つくし・澪〜幼稚園の時の想い出〜 語り手:澪  
 
 
「つくし〜、遊びに行くよ〜」  
「澪ちゃ〜ん、待って〜〜」  
その頃から私は、明るく活発な娘で、つくしは、のんびりマイペースな娘だった。  
互いにタイプの違った2人がこれだけ仲良くなったのはおそらく性格のせいなのだろう。  
自分にないものを持っていることに嫉妬や劣等感を抱くことなく、ただ2人でいる時が楽しく穏やかで、満たされていることをちゃんと知っていて、そこに幸せを感じていたからだ。  
そんな私たちは入園してすぐ仲良しなっていつも2人で遊んでいた。  
それはその日も続くはずだったが・・・・。  
 
 
「つくし、今日は何して遊ぼっか?」  
「澪ちゃん、その前に花壇のお花に水をあげないと」  
「つくしは本当にお花が好きよね〜」  
「えへへ〜」  
つくしはこの頃からお花が大好きで、その日は花壇のお花に水をあげようとしていた。  
しかし、「いつもの如雨露がないね」「あれ、ホントだね」  
いつも水遣りに使っている如雨露は他の子が水遊びに使ってしまっていた。  
「どうしよう澪ちゃん、これじゃあお花にお水をあげられないよ〜」  
「どうしようって言われても・・・・」「う・・・・・ぐす・・・・」  
「ちょ、ちょっと!?」  
泣くんかい!  
「ぐす・・・、ふええ・・・」  
「こ・・、ここで待ってて!何か代わりのモノを探してくるから!」  
「うん・・、待ってる・・・」  
それから私は必死で代わりの如雨露を探した。つくしが待っているから、泣くのを堪えているから!  
 
「あら、澪ちゃん。慌ててどうしたの?」「あ、先生。如雨露を探してるの!」  
「如雨露を?いつも使っているのじゃダメなの?」「他の子が使っちゃってるんです」  
「そっか〜、じゃあ他のを探してくるからちょっと待っててね?」  
そう言って先生は奥の方へ如雨露を探しにいってしまった。  
そして、先生が持ってきたのは、  
「これしか無かったんだけど大丈夫かな〜」  
大人が園芸などで使う大人用の如雨露だった。  
「これしかなかったんだけど、澪ちゃんたちには大きすぎるわよね〜」  
確かに幼稚園生が使うものではない。  
もしこれに水を入れて使おうものなら相当の重量となり、持ち上げることすら無理だろう。  
でも、「先生、これ借ります」  
つくしが待っている。  
私が如雨露を持って帰ってくることを信じて待っている。  
私は先生にお礼をいうとその大きな如雨露を持って走り出した。  
「そうだ、お水いれてこう。その方がすぐあげられるし」  
幸い途中に水場があったので私は如雨露に水を入れました。  
そしていざ持ってみると・・・、  
「お・・・、重い・・・」  
やはり相当な重さになってしまった。  
今も両手で抱えて持って、重さでヨタヨタしている状態だ。  
「でも、もうすこし・・・・」  
花壇はすぐそこだった。  
「あ、澪ちゃーーーん、ありがとーーーーっ」  
つくしがこっちに駆け寄ってくる。  
私も無意識の内に駆け足になっていた。  
と、その時。  
カッ  
そんな音とともに私は自分の体が傾き、視界が凄まじい勢いで変わるのを感じた。  
そう、私は石に躓いて転ぼうとしていたのだ。  
そして私が抱えていた如雨露は私の手から放れて正面のつくしに---------------------。  
 
「ごめんね・・・、つくし・・・・」  
「ううん・・・・、いいの・・・・」  
「あらら〜〜〜、遅かったか〜〜〜」  
そう声を掛けてきたのはさっき如雨露を渡してくれた先生だ。  
あれから澪のことが心配になって追いかけてきたそうだ。  
そして嫌な予想は的中してしまったわけだ。  
つくしは、私が持ってきた如雨露の中に入っていた水をそのまま被ってしまい、ビショ濡れになってしまったのだ。  
 
