ある休日のこと、剛志の部屋で。
「ねえねえ、今度東上線にライナーが出るんだよ。まだ2年先だけど」
「悪いけど、俺、聞いてねえぞ」
あれ、剛志、『また始まったぜ、みなみのくせが』って顔してる。
「いいもん、勝手にしゃべってるから。このライナーって、昔走ってた……」
「フライング東上、それ以来だろ。それ、この前話してたじゃん」
「え、あ……そのあとに走った東上線の特急は……」
「みつみね、ながとろ、たまよど、むさしの、さだみね。それもこの前話した」
「んーと、この時から特急料金がいらなくなって……」
「その代わり、電車が通勤型になったからつまらない、それはもう3回話した」
3回……?
なんだ、ちゃんと全部聞いてくれてたんだ。
「剛志……大好き」
「なんだよ、いきなり」