8年前、あやのは小学校最後のひと時を過ごしていた。
今は2月だが、彼女は去年購入したスクール水着に着替えてベッドに上がる。
彼女より少し歳が上の世代が読む漫画などでよく見かける二重構造のタイプと、
キャミソールタイプを組み合わせたような外観の新スクール水着と呼ばれるタイプだが、
Vラインの角度は、周囲の小学校のものよりやや急で、全体的にフィット感もあった。
紺一色に背中のレーサーバック部分は、学年を表す青が逆三角形に入っていた。
小学校時代で最後のプールの時に着た思い出のスクール水着だった。
進学予定の中学校にはプールがない。
そこでせめて最後の水着を着ようと考えたのだ。
「なんてスタイルいいんだろうなボク…」
ボーイッシュな風貌に不釣り合いなスクール水着。いっそこんなことなら、男の子として生まれたかったと思った。
足元には冬用の柔らかい羽毛布団が素足に踏まれて揉みくちゃになっている。
すごく気持ちがいい。
そして今度は枕を踏んでベッドにうつ伏せに倒れこんだ。
夏のプールの授業を思い出した。
卒業まであと一カ月、何事も起こらず卒業できたらな、と思った。
完