 
あれからずぶ濡れになってしまったつくしと、転んだ私は、先生に事情を聞かれ、怒られつつ呆れられつつ教室へ連行?された。  
私の方は軽いかすり傷で済んだのだが、つくしは服が全部乾くまで体操服で過ごすハメになってしまったのだ。  
「つくし〜〜〜、ホントにごめんね〜〜〜〜、ビショ濡れにしちゃって・・・・」  
「いいってば澪ちゃん。お天気もいいし、すぐ乾くって先生が言ってたから大丈夫だよ〜〜」  
「今、先生が体操着持ってくるからそれまで我慢してね」「うん、ありがとう澪ちゃん」  
私はせめてもの罪滅ぼしと思ってつくしの髪の毛をバスタオルで拭いていた。  
私が感謝される所なんて何処にもないのにつくしはありがとうと言ってくる。  
私はジーンとして思わず泣いてしまいそうになってしまった。  
ゴシゴシゴシ・・・・・・  
つくしの髪の毛を拭いていると・・・・  
「体操着持ってきたわよー」  
先生が体操着を持ってきてくれた。  
「じゃあつくしちゃん、服が乾くまでこれを着ててね」  
「うん・・・、でも先生・・・、お花にお水を・・・」  
そうだった。つくしとお花に水をあげるつもりだったのに結局できていないじゃないか・・・。  
「大丈夫よ、私がしておくから」「ホントですか!」「ええ、だからアナタは早く着替えなさい」  
そう言って先生は出て行ってしまった。  
「よかったね、つくし。先生がお花にお水を上げてくれるってさ」「うん!」  
つくしの顔に笑顔が戻ってきた。  
それで私は安堵する。もう大丈夫だと思った。  
「それじゃあつくし、着替えよっか」  
いつまでもビショ濡れでいる訳にはいけない。  
 
つくしは早速着替えようとしたのだが・・・・・。  
「どうしたのつくし、着替えないの?」  
「うん・・・・・・」そう言ったまま黙り込んでしまった。  
どうしたのかと聞こうとしたら、「あの・・・・、澪ちゃん・・・」「何?つくし」「着替えるの・・・、手伝って」と言われた。  
それで思い出した。  
つくしはまだ一人で着替えができないことを。  
私はそうではなかったが、幼稚園生はまだ一人で着替えができない子が多く、つくしは幼稚園の中で一番着替えが下手な娘だったことを。  
「でも・・・、先生もう行っちゃったし・・・・」「澪ちゃんに着替えさせてほしいな」  
「え!?」「澪ちゃん、私にオヨフク着させて?」「え・・・えと・・・」  
そうズイっと迫られても・・・・。  
「ダメ・・・・・、なの?」「いや・・・、その・・・」「澪ちゃん・・・、つくしのこと嫌いなの?」「そっ、そんなことないっ!」  
嫌いになるなんて・・・、そんな事ある訳がない。  
当時の私はまだ幼稚園生だったけれども、つくしとは生涯の大切な人になる、そんな直感めいたモノを持っていた。  
「わかったよ、着させてあげる」「ホントに!ありがとう澪ちゃん!」  
ホントにつくしは・・・、何て表現したらいいんだろうこの感情・・・。  
当時の幼い私にはそれを言い表す言葉を持ち合わせていなかった。  
今はとにかく・・・「じゃあつくし、手を上に上げて」「はーい」  
つくしを着替えさせなくては。  
 
「えっと・・、まずは上の服から・・・よいしょっと・・・」  
上の服をぺろんと脱がす。  
すると現れたのは・・・、何も身につけていない上半身だった。  
幼稚園児特有の小ぢんまりした体は細く、肉がまったく付いておらず力を入れたら折れてしまいそうだった。  
凹凸のない白い平野には、ほんのり桃色に染まっている乳輪と米粒位の乳首と小さな窪みを形成しているお臍以外に何もない。  
そしてその白磁の肌は水が滴っており、夕焼けに染まった教室で見るそれは、まるで妖精のようだった。  
さて、次なのだが・・・・・。  
 
「つくし・・、下は自分で脱げないの?」  
「うん・・、澪ちゃんに・・してほしい・・・」  
「いや・・つくし・・、恥ずかしくないの??」  
私は思わず聞き返してしまった。  
流石に同い年の女の子に、下着まで脱がされるのは恥ずかしいと思うんだけれども・・・、っていうか私もものすっごく恥ずかしいし・・・・。  
「ううん、澪ちゃんに見られるのは・・・、恥ずかしくないよ」  
つくしは潤んだ眼でこちらを見ながら確かにそう言った。  
頬も夕焼けでわからなかったが、赤く染まっている。  
「澪ちゃん・・・、お願い・・・」  
つくし・・・、あなたは・・・。  
「わかった・・・」  
私をどうしたいの?  
 
