2006年、春  
大月みーなは、女性雑誌でこんなものを見つけた。  
「セクシーランジェリー!男を魅惑する勝負下着!」  
その項目を呼んでいると「男を魅了するなら紐パンしかない!」と書かれている。  
それを読み終わるか読み終わらないかのうちに彼女は思い立ったように、下着屋へ愛車のドゥカディにまたがって向かっていた。  
みーなは店の中に入ると、真っ先に紐パンのありかを店員に聞いてみた。店員は唐突に聞かれたのですこし引いていたが、みーなは気付いていなかった。  
「と…とにかく…紐パンください!」  
「わ…わかりました…!」  
普通のショーツより割高な紐パンを購入した彼女は、自宅に帰った日の風呂上がりに早速着用してみることにした。履くのに少し時間がかかったが、履き心地は上々、一時間もすれば履きなれてしまった。  
しかし悲劇の時間は刻一刻と迫っていた。  
 
次の日みーなは、駅のホームにいた。今日はバイクには乗らず電車での移動だ。これがいけなかった。  
ちょうどホームには通過列車に注意するように放送がかかっていた。  
みーなは聞こえているが、白線の内側まで下がっていたので別に問題はないと考えていた。  
やがて通過列車の音が聞こえてきた。最高速度130q/hでの進入。  
この日はみーなは友達に会いに行くためおしゃれをしていたためスカートをはいていたが、それが風圧でめくれ上がった。  
しかしそれはまだ序の口であった。緩くなっていた紐パンの紐が風圧で解けてしまい、そもままずり落ちてしまった。  
みーなはあわてて紐パンを上げるが、すでに遅かった。生尻やヘアを周囲の客に見られただけではなく、後に鉄道むすめの仲間となる当時の女子高生たちにまで見られてしまったのだ。  
 
ゆの「あの女バカじゃないの?」  
みらい「なんで紐パンなんだろうね。」  
はるか「おそらく…男がおらんのんやろう。」  
ゆりか「あんな下着絶対履かないようにしないとね。」  
まな「そうだよ。」  
みわ「クスクス。」  
あやの「きっと一人で脳内で男の人を想像するしか楽しみがないんでしょうね。」  
 
みーなは友達と会うのをやめ、家に帰ってベッドに突っ伏して泣いていた。  
「あいつらだけは…あいつらだけは…絶対に許さない…」  
彼女は棚の中からあるものを取り出した。小型カメラだった。  
「パンツにはパンツでお返ししないとね…フフフフ…アハハハハ!」  
 
 
みーなは靴の先端に8ミリカメラを仕込んで、ポケットに録画装置を忍ばせて富井高校前へと向かった。  
放課後なので部活のない生徒たちがぞろぞろと校門から出てくる。  
そして偶然この日はゆりかも部活がなかった。  
校門に立ってから10分ほどして6人の見覚えのある女子生徒らが出てくる。  
なびくような髪の毛が特徴のゆの、関西弁が特徴のはるかが校門から続々と出てきた。  
みーなは気付かれないように、水色の髪は黒染めにして、男装している。  
 
10分ほどあとをつけて、6人は書店へ入って行った。  
男性アイドル雑誌のコーナーへ向かうと、華やいだ嬌声が店内中に響いた。  
その声で店員や客は眉をひそめている。  
こいつらは人の迷惑もわからないの。ならわからせてやろうじゃないの。下賤な低能娘に。  
自分の行為を正当化するように言い聞かせながら、みーなは靴のつま先をゆののスカートの中に忍ばせた。  
しかもゆのはわずかに脚を開いている。  
 
その夜、みーなは映像を確認している。鮮明に映った映像にみーなは自分の腕前を確信した。  
「これならいける!残り5人の映像もしっかり撮ってやる!」  
 
翌日、富井駅南口。  
みーなはICカードをフルチャージして待ち伏せた。今日は電車内での映像を撮影するためで、降りる駅まで執拗に撮るつもりらしい。  
ゆの達が切符を購入するのを見計らって、みーなはそのあとをつけた。  
ホームに降りてから5分ほどして、221系の普通列車が引き上げ線からホームに入ってきた。  
ドアが開くと、列の先頭にいた6人とみーなは車内に入り、今度はみらいとゆりかが転換席に座った。そしてみーなもその前に座った。  
今日はカメラはかばんの中に隠している。みーなはかばんを膝の上に置いている。  
そしてみーなは、音楽プレーヤーを再生するふりをして録画機のスイッチを入れた。  
二人はいろいろと話をしているが、その都度、脚を動かしている。二人の股間はしっかりとみーなのカメラに写っていた。二人は次の駅で4人に別れを告げ降りて行った。  
そして今度は立ち上がると、立って話をしているはるかのスカートの下にカメラを忍ばせた。  
みーなははるかが降りるのを見届けてから今度は残るまなとみわの「撮影」をしようとしたが彼女たちの前には人が座っていたので断念して引き上げることにした。  
 
 
次の日、みーなは6人が来るのを見計らいいつもの書店へと向かった。  
富井高校の授業が終了するのは大方15:00ぐらいなので、それに合わせて家を出たのだった。  
靴の先端に仕込んだカメラは準備万端、映像のノイズなども問題なし。  
みーなはポケットの中に録画機を忍ばせた。  
 
15:10分ごろ書店に到着した。それから5分ほどして件の6人組が書店にやってきた。  
そして6人がいつものアイドル雑誌コーナーに向かったのを確認すると、気付かれないように後ろに回り込み録画機のスイッチを押した。  
…しかしここまでは良かった。ところが…  
運悪くはるかがバランスを崩して、みーなの脚を踏んでしまった。はるかは謝る前に足元に感じた違和感に気付き、みーなの靴を脱がせようとした。  
「ちょっと!何すんの!」  
「このカメラは何や!」  
靴の先端にのぞいていたカメラに気付いたようだ。  
 
しかしみーなは今度は店をダッシュで駈け出して店を出た。  
「待てー!」  
件の6人達もそれを追いかけた。  
しかし、みーなは脚がはやくて6人は追いつけなかった。  
 
そしてこの数年後に彼女たちが鉄道むすめとなって再開することになるのは公然の秘密である。  
 
 

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