「ああ、いやっ…やめて、あなた…だめっ」  
寝室の間接照明が、ベッドの上で悶えあがく彼女の影を壁に大きく描き出す。  
彼女の拒む様子が自分の欲望に火をつけ、攻撃性を大いに煽り立てるのをキースは感じる。  
抗う彼女の両手を片手で押さえ込み、あらわな胸に対峙する。大きく揺れる白い乳房の、赤い乳首を激しく吸い上げた。  
甘く、ぬるい液体が舌にまとわりつき、快感が彼を貫いて目の奥で点滅し始める。  
「いやっ、やめて」  
彼女が喘ぎながら上げる泣き声に、彼の気分は高揚し、興奮で血が踊った。  
片手を伸ばして彼女の足の間をまさぐる。そのつぼみを執拗に狙うと、彼女の泉はすぐに溢れて彼の指を溺れさせた。  
「だめ、もうすぐあの子が目を覚ますのに」懇願するその声にはしかし、彼女を支配しつつある悦びの響きがある。  
こんなに感じているお前の身体を、赤ん坊などに明け渡すものか。  
出産直後の大きく張り切った彼女の乳房は、見るだけでキースの下半身を疼かせる。彼は無言で彼女の乳首に舌を巻きつけ、乳を吸い続けた。  
「ああん、だめっ、やめて…ああっ」彼女の抵抗は虚しくも粘り強い。  
キースはいったん乳房を離れ、足の間に身体を移した。  
泉の蜜を舌ですくい上げると、彼女は歓喜に打ちのめされて感極まった声を上げる。自分の声を恥じた彼女が、全身を強張らせてその快感を身内にとどめようとする。  
以前よりもさらに鋭敏になったともとれる彼女の感覚に、キース自身がさらに大きく反応した。  
征服欲で膨れ上がった自身を、彼女の泉に沈める。嫌がる彼女の振る舞いとは裏腹に、彼女の中が彼をとらえて引き込んだ。  
その勢いに乗じて、一息に貫く。激しく突き上げつつ指で乳首を刺激してやると、彼女は喘ぐ息の下で声が出ない。  
仰け反る白い首に舌を這わせ、頬を舐め上げる。  
「あ…ああ…」眉を寄せて煩悶する彼女が恍惚に酔っていることが、キースには手に取るようにわかる。  
そのまま彼女の中に、猛り立つ自分自身を解放した。  
彼女の意識が、快楽の彼岸へと遠く流される。  
そうして彼女が何も抵抗できなくなってから、キースはあらためて悠然と、彼女の乳房に取り付いた。  
「いや…あなた、もう…やめて…」掠れた声で、彼女が虚しく彼を拒む。  
片方ずつゆっくりと、舌を絡めて吸い上げ、彼女の乳を味わい尽くす。  
感覚のすべてを知られているキースの唇と舌の前になす術もなく、彼女は抑えようのない快感が渦巻く中で、嘆き悲しんだ。  
 
「どうしてこんな…ひどいわ」  
彼の唇がようやく満足して彼女の乳房から離れると、仰向けにされたそのままで、彼女が泣き出した。  
「よくなかったのか」キースは彼女の腰を抱き寄せる。「喜んでくれていると思ったが」  
「だってあなたの目的は、あの子のご飯を取り上げることでしょう」  
「お前は自分が人一倍感じやすい身体だということがわかっていないようだな」キースの手が、彼女のわき腹から乳房に掛けてを撫で上げる。「授乳などもってのほかだ」  
「もしわたしがそうだったとしても、それは相手があなただからです。まさか赤ん坊にわたしが…」  
「たとえ赤ん坊といえども他の男にお前が感じるのは許さない」  
「そんなことありえません」  
「どうしてそう言い切れるのだ。やっていることは一緒ではないか」  
「やめて。赤ん坊が母親にする当然の行為です」  
「私は知らない」キースは再び彼女に被さり、その乳房に顔を近付けていく。「お前の身体は私のものだ、誰の勝手にもさせない」  
「どうしてあの子にいじわるをするの?」肘を立て、キースの肩を両腕で押して、彼女は先刻よりも必死に抵抗する。「わたしとあなたの、待ち望んだ子どもなのに」  
どうしても乳房を吸わせまいとする彼女に腹を立てて、キースは乱暴に彼女の両腕を押さえ込んだ。  
「そうか。それならどうして日を追うごとに、あいつは誰かに似てくるのだ」  
そう言い放つと、彼女の顔にはっとする表情が浮かび、みるみるうちにその色は暗く沈み込んだ。  
 