 
私はつくしのスカートに手をかけた。  
ホックを外すとそれだけでスカートは取れた。  
スカートの下から現れたのは純白の下着だった。  
そしてそれも水で濡れていた。  
脱がさなくてはいけない、そう私は思った。  
「それじゃあ、つくし。脱がすから・・・・」  
「うん・・・」  
そう断って私はつくしの下着に手をかけ、下に降ろした・・・・。  
 
つくしのそこは・・・、綺麗だった。  
教室にいるのは私だけとか、夕焼けに照らされてとかそういう要素もあるのかもしれない。けれども、綺麗・・・、その一言しか出なかった。  
「澪ちゃん・・、どうしたの?」  
つくしが訊ねてくる。また見惚れてしまったようだ。  
「ううん。じゃあ、体を拭いて体操着を着ようか・・・・・?」  
私はつくしが震えているのに気付いた。  
「つっ、つくし、どうしたの!?」  
「ううん・・・、何かね、澪ちゃんに服を全部脱がされちゃったと思ったら私・・・・怖くなっちゃって・・・」  
今にも泣きそうな顔と声でそう私に言ってきた。  
「っ!」  
私はつくしを勢いよく抱きしめた。自分の服が濡れるのなんて気にしなかった。  
ただ、今目の前にいる、自分にとって大切な女の子を安心させてあげたかった。  
「つくし、大丈夫、大丈夫よ!私はつくしの傍にいるから!」  
「澪ちゃん・・・・、グスッ・・、うわ〜〜〜〜ん!」  
つくしは泣いてしまった。  
何故つくしが私にこんな事をしたのか、今の私にはわからなかったけれど、そんなことはどうでもよかった。  
つくしが泣き止んで、また笑ってくれたらそれでいい、そう心に底から思ったからだ。  
 
 
それから私はつくしに今度は体操着を着せたり、濡れた服を袋に入れたり、帰る準備と慌しく、その日はあっという間に終わってしまった。  
 
 
そして今、私はつくしと2人で手をつないで帰り道をテクテク歩いている。  
私とつくしの家はとても近く、いつも帰る時は2人一緒なのだ。  
「ねぇ、つくし?」「何?澪ちゃん」「何で今日は私に着替えさせてほしかったの?」  
私は意を決して質問してみた。  
「え?う〜〜〜んと、それはね〜〜〜」  
つくしは少し考えた後、こう言った。  
「澪ちゃんに・・・・、見て欲しかったからかな?」  
そう、首を傾げて答えた。  
「見て欲しかったの?」「うん。何だかよくわからないけど・・・」  
そう言って、つくしは俯いてしまった。  
きっと思い出して恥ずかしがっているんだろう。  
私はそれ以上何も聞かないことにした。  
そして、私はつくしの家の前まで来た。  
「澪ちゃん、今日はありがとう。また明日ね」  
「うん、バイバイ。つくし」  
そう言って私が自分の家へ行こうとした時、  
「澪ちゃん!」  
つくしが声をかけてきた。  
 
「なっ・・、何?つくし」「澪ちゃん・・・、私の体を見て・・・、どう・・・思った?」  
「え?」「私の体をどう思ったって聞いてるの!」「えええっ!?」  
いや・・・、そんなの聞かれても・・と思った。  
でも・・・、大切なつくしのため、あの時自分が思ったことを正直に言うなら・・・、  
「綺麗だと・・・、思った・・・」  
そう答えるより他なかった。  
「ホントに?」「ホントだよ!つくしの体、とっても綺麗だったよ!!」  
もう訳がわからなかった。  
何で聞かないように触れないようにしてきた話題を出してくるのか。  
つくし、あなたは何を考えてるの!?  
ていうか、さっきっから振り回されっぱなしだし。  
一体どうしたんだろう、つくしは。  
今日はいつもの、のんびりした雰囲気とは全然違う感じに私は混乱していた。  
あれ?いつの間に私の目の前まで来たの!?何でじっと私の眼を見ているの!?  
ねぇ、何n・・・・・・・・・、  
 
 
チュッ  
 
 
 
 
キスされた。そう自覚するのにどれだけ時間を有したのか。  
10秒?それとも1分?それとももっと?  
「つ・・・く・・し・・・・」  
「お休み、澪ちゃん」  
そう言ったつくしは、はにかんでいたように見えた。  
 
