊いてから決めるキース」
などと密かに馬鹿にしていた。
マツカは、キースに冷ややかな侮蔑の目線をくれると、
操縦席のコンソールに向き直った。
モニターからはおなじみの「シャバダバシャバダバ〜〜」の
テーマソングが流れ出す。
マツカは、フンとひとつ鼻を鳴らすと「あ、ほら始まっちゃった」と
つぶやき、その後キースに目を向けることは無かった。
キースは、床からもそりと身を起こすと、
マツカの後頭部をギラついた目で眺めた。
「・・・・・・・・・・マツカ・・・・・・」
「はい?」
「・・・・・・・・・マツカ・・・・・・・!!!」
「は?あんすか?」
「どぅぐるううわああああああああ!!!!マツくぅわああああぁあぁ!!!」
「うぎゃあああああああ!!キースううううううううう!!!!!!!!」
その後、ジョナ・マツカの姿を見た者は、誰もいないという。
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