「あなた…」  
つらそうに呟く彼女の顔を見下ろすキースは、もはや自分を止めることができなかった。  
「お前は一体何をしたのだ。何故あいつがあの男に似るようなことが起きるのか、お前にはその理由がわかっているのか」  
「…ごめんなさい」  
か細い声で彼女が答え、キースの怒りは爆発した。  
「何故謝る」彼女の両腕を激しく揺さぶり、強い力で上から圧迫する。「何を知っている」  
「あの子があなたの言うように彼に似ているのなら、たぶんそれはわたしが願ったから」苦しい息の下、彼女は答える。  
「願っただと」堪え忍ぶような彼女の表情が、キースを狂おしい嫉妬に駆り立てた。「何を願ったというのだ」  
「もしも彼の魂がこの宇宙の何処かに彷徨っているのなら、新しい命をあげたかったの」彼女の目から流れ出す幾筋もの涙が、金髪に落ちていく。「わたしは幸せだから…」  
「何…だと」  
「わたしは今、ここであなたと幸せでいるから。でもここでこうしているのは、あの時わたしが彼を裏切ったからだわ。そしてそのせいで彼は命を落とした」  
彼女を押さえつける両手から力が急速に抜けていくのを、キースは感じた。  
「願うことで叶うなら、彼に新しい人生をあげたかったの。そう強く願っていたわ。だからあの子が彼に似ているのは、そのためかもしれない」  
「お前はあいつが、あの男の生まれ変わりだと信じているのか」  
「いいえ」と彼女は答える。「それにもし本当に生まれ変わりだとしても、前世の記憶などないほうがいいでしょう。わたしたちにできるのは、あの子に幸せな人生を送らせてあげることだけだと思うの」  
キースはしばらく、彼女がすすり泣く顔を見下ろしていた。  
それからその身体をそっと抱き上げた。泣き濡れた頬に口づけし、金髪に頬擦りする。  
「…あの男が死んだのはお前のせいではない」  
「わたしがあなたを庇わなければ、彼はあんな死に方をしなかったわ」  
そして自分たちはここでこうしていることはなかったということか、とキースは彼女の思いを辿り終えた。  
そうだ、あの男がいなかったら、自分たちは今ここにいないだろう。そして他ならぬ自分たちの出会いが、あの男を死に至らしめたのだ。  
だがキースは彼女を腕に抱きながら、他の言葉を探した。  
「人はみな何かの理由によって死ぬのだ。それが愛するもののためであるのなら、その死は無駄ではない」  
彼女の手のひらが、彼の胸に置かれる。ちょうど、心臓のある辺りに。  
ゆっくりと顔を上げる彼女の唇に、キースは顔を寄せていく。  
深い口づけの中で、彼女に敬服している自分に彼は気づいた。母を知らないはずの彼女が、母親としての側面をすでに身に着けていた。  
自分はそれほどまでの父親に、なることができるだろうか。  
その時、遠い部屋から赤ん坊の泣き声が小さく聞こえてきた。  
「私が行く。連れてこよう」ベッドを降りてから、ためらいがちに訊いた。「ミルクは、作ったほうがいいだろうか」  
涙に濡れた顔で、彼女は笑った。  
「ええ、お願い。きっと足りないわ」  
だが部屋を出ようとすると、彼女が呼び止めた。  
「待って。わたしも行くわ」  
彼女にガウンを着せて、手を繋いだ。徐々に大きくなっていた赤ん坊の泣き声が、彼らを呼んでいる。  
父と母の手を求め、闇の中で訴えているおさな子の元へ、彼らは向かった。  
 
 
 

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