 
 
翌日、つくしはいつものつくしでした。  
いつも通りのんびりマイペースで、どこか抜けている私の知っているつくしがそこにいた。  
何故あの時つくしはあんな事をしたのか。  
私にはわからない。  
今は、つくしと日常を楽しく過ごそう。  
そう思った私は今度こそ、つくしに何も聞かないことにした。  
しかし、1つだけわかったとがある。  
私がつくしを着替えさせようとした時に思った感情、あの時はわからなかったそれは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・初恋。  
 
〜回想終了〜  
 
 
「とまぁ、これが幼稚園の頃のつくしの恥ずかしい想い出よ♪」  
「・・・・・・・・・」「・・・・・・・・」  
「あれ?2人ともどうしたの?」  
いや、どうしたもこうしたも・・・・・・・。  
「これって完全に暴露話ですよね??」  
「うん、あなたがつくしの想い出を聞きたいって言うから話しちゃった♪」  
話しちゃったって・・・・・。  
「・・・・・・・・」  
つくしさん、俯いちゃって何も話さないし。っていうか回想の中にもあったように顔を赤くしているっぽいし・・・・。  
「あれ〜、つくし?どうしたの?」  
「澪ちゃん酷いよ!その話をするなんて〜!」  
あれ?つくしさんホントに怒ってる?  
怒った時のつくしさんって結構怖かったような・・・・。  
「ごめんね〜、記者さん。ちょっとつくしを宥めてくるからここで待っててね♪」  
そう言って、つくしさんと澪さんはベンチから離れて海岸の方へ行ってしまった。  
 
 
「まあまあ、つくし。もう全部終わったことじゃない、私は全然気にしてないわよ♪」  
「私は気にするよ!」  
「つ〜く〜し」  
「な・・・、何・・・。澪ちゃん・・・」  
「彼は、そんなに気にしてないと思うよ」  
「え?」  
「だって彼、私の話したあなたの想い出を凄く真面目に聞いていたわ。確かに顔赤くして恥ずかしがっていたりしたけれど、それでも物怖じしないでずっと耳を傾けてたわ。それだけあなたを想ってるってことじゃないかしら?」  
「え・・、そうなの・・・・?」  
「きっと、そうじゃないかな。まぁ、後で自分から聞いてみればいいんじゃないかな♪」  
「そっそんなことできないよっ!」  
「んふふ〜♪まぁ、そういうことにしておきましょうか♪」  
「も〜・・・」  
「さっ、戻りましょう。記者さんが待ってるわ」  
「う・・・、うん。待たせちゃよくないよね」  
そう言って足早につくしは戻っていってしまった。  
さて、つくしのために、次の行動に移るとしますかね♪楽しくなってきそうだわ♪♪  
 
 
 
「お待たせしちゃってすみません」「いえ、全然構わないですよ、つくしさん」  
「ごめんなさい、澪ちゃんが変な話しちゃって」「いいえ、つくしさんの想い出を聞けて嬉しいですよ。優しい人ですね、澪さんは」「ええ・・・。澪ちゃんは、おせっかいで優しい人です・・・」  
「は〜い、ここで重大発表ーーーー!!!」  
突然、澪さんが大声を上げた。何事だろう?  
「つくし〜、あなた。明日の仕事はある?」「ううん・・・、無いけど。どうしたの?」  
「記者君、君はこの後大丈夫?」「ええ、大丈夫ですけど・・・」  
「よ〜し。それじゃあ今から3人でホテル借りて、つくしの小学生から中学生までの恥ずかしい想い出を肴に皆で夜更かしパーティーをしましょーーーーーーー!!!」  
「「ええ〜〜〜〜!!?」  
「そうと決まれば近くのホテルへレッツラゴー☆」  
「ちょっ、澪ちゃん待って〜〜〜!そんなのヤダ〜〜〜〜!」  
ダッシュでホテルへ駆けていく澪さんを追ってつくしさんも走る。  
自分は・・・・・・・・・・・・  
 
 
「おっ、置いてかないで下さ〜〜〜〜い!!  
後に続くしかなかった。  
この先どうなることやら・・・・。  
まぁ、今のこの状況、とっても楽しいからいいんだけどね♪  
 
幼稚園編〜完  
 
